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日常への帰還

俺は悪くねぇ、一ヶ月も間が空いたけど俺は何にも悪くねぇ。悪いのは時期を考えずに襲来してきた蒙古軍だ!対馬の民は俺が守る!

為すべきを為したまで、これも全部葦名のためなんだぁ!!


なんか名前に違和感を感じた人、活動報告へGO!


よろしくお願いします




「ログアウト」


現実時間では、ほんの七時間ぶり、ゲーム内時間で実に1週間ぶりに現実世界に帰還する。


『お疲れ様でした姫さま、またのご来訪をお待ちしております』




ゆっくりと自分の意識が浮上してくるのを感じながら、頭に取り付けられたヘッドセットを介して僕専用のVR専用万能ゲーミングチェア『Princess Cradle』に内蔵された各種機能を起動させていく。


僕の『揺り籠』の製作者の古田さんからは長時間ゲームをした時に使用することをお勧めされている機能だ。初めて使うけど以前古田さんから使い方話聞いているので大丈夫だと思う。

先ずは体のスキャンから、一瞬で全身のスキャンが完了し目の前のモニターに体のどこが凝っているのかが表示された。


うん、長時間同じ体勢で座っていたので肩と腰、いくら軽いとはいえヘッドセットをのせていたから首あたりの凝りが凄いなぁ。


次に簡易マッサージ機能。古田さんお得意の超技術を用いた超音波振動や自重じじゅうを用いた指圧のようなものなどによって体調を回復させる機能だ。本当はちょっと違うみたいなんだけどやっていることと結果を見れば同じようなものだって言ってた。

