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フリ素@存在証明 ~フリ素オレ、異世界で人気大爆発しているようです~  作者: 烏合衆国
第三章 フリ素オレ、泣く子と銃には勝てないようです
32/49

3-9 反駁


「我々は、市民に銃器を持たせるべきであると提言します。各自が自衛の手段を持っていれば、一昨日に起こったような事件の抑制に繋がると考えられます。


「加えて、これから我が国の軍備見直しをするに当たり、銃器の積極的採用を提言します。近年の銃の発達は無視できないものであり、今後、国力の均衡を簡単に崩し得ます。これらの事項には可及的迅速かつ的確な対応が必要であり、改革内容をまとめました。


「そもそも。剣や槍は、基本的に兵士しか持ち運ぶことを許されていないが、模造刀や短刀を街中で持っている者は少なくない。我が国の伝統(リオフラン)武術に含まれるからな。ファイリース、ジギリタス。お前たちの道場にも、それはたくさんの者が集っているだろう。ならば――携帯可能な武器、銃をその枠に入れて、何が悪い。剣も槍も、よほど実力差がない限り銃には勝てない。だから銃を、今後、護身用の武器として普及させるべきだ。


「銃を禁止すれば、裏で流通する密造銃に市民が対応できず、犠牲が出かねません。銃の所持を許可する――ただし、()()()()()()()()()()()()()。以後は、国が、銃の作成を管理します。現在銃造りに従事している者は、国の抱えとすることも考えています。国が責任を持って、国内の銃を取り締まる――勿論、市民に与えるのは殺傷能力の低いものですが――そして、銃器に関する法律作成に改めて着手し、規則を破る者には重罰を課します。


「なぜそれほどまでに銃を行き渡らせようとしているのか、それは先に述べているように、まず自衛のため、そして今後の安泰のためです。銃は剣よりも、槍よりも、弓よりも強い、これからの時代の最たる武器となることは、間違いありません。我が国では徴兵制度を採っていますが、徴兵前に、事前知識を養うため、また徴兵対象ではない者も、非常時に備えるため、銃の普及を図るのです。まず必要なことは銃の増産、そして銃隊の拡充。余裕があれば、銃剣の一般化を視野に入れていきます。それから――銃の作成及び指導には、()()()()()()()人員を出して頂きたく思います。


「弓は、銃の出現で必ず追いやられる。リオフランの伝統的な弓術には――ここで、最前線から退いてもらう。今後、弓は狩猟や収穫祭においてのみ使用するものとして、銃に移行する。その代わり、銃作成者、他の二家と同様に、()()()()()()()()()()()()()。今後の改革はエーエルが中心・主体となって動いてもらう。


「そしてこれらの改革の()()()()となるのが、『ザンダン』です。


「銃を所持している『ザンダン』という人形は現在、我が国に広く浸透しています。この人形を据えることによって、この改革が市民に受け入れられやすく、また志願兵に人が集まりやすくなると考えられます。『ザンダン』という記号的なもののお蔭で宣伝や教化の際に分かりやすく伝えられる、そしてこの人形を知らない人にとっても親しみやすい見た目で、国が一丸となって改革に向かうことができるでしょう。


「この『ザンダン』はエーエルの下、銃隊の上に象徴として置くことになる。もし具合のよくないことがあれば――『()()()()()()()()()()()()()


「……一連の改革に必要な経費は、全て政府が負担します。市民から徴収した税を銃の作成費用とし、その銃を市民に譲渡することで、実質的に還元ができます。


「繰り返しますが、銃に今、気づくことができたのは不幸中の幸福です。銃を正しく使える者を増やすことで、高水準の軍隊と、治安が得られるのです。


「そして――()()()()()()()()()()()()()。賛同を求め――同様の改革を実行してもらう。調べたところによれば、銃規制が十分でない国は周囲にも多くある。グーヴもそうだ。これによって、国同士の交流が盛んになり、たとえば材料の足りない国は他国から貿易によって得ることができ、技術開発も各国共同で智慧を持ち寄ることができる。それ以外にも、様々な関わり方があるだろう。我が国だけではなく、この地域全体で、富んでいこうという意図があることを、外交を通し伝えていきたい。外交官として我々はまずハルキを推薦する。以上だ」




