2
そこから。
次第に、ヒーローのアクションシーンが短くなり、ぼくが妖怪に襲われるシーンだけが長くなった。
次いで、体が妖怪の舌で巻き取られたり、何らかの一撃を加えられれる度に、痛みにも似た、言いしれぬ気持ち悪い痺れが体を駆け抜け、長く四肢に残留するようになってきた。
しかも、その感覚を味わう時間だけがどんどん長くなっていく。
寝てるのにそんなのあり?これ、いつまで続くの?なんてぼんやり頭の隅で思い始めたところで、無限ループは、突如劇的な展開を迎えた。
さっきまでずっとぼくを助けてくれていたヒーローが、悪者妖怪にやられたのだ。
しかも、その妖怪に操られて、ぼくに攻撃を仕掛けに飛びかかってきたのだ。
ぼくは満身創痍のまま、なすすべもなく、飛びかかってくる鬼太郎らしきを見上げ・・・・たところで、その物語は唐突に終わり、再び物語は寂れたアパートらしきに舞台を巻き戻した。
ところが、ここからは、何かが違った。
妖怪にぼくが襲われるのは、同じパターン。
が、今度は助けが来ない。
延々と妖怪になぶられて、気持ちの悪い痺れを伴う痛みを浴びせられ、ここから戦いのシーン、というところで、物語が終わってしまう。
そしてまた妖怪に襲われる・・・。
この流れを延々と繰り返す。
今までと一つ違っていたパターンは、一つの物語の終わりで、アニメじみていた描写の風景がゆらぎ、リアルな外観の一軒家が現れ始めたこと。
わかりにくい説明で恐縮だが、寂れたアパートらしき風景の場面から一つの物語は始まるが、家を出てみると、その家はなぜか一戸建ての家になっているのだ。(つまり、一つの物語が終わると、その区切りに、夢の映像は、ぼくが妖怪に襲われていたその家の外観を映し出すわけだ)
(えーと、ここ、そう、確か)
映し出されたのは霞みがかった表札。
立派な門構え。
すりガラスの引き戸。
(ああ、知ってる。これ、どこだっけ)
この風景をぼくは知っていた。
(どこだっけ)
物語の始まりは相変わらず寂れたアパートのキッチン付近の景色
なのに。
(なんで家出ると、ここなわけ)
知ってる。
あの家も。
この家も。
全部ある住宅街の中で見た佇まいの家。
(あ・・・・・)
このパターンの中で、ぼくはようやく気づいた。
(そうだ。これ、家の近所だ・・・・)
ぞっとした、ところで。
一気にぼくの意識は寝ながら覚醒した。
要は、見ていた夢がはっきりとした明晰夢になったのだ。
そして、本当に恐ろしいのは、まさにここからだった。