これはさっき見たスキャン画像で特に酷いと表示された場所だけに留めておく。あとで葛西達がマッサージをしてくれるからね、最小限でいい。


最後に各種機能が停止したことを確認してから椅子の電源を切る。ここまでやってようやく頭を覆っているヘッドセットを取り外す。







「おかえりなさいませ」

「ただいま戻りました、葛西」


ヘッドセットを外すと目の前に葛西が待っていた。少し視点をずらすと数冊ほど積まれた本やティーポット、まだ湯気の立っているカップなどが見える。

どうやら僕が戻ってくる予定の時間より少し前からここで待っていてくれたらしい。


「あちらの世界はどうでしたか?」

「楽しかったですよ。仲良くなったお友達と一緒に遊んで、その友達から新しい友達も紹介されて、みんなでワイワイと騒げてとても楽しかったです。でも……」

「でも?」


たのしかったと言いつつ、最後に言葉を濁らせる僕に葛西が不審そうに聞き返す。


「葛西、少し近寄ってください」

「はい」


唐突な僕の要求になんの疑問も持たず、素直に近寄る葛西。

『揺り籠』に座った僕と、立っていた葛西との距離がドンドン縮まり、あと数歩の距離となったところで僕は葛西に抱きついた。


「わ!夕様?」

「えへへ、確かに向こうはお友達が沢山いて毎日大騒ぎして楽しかったですが、それでも僕は少し寂しかったんです」


そう言いながら僕は葛西を抱きしめる力を少し強くする。


「だって、向こうには母さまも、姉ぇさまたちも居ないんですもの、沢山の友達が出来てもやっぱり私は母さまたちと一緒に暮らすのが一番なんです」

「もう……この子ったら」


少し呆れたように言いながらも顔を上げると嬉しそうな母さまの表情が見える。

嬉しくなってぎゅーって抱きしめると母さまも抱きしめ返してくれた。とても嬉しい。


しばらく抱き合っていると扉の方からいくつもの視線を感じた。見ると僕の姉ぇさま達がじっと見つめている。


「こほん、さあ夕様、どうやら皆が待ちきれなくなってしまったようです」


一つ、咳払いをして皆んなの視線を見なかったことにして葛西が場を仕切り直そうとする。


「見なかったことにしようとしたわね」

「メイド長だけずるい」

「二時間も前からこの部屋で待機してきて二人きりだったのにぎゅーもだなんて」

「いいなぁ」

「料理できてるんで早く来ないと冷めちゃうっすよ」

「今日はテラスで食事をする予定なので東の庭園頑張ったんだけどなぁ」

「さっきの構図良いわね、忘れないうちにスケッチしておかないと」

「……あ、夕様の新しいドレス置いてきちゃった」


いつから僕のメイド達は欲望に忠実な駄メイドになってしまったのだろうか……。いや、来客が来てない時は割といつもこんな感じだったかもしれない。


うん、気にしないようにしよう。仕事は完璧なんだしね。


「ほらほら、みんな落ち着いて、食堂に行こうよ。それでさ、ご飯食べてひと段落ついたら久しぶりにみんなにマッサージして欲しいかな。ずっと同じ姿勢だったから疲れちゃった」


葛西に不満をぶつけていた駄メイド達は僕の言葉を聞いた瞬間ピシッと姿勢を正し、キリッとした有能メイド衆に早変わりした。


「こほん、さてそれでは叶、本日のメニューは」

「はい、本日は…………。」

















食事を終え、少し食休みをしてから屋敷の一室に移動してみんなにマッサージをしてもらう。ここは今みたいなみんなで集まってゴロゴロするときに使う部屋で床一面がふかふかのマットが敷き詰められていたり、僕と同じくらいの大きさのクッションやソファー型のクッションが多数置かれていたりする。

