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3 赤の装束

理人は関門に繋がる道に出た翔洋の元へ駆けつけていた。


(里が燃えてるって……あり得ない! 里の者が火事を広げさすわけがない。しかも里全域に火が燃え移るなんてそんな事……!」


思いとは裏腹に嫌な予感が彼の背中を突っつく。

その予感を裏付けるように段々と彼の周りを煙が包みだした。


「くそっ」


理人は道に飛び出しすぐさま煙の臭いがする方角を見る。

するとそこにはいたるところから炎が燃え盛っている里の姿があった。


「……火災」


ただ目の前にある里が燃えている事実に気圧される理人。

しかし先についていた翔洋はそれを上回るといえる最悪の事実に気づいていた。


「理人、あれは火災じゃない。……襲撃だ」


「は?! おまえ何をいって」


「あれを見ろ」


食い気味でいう翔洋。理人は指を差された関所を見る。するとそこには先に着いたであろう狩猟団と赤いマントを羽織った西洋甲冑の騎士が血を出して倒れていた。


「あれは……」


「ああ、恐らくこの森の外にある王国の騎士だ」


「でもどうして? 人がこの森に入る事なんてできないはず」


「……」


「くっそ、今はそんな事言ってる場合じゃない……!」


(中がどうなってるか分からないけど。早くみんなの元にいかないと!)


「戦闘に自信のある俺が里に入るだからお前は外に連れ出した人を守ってくれ」


「……元からそうするつもりだ」


「ああ、よかった」


理人自身燃え盛る里の中に入る事がどれだけ危険かはよくわかっていた。王国の騎士との戦闘が避けられないという事も。だから生きて帰られる確率が低い場所に友達を連れては行けなかった。

二人は方針が決まると関所の元まで急いだ。

関門に近づくと足音を消して門の様子を観察する。


(さっき見た通り門の前で戦闘があったみたいだな。狩猟団の者が10人、王国の者が20人ぐらいか。くそっ……)


「じゃあ行ってくる。……絶対に死ぬなよ」


「……ああ」


そして理人はその場から走り出し翔洋はその場に残る。


「ばかだねぇ……」


走り出した理人は死体の数々を飛び越えて関所を潜る。

里の中は悲惨な光景だった。里の者は皆を守るべく騎士たちと戦ったのであろう。多くの大人たちが剣に切られて倒れていた。


「母さん……」


また外から見た時と同様に様々な所から出火していた。

里の内部はほとんどが森と同じで、木を伐採せず木々に寄生する形で住居が建てられている。場所によってはかなりの高台にあるにも関わらずそこからも出火していた。


(爆弾が使われた様子もないのどうやって?)


そんな疑問を持ちながら荒れ果てた里を散策していた。

そして散策の中でもう一つの異変に気づく。


(子供がいない! こんな走り回っているのに大人の戦死体ばかり。なぜ?! 大人がどこかでかくまっているのか? いや、それにしても一人も見つけられないってことはあり得ない。そうなると敵の狙いは子供?!)


煙の中生存者を探して走り続ける理人。するとかすかに鉄がぶつかりあうような音が聞こえた。


カン…カン…カン


(これは……戦闘音!)


音のなる方向に走り出す。

煙が濃くなり段々と先が見えなくなった。


「もらった!」


その声とともに煙の中から剣が振り下ろされた。


ドスンッ


理人は右から来た急襲を左に飛びのけ間一髪で躱する。


「あれ外しちまったか?」


(危なかった。一瞬でも遅れてたら致命傷だったかもしれない)


さっきの威力で地面に埋まった剣を引っこ抜き、こちらに目をとがらせる赤装束の騎士。


「ん…? お前ガキじゃねぇか。あぶね、殺ってたら隊長にどやされるところだった。まぁ、でもガキいっぱい居たし、一人ぐらい殺ってもいいかっ」


赤装束の騎士は、仮面の下を見ずとも分かる程、殺意に塗れた笑みを浮かべていた。


(くそっ外道め。やっぱり子供が狙いか。……でもとりあえず子供が殺されてないって事は分かった)


騎士を睨みつけ話しかける理人。


「里の者をどうするつもりだ……皆をどこにやった!」


騎士はその言葉を返さず。走って理人との間を詰めに来る。


ニコッ


「いっただっきまーす!」


またも振りかぶる大振りの剣。理人は剣に対して対抗する手段がないので回避するしかできない状況だった。赤装束の騎士はそれを利用した算段に出た。斜めに振り降ろした剣は、理人を捉えることができなかったが、これは布石。一振り目を回避して態勢を崩した理人を捉えるために軽く振られていた。そして本命の二振り目で、左に避け態勢が崩れた理人を仕留めにかかった。


一振り目の軽さに違和感を感じ二振り目が本命であると予見した理人は、急いで後方への回避を試みる。


(少しでも躱せっ!!)


ドッカンッ


理人は突然の出来事に困惑した。


二振り目があたる直前、煙からでた翔洋が騎士の背中にドロップキックをクリティカルヒットさせて吹っ飛ばしたのだ。


「お前何でここに。……里の外で待ってるって」


「誰がそんなこと本気にすんだよ」


食い気味でいう翔洋。


「お前ひとりにしても誰も救われねぇよ」


「あ?!」


「てめぇの命救えねえ奴が人の命救えると思うな」


真剣な眼差しで言う翔洋。理人は何も言えなかった。


「何が絶対死ぬなだ。おめえが死ぬなってんだよ」


実はかなり怒っていたらしい。


「おー感動展開じゃねーかパチパチパチ。じゃぁー死んでくれ」


いつの間にか起き上がっていた騎士が翔洋を後ろから襲う。

翔洋は頭が良く物を作ることが好きだが戦闘に関して理人ほどのセンスはなかった。


「避けろっ!!!」


ガキンッ


赤装束の騎士が振った横殴りの剣に翔洋は簡単に吹き飛ばされる。


「翔洋!!!」


「へっへっへ、今度は当たったか。でも感触が肉ってよりか鉄?」


「いっってーー! これ折れるぞぉ!」


吹き飛ばされた煙の中から声が聞こえた。


「あぁぁん?」


「俺が何もせず、理人の後ろをのこのこついて来たとでも思ったか?」


「あ?」


「俺が理人を先に里に入れたのは安全確認のためだ。理人の後ろについていけば予期せぬ戦闘はないからな。そしてこいつはずっと里の者ばかりを探してた。馬鹿だ。それだけじゃあ敵から里の者は救えない。もうひとつやるべき事があった。それは、」


(……まさか)


「お前らと戦うための武器調達だ」


煙の中から理人に向かって直径三十センチの小刀が投げ飛ばされた。


ガチャッ


「これ取りに行ってくれたのかっ!」


「お前がそれさえ持てば何とかなると思ったからな。だから、まずこいつに勝て」


「おう、ぜってぇ勝つ」


「言ってくれんねえクソガキが。お前の内臓ぶち抜いて食わせてやる。ヒッヒッヒッ」


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