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1章 ハジマリ

今年の夏は特に暑いらしい。

テレビのニュースでも全国各地、熱中症で入院なんてことがよく伝えられている。

 

東京都内にあるS大学では今日も「人類と共存するためのエネルギー」なんて題目で教授なるものが長々と話している。

7月も終わりに近づこうとしている夏真っ盛りのこの日だって外に出ると、35度を指している。


私立大学だからご立派に冷房は全館完備であるが、そんなつまらない授業など大して熱心に聞いているわけはない。

生徒はもうすぐ始まる夏休みの話題でもちきりだ。


もちろん早瀬彩乃だって例外ではない。

友人の広田敦子たち5人で海外旅行の計画を立てている。

「大学に入学して初めての夏休みだしぃ、やっぱ海外でしょ!」

そう一人が言えば、

「やっぱ、お安く済ませるなら近場だし韓国?今韓国ブームだし。」

なんて言って笑う。

「でも、やっぱ恭子はロス行きたぁい。ハリウッドでトム・クルーズに会いたいぃ。」

とミーハーで可愛い子ぶっている宮原恭子が話すと、他の友人たちはまた始まったよ・・・とでも言いたげに顔を見合わせて苦笑いをする。

「決定!!今年はフランスに行こう。やっぱパリだと観光も出来るし、ブランド品も欲しいし。」

広田敦子が声を張る。

「はいはい。敦子様には従いますよぉ。」

とわざと嫌味な感じで、村井美紀が言う。

もちろん顔は笑顔だ。広田敦子は我儘なお嬢様である。

家は相当大きいという。

そんな敦子は自分の考えを変えるわけもなく、たいして行きたいという場所もない4人にとったら敦子と衝突するくらいなら・・・と大抵は敦子の考えには従ってしまうのだった。

「で、彩乃はいいの?さっきからだまってばかりじゃない。」

敦子は子分のような存在の早瀬綾乃にむけて言い放つ。

我儘で自分勝手なお嬢様の敦子と大人しくて人に従うタイプの綾乃は家が近くであり幼馴染だ。そのせいか自然と綾乃は敦子に助けられてばかりであった。

「わ、私は敦子の決めたことなら従うよ。」

綾乃は笑顔で敦子に言った。

「ふ〜ん。ならいいけど。まぁ、綾乃がわたしに反対するわけないわよねぇ。はは。ところで万里さぁ・・・」

敦子は綾乃を笑い飛ばし、早速万里たちと話している。

「はぁ。」

綾乃は小さく息を吐いた。

「じゃぁ、スケジュールは綾乃が立てておいてね。あ、もちろん航空券のチケットは私が取っておくわ。パパのコネとかあるしねぇ。とろい綾乃じゃ、心配かしら。」

敦子が嫌味に言うと、他の友人たちも綾乃を笑った。


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