とある神使の呟き
「きょーーーーーも平和だな」
呟かれた主の言葉はここ最近良く聞くもの。
平和疲れしたかのように、ごろりと転がりながら欠伸をなさる。
「平和は良いことかと思われますが…」
「そうは言っても平和すぎるんだ。誰も来なくてつまらん。いつもなら1人2人、童がいるだろう。最近はとんと、外で遊ぶ童すら見ないじゃないか」
それは確かに。いつもなら人間の子供達が学舎から帰ると必ずどこかで遊んでいる声がしていたものだ。
最近はそれがとんと少ない。
「なんでもヒトの世界では流行り病が広まっているそうです」
「病~?それなら尚のこと私を頼るべきじゃないのか!?何で誰も頼ってこない!?」
稲荷神は疫病にも効く神とされている。まぁ、この小さなお社ではそれを大々的に願うものはいないだろうが……。
「……はて、今日は何曜日だったか…」
「今日は土曜日です、主…」
「土曜……あの娘は今日も来ないのか…」
少し寂しげに瞳を伏せてそう呟く主は、良く来る1人の娘を待っている。最近は忙しいのか、なかなか来ぬその娘に、主が抱いている感情がどういったものなのか、長い年月、人間というものを見てきた我らには分からなくもない…
「…主、まだ明日もありますよ、明日は日曜ですし、来るのではないですか?」
「……ふん、別に待ってなどいないがな!!」
けっ!と言ってまたごろんとふてたように寝転がる主に相方と目配せして小さく息を吐く。
空を見上げると西に黒い雲……あぁ、夕立が来そうだな…




