♯1:第一章 サウライナウィンド地方編【サザンクロス国将軍登場】
※全本編無断転載・盗作は断固としてご遠慮ください。
※素人作品なので矛盾は作らないように努力はしますが、大目に見てもらえると幸いです。
※掲載後の内容を場合によっては追加変更・削除をすることもあります。ご了承ください。
※誤字・脱字・語彙力・文法力が皆無に等しいかもしれません。スルーもあると思いますが見つけ次第添削します。
※周1ペースで出していくつもりではいますが、場合や状況によっては投稿休載や延期があったりするのでご了承ください。
以上の注意を守っていただき、理解していただけると心強いです。いい作品が出来るように頑張ります!
やがて化学は文明の域を凌駕した。
「全体、ならえっ!!」
同時に魔術は人智の域を超越した。
「我らが将軍に敬礼ぇっ!!」
しかしそれは、争いが絶えないことを意味する。
「全員、直れ!」
「「イェッサー」」
あれがサザンクロス国を統べる将軍。
優雅に、気高く、颯爽とした姿勢。
「例の物をここへ——―」
行かなければ――、玉座の間まで、今日完成した『例のモノ』を。
「将軍、遂に出来上がりまし――」
持っていこうとふとした拍子に少年の足がもつれ。
「たっ!?」
の、タイミングで手に持っていた例のものが手から離れ、そのまま前にいる将軍の前へと飛ばされると同時に周囲の軍隊たちが思わず声を上げて動揺する。
「い、たた……」
「シビル様……! 将軍の御前ですよ!」
「へ、わ、はわっ……はわあわわぁっ!!」
突然のハプニングで自分の置かれた状況に気づき、今の目の前の状態を怯えた目で確認する。
「……」
「ア、アルバ……!?」
「静まれ」
たったその一言で動揺していた隊員たちの息が止まったかのように一斉に静まった。
「出来たみたいだな、俺に相応しい『装飾』が今日完成したと聞いてこの日の装着式を迎えたというわけだ」
彼がはめている黒い手袋の手には躓いて投げ出された『例のモノ』が無事に彼の掌の中に行き届き、上に掲げて魅入っていた。
「おい貴様。いつまで俺の目の前で無様に倒れ伏せているつもりだ腑抜け!」
「はっ、ハヒィ……も、もも、申し訳ございません!!」
「ふん。これを俺に献上することで貴様のその失態は見逃してやる。次にやったら厳しい仕置きだ」
大事な儀式ではあったがこの少年の場合、今回は注意警告で済みそのまま授与式を続行した。
「……どうぞ、お納め下さいませ。こちらは将軍の御希望通りに資源民、加工民、開発民総出で完成させました。サザンクロス国では希少種であります宝石「アウィナイト」で装飾し、象徴でもある星型に彫られた十字架五つの繋がる指輪『五連指輪』に御座います」
「この国の豊富な資源と輝石で生成されただけあって美しい輝きを放っている」
資源。それは国を豊かにする善であれば、人を狂わせ戦争へと導く悪でもある。
錬成装飾に魅入る彼もまたその一人。
「貴様の高度な技術により生み出されたこのリング。この俺に素晴らしい黒曜石を施した錬成装飾を献上することはこの国での義務。全うし尽くしたことには栄誉を讃える」
「は、恐れ、入ります……アルバート=ガリア=イージス将軍……!」
「ただそれだけだ。それ以外の何者でもない。それ以外の価値はない。貴様のような弱者は、自惚れることがないように精進を尽くせ」
各国それぞれに多種多様の資源が取れ、それを元に国を治め、生活に用い、戦いへと投与し、統一する「錬合将軍」たちがいた。
「貴様の価値は魔化錬成術の献上、そして忠誠を誓うとして俺の「盾」である事だということを忘れるな」
「……はい、仰せのまま、に……」
この国を統べる時の将軍サザンクロス国の黒の要塞城クロノワールクローム城を治める。
アルバート=ガリア=イージス将軍。
全身黒曜色の軍服と片マントを纏い、胸元には国章である「八角星」。軍帽から垣間見える銀色の短髪ではあるが前髪の特徴に首下まである二つの触前髪が揺れる。その合間から獲物を捕らえる狼のように鋭く吊り上がった琥珀色の目付きは敵味方問わず恐れ射抜く眼力に逆らえない僕。
主従を表すように覚束なく、弱々しく跪く。
その威厳さに、威圧さに、凄まじい覇気に。
僕はおろか、誰も彼に意見し、口出しするものはいない。
