エージェントの秘密
謎多き秘密組織U.R.Aのエージェント
その秘密がエージェント・ウラエルから語られる
「来ちゃった♡」
「てめぇ!この野郎!」
家に来たウラエルを睨みつける。
「なんですか?まさか・・・わたしのフェロモンに我慢できず」
「感じるか!」
「それはそれで酷いです・・・」
ウラエルは可愛らしいと思う。
制服も違和感なく着ていた。
だが好みではない。
「お前のせいで変な噂たったじゃねえか!」
曰く、女子高生を奴隷扱いしているクズ野郎。
曰く、その女子高生は依存しており逆らえない。
曰く、その女子高生を家に監禁しているロリコン誘拐犯。
特殊なサークルからの勧誘が3件。
「そもそもあなたがチェンジって言ったのが原因ですよね?」
「やっぱりチェンジで。」
「やめて!生活出来なくなっちゃう!」
なんでだよ。
「そもそも秘密組織U.R.Aのエージェントなんだろ?金はあるんじゃないのか?」
秘密組織のエージェントは金持ってるイメージだ。
「ちっちっちっ、甘いですね宗次さん。」
「・・・」
むかつく。
「U,R,Aは実力主義・・・新規契約を中々取れないわたしみたいなエージェントは路頭に迷いかけです!」
「ブラック企業の営業職か!」
秘密組織のエージェントも大変なようだ。
「どういうシステムなんだ?」
「U.R.Aに就職したくなっちゃいました?そしたらわたしが【先輩】ですね!」
「それだけはお断りだ。」
「なんでですか!」
ウラエルに仕事を教わっても、仕事が出来るようにならない気がする。
「エージェントはプレイヤーの勧誘とマネジメントを行います。」
「へえ・・・」
「そして担当プレイヤーの成績に応じて報酬が支払われるんです。」
プレイヤーを勧誘、そして成績を上げて給料を獲得。
そうなるとプレイヤーを多くマネジメントする方が有利だろう。
「今は何人担当してるんだ?」
「・・・100人以上に声をかけました。」
「何人担当してるんだ?」
「わたしも頑張ったんです。」
「人数!」
「1!」
「俺だけかい!」
ウラエルが引き留めに必死になってた理由が分かった。
「わたし気づいたんです。」
「何がだ?」
「たくさんのプレイヤーをマネジメントするよりも、1人の優秀なプレイヤーをマネジメントして結果を出してもらう。それこそがわたしのやりたかった仕事だって。」
まあそういう人もいるだろう。
「勧誘で断られるのが嫌になったんだろ?」
「・・・宗次さん、わたしには何が足りないんでしょう?」
「知らねえよ・・・」
優秀な人を確保できるアテがあるなら、少人数でも良いだろう。
そうでないなら数を当てて、その中からアタリを探すのが定石だろう。
「強いて言うなら・・・落ち着き?」
「?」
ウラエルが不思議そうな顔をする。
「わたしの長所だと思うんですけど・・・」
「違うよ?落ち着きないよ?土下座で脅してくるようなやつは落ち着きとは無縁だよ?」
「まあ学生の宗次さんには、まだ理解出来ませんか。」
社会人になっても理解出来ないだろう。
「それで契約続行を願い出に来ただけなのか?」
「わたしもそこまで暇じゃありませんよ。」
「・・・いや暇だろ。」
彼女は他に担当している人がいない。
「・・・しゃ、社会人には色々あるんです!その・・・担当が一人だからって・・・えっと・・・じ、事務作業とかあるんですよ!学生の宗次さんには!まだぁ!理解出来ないかもぉ!知れませんがぁ!」
「涙拭けよ。」
担当が新人1人のマネージャーは涙を流していた。
「今回は次のゲームのご案内に参りました。」
「断ると言ったら?」
「また制服で学校に行きます。」
ウラエルの目は座っていた。
これが生活のかかった人の目か。
「今週の土曜日、送ったアドレスに来てください。」
「へいへい・・・今回のルールは?」
「今回のルールは・・・危ない!」
「え?」
急にどうしたんだろう?
「また誘導尋問するつもりでしょ!蟲毒みたいに!」
「してねえよ!普通の質問だろうが!」
タイトルだけでも分かれば調整のヒントになる。
それで聞きたかっただけだ。
「ルールは当日説明します!これは以後もそうです!」
「そうなのか?」
「・・・そうだと思います!」
「知らんのかい!」
チェンジって本当に無理なのだろうか?
「わたし帰ります!」
「わかったよ。」
不要な質問をしたら賞金没収。
これはこっちも今後気を付けよう。
「隣に住んでるので分からない事があったら家に来てください!」
「はいはい・・・はい?」
「それでは!」
「待て!」
ウラエルを引き留める。
「今更引き留めようったって遅いんだから!」
「なんで振られた彼女みたいな事言い出したんだ?」
しかも少し前のドラマか漫画みたいな言い方で。
「隣に住んでんの?」
「今日引っ越してきました!あ、あとでお蕎麦もってきますね。」
「ご丁寧にどうも・・・じゃねえ!」
何から質問しようか。
いや、シンプルに行くべきだ。
「なんで!?」
「え?だから言ったじゃないですか。」
「なにを!?」
「たくさんのプレイヤーをマネジメントするよりも、1人の優秀なプレイヤーをマネジメントして結果を出してもらう。それこそがわたしのやりたかった仕事だってって。」
「そんなこと言ってたな。」
「だから効率的なサポートが出来るように引っ越してきたんですよ?」
「なんで当たり前ですよね?みたいな顔してんの?」
つまりサポートのためにわざわざ引っ越してきたらしい。
「それで何か問題でもあります?」
「そりゃあ!・・・あるか?」
あるだろうと言おうと思ったが、別に問題はない。
むしろ、これまでみたいにどこの誰か分からないやつが勝手に部屋に入るより、どこのやつかわかってる方がマシだ。
「じゃあ後でお蕎麦持ってきますね!」
食費も浮きそうだし。
「・・・ご丁寧にどうも。」
とりあえず隣人を歓迎する事にした。