第九話.ボーナスステージ
第十一問.ルドルフ・ヒューズを殺害したのは誰?
「ミシェルさんは既に十問目でリタイアされているため解答権はありませんが、このような問題が出題される予定でした。選択肢はございません」
……は?
待て待て待て何だこの問題は!?
俺に解答権があるとかないとか、そんなことはどうでもいい!
だっておかしいじゃないか!
そもそも犯人がわかっていないのだから、これは問題として成立していない!
「な……だ……」
何か言わなければ。
頭ではそう思っていても言葉が咄嗟に出てこない。
「それでは、こちらの映像をご覧ください」
モニターに森の映像が映し出される。
木の上からやや見下ろすような視点だ。
画面端に映っているのは、カモフラージュ用にカメラに被せた葉かなにかだろうか。
すると一人の男が画面内に現れた。
左手に弓を持ち、矢筒を背負っている。
ルドルフだった。
カメラの存在には気付かずに足場の悪い道をゆっくりと歩いている。
次の瞬間、ルドルフが通り過ぎた木の影から人影が飛び出した。
白い仮面を付けて緑色のローブを頭まで覆うように被っているため、それが誰かはわからない。
そしてルドルフが驚いて後ろを振り向くよりも早く、仮面の人物は目の前の無防備な背中に向かって剣を振り下ろした。
矢筒の紐が切れて矢が地面に散らばる。
うつ伏せに倒れ込んだルドルフの体を仮面の人物は何度も蹴飛ばした。
立ち上がろうとすれば踏みつけ、僅かな抵抗すら許さずに、頭部と腹部を重点的に蹴り続ける。
映像に『数分後』のテロップが表示されて場面が飛ぶ。
仮面の人物はルドルフの体を仰向けにしていた。
つま先で頭を数回つついてもルドルフはピクリとも動かない。
そして鞘から剣を抜き、左胸をーー。
と、ここで映像が終わった。
「ご覧いただいたのは、とある番組の企画で森に設置された定点カメラが偶然捉えた映像です。犯人はルドルフさんを殺害した後、森の中へ姿を消しました」
「……まさか問題の答えが『わからない』なんてオチじゃないだろうな」
こんな映像が残っているなんて知らなかった。
だが、ここから得ることのできる情報は限りなくゼロに近い。
仮面の下の顔は一瞬たりとも映っておらず、かろうじてわかるのは目測の身長程度。
性別も、年齢も、髪型も、種族も、レベルも、スキルも、声色も、映像に映る人物を特定できるようなものは何も残されていない。
「その点はご心配なく。続いてこちらの映像をご覧ください」
イリナの言葉がいったいどういう意味なのか考える暇もなく、再びモニターに森の映像が映る。
さっきとは違う場所だ。
太く大きな木が密集しているためか薄暗く、より森の奥深くに設置されたカメラであることがわかる。
そこに再び白い仮面の人物が現れ、大木の根元に座り込んだ。
「……ちょっと待て」
周囲を見渡し誰もいないことを確認してから、剣に付着した血を丁寧に拭き取ってーー。
「あっ」
思い出した。
この後、何をしたのか。
「見るなああああああああああ!!!!!!」
その日は気温が高かった。
ただでさえ森の中はジメジメする。
そのうえ激しい動きをした直後だ。
衣服が肌にべっとりと張り付いて気持ち悪い。
暑い。
ひたすらに暑い。
視界が揺れる。
頭もボーッとする。
そうだ、汗を拭こう。
喉が渇いたから水も飲もう。
映像の中の俺は、清々しい気分でフードと仮面を外した。
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