「ここにいる貴様らも同じ事だ! サザンクロス国軍事国家繁栄の為に、まずはこのサウライナウィンド地方に巣食う各国の将軍を一掃し、我が軍が絶対的統一を図る! 弱き者は即座に切り捨てる! 貴様ら、怠ることなく軍事繁栄に一層精進せよ!!」
「「「イェッサー!!」」」
彼の理念、独裁国家として君臨する強者。
それに従う弱者たち。
異なる国、異なる価値観、異なる種族、異なる情勢が地方にひしめき合う。
化学と魔術の理念を元に繋がれていない五角星の錬成陣で形成された『コア』を生成し、将軍への力を授受出来る希少で稀代の『魔化錬成師』の一人である僕。
シビル=ノワール=フォルシュタイン。
別名「将軍の盾」とも呼ばれている。
「ふぁ、あぁ……もう、朝。今日は……一応、非番の日か……」
魔化錬成術が込められた錬成装飾の装着式を終えた次の日。
僕の自室で黒曜石に覆われた壁には必要最低限の机とベッドが置いているだけで殺風景で、最悪刑務所の独房と変わらない重苦しい自室。
寝間着から自室用に支給された指定のシャツと軍服という比較的ラフなものに着替え、この部屋にはユニット式の洗面所が付いている為に洗顔をして鏡で外ハネボブヘアーに込め髪辺りの姫髪部分を内側シャギーにして身だしなみを整えてからそのままベッドに腰掛けてため息をつきながら遠い目をしていた。過去の境遇を思い返しながら、昨日のアルバート将軍の言葉を思い出し、深く重い溜め息を吐く。
「……昨日のことを思い返しても、授与を許可してしまったことを悔いても仕方がない」
僕はこの国に匿われている身の上。
だが、犯罪者でもなければ他国の敵というわけでもない。
しかし、匿われているからこそ規律に従わざるを得なかった。
ただ一つ違っていたのは、他の人と比べて僕には多少の自由があること。
軍事規律が厳しいことで有名なこの国でも、僕は特殊な身分によって最低限の自由は許されている。
余計なことをするや反旗を翻さない限りは。
「何もない日だったら本でも読んでゆっくりしようかな」
本を読むのが趣味で、ここにも数冊の本が棚にある。日課でもある僕は制限される事なく自由な時間に好きな時にこうしてリフレッシュすることが出来る。僕が何気にとったのは『各国共通世論白書』の本を手に取り、静かに読書を始めた。
『人が化学と魔術の発展と力の具現化に成功したことで、自らの治める国に自国にはない力の源のルースと軍事運用の為の資源を求めて攻め落とし合う戦争は未だ衰えることなく続いている。化学を扱える者を「化学力者」、魔術を扱える者を「魔能力者」と呼び、その能力は扱える人によって作り方は様々で日常生活用品から装飾まで強弱様々に力を込めて作ることが出来る。地方や各国での軍事体制や規律によって様々ではあるが、両能力を極めた頂点に君臨する者を「将軍」として認めている。しかし、元々相反する「化学」と「魔術」を扱える者は世界広しと言えど、将軍の身分でもそう安易ではない。しかし、長年の研究と探究の地道な進歩によって相反する双方の力を合わせることにより、文明の域を凌駕し、人智を超越する「コア」を生成し装飾に込めることに自らが持つ能力が最大限に引き出せる存在を発見した。その存在を希少人種を「魔化錬成師」と呼ぶ。ほんの一握りしかいないとされ、類稀な継承者が滅ぶことを恐れているために「魔化錬成師」のいる国や地方にはなかなか手を出せないといわれる』
「はぁ……数年前、大規模な『例の大戦』の影響で逃亡して、必死に逃げ惑っていたその途中でこの国の将軍に半ば強引に匿われてから更に数年。魔化錬成師の能力を見込まれてどうにか生活はしていけるけど……こんなのが毎日続くのか……だけど、帰る所はどこにもないし。ただひたすらに不特定の場所を彷徨い歩くよりかはマシ、なのかな……」
僕は『魔化錬成師』の才能に恵まれただけで、将軍から翻弄される人生を強いられていた。
武力の根源をもたらす魔化錬成術の根源である「コア」を創生し生成される腕の立つ「魔化錬成師」は国の命運総てが左右されると言っても過言ではない。この本にはそれらを総称して呼ばれているらしい。
僕の身分は謂わば将軍たちの立役者であり、縁の下の力持ち。
『国は侵せど、術師滅すべからず』
と、書には記され、各地方全世界で言い伝えられているほどに重宝されている存在という風に伝えられているらしい。