     ○




 三人が話し終える。


「では、ご質問があれば――ガルイス様」


 長男は立ち上がる。



「――本当に、市民に銃を渡すことが、市民の安全に繋がるのか。治安の向上に繋がるのか。犯罪の抑制に繋がるのか。それをもう一度、詳しく、説明してくれ」



 質問に対し、アリアが立ち上がる。


「はい。まず、銃を渡す対象に、犯罪歴のある者、犯罪に手を染めていると疑いのある者、自己判断能力のない者は含まないこととします。銃は正しく使えば剣や槍、弓と同様、有用な武器です。銃が乱用されないような法整備、適切な教育によって目的は達成可能です。また、議論の余地が残っている部分、たとえば銃を街中で常に携帯していいかや、剣・槍との兼ね合い等については、これからに回そうと考えています」



「では、その説明で市民が納得するのか、反対されればどう対応するのか、説明してくれ」


 長男は、畳みかけるように訊く。



「――はい。我々は、この案を採用するかどうかを、国民に委ねるつもりです」



 アリアの言葉に、


()()()()……!」


「そうです、宰相。これは国民に関わる決議。それを国民に問わずしてどういたしましょう」


「国民の反対多数ならば、廃案でよいのか?」


「そう民が求めるならば、致し方ありません」続くガルイスさんの問いかけに、アリアはそう言い切る。これが今日一番の山場だ。突貫工事の代案作成だったが、いい策だと思う。『国民投票』――説明は尽くした上で、どちらがいいか選んでもらう。実際に法の制限を受ける者たちに、是非を問う。そして投票を実施すると宣言しておくことで、実施されるまでの間に余裕が生まれる。そこで、詰めが甘いところを詰め切り、考えが足りないところを考え切り、より多くが納得できる法を作り上げる。


「そうか。質問は以上だ」


「他に、ご質問は――宰相」



「はい」宰相と呼ばれた男が立ち上がる。オレは今日、初めて見たが、まあ、宰相なのだそうだ。「軍を強化するとして――協力関係にあった国同士が、国力をつけたことで侵略をし始める可能性がありますが、どのようにお考えでしょうか」



「それはない」


 シャードが立ち上がって言う。


「こんな小国が銃の重要性に気づいたんだ、西の帝国も、東の連邦も、きっと既に軍備拡大、技術開発に追われている。大国に立ち向かうには、数が必要だ。西から東から攻められた時に、この辺り一帯、小国同士が潰し合って無法地帯になってるなんて、冗談じゃねえからな。そんなことはこの一連の話を理解できているなら容易に思いつくから、わざわざ相手国に説明するまでもねえし――()()()、分かっているだろう」



「失礼いたしました。以上でございます」


「他に、ご質問は――アイリス」



「はい」アイリス・サムエル。槍のサムエル家の当主だ。「他国との兼ね合い、協調、共栄というお話でしたが――我々が相手国を出し抜こうとしていないことを、どう証明できるでしょう。たとえば、今から一年後に周囲の国に告知するとして、それまで国内では密かに銃の生産をし続け、周囲より一足先に富を蓄える。そうすべきでないとは申しませんが、しないとしても、そうだと果たして立証できるでしょうか」



 順番的に――答えるのは、エマだ。エマは立ち上がる。


「――ええと、その心配は無用だと思われます。なぜならば、我々が、今こうして議論している最中、他の国ではもう大量生産が始まっているかも知れない。銃を厳しく取り締まっているかも知れない。犯罪が後を絶たない状態かも知れない。誰かが号令をかけてくれて、皆で一緒に走り出すというのは、理想ですがそうはならない。協調といっても濃淡がある。共栄といっても強弱がある。強い言葉を使うなら、我が国に攻め込もうとしている国が今、ないとは限らない――わけです。信用は得るものです。信頼は掴むものです。ハルキを我々が推薦するのは、それを任せるに足る者だからに他なりません」



「ありがとうございます。以上でございます」


「他に、ご質問は?」


「異議なし」エーエルさんが言う。


「異議なし、であります」ミスエルさんが言う。


「異議ございません」ハルキさんが、笑って言う。


「では決を採ります。まず、賛成の方。――シャード様、アリア様、エマ様、宰相、三家の方々、ハルキ様。では反対の方々――よろしいですね、()()()()()。では――賛成多数により、今後、お三方から提出された案を、昨日の決議に代わるものとして扱います。それでは、解散といたしましょう」



読んで頂きありがとうございます!


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