七不思議で「好きな子はいじめちゃうタイプ」の嫌いな人を占って幸せな未来を阻止します!
魔法私立闇雲高等学校の七不思議の一つに、『理科準備室で雷雨が降る時、嫌いな人の名前を3回紙に書き、それをプレパラートに乗せて顕微鏡で覗くと、対象者の一番欲しい未来が見れる』というものがあった。
右京院敗華は、その嘘みたいに馬鹿っぽい噂を信じて、理科準備室の扉を開けた。
今日は、6月24日、水曜日。天気は…待ちに待った雷雨だ。
そう、私はこの日をずーーーっと待っていた!!!
左京院勝魔の未来を最悪なものに変えるため!!!
敗華は、何を隠そう。勝魔のことがこの世で、いや、宇宙で一番!!!嫌いだった。
小学生の頃は、正直、好きな子はいじめちゃうタイプなのかな、と思っていた。髪を引っ張ったり、スカートを捲ったり。私に構って欲しくてしょうがないみたいに悪い顔をして、仕掛けてくる。その度に、魔法道具である箒を思いっきり振り撒いて、
「…このッバカつまーーー!!!」と
彼の後を追いかけていた。
しかし高校に上がった時点で、その好きな子はいじめちゃうタイプの嫌がらせは、徐々にエスカレートする。
例えば
一つの種子で一生に一度しか花を咲かせないという両想花を敗華は、なんと蕾まで育てたのにも関わらず彼がポキッと茎から折ってしまったことがある。
両想花は、花が咲くと好きな人と両想いになれると言われており、飼育方法は一日中花を見て花が欲しがるタイミングで水をスポイトであげなければならない。故にとても栽培が難しい花なのだ。
それを敗華は、蕾まで育てた。全ては、、、を振り向かせたかったからだーーーー。
なのに、なのになのに
彼、左京院勝魔は、プチっと折ったあげく、悪びれることなく「あ、折れちまった。わり」と言ったのだ。おまえ、ことの重大さ分かってねーだろ!私何回も徹夜したんだぞ!!
勝魔の悪行はそれだけではない。
この闇雲高等学校では、年に一度舞踏会が開かれる。そこでは異性のパートナーを各自選び、強制参加でドレスを着て出席しなければならないというルールがあった。
異性のパートナーは恋人であったり、または婚約者であったりと色々だが、この機会に告白したりされたりとカップルが増える時期でもあり、全女子生徒の憧れであった。
敗華もその1人で今年こそは、片思いしている男性に誘われたいと思い、右京院家でも奮発してドレスを見繕った。
胸元が大きく開き、ふわりと脚を覗かせる大人な色気を放つラベンダー色の衣装。
敗華のチャームポイントである紫色の瞳とよくマッチしていてとてもお気に入りだった。
なのに、なのになのになのに!
家にたまたま訪れていた勝魔が動揺し、紅茶ををかけられて、綺麗なラベンダー色にパックリと大きな茶色のシミが浮かぶ。
お気に入りでなおかつドレスのギリギリの予算を注ぎ込んだ為替えがなくなってしまった敗華は泣き崩れ、同情した先生が、公欠にしてくれたことだってある。
要するに、大嫌いで、憎くて、嫌な奴なのだ。あの男は!!
呪ってやる!とまではいかないが、彼の一番望んでいる未来からなんとしてでも遠さげ、最悪な未来を必ず実現できるよう努力して嘲笑ってやる!とは考えていた。
敗華はこれまでのことを思い出し、額に青筋を走らせながら…紙にさらさらさらと「左京院勝魔」と3回ペンを走らせる。
そしてそれをプレパラートに乗せ、用意していた顕微鏡で覗き、倍率を合わせた。
そしたらボワっと景色が映り込みそこに映っていたのは----
「…はああああ?!?!?!」
思わず声を上げて後ろに仰け反り尻餅をつく。
その瞬間ゴロゴロと鳴っていた雷がピカッと鳴った。
ありえない、あり得ない、こんなの!絶対にあり得ない!!!!!