『貴様の価値はこの国への献上、忠誠心、そして俺の「盾」である事だということを忘れるな』
「……僕は将軍の「盾」……こうなる運命なのだと受け入れるしか、ないのかな……?」
「おい」
「ッビヒィっ!?」
ドスの聞いた声が聞こえ、思わず変な声を反射的に出したことによって現実に引き戻される。
アルバート将軍が急に僕のいる部屋まで押しかけてきたのである。
「いちいち下賤な悲鳴をあげるな、耳障りだ。さっさと着替えろ」
「え、は、はひぃ、あの、お出掛けですか? 視察ですか?」
「修行の時間だ。今日は最近出来上がったこの錬成装飾の使い勝手を試したい。「コア」を生成した貴様も試作確認が必要だ。ついてこい!」
「……あ、いや、あのぅ……」
「グズグズするな。一分、否、三十秒で支度しろ。待つのが性に合わないのは戦闘無知の貴様でもわかるだろ」
「す、すぐ支度しますぅっ!!」
「しょ、将軍、お、お待たせ致し、いだぁっっ!!」
部屋から出てきて前置きなしの鉄拳制裁を食らうと同時に脳震盪が起こり、思わず頭を抱えて前屈みになる。
「……五十五秒。この鈍間が!」
時計を付けてるわけでもないのに、体内時計が異常に正確だった。ここまでくると浅い溜め息しか出てこない。それどころか常に緊張が走って心臓が早鐘を打って動悸を起こしそうだ。
アルバート将軍の急な来訪。
この国に来てからはイヤと言うほど味わっているにも関わらず、急に部屋へ訪れて迫力と威厳のある声に、反射的に恐怖の声が溢れてしまう。
アルバート将軍が僕の部屋に突然訪れることは日常茶飯事。こういう時には大体が、いや、ほぼ高確率で嫌な予感は当たる。
「うっく、も、申し訳っ……!」
「ふん、ここでぐずぐずするのも性に合わない。さっさとこい腑抜け!」
罵声を浴びされても言い返せず無言の了承――。
誘われればもちろん、将軍相手には逆らえないのが絶対暗黙のルール。寧ろ、この男に逆らう人がいるとすれば他国に権力を持ち、一国を君臨する将軍くらいだろう。
謝罪を言い終わる前にアルバートは愚痴を一言吐き捨て漆黒の片マントを翻し、後についてこいと言わんばかりに進んでいく。僕はその後に慌ててついていった。
サウライナウィンド地方に属する国。
サザンクロス国。
水源に恵まれ、豊かで美しい自然に囲まれている。
その中で圧感に聳え立つのはアルバート将軍が政権を握り根城にしている要塞城、クロノワールクローム城。シンボルマークは八角形の星形を模して旗に掲げている。そして城の形状も八角形に造られている。アルバート将軍の胸辺りにもそのシンボルが付けられている。
異様なほどに全体が黒曜石に覆われ、外や中、廊下左右天井床の下には大小様々なポンプが全体的に張り巡らされており、想像付きやすく言うのであればコンビナート一等工業地帯のような堅牢を漂わせる異様な構造が逆に将軍の威厳と尊厳を際立たせるような城である。
面積およそ三百九十平方キロメートルの土地と島を所有する。人口およそ七十三万人。兵力およそ二十万人。資源民およそ十万人。地下水脈地帯と高原地帯で形成され、兵力を鍛える為の広大な修行施設を保有する。
気候は高温多湿で冬が訪れない万年常夏の国。独特の蒸し暑さがたまに鬱陶しくなる時もあるが、緑あふれる高原地帯は住民たちでも軍隊の人たちでも避暑地として訪れる憩いの場所。
この国の資源となるのはルースのアウィナイト。現在の輸入品は銀や鉄などの加工物を少量。輸出品も様々であるが、主は豊富な地下水源を所有しているために戦争、紛争、内乱の水不足などに飲料水、生活用水、田畑などの水源供給などを高値で取り引きし、国の生活の大半を賄っている珍しい土地。
他にも事細かに多少の資源なども発掘してあるがそこは割愛するとして、比較的にこの国の特徴として豊富な水があるということで恵まれていると資料書ではそう書いてあったけど……。
『あ、暑い……服が黒色であることは諦めるからせめて半袖にして欲しいよぅ……』
戦争がいつ起こるか分からない対策で隊服は長袖長ズボンは必須と軍事規律が決まっている。しかし、この暑さと湿気に毎日参っている自分がいる。
「おい、ここまで来てまさかバテているということはないだろうな?」
「ふぁ、は、はい、大丈夫……です!」
本当は水をがぶ飲みしたいぐらいに暑いです!
