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ハイヒールの血液  作者: 相原
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エピローグ

 マイナーなオプションがタチアナのクラブで出来た。

 この前の日本国親衛隊の襲撃で負傷した嬢を使う。水着に着替えさせ、痣に保冷剤を押しつけると言うだけのオプション。八五〇〇円。嬢の中にはトラウマになっている者もいて、話を聞いている場合に客に抱きついて泣いてしまう場合もある。もちろん、演技の時もある。抱きしめた場合は一〇〇〇〇円プラス。ぼろい商売だ。

 タチアナも水着で接客した。どうやら男というのは『可哀想な女性』に弱いらしく、散々稼がせて貰った。風俗業のチームプレイの中に『泣く役』が追加された。『腕っ節があるが内面はもろい女』として嬢の中のトップにタチアナは躍り出た。

「よう。今日は客として接してくれよ」

「無理な相談よ」

 そう言いながらもパッドの入っていない水着越しに、タチアナは胸を李の腕に押しつけた。頬が緩む。本当に男は馬鹿だ。

「なあ、俺たちずっと組んでやっていかないか。便利屋仲間として上手くいく気がするんだよ」

「さあねー。どうかな。何かお酒は?」

「……ビール」

 ――チクショウ。金にならない客め。

「シャンパンは飲んだ事はある?」

「匂いでダメだ」

「スコッチウイスキーは癖がないよ」

「ウイスキーはすぐ酔っちまう」

「カシスとか甘いのは?」

「女子大生じゃねえんだぞ」

「……」

 タチアナは考えた。熟考した結果、ボーイを呼び止める。「すいません!」

「はい、ご注文は?」

「この殿方に、無水エタノールのライムと炭酸水割りを」


(了)

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