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episode.4


 私はラブレターの字を舐めた。


 どう表現するか。

 もちろん味などしない。


 ここは比喩を使うしかない。

 しかし私は比喩表現が大の苦手。


 そもそも私はラブレターなど書いたこともなければ、もらったこともない……



 私は学生時代から剣道をしていた。

 稽古に没頭していた私は恋愛をする時間もなく……

  

 いや、本当は恋愛をする勇気がなかったのだ。


 気になる子はいた。

 しかし学年のマドンナ的存在だった彼女に想いを伝えるという選択肢はなかった。

 勇気がなかったのだ。


 私が告白をしてもオッケーを貰えるわけがない。


 告白だなんて今考えただけでも緊張で震えてくるくらいだ。



 震え……?



 ラブレターの字に目を向けた。

 

 この字は……震えていた。

 

 この学生も当時の私と同じだ。緊張で震えている。おそらく自分がオッケーを貰えるなどとは思っていないのだろう。

 いわば高嶺の花を掴みに行こうとしているのだ。


 私と、この木下君の違うところ。

 それは明白だった。



「これは……勇気の味がする」


 私は気づくと涙を流していた。

 これほどに尊い味があったのか。


 そしてラブレターを片手に、再度花田さんの上靴を口に入れた。


「彼らの作り上げる青春の味のハーモニー」


「心を揺さぶる恋の味とはこのことだ……」


 私にいつものテンションはなかった。声も小さかったと思う。

 しかし、それは心から()み出た言葉だった。


 今までで一番しっくりとくるレポート。



 そこで私のレポートは終わった。


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