と、いう弱音を発することも叶わない。
この国のトップであり、厳格さもあるアルバートが露出というものを赦すまじといている。
軍事規律を破れば他の軍隊は懲罰必須、そして特別な身分を持つ僕でも仕置きは免れないから。
そういった弱音や泣き言を赦さず好まない性分、何よりも弱いものが心底嫌いからだ。
そして流石ともいうべきでもあり、やはりずっとこの環境で過ごし慣れているアルバート将軍は黒ずくめの黒曜軍服でも顔色一つ変えずに悠々と修行場へ向かう。もちろん、僕の心情など御構い無しに。
「あの、お言葉で御座いますが……本日、他の兵士の方々はご一緒では……?」
「先程の会話で聞いてなかったか? 今日は貴様が生成した「コア」の威力を試すと言っただろ、この腑抜け!」
「も、もも、申し訳ございません!!」
強い日差しと湿気を含んだ暑さと戦いながら程よい丘の上の草原へと到着した。ここまで来るまでに暑さでやられそうな心境を無理して奮い立たせようとする。この後徹底的に扱かれることを安易に予想出来て冷や汗が止まらず、常夏の国であるにも関わらず悪寒が走る。
「先程の待たせた遅延に加えて俺が納得行くまで貴様にも錬成装飾の試験台になってもらうことにもなる」
「ひょいえぇっ?!」
「まあ、戦歴のカケラもない貴様などを修行の相手に足らぬことなどたかが知れてるがな。それならば雑魚兵士百人束になってかかって来た方が幾分かマシだ」
「う……は、い……」
こういった、人の心を微塵も考えない辛辣な言葉を放つのも有名であり、軍隊では当たり前の光景であるが、耐性のない僕にはいちいち堪えてしまう。
これも彼にとっては当たり前のことでもあるが、いちいち僕を翻弄させることでもあった。
「ダラダラと話し込んでいるのも時間が惜しい。早速……うむ、あの岩がいい」
東の方向に高原地帯から突出した四メートル級の巨大な岩が目に入る。するとアルバート将軍はいいものを見つけたかのように勝手に近づいていくと仁王立ちをしたまま深呼吸をする。
『五連指輪』を装着し、拳を鳴らし構えの姿勢を取る。
ただそれだけでも迫力と威厳が伝わり、気迫に圧倒されそうになるのをぐっと堪えながら僕は様子を見守るしかない。
「——ふっ!!」
彼の拳の速度は凡人の目には追い付けないもので、空を切る音が辺りに聞こえる程の威力を持っていたのだが、肩透かしだったのかと思わんばかりに拳自体に岩が当たっていなかった。
「あ……!?」
「ふむ……悪くない。魔化錬成師の「コア」の威力はイツワリでもないことを、今この時を以て実感させてもらったよ」
たった今目の前にあった四メートル級の岩がいつのまにか破壊——いや、岩の瓦礫ごと石として残る事もなく、総て無くなり切っており、岩そのものの存在がなくなっていた。
「錬成装飾を装着してまだ日にちは経っていない筈なのに……魔化錬成術の「コア」の性質をあそこまで知り尽くしているなんて……」
やはり、戦においては才ある将軍。武術に長けた実力者。
鉱物などに含まれる物や普段の大気に含まれる化学的要素を含むものを融合して造られるものは更なる豊かさ目指すことが出来る上に、他国よりも更に驚異的になるために原産物などを利用して戦う。「魔化術」を保護し、シェルターの役割を果たす輝石を「ルース」と呼ばれている。そこに僕が錬成する力の核となる「コア」として融合させて錬成装飾は完成する。
その脅威物理的、物資的なものを使わずして神の力を持つほどの魔化錬成術の力を使いこなせることが可能。
でもこの脅威なる力は大概が扱いづらく、使いこなすにはそれと同等に見合う必要がある。錬合将軍たちはこの力を使いこなせれば各地方を、いや世を占めることも容易いとされ、名誉であり脅威にもなる。
アルバート将軍は特異な魔化錬成術をあっという間に使いこなしている。
「よし、これから早速この錬成装飾の可能性を高めさせる為に貴様にこの俺から直々に伝授乞うことを特別に許そう。付き合え」
「ひ、は、はいぃ……!」
僕は彼の脅威からは逃れられずにいた。
僕が弱いばかりに……。
「はぁ……はぁ……っ!! し、死ぬ……っ!!」
修行にずっと付き合わされていたのもそうだが、一番体力と気力を奪ったのがサザンクロス特有の強い日差しと蒸し暑さ。しかも着用している軍服が黒ということもあって暑さ倍増し。アルバート将軍は未だに魔化錬成術を完璧に使いこなすために修行中で僕は既に見放されている状態だったので自動的に休息時間に移行し、脱水症状になりそうなぐらいにヘロヘロである。
