ゲームを始めよう【チュートリアル・システム/武器防具編】
よろしくお願いします
ーーサービス開始までお待ちくださいーー
そう僕に告げるウィンドウが表示されて早15分、そしてついに…
ーー3ーー
ーー2ーー
ーー1ーー
ーーお待たせ致しました、ようこそ『fantasista online』へ、当世界は皆様を歓迎いたしますーー
そうアナウンスが流れ、足元に金色に輝く円形の魔法陣が広がった。魔法陣の光は徐々に強くなり、そして……
「…これはやり過ぎじゃないかな…」
光が収まると、僕は地球上どこにも存在しない『城塞都市』の前に立っていた。
ーーようこそ『fantasista online』へ、ここでは、この世界に慣れるためのチュートリアルを行えます、なおチュートリアルをスキップして先にゲームを開始することもできますが、どうしますか?ーー
「