そんな部屋に床のマットが汚れないようにシートを引き、マッサージをしてもらう。

みんなで一斉にやると狭いし、担当する場所で揉めるから一人一人順番に時間を決めてやってもらうことにする。






「うん!物凄く体が軽くなったよ!みんなありがとう」


全員からの施術が終わった。正直一人でも十分だった気もするほどのマッサージを九人分も受けて筋肉がドロドロに溶けてしまったように感じる。


「そうだ、今日はみんなこのままここで寝よ?それでさ!眠くて寝てしまうまでみんなでお話ししようよ」

「いえ、夕様。このままここで、とは参りません。少なくとも汗をお流しになってからでございます」

「うん、わかってる。でもみんなでこの部屋で寝るのは良いでしょ?」


葛西たちが素早く視線で会話をする。


「……そうですね、良いでしょう。では私と神原が部屋の片付けと寝具の準備をしますので夕様は他の者と浴室へ行ってらっしゃいませ」


どうやらさっきの視線での会話はこの部屋で寝ることの是非ではなく、誰が片付けをして、誰が僕とお風呂に行くのかの話し合いだったみたい。


「ありがと葛西!神原も!じゃあ、なるべく早く片付けとかしてお風呂に来てね?待ってるよ」







浴室ではみんなで体を洗いっこしたり、正直一人で入るには広すぎる浴槽にみんなで入っておしくらまんじゅうみたいな事をした。

久しぶりにみんな一緒に入ってとても楽しかった。


先ほどの部屋へと戻ると葛西たちが準備した人数分の大判のタオルケットが置いてあった。

まあ、したがフカフカのマットだし敷布団は要らないよね。夏だし最低限体を冷やさないためのタオルケットだけで十分だと言うことだろうね。


早速タオルケットをつかんでマットに飛び込む。フカフカのマットが優しく僕を抱きしめてほとんど衝撃が無い。


「ほらほら、みんなも寝っ転がろうよ。それで話をしよ?私ね、向こうでの1週間のこと聞いて欲しいんだ!」


みんなを促すと少し苦笑したような表情で僕を中心とした半円の形にみんなが座る。

んー、本当はもっと近くに密集して欲しかったけどこれでも良いか。なんかみんな座るときに僕の近くに座るのを牽制してたし。


「それじゃ、始めるね?初めはねぇ…………」


そして僕はみんなに語る。

みんなにとってはたった七時間の、僕にとっては7日間の大冒険を。

話の合間に相槌を打ったり、本当ですかぁ?とチャチャを入れられたりしながらゆっくりと7日間のことを語っていく。

そして……。



「それでね、いつかはまだわかんないんだけどリアルで、つまり現実こちらでみんなで集まって遊ぼうって話が出てるの」



僕は本題を切り出す。


「へぇ、そうなんですか」

「うん、それでね。送り迎えをお願いしたいんだ」

「まあ、当然ですよね。分かりました、また日時が決定し次第教えてください」

「わかった。それとねもう一個お願いしたいことがあってね」


一呼吸置いて、みんなの視線を集めてから話し出す。


「そのときにその場では僕一人で行きたい」

「……それは私や神原、東を連れずに行く、私たちは送り迎えのみと言うことですか?」


葛西が聞く。


「うん、その通りだよ」

「ダメです。私達が近くにいない外出は許可出来ません」


すぐに拒否されてしまった。


「だよね。僕も自分の特殊性は理解してるよ」


齢二十に満たない身で莫大な資産を持ち、各国政府、大企業や芸術家、その他様々な人材に繋がりがある。そのことは十分すぎるほどに理解している。


「では何故そのようなことを」

「ねえ、葛西」


葛西の言葉を遮って言葉を続ける。


「僕が呼ばれた場所にはね一般人がほとんどなんだって。普通のサラリーマン、OLのお姉さん、大学生、個人事業主、大学の教授、そんな普通の人たちが集まるって聞いてる。確かに僕のことを心配してくれるのは嬉しいしそれが貴女の仕事ってことも理解しているよ。でも、僕は気兼ねなく遊びたいんだ。僕が護衛を付けられるような立場だと知らない人と気兼ねなく、『初めて』できた友達とさ」


しばし、無言で葛西と見つめ合う。

葛西は決して目を逸らさず、僕も目を逸らさない。お互いに自分の意見を曲げるつもりが無いからだ。



しばらく見つめ合っていると神原が言う。


「なぁ、姐さんあたしらの負けだよ」

「っ!神原!」

「姐さん、夕様は絶対に意見を曲げないよ。それに可愛いおねだりじゃ無いか。友達と遊びたい。そんな場所に友達じゃ無い私たちは要らないだろ?」


どうやら神原は僕についてくれるみたい。


「それに夕様、その場に私たちは居ないが少し離れて夕様たちの邪魔をしない様な位置でお友達にバレないように追従するのは良いだろ?」


神原が妥協案のような物を提案してくる。

だが、目を見ると笑みはなく最低限これだけを守れないならそもそもオフ会自体を認めないと言っている。


「ええ、わかりました。私はその案で妥協いたします」

「そうだね、僕も護衛無しは極端過ぎたね」


よし、これでこの話は終わりっと!




「さて!じゃあもう寝よっか、明日はみんなでお出かけなんだよね?」

「はい、久しぶりの外出ということで皆の行きたい場所などをピックアップしたところかなりの弾丸工程となっております」


完全に話を切り替えた僕に優しげに微笑みながら葛西が言う。


「うわぁ、本当?」

「はい、何せ『久しぶり』のお出かけですからね」

「あはは、じゃあ早く寝て明日は早く起きなきゃね!おやすみ!」


わずかに険がある『久しぶり』を聞き、分が悪いことを察知した僕は寝入ることに決めた。

タオルケットを頭まで被って完全防御の体制だ。

外側で可愛らしいと微笑んでいるのを感じるけど無視する。

今だ!とばかりに僕の周囲に詰め寄ってくるみんなの気配を感じるけど無視するんだぁ!!







フハハ!サービスシーンがあると思うたか……。

バカめ!全カットに決まっておろうが!!この作品は健全なお子様でも見られる安心安全な作品だぁ!



あ、私事ですが作者ツイッタを始めましてよければそちらのフォローをお願いしますね。こっちで語らない没ネタとか雑設定とか近況報告とか生存宣言とかそっちでやるかもなんで。よろしくお願いします。


作者ツイッタ→@KAYANO_YUU


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― 新着の感想 ―
[一言] 投稿お疲れ様です! 今度は早くなってくれたら嬉しいです。 まあ、何ヶ月でも待ちますけどね!
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