頭がひどく混乱し動機が早くなり、眩暈がした。
そこに映っていたのは、
大嫌いな彼左京院勝魔と他の誰でもない私、右京院敗華が、淫らにお互いを求め合い肌を重ねる光景
だったからだ。
さて、どうやってこの未来を抹消しようか?
*
敗華は、勝魔のことがそこまで嫌いではなかった、というか好きだった。初恋だ。
実をいうと彼女が両想いになりたかった相手はほかでもない勝魔であり、両想花を一生懸命育てていた理由も勝魔である。
ドレスだって、勝魔に見染められたくて精一杯尽くした。
それなのに相手には、花を折られドレスを汚され、もう純粋に好きだというにはーーー
難しくなってしまった。
最初のうちの、小学校のうちの
お前俺のこと好きになれこっち見ろというムーブは
一生懸命こちらに向かってきてくれるみたいで本当に好きだったのにーーー…なんでここまでこじれてしまったのだろう。
考えてもキリが無い。
とにかく、あいつは一線を超えたのだ。
もう、好きだなんて此方からアプローチなどするものか。そんな強い思いが憎悪となって敗華に七不思議を強行せざるを得ない状況作り出していた。
敗華は急いで何もかも元の位置に戻し、
その場を後にする。
ただ、名前を書いた紙はふわっとその場に忘れて。
次の日、学校に来てみると玄関前で超絶にこやかな笑顔の左京院勝魔に話しかけられた。
「よぉ、敗華!今日も相変わらず、間抜けな顔してんな!」
は?今、敗華って呼んだ?
それまで左京院勝魔は敗華のことを呼ぶとき
「オマエ」とか「おい」とか「ばか」とかだったのにいきなり敗華を呼び捨てしてきた。
何?こいつ。頭いっちゃった?
敗華はとんでもないものを見た様な顔で左京院勝魔を見た。
「ねぇ、何企んでんのよ。」
「ん?何が?」
「だから、その…なんで名前で呼ぶのよ!」
すると左京院は「ああ、」と気付いたようで
「だって俺達今年こそ恋人になるだろ?」
と言った。
「…あ"?」
「だから、こ、い、び、と。意味わかる?」
「分かるわけないでしょ」
「だから、恋人ってのは雄蕊と雌蕊がーーー…」
「そっちじゃないわよ!なんでアンタと恋人なの!気持ち悪いこと言わないでよ!」
「はぁ?!?!…おまっ何でだよ!お前俺のことが好きなんじゃないのかよ!」
「何でそうなった?!?!」
2人でおでこをつけていがみ合ってるところを見られて、周りの生徒達は「また始まったよ、痴話喧嘩が」「今日もお熱いねぇ。」などと呆れている。
やめろ!!!痴話ってなんだ!!!
すると私の後ろからぐいっと手が伸びてきて、
「はーか。やめなってば。」
と肩を叩かれた。
後ろにいたのは親友の東真希だった。
「真希…だって、こいつが…。」
私は左京院勝魔を指差しながら言う。
「勝魔の突拍子のなさはいつものことじゃない。それより、今日は箒の実習テストがあるのよ?このテストはこの学校の二学年の最難関で死ぬかもしれないって言われてるんだから。気ぃ引き締めなさいよ。」と肩を叩かれた。
そう、今日は箒の実習テストがある。
この闇雲高等学校では、第二学年までに箒を習い、このテストに合格できたらプライベートでも箒で空を飛んでも良いということになっている。
ただ、このテストは数年に一度死者が出ている超絶危険なテストなのだ。
①まず、箒にまたがり、
「フララル・フララル・フラフラルン・ラグーン」
と唱え低空飛行を1分ほど続ける。
②教授からヨシ、の合図があったらタイミングよく気流に乗り上昇する。
③校舎(13メートル)より5メートル以上高い位置を保ち校舎周りを二周する。
④不死の森という校舎裏にある森の中で不時着実習として着陸する。
