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フリ素@姉妹関係




     ※




「ザンダーン!」


 枕元のオレをハルさんは掴む。入院中でも元気な人だ。オレはぶんぶん振り回されながら、「なに、ハルさん」と会話に応じる。


「こ、これからおかーさんが来るの!」


 彼女は言う、おかーさん。ハルキさんのことだ。ここ数日、随分とお世話になった――しかし、既に見舞に何度か来ているはず。何を緊張しているのだろう、今までは毎回寝ていて、今回が久々の対面とか? いや、そもそもそういう(たぐ)いの遠慮をする人間ではない気が――


義妹(いもうと)も、連れてくるって言うんだよ」


 …………?


 義妹?


「えっと――ハルさんは、ハルキさんの養子で、ハルキさんは――」


「あれ、話していないっけ。おかーさんは、おじーちゃんに引き取られて、十八歳でグーヴに留学して、そこで私を拾ったの。おじーちゃんを見習って(ここ)で育てて、私が十二の時だね、ふつうに結婚して、城から出て街に住み始めて、おかーさん自身が産んだ子供を育ててるの」


「…………」複雑な事情がおありのようだ。「それ、ハルさんはよかったの? つまりハルさんだけは、シュロウさんがいるにしても、今でもこの城に住んでるってコトでしょ」


「うーん、おかーさんも同じようなコト言って心配してたけど」ハルさんは言う。「わたしは別に、おかーさんが好きな人と一緒に生活したいっていうなら別にそれでいいと思うよ。捨てられるわけじゃあるまいし。お城の仕事は好きだし。わたしはおとーさん――あ、関係的には義父ですらないけど――のコトも嫌いじゃないもの。一般市民だからここに連れてこられないってだけだから」


 ……まあ、そうならばそれでいいのだが。


「だったら義妹さんは?」


 ハルさんはオレの言葉にビクッとする。そして震えながら、言葉を発する。




「サルレアっていうんだけど――サルちゃん、今、()()()なの……!」




「はあ?」




     ※




「ハルレア、起きている?」


 その後、ハルキさんと――サルちゃんが病室を訪れる。エマよりも若い。ほんの五、六歳だろう。目はぱっちりと大きく、センターで分けた、ハルさんと同じ髪型。所作が上品で、流石はハルキさんの娘といったところか。


「おかーさん。それに、サルちゃん。久し振り」


 ハルさんは極めて愛想よく義妹に呼び掛けるが――サルちゃんは、義姉の方を向こうとしない。


「サルレア。ハルお姉さんに挨拶は?」ハルキさんは娘の手を引きハルさんの前に連れていく。サルちゃんはようやくハルさんの顔を見ると――



「ハルお姉さん。暴漢にあっさり捕まるとか、格好悪い」



 そう言って、また目を逸らす。


「ふ、ふぐう」ダメージを負うハルさん。ハルキさんは、「サルレア。今のはよくないよ」と割と本気のトーンで叱る。


 うーん。


 何というか。


「ハルさん。大したことねえじゃん」


 彼女はオレの言葉に反応してこちらを見るが――首を傾げる。


「いや、考えてみなよ。()()()()()()()()()()()()()()()ってことは――」




「ふ、普段は格好よくて尊敬できる世界で一番大好きなおねーちゃんってコト!?」




 ハルさんは叫ぶ。サルちゃんは――


「そ、そ、そんなわけないでしょう! ハルお姉さんの格好悪さはわたしがよく分かってるから!」


 顔を真っ赤にしてそう叫び返し、ハルキさんの後ろに隠れる。


 うーん。


 難しいお年頃、というか、普段会えない寂しさの裏返しなのかもしれない。


 面白いから、もう少し見ていようと思う。鈍感な姉と、ツンデレな妹の関係性を。


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