第三話.いきなり告知をしてみた
第一問.自身のレベルや能力値、所持スキルといったステータス情報を可視化することができる魔道具「ウロナの石版」の正しい使用方法は?
1:石板の前に立って「ステータスオープン」と言う
2:石板の表面に手のひらで触れる
モニターに映し出された問題文を見た途端、身構えていた肩の力が抜ける。
な、なんだ、このあまりにも簡単な問題は。
まあ一問目だしこんなものか……。
「さあどうでしょうか、まずは一問目!冒険者登録を行う際や、ギルドカードの更新に必要な魔道具に関する問題です!」
ダイアンの言葉に俺は余裕の笑みを浮かべた。
「これは簡単ですね」
「おや、本当ですか?油断は命取りですよ?」
「まあ実際に使ったことありますし。答えは二番の『石板の表面に手のひらで触れる』で」
「よろしいですか?」
「間違いないです」
「二番で、本当に、よろしい、ですか?」
「えっ、だからそう言ってるでしょう」
この人、少ししつこいなあ……。
すると突然「ズンっ」という低い効果音が鳴り、スタジオの照明が薄暗くなった。
モニター上では俺が選んだ二番の選択肢がオレンジ色に点灯している。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………?」
な、長い……。
「……」
「……」
「………………正解!」
溜めに溜めたダイアンのコールと同時に明るい音楽が流れる。
なんだ今の無駄な間は……まあ演出の一環か。
よくわからないが、最近はこういうのが視聴者にウケるんだろうか。
「ミシェルさん、見事一問目正解!幸先のいいスタートとなりました!」
「こちらの各冒険者ギルドに必ず三つ以上配備されているウロナの石板ですが、ステータス測定の際には手のひらで数秒間触れるだけでよく、指定されたキーワードなどを言う必要は特にありません」
イリナの補足説明が入り、実際に石板を使用している解説映像が流れ始める。
それを見ながら俺は昔のことを思い返していた。
懐かしいなあ。
初めて冒険者登録を行ったとき、俺はまだレベルが低くて能力値も平凡、そして【鑑定】というハズレスキルを持ったどこにでもいるただの一般人だった。
それが【覇者の心眼SSS+】の覚醒によるボーナス経験値を得たことで一気にレベルアップし、これまでの冒険者活動では考えられないほどの順調さで流れるようにS級に認定された。
人生何が起こるかわからないとはよく言ったものだとつくづく実感する。
当初は俺がS級であることを認められない面倒くさい連中、主にB級やC級の奴らが難癖をつけるために絡んでくることが時々あったが、もちろん全員余裕で返り討ちにしてやった。
ああいう頭の悪い奴らには実力差をわからせてやるのが最も手っ取り早いうえに、何度も相手をしなくて済むからだ。
「この調子でどんどん参りましょう!続いての問題はこちら!」
第二問. 同じ時代に同じ能力を持つ者が二人以上存在しないスキル、と定義されているのは?
1:エクストラスキル
2:マルチスキル
3:ユニークスキル
4:パッシブスキル
「二問目は十歳になった際、一人一つずつ発現するスキルに関する問題です。日常会話などでは特に区別せずに一括して『スキル』と呼ぶことが多いため、細かい分類についてはあまり馴染みのない方が多いかもしれません」
ふむ、確かに言われてみれば、俺も普段の生活では単に「スキル」としか言っていない気がする。
別に分類を知らなくても自分のスキル使用に支障が出ることはほとんどないし、分類を知ったからといってスキルの効果が強くなるわけでもない。
とはいえ、この問題は俺にとってラッキー問題だ。
「まあこれも簡単な問題です。この調子だとあっという間に300万ゴールド貰えそうですね」
「おっと、余裕の表情を見せるミシェルさん。果たしてこの余裕はいつまで続くのでしょうか!?」
ダイアンの返答に、俺は少しだけイラッとした。
やっぱりこの司会者あまり好きじゃないな。
番組を盛り上げるためにワザとやっているのだろうが、だからといって面と向かって馬鹿にされるのは気分が悪い。
俺はそのことを訴えるような視線をダイアンに向けてみたものの、気づいていないのか、それともあえて無視しているのか、特に反応のようなものは見られなかった。
「それでは解答をどうぞ!」
俺は軽くため息をつきながら解答を口にする。
「三番、ユニークスキル」
「……正解!」
ほう、今度はあっさり言うんだな。
まあさすがに毎回時間のかかるさっきの演出をやっていたらテンポが悪すぎるからな。
「冒険者ギルドが定めるスキル分類規格においては、エクストラスキルは新たな能力を発現して名称が変化したスキル、パッシブスキルは身体能力向上系や耐性系などの常に効力が発揮されているスキルと定義されています。マルチスキルは、一人が複数のスキルを持っている状態を呼称する言葉なので、厳密にはマルチスキルという種類のスキルは存在しません」
「つまり【鑑定】スキルが覚醒し、現状ミシェルさんだけが保持している【覇者の心眼SSS+】は、エクストラスキルであると同時にユニークスキルでもあるという非常に珍しいスキルなわけですね!いやあ憧れちゃうなあ!」
これまでのギルドの記録によると、【鑑定】から派生するエクストラスキルは【鑑定・改】と【解析】の二種類のみが確認されており、どちらも元スキルである【鑑定】から大きく逸脱しない延長線上の能力となっているそうだ。
しかし、どういうわけか俺の【鑑定】はこのどちらにも変化せず、【覇者の心眼SSS+】という全くの別物といっていい戦闘スキルになった。
そしてこのスキルは前例のなく、他に所有者が存在しないユニークスキルでもあったため、現状【覇者の心眼SSS+】は二つの性質を持つ唯一無二のスキルとなっているわけだ。
新しいスキル分類として定義される可能性もあると俺は考えている。
「さてミシェルさん、【覇者の心眼SSS+】は、いったいどのようなスキルなのでしょうか?」
「えーと、そうですね……」
俺はできるだけ簡潔にスキル説明をするために、どこから話せばいいのか考える。
一般的なスキルと違って『覇者の心眼SSS+】には戦闘のための様々な効果が備わっている。
実際にスキルを使って戦う様子を見せるのが手っ取り早いのだが……と、俺はいいことを思いついた。
「ちょっと口で説明するのは難しいですね。次の闘技大会に出場する予定なので、そこで自分の目で実際に見るのが一番分かりやすいと思います」
これはいわゆる『告知』というやつだ。
有名タレントはよくこうやって、自分の出演している演劇やドラマなどの宣伝を番組中に行っている。
人気番組の生放送、そして出演しているのは今最も話題になっているS級冒険者、闘技大会の宣伝効果はバッチリだろう。
「なるほどー、ありがとうございます!皆様も是非闘技場に足を運んでみてはいかがでしょうか?冒険者の戦いを間近で見る機会なんてあまりないですからねえ。迫力満点で一見の価値ありですよ!」
ふぅ、これで早くも二問が終了した。
ここまでの問題の難易度はE級レベル、なんなら冒険者でなくても答えられる。
序盤は基礎の基礎で様子見といったところか。
だが、問題が進むにつれて難易度が徐々に高くなっていくと聞いている。
S級の俺がしょうもないところで間違えて恥を晒すことだけは絶対に避けないといけないな。
「続いて三問目です!問題はこちら!」
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