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おとうさんへ

お父さんの誕生日プレゼントを。

  【お父さんへ】


「お誕生日おめでとう。」


「あ。あぁ。ありがとう、梨桜」


 今日は勤労感謝の日。

お父さんの誕生日だ。私は用意していたプレゼントを渡す。


なんだか(もう)ちょっとウルウルしながら包装を解いていく

お父さん。


「おぉ!、格好いいな!

 なんていうか、バッチリ好みすぎる。

 ・・・

 あと!、これは、手作りか?」


「えへへ」


「ありがとう。大事にする。」


もうお父さんは大泣きしている。


「な~に~、お父さん、大げさすぎだって!」


「年取ると、涙腺弱くなるんだよ!」


「何言ってるの!、まだやっと39歳になったばかりでしょ。

 私のお兄さんでも通るよ!」


「あははっ、じゃぁ今度から『お兄ちゃん』って呼んでくれ。」


「アハッ!、もう!、お父さんってそういう属性だったの?」


「お前、『属性』とか、いつそんな用語を覚えたんだ。」


「それはまぁ、お父さんの影響ですよ。」

 ・・・といって、ラノベがつまった本棚を指す。


「まいったな・・・」


そう言ってお父さんは照れながら泣き笑いしている。


 それから私は、最近凝り気味だというので、肩から背中にか

けて指圧マッサージをしてあげた。


これもやり方やコツはスマホで簡単に調べられた。コリコリ

しているところをもみほぐして血行を良くしていくのだそう

だ。


腰のあたりを押しているときは、『んっーーん・・・』とちょ

っと痛そうにしていた。


押されて痛いところが、体の悪いところだという。


このへんは、肝臓かな・・・

(この肝臓め~~、おとなしく柔らかくなれ~~)


そんな感じで、1時間ちょっとくらい揉んであげていると、

いつの間にかお父さんは眠ってしまっている。


私はお父さんを起さないように、昼食の下ごしらえに入る。

今日は、誕生日なので、ステーキを用意している。

もちろん、ちょっとだけ豪華なお肉だ。

ちゃんとラッピングして冷蔵庫に入れておいたので、ぱっと見

はわからないだろう。(ふふっ)


付け合わせは野菜サラダと、じゃがバターと、ボイルキャロ

ット。


うん。彩もなかなかだ。



  【伸朋】


娘からのプレゼントというのはこんなにも嬉しいものなのか。


 「お誕生日おめでとう」


 そう言って、梨桜は可愛くラッピングされたプレゼントを二

つ私に差し出す。


 ゆっくりと一つ目の包みを開けていくと、そこにはネクタイ。

『ニナ・リッチ』だ。

こんな高いものを・・・


 もう一つの包みを開けると、そこには手編みと思われるマフ

ラー。


いつの間に編んでいたのだろう・・・全く気付かなかった。


「ありがとう。だいじにする。」


 出てくる涙は止めようがなく、梨桜に茶化される。


この子と出会ってから、どうも涙もろくて仕方がない。



  【紗奏と美沙と、私のうわさ】


 お父さんと豪華なお昼を食べて、お出かけの準備をする。

今日はカラッと晴れた良い天気だ。


 久しぶりにお気に入りのカフェで待ち合わせ。

私は早めに来て窓側の席を確保し、紗奏を待つ。


 待つのが好きな私はたいてい早めに来る。

 

 そして、窓の外から行きかう人を眺めていると、いつもちょ

っとしたドラマがある。今日は高校生くらいのカップルに、別

の娘が走り寄って来たかと思うと、突然男子の頬をひっぱたい

て去っていった。


 ・・・取り残された二人は修羅場のようになっている。


 青春だなぁ・・・


 ・・・て!、いくつだよ私!(笑)


 と、その時向こうから紗奏が歩いてくるのが見えた。

横には美沙もいて、偶然会ったようでもない。

今日は3人でお茶なのかな?


