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第六話.ルドルフの歪んだ欲望

第七問.魔術協会の認可を受けているモンスター用睡眠薬に共通する特徴はなに?


1:とても甘い

2:液体に溶かすと色が変わる

3:暗闇で発光する

4:着火剤になる



 おっと、またしてもラッキー問題だ。

 俺の運のステータス値はそこまで突出しているわけではないから、こんなところで幸運を無駄遣いしたくないんだけどな……。


「冒険者はただ闇雲にモンスターを狩ればいいというわけではありません。時には研究施設から脱走したモンスターや逃げ出したペットの保護など、無傷で確保する必要のある依頼も多々ございます。これらの高難易度の依頼をこなすためには、様々なアイテムの知識が大いに役立ちます」


 イリナの言う通り、冒険者とアイテムは切っても切り離せない密接な関係にある。


 冒険者ギルド、およびギルドの敷地内には、冒険者に必要なアイテムの専門店がいくつもある。

 主に装備のメンテナンス関連や消耗品を取り扱っている店が多いだろうか。

 といっても冒険者登録をしていなければ利用できないというわけではなく、例えば俺が現在拠点にしている街の冒険者ギルドでは、酒場の横で売られているつまみや保存食が一般人からの人気も高い。

 なかには魔術師が経営している店もあり、珍しいものだと人形魔術に使用する素体の各種パーツや、非魔術師でも簡易的な魔術を発動させることができる人工魔石などを購入することができる。


「それではミシェルさん、お答えください!」


 そしてもちろん、捕獲用の罠などで使用するための睡眠薬も置いてある。


「二番、液体に溶かすと青くなる」


「……」


「……」


「……」


 ……なるほど。

 やはり正解だと確信しているときにこういった引き伸ばし演出をされても、ただイラつくだけのようだ。

 俺はわざとらしくため息をついてみたが、ダイアンは顔色一つ変えない。


「……」


「……」


「…………」


「…………」


「…………正解です!」


 ああ、知っていたよ。


「認可を受けた魔法薬店や冒険者ギルド内で取り扱っているモンスター用の睡眠薬は、一般的に使用される睡眠薬よりも素早く確実に効果が表れるように、即効性のある薬草を中心に調合されています。そのため、飲食物に混ぜて悪用されるなどの事態を未然に防ぐため、水などの液体に溶かした際には青色や緑色といった見た目でわかりやすい色に変化する特殊な処理が施されています」


 これなあ……透明な液体なら一発でわかるのは当然として、元々色のついている飲み物に溶かしてもかなり変色するんだよなあ。

 まったく、本当にいい仕事をしてくれたものだ。


「冒険者として幅広いアイテムの知識が試される問題でした!さあ、この勢いのまま最後で駆け抜けられるのか!?八問目の問題はこちら!」



第八問.エマ・カーターさんがかつて好意を寄せていた人物は誰?


1:モニカ・コリンズ

2:ルドルフ・ヒューズ

3:ミシェル・アングレーム



「……何だこれは」


「おや、ミシェルさんどうかされましたか?」


「どうしてこんなものが問題になっている……?」


 問題自体は非常に簡単だ。

 簡単すぎて……忌まわしい記憶が蘇るほどに。


「どうしてと言われましても、これはクイズ番組ですからねえ。様々なジャンルから挑戦者に適した問題をスタッフが考案し、答えの裏付けをとって出題しているわけですから。どのような問題が出てきても不思議ではありません」


「話を逸らすな!どうしてこの俺が、こんなふざけた問題に答える必要があるのかと訊いているんだ!」


 俺の真っ当な言葉を聞くや否や、何故かダイアンはへらへらとした薄ら笑いを浮かべた。


「まあまあ、いいじゃないですかミシェルさん」


「……あ?」


「せっかくここまで頑張ってきたんですから。この問題に正解すれば、残り二問で100万ゴールド!八問目まで到達できる挑戦者はなかなかいないんですよ?」


「……」


 俺はそれ以上何も言わなかった。

 いや正確には、この無能な分からず屋には何を言っても時間の無駄だということが理解できた。

 使っている言語は同じでも会話が成り立たない頭のおかしい奴がこの世にごまんといることは、既に何度も経験して知っている。

 この男がこれまでどうして番組司会者を務めてこれたのか甚だ疑問に思うが……まあどうせコネか何かだろうな。


「それではミシェルさん!お答えください!」


「……二番、ルドルフ」


「正解です!」


「ふんっ……」


 あいつがよく俺に向けてきた、まるで邪魔者を見るかのような濁った目。

 ルドルフとエマが交際関係にあることに、俺はすぐに気付いていた。

 冒険者は常に危険と隣り合わせだ。

 パーティ内の男女が、ダンジョン攻略やモンスターとの戦闘を続ける日々を共にするにつれ、そういった関係性になるのはさほど珍しいことではない。

 しかしルドルフの歪んだ欲望は、一人の女を手に入れただけで満足するものではなかった。

 次第にパーティ内に他の男がいることを鬱陶しく感じるようになり、適当な言いがかりをつけて邪魔者である俺を追放しやがった。

 エマを横取りされないために、あわよくばモニカも自分のものにするために。

 だが、俺はこの二人を被害者とは思わない。

 臆病者の策略に加担した時点で同罪だ。


 そしてルドルフは死んだ。

 当然の報いだ。


「さて、パーティの解散や離脱する理由のうち、男女関係に起因するものが最も多いと言われています。まあ仲間内でそういったアレがあると、ドロドロした関係に発展してしまった場合は他のメンバーは気まずいでしょうからねえ。ミシェルさんも、そういった事には気を使っていましたか?」


「……別にどうでもいいことだ。誰が誰と付き合おうが俺には関係ない」


「それもそうですねえ。さすがS級冒険者は心構えがしっかりとしてますねえ」


 ダイアンが再びへらへらとした笑みを浮かべる。

 明らかに俺を馬鹿にしている表情だ。

 これが番組じゃなければ顔面に蹴りをお見舞いしていたところだ。

 やれやれ、ビレテ業界に入ったらこういうムカつく奴がたくさんいるんだろうなあ。


「さてミシェルさん。100万ゴールド獲得まで残り二問となりました!最後まで油断せず、気を引き締めていきましょう!九問目はこちら!」

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