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楽土  作者: 加藤無理
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クロガキ

土木隊に配属されて一年が過ぎた。仕事のコツも掴めてきた。上官から言われた事を淡々とこなすだけではなく、不審点や疑問点を報告したり、命令されてなくともすべきことが有れば確かめた後に実行したりした。


 休暇の時は翠とその家族に会うだけではなく鍛錬もした。小さな結界や空間や道ならば独りでも作れるようになった。霊感も鋭くなったし、霊力も以前よりは強くなった気がする。


 私に気を遣って霊圧を下げていた翠とその家族も心持ち霊圧を上げている。それでもまだ気を遣っているのは分かる。時々、翠と冬空が私の鍛錬に付き合ってくれる。


 今回は戦闘隊と案内隊と保育隊と捜索隊と私達土木隊で百人中隊が編成される。私は分隊長になった。中隊長は戦闘隊の又兵衛またべえ


 今回は子どもばかりを八人殺して十年後に死刑執行予定の極悪人の死霊を捕らえる任務だ。その人物を私達は仮にクロガキと呼称した。


 私達は観測隊からクロガキの生前について説明を受けたり画像や音声の資料を視聴した。クロガキは最初は学校で同級生からイジメられ、登校拒否をしていた可哀想な少年だった。しかし成長するにつれ、凶暴性が現れ、育児に悩む母親に暴力を振るい、それを叱る父親をも罵倒するようになった。両親は福祉や精神科病院に頼ろうとしたが上手くいかず、孤立無援になった。


 クロガキは子どもの頃から希死念慮があったが、時が過ぎるにつれ、楽して死ぬことばかりを考えるようになった。そこには両親への暴力についての反省は皆無で、つまらない日々への不満と両親への逆恨みだけであった。


 夜中に両親が疲労して寝ている中、クロガキは母親の財布を盗んで包丁を買った。朝になるのを外で待って、登校中の子ども達を襲った。


 理由は死刑になれば簡単に死ねる、大きな事をしでかした高揚感、であった。自分で首を吊ったり首を斬ったり飛び降りたりするのは怖かったのである。


 実に身勝手で卑劣で醜い。現実が見えてなく世間知らずでもある。死刑なんて複雑な手続きがあるから簡単にならないのだ。被害者の子ども達はあまりにも可哀想である。しかし事件直後に観測隊が保育隊と案内隊と医療隊に指示を出して子ども達を楽土に送り届けた。子ども達は今でも療養所で静養している。傷は医療隊が治療すると痛みはなくなり治る。しかし理不尽な死を受け入れる為にはまだ静養が必要だ。療養所は四方寺の管轄だ。被害者達が立ち直ったら村や町に出されて住民になる。そこで成仏を待ちながら過ごす。


 一方、加害者のクロガキは祝呪隊管轄の刑務隊で罰を受けながら更生していく。私が半世紀かかったので、クロガキは百年近く時間がかかるだろう。


 観測隊は現世の死刑囚や刑務所内の囚人、まだ捕まってない犯罪者を見つけては監視している。特別な望遠鏡で現世を見ると、悪事を繰り返す生体の中心がどす黒いのだ。


 今回は死刑の現場でクロガキを捕獲する。死刑執行の日時は非公開のはずだが、観測隊は現世を観測しながら予測する。クロガキは死亡直後から悪霊になって執行者達を襲う事が予想される。


 執行予定日に私達は現場に行って準備した。現世の生体には全く気付かれないが、私達は被害を出さない為の結界を張ったり周りにいる霊体を避難させたりした。


 死刑執行。決して気持ちの良い場面では無かったが、当然の報いだろう。クロガキの肉体から湧き出てきた悪霊を戦闘隊が攻撃して弱体化した後、連行した。


 攻撃方法は様々で、音楽を奏でて悪霊を混乱させたり逆に気を鎮めさせたりする。それ以外にも刀やナタで斬りつけたり、殴ったり蹴ったりと物理的攻撃を加える場合もある。術を仕掛けて捕縛したり苦しめたりもする。今回は又兵衛がクロガキの腹をナタで刺した。クロガキはそれでも死んで消えない。悪霊は図太い。


 私の分隊には教導隊から出たばかりの新兵がいたが、顔を青ざめながらも任務をこなした。私達は新兵を労った。


 戦闘隊の手際が良く、準備も出来ていたので意外とアッサリと捕獲出来た。私達は帰還する。

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