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悪夢の匣  作者: 旋利
妖夢
3/3

そこから。

次第に、ヒーローのアクションシーンが短くなり、ぼくが妖怪に襲われるシーンだけが長くなった。


次いで、体が妖怪の舌で巻き取られたり、何らかの一撃を加えられれる度に、痛みにも似た、言いしれぬ気持ち悪い痺れが体を駆け抜け、長く四肢に残留するようになってきた。

しかも、その感覚を味わう時間だけがどんどん長くなっていく。

寝てるのにそんなのあり?これ、いつまで続くの?なんてぼんやり頭の隅で思い始めたところで、無限ループは、突如劇的な展開を迎えた。


さっきまでずっとぼくを助けてくれていたヒーローが、悪者妖怪にやられたのだ。

しかも、その妖怪に操られて、ぼくに攻撃を仕掛けに飛びかかってきたのだ。

ぼくは満身創痍のまま、なすすべもなく、飛びかかってくる鬼太郎らしきを見上げ・・・・たところで、その物語は唐突に終わり、再び物語は寂れたアパートらしきに舞台を巻き戻した。


ところが、ここからは、何かが違った。


妖怪にぼくが襲われるのは、同じパターン。

が、今度は助けが来ない。

延々と妖怪になぶられて、気持ちの悪い痺れを伴う痛みを浴びせられ、ここから戦いのシーン、というところで、物語が終わってしまう。

そしてまた妖怪に襲われる・・・。

この流れを延々と繰り返す。


今までと一つ違っていたパターンは、一つの物語の終わりで、アニメじみていた描写の風景がゆらぎ、リアルな外観の一軒家が現れ始めたこと。

わかりにくい説明で恐縮だが、寂れたアパートらしき風景の場面から一つの物語は始まるが、家を出てみると、その家はなぜか一戸建ての家になっているのだ。(つまり、一つの物語が終わると、その区切りに、夢の映像は、ぼくが妖怪に襲われていたその家の外観を映し出すわけだ)


(えーと、ここ、そう、確か)


映し出されたのは霞みがかった表札。


立派な門構え。


すりガラスの引き戸。


(ああ、知ってる。これ、どこだっけ)


この風景をぼくは知っていた。


(どこだっけ)


物語の始まりは相変わらず寂れたアパートのキッチン付近の景色

なのに。


(なんで家出ると、ここなわけ)


知ってる。


あの家も。

この家も。


全部ある住宅街の中で見た佇まいの家。


(あ・・・・・)


このパターンの中で、ぼくはようやく気づいた。


(そうだ。これ、家の近所だ・・・・)


ぞっとした、ところで。

一気にぼくの意識は寝ながら覚醒した。

要は、見ていた夢がはっきりとした明晰夢になったのだ。


そして、本当に恐ろしいのは、まさにここからだった。

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