深淵の王・ディープカイザー
深淵の王・ディープカイザー
それは失われた名前のはずだった。
時と共に消えたその名が蘇り、
新たな戦いが始まろうとしていた。
「深淵の王・ディープカイザー様。」
その名を聞いて振り向きながら睨みつける。
声は女の声だった。
だがその姿ノイズの走ったフード付きのコートで隠れてよく見えない。
「なぜその名を知っている。」
「わたし、あなたのファンなんです。」
「ファン?」
「はい。」
疑問に応じる声はその声はどこか嬉しそうだ。
「ブラッディファング」
「ぐふぅ!」
「ダークネスブレイド」
「ぐぅ・・・」
「暗黒大魔法・ディープインパクション」
「うああああああ!」
その技はどれも聞き覚えがある。
「どれも格好良いですよね!」
「やめろ!人の黒歴史を掘り起こすな!」
ディープカイザー。
それはかつて趣味で書いていた小説の登場人物、そしてペンネームだ。
数々の技はディープカイザーの必殺技だ。
「あの小説にファンなんていない!」
「それはどうですかね。」
「断言できるわ!閲覧者数0だったからな!」
そしてその後データは削除した。
だからその内容は誰も知らない。
書いた本人以外は。
「我々の技術を使えば失われた碑文を復活させるなど容易い事・・・」
「するな!その技術をもっと有用な事に使え!」
どれだけすごい技術か分からない。
だが人の黒歴史発掘より有用な使い方があるはずだ。
「今日は深淵の王・ディープカイザー様に」
「その呼び方やめろ!」
当時の記憶が呼び起こされる。
小説なんてたかが文章。
漫画や動画より簡単に作れる。
そして自分は面白いモノを作れる。
そう思っていた。
その甘かった平凡な自分を思い出す。
「ではレバニラさん?それとも深見宗次さん?」
「随分と詳しいな。」
レバニラはSNSやゲームのアカウント名、深見宗次は本名だ。
「どっちでも良い。」
「わかりました。宗次さん。」
本名、しかも下の名前か。
「宗次さんにお願いしたい事があるんです。」
「お願い?」
「我々U.R.Aが主催するゲームに参加してください!」