「おまたせー」

「ん~ん、ぜんぜん。

 今日は美沙も一緒なんだ。」


「うん。初めてだよねー。」


 私たち3人は思い思いのセットを手に確保してある窓側のテ

ーブルに着く。


「一度美沙と一緒しようって思ってたんだけどね、

 梨桜もバタバタしてたから、落ち着くの待ってたんだ。」


このちょっとした心遣いがありがたい。


「どう?最近?」

そう、美沙は私に聞いてきた。

こうして学校の外で話すのは初めてかもしれない。


「うん。夏休みにいろいろあったけど、やっと日常かな。」


「夏休み明けから急に二人仲良くなったけど、なにかあった

 ん?」


私は紗奏にちょっと目をむける。

・・・私のことはまだ何も話してないんだろうな。そう思った。


「長くなるけどいい?」


「うん、いいよ。お母さんが亡くなったとこまでは聞いた。」


 それから私は、今までのいきさつを丁寧に話した。


    母子家庭で育ったこと。

    それを内緒にしてきたこと。

    お父さんがいると知らされたこと。

    そして私を疑わずに受け入れてくれたこと。

    すごく大事にしてもらっていること。

    偶然町で紗奏に会っていろいろ話したこと。

    そして、三人で海に行ったこと。


「えっ?それはまたどういう流れでよ?」


美沙は3人で海に行ったことにめちゃめちゃびっくりしてい

た。

それはそうか、1学期まではそんな仲じゃなかったのだから。


「うちのピンチを梨桜パパに助けてもらってね、

 その流れで海にも誘ってもらったのさ。」


「えっ?それも超びっくりなんだけど?」


「まぁ、それはウチの家庭の事情というやつでさ。

 簡単に言うと親の会社がやばかった。

 正直もうだめかと思った。

             ・・・うん。

 で、助けて貰っちゃったわけですよ。」


「梨桜の父親ってそういう仕事?」

「ん~ん、普通の会社員。

 でもなんかいろいろ知ってたりする。」


「へー。なるほど、そういういきさつでこうもべったりなのか。」


と、美沙はうんうんと頷いている。


「そういう風に見えたりするの?」


「『そういう風に』見えるかどうかは分からんけど急に仲良くし

てるからね、噂にはなってる。」


私はひとつ納得した。そうか、『そういう』噂になってるから

杉田君もあれから接近してこないし、他の男子からもそういう

ことが無かったんだ。私はむしろそれで助かってるけど、紗奏

はどうなんだろう・・・


・・・と、隣に目をやる。


「まー、言いたい奴には言わせとけばいいっしょ。

 振られた杉田あたりが広めてんじゃない?」


ぷっ、とっても紗奏らしい。

それに、学校の外に好きな人がいるのだから、これはこれで歓

迎なのかもしれない。

 (そうだ、

     そういえば好きな人とはその後どうなったんだろう)


「ま、誰が否定してもあたしだけは応援してあげるよ。」


・・・と、美沙はすっかり誤解してしまったようだ。(笑)


「 「 ちがうからね!」 」


あらっ(笑)、見事にハモってしまった。

これは、勘違いされてもしょうがないな。



  【3人でカラオケ・・・そして】


それからしばらく、私と紗奏のあれやこれやの話をして、

3人でカラオケに行くことになった。


・・・これはあれかな。カミングアウトする流れかな。


 紗奏は基本的にとてもクールな子だけど、美沙はそれに輪を

かけてクールだ。なんというか、とても同い年には見えないく

らいさっぱりしている。たぶんお互いそういうとこが好きで仲

良しなんだろう。

 ただ、必要なときは思ったことを率直に言う紗奏に対して、

美沙は基本的に他人に干渉したがらないような感じだ。


 いつものカラオケボックスにつき、私たちは2時間セットに

した。

 今日は時間に余裕がある。


 何曲か歌った後で、『にやり』とした紗奏が曲を振ってくる。

 (思った通りだ!)


 私が歌い終えると、美沙も凄く褒めてくれた。


「オリジナルもいいけど、あのyoutube動画の子もいいよね。

 梨桜の声、かなりあの子に似てるわ。

 意識とかしてる?」


あら、どうやら同一人物とはバレなかったらしい。

だよね、声バレするなら、とっくにクラス中にバレているはず

だ。


「よく見ると顔つきも似てるよね?」


・・・と、さらに暴露していく紗奏。


なんだか、どこかのドッキリ企画のようであります!


「んー、顔は似てないかな。あの子はきっと20代でしょ。

 高校生くらいじゃ、あの色気はでない。

 特に目がエロイね。悪い女の目だ。(笑)」


「だって、梨桜。」


そういう紗奏はもう吹き出さんばかりだ。


「ん?なに?」


(少し思案顔の美沙)


(そして・・・)


「えーーーーーーーー!!

 まさか、そうなのーーーーー!!」


ここまで言われればさすがに帰結に至り、顎が外れんばかりに

驚いている、美沙。そして、顔をぐっと近づけてくる。


・・・近い、近すぎる、美沙。


「え?てことは、バイオレットムーンの子は、紗奏?」


「そうだよ。」


「はぁ、もう、・・・今年一番のびっくりだわ。

 紗奏とはたまに歌いに来てるのに、全っぜん気づかなかった。」


「て、美沙、オリジナルも聞いてみたんだ。」


「いや、もともと知ってる。あたしメタル好きだからね。

 あのグループは、ギターの人が彼女と作ったのさ。

 もう伝説級のギタリストでね。凄い人なんだ。

 今はあんな感じで、中世ヨーロッパのルネッサンス的なのを

 やってる。」


「凄い、詳しい!

 そうだったんだ。私ルーツは知らなかったから。


 そうそう、お父さんもこの間メタル歌ってたよ!

 ジューダス・プリーストっていうグループの。」


「マジ??

 何歌ったん?」


「ペインキラーとか、死の国の彼方に、とか。」


「うわっ!凄っ!、キー落として?」


「んーん、凄い高い声で歌ってた。」


「聴きてーーー!!」


「あちゃ、いらん飴あげちゃったな。」

そう言って紗奏は笑う。


「梨桜、お父さん呼ぼう!」


「まてまてっ、落ち着け、美沙。(笑)」


「えっ?だめかな?」


「今日はうちにいるけど、ほんとに呼ぶの?(笑)」


「お願い!、一生のお願い!!」


「じゃぁ・・・恥ずかしながら、呼んでみる。」

そう言って私はお父さんにlineする。

今日はどこも行かないって言ってたから、家にはいるはず。


「いやー、マジびっくりだわ。あれを原曲のキーで歌うとか

 ありえねーー」


「そんなにツボだった?そのグループ?」


「神だからな、神!、鋼鉄神

 ・・・まぁ、もっとも、今はさすがに老いたが。」


「へーー、そうなんだ、しかしこれだけ長く付き合ってきて、

 ヘビメタが好きだっていうのは初めて聞いた。」


「まぁ、言う機会もないしな。それに言っても解らんだろうし。」


「お父さん来れるって。

 でも凄くびっくりしてた。(笑)」



と、そのとき・・・


(ギィ・・・)


 突然ボックスの扉が開かれ、外から若い男の人が二人入って

くる。


「やっほー、うちらも混ぜて-。」


 (これはやばい奴だ。)


 私の直感は最大級の警笛を鳴らしている。

いつもありがとうございます。

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