現地の先生に確認を貰ったらまた飛び立ちスタート位置まで③の高さを維持しつつ帰ってくる。
特に④が危ないのだ。死人が出るとしたら、いつもここだった。
「はーかは、あまり、箒が得意じゃないでしょう?…気をつけなさいよね。」
そう真希に忠告された。たしかに、私は左京院勝魔のように何でも出来るわけではない。
また不運なことにこの実習テストはペアでやるのだ。一番上手い人から一番下手な人と組まされ、私は左京院とだった。
「最悪…。あんただけには頼りたくないのに。」
そうため息をつくと、
「俺だってやだよ。素直じゃないやつとなんて。」と言われてしまった。
そしていつものように私の紅い髪を一束摘まれ、ピンっと引っ張られた。
実習テストは、3時間目が終わった後に行われる。
黒い魔法着に着替えフードを深く被る。
女子更衣室からはみんな不安そうな表情で、泣くものもいる。
敗華はぶっちゃけ、一番の劣等生だ。
一番上手い勝魔とペアにさせられたのだから。
「…とにかく昨日のことは、忘れよう。」
左京院が私と肌を重ねたいと思っているなんて、何かの間違いだ。考えるな。支障をきたすだろ。
敗華は心を無にして真希と一緒に練習場に向かった。
*
「ではこれより、箒の実習テストを開始する。これに合格した者は、プライベートでの箒の使用を認める。なお、ペアで、行うが合否判定は個人が対象である。では、準備できたペアから並べ!」
教授の大きな声が響き、生徒が萎縮する。
そんなとき左京院から、
「ほら、さっさと始めよーぜ」と声をかけられた。
真希が驚いて
「勝魔…!あんたはいいかもしれないけれどまだ、敗華は…」
と左京院を攻める。
「真希…いいよ。覚悟なら出来てる。」
そう、私は劣等生だけどーーー左京院勝魔に迷惑をかけるのだけは死んでも嫌だった。
「行こう、左京院。私たちが一番にやろう。」
私は強い眼差しを左京院に向ける。
左京院は唇の端を吊り上げ
「そう来なくちゃな」
と不敵に笑った。
*
「では、左京院・右京院ペアから、はじめっ!」
教授の声と共に
箒にまたがる。
そして深呼吸してからーーー唱えた。
「フララル・フララル・フラフラルン・ラグーン!!!!」
その瞬間フワッと体が浮き1メートルほど浮かんだ。
順調だ。左京院と前後に並び低空飛行を続けたのちに教授の合図と共にグワッと気流に乗る。そのまま校舎よりだいぶ高く2人とも上昇する。
やった!第一関門クリアだ!!!
これから校舎を二周する。風が強く不安定で時々左右に体がバランスを崩す。その度に精神を立て直した。
二周目まできて、落ち着いてきたところで
左京院が私にぼそっと話しかけてくる。
「なぁ、お前。昨日見たんだろ。理科準備室で。」
「???!?!」
私は大きく動揺した。
ーー見られてた?!
「…でさ。俺の、その望みみたいなの、わかってんだろ?」
私はその瞬間大きくバランスを崩す。
何でこんな大事な時に、あんたの望みの話をするのよーー…!!!
「なっ…何で今ここで言うの?!
何、何なの!?あんたって…そんなことがそんなにしたいの?!変態!!!」
顔を真っ赤にした私が怒る。
「なっ、変態?!うるせーよ!俺は…本当はずっとそうなりたいって思ってた!
何こいつ。そんなに私と…したいの?!
「わ、たしは、いやよ…あんたとなんて」
弱々しくそういうと、
「…俺じゃ嫌か?」と聞いてくる。
「いや、って言うかおかしいじゃん…私たちずっといがみ合ってたでしょ?そんな、いきなり…」
「いきなりって、俺はずっとお前を見てきたし、いきなりじゃねぇよ。なぁ、…俺じゃ嫌か…?」
何だか泣きそうな声で左京院は言う。
そんなに私と…したいの?泣くほど?