「そ、想像以上にこき使われたぁ……やっぱり……将軍の底なしのような、体力に、ついて、いけな……み、み、み……!」
「あの、こんにちは」
どこからともなく現れた見知らぬ青年。
「うひゃあ! え? あ、ど、どうも!」
「まさかもしかしてひょっとして、魔化錬成師の使い手のシビル様ですよね! うわぁ、本物だ! こんなところでまさかお会いできるなんて、光栄で嬉しい限りです!」
「え、そう、ですか? ところで貴方は?」
「あ、突然お声かけして申し訳ありません。私はサザンクロス国資源民出身のクロッツと申します」
「あ、資源民出身なのですね。軍隊では見かけない顔だと思っていました。涼みにでもこられたんですか?」
「そんなところです」
「資源民」というのは、その名の通り資源を発掘したり採取したり軍へ送ったり、国外へ売り出すために輸出したり、各住民へと運んだりなど、多岐に渡って活動する民のことで、国には欠かせない重要住民区分の一つ。各国には「区民制度」というものが存在しており、軍事制度や国の情勢によっては異なったり例外もあったりするが、将軍として統一する一つの名目として必ず配置するよう各国共通として規律として定められているのは資料で見たことがある。
「我らが将軍のお膝元で仕えていらっしゃるお方ですから素晴らしいですよね! 今ではこの国の誇りです!」
「い、いえ、そんなとんでもない、です!」
魔化錬成師として才能があるといっても楽なものでもない。
その身分だけで利用されるだけされて、扱き使うだけ使われ、逆らったらどうなるか。
そして、僕にはそれ以外の特別な才能があるわけでもない。
アルバート将軍のように特筆の権力があるわけでもない見た目は普通、もしくはそれ以下。
兵士のような力を持ちあわせる程強いわけでもない。
無理やり修行でいたぶられ、強さに委縮してしまった形で「コア」を生成し、成果を上げても褒められたことがない状況が巡る脳内は謙虚でありつつも満更でもない反応が混じって微妙な反応になった。そんな募る思いが溜め息となって不意に出てきてしまった。
「はぁ……」
「この国は万年暑いでしょう? あ、よろしかったら、こちらを差し上げます。この国で生産されている新鮮な地下水源から抽出され、更にそれを研究し開発した水素水です。ご堪能ください!」
「あ、それはこの国では有名ですよね。資源民の間で開発されたただの水とはひと味違う水素水ですか! 飲んでみたいなと興味はあったんですよ!」
「修行の差し入れでございます。特別にどうぞお一つお飲みください」
「丁度喉乾いてたんです! ありがとうございます!」
見た目はなんら変わりのない水ではあるが、この国の水は本当に恵まれている。何しろ軍隊、市民の生活用水の総ては豊富な地下水源によって支えられている。戦争で水不足な国もあり、あっても濁って飲めないなんてことはこの世の中珍しいものではない。この国に限っては要塞城に限らず、ちゃんと民間人のところまで飲み水として充分に確保出来る。軍事及び、普段から生活していくためにはどんな金銀財宝や大量の資源よりも貴重で必要不可欠である。
「っはぁ! 美味しい! 普通の水と違って柔らかくて飲みやすい!」
「よろしゅうございました。近々大量生産予定のものなのですが、今日はシビル様だけに特別です」
「こんな僕なんかに、なんだか申し訳、あ、れ……?」
「どうか、なさい、まして……」
「れれ……なんだか、ねむ……く……っ……」
意識と相手の声が朦朧と霞んでいく。そしてふと、僕の目の前は暗闇になった。
「……こちらコードネーム:C・R・O・T・U。約数年に渡り、例の重要人物との接触及び睡眠投与に成功。これより移行作戦の段階へと実行します」
♯2へ
久しぶりの久しぶりのお久しぶりです。
恐らく約半年ぶりの投稿かと思われます。こちら完全新作です。
前の作品全く全然終わっていないのに既に別の作品書いちゃってますW
ハイファンタジーというくくりでやっていますがその中にある現実味を感じさせる物語に仕上がっています。それが読者に伝わるといいなと思っています。最後までいけるようがんばります!
投稿は随時していきますが日にちは未定まちまちでお送りします。
新作を暖かい目で見てもらえると幸いです☆彡