そして箒で飛んでいるのにも関わらず耳に唇を近づけてきて
「お願い…俺と突き合って…」
と言われた。
その瞬間身体中に鳥肌が立ち
「ッッこんな試験中に交尾の話をするな!!!!!!」と大声で返してしまった。
すると左京院勝魔も目を大きく見開いて
「ッッ交?!…してない!!!」
と死なほど慌てて手を箒から放したときに
彼の体がグルンっと宙返り大きく降下した。
「…っかつま!!!!」
そこで私は本当に久しぶりに彼の名前を呼んで自分のことも顧みずに彼に手を伸ばしていた。
*
起き上がると、森の中の木の上に不時着していた。
「ん…ここは…?」
そう言いながら起き上がると
「起きたか」と上から声がした。
上を見ると、左京院勝魔が私を横抱きしてあぐらをかいていた。2人とも木々にぶつかったのか、服がぼろぼろだ。
「あれ…私確か…」
左京院が落ちそうになったから…手を伸ばしてーーーそれから…
「ごめん。」
ふと左京院の方をみると何だかすごく居心地が悪そうに俯いて謝っていた。
「ほ、ほんとだよ、なんであんな…」
「ごめん、俺…お前の見た俺の願望が何かは分かってなくて…でも俺の願望ならお前と付き合いたいって言う願望だと勝手に推測して…」
…ん?付き合って?突き合ってではなく?
「…私の見たあんたの願望では私と…その…してたよ…あれ…」
「ッだから…極論そうだけど、ッッそれ以前に…」
一呼吸して左京院は意を結したように呟く。
「…好きだから…」
「…え?」
「…ずっと前からお前のことが好きだったんだ…」
「……。」
しばらく沈黙が続いた後
「…嘘つき…」と私は言った。
「両思花とか折ったりドレス汚したりさ。好きな女の子にすることじゃないもん…」
「あの花を折ったのは、俺以外の誰かと両想いになられたらどうしようって焦ったからで…ドレスも…その…俺以外と踊られたらどうしようって思ったんだ…」
そう左京院はカッコ悪すぎることを言ってから、
「はぁ…俺カッコ悪…」と言った。
そう、2人とも空回って馬鹿すぎる。
馬鹿好きて、私は思わず
「…ふっ、あはははははは!!!」
と大笑いしてしまった。
だって、面白い。私七不思議まで試して、左京院の最高の未来を阻止しようとしてーー…
それ完全に嫉妬じゃん!
「私も好きだよ」
泣き笑いながら言った。
「本当に、ちょっかいばっかりかけてきて、
どんだけ私のこと好きなの、こいつって思ってたよ!小学生の頃からね!」
左京院は顔を真っ赤にして固まっていた。
その頬にえいやっと唇を寄せる。
「私に散々意地悪してきたんだから今度は私のお願い聞いて…?この試験、絶対に合格しよう!」
片手で私がキスしたところを押さえさらに頬を赤くさせた左京院だったがそれを聞いて
「…お前やっぱり本当はSだろ」と呟いた後に、
「望むところだ」と笑った。
そして私たちは、立ち上がって箒に乗り、お互い顔を見合わせてせーので舞い上がる。
「フララル・フララル・フラフラルン・ラグーン!!!!」
*
「全く、一時はどうなることかと思ったわ」
呆れたようなホッとしたような真希が言う。
あれから、無事テストに合格した私たちは
それからもう一度左京院に告白されて恋人同士になった。
「私のせいじゃないよ!勝魔が、箒から滑ったの!私が助けたんだから!」
「…なっ!お前が変なこと言うから…!」
「だーめ!勝魔のせい!」
「…くそ!」
「…嫌いになった?」
「…んなわけないだろ、大好き…」
いがみ合ってたときが嘘のように勝魔が折れるようになった。
「はぁ、何このバカップル…」
呆れた真希がため息を吐いた。
数カ月後ーーー
昔、魔法私立闇雲高等学校の七不思議の一つに、『理科準備室で雷雨が降る時、嫌いな人の名前を3回紙に書き、それをプレパラートに乗せて顕微鏡で覗くと、対象者の一番欲しい未来が見れる』というものがあった。
それは、『対象者と両想いになれる』というものに噂されるようになった。
帰り道、手を繋ぎながら隣を歩く勝魔に私はそっと囁いた。
「ねぇ、…あの願望叶えてあげよっか?」
勝魔が口をぱくぱくさせて真っ赤な顔で私を見る。
私に揶揄われて真っ赤になって動揺する勝魔が、本当に可愛くてつい揶揄ってしまう。
その度に勝魔は私を愛しくて仕方がない
という目で
「…本当に敵わないな…」と笑うのだった。
おわり。
勝魔side story
*
彼は、優秀だったが、少し高慢だった。
とは言っても勉強は、ある目的のためにひたすら頑張っただけで、全然得意ではなかったのだけれど。ともかく現在では、学年一位の努力型なのだ。
そう、左京院勝魔はとても努力家だった。
出来ないことがあれば誰よりも完璧に出来るまでやる、それが彼のモットーであった。
ただ、彼は小学生の時に決めたある目標をいまだに達成出来ていない。それがなんとも彼を憤らせていた。
そして、今日も(・)彼は自習のために理科室に来ていた。外はひどい雨が降っており、雷も鳴っていたけれど、理科の実験でどうしても分からない部分があったのだ。それを解決しておかなければ後々の試験で困る。
左京院勝魔は理科室でノートを開き、実験に使うビーカーや試験管を準備し始めた。
ふとそんな時に隣のーーー理科準備室から、何かがガタンッと転げ落ちる音と
「…はああああ?!?!?!」
という悲鳴が聞こえてきた。
ビクッと肩を揺らし、え、何?と思った勝魔はゆっくりと近づき窓から覗き見た。
「あれはーーー
右京院敗華…なんでこんなところに…」
敗華は勝魔の存在に気付かず、わたわたと顕微鏡?が何かを元に戻すと急いでその場から立ち去った。
敗華がいなくなったのを確認しゆっくりと理科準備室の扉を開ける。
そして彼女が座っていた場所までコツコツと歩いて近づいた。
「あいつ、こんなところでなにを…」
動揺が止まらず、目を泳がせているとふと床に小さな紙切れのようなものが視界の端に入った。
なんとなく、何故それを取ったのか分からなかったが、その紙切れを手に取る。
そこには俺の名前ーーー
左京院勝魔の名前が書かれていた。
しかも3回も。
沈黙が続いた。
何故あいつがこんな天気なのに理科準備室にいたのか、ここで何をしていたのか全て察したからだ。
「…ほんとに…可愛いよな。」
思わず、ポツリと呟いた。
そんなに俺の未来の願望が見たかったのか…。もしかして叶えてくれようとしてたのかな。だとしたら…多分あいつと結ばれることが俺との未来だから…気持ちバレたよな…どう思っただろう?
俺もあいつの望んでる未来が見たい。
今まで好きすぎていじめてしまったけれどーーー…もし、俺のことをそんなに嫌ってなかったら…告白して、それからーー…。
あいつの両想花を折ってしまったのは、
あいつが好きな相手が俺だという自信がなかったし、他のやつと万が一でも両想いになられたら困ると思ったからだ。だから、咄嗟の判断で、つい折ってしまった。
泣きそうなあいつを見て罪悪感が半端なかったけど…。
舞踏会のドレスだって俺はパートナーに誘えていないのにそんなに胸元の空いたドレスを着て他のやつと踊るのかと思ったら…思わず紅茶で汚していた…。誘えなかった時点で、俺にそんな格好で出るなという権限が無かったから。
あいつのことはずっと、小学生の頃から好きだった。
「…俺もやってみよう…」
紙切れを裏返してペンを走らせる。
右京院敗華
右京院敗華
右京院敗華
そして顕微鏡を覗き込んだ。
するとーーー
…右京院敗華が望んでいるという未来には
俺は右京院の前で跪き、足に忠誠のキスをしていた…。
「……はぁ?」
なんだこれ。あいつ何、Sなの?
それともこういうプレイが好きなんだろうか?
……。
兎にも角にも一緒にいる未来を望んでくれているのだ。もうそれだけで十分ではある。
俺をなんだか今までで一番浮かれた気持ちで、その日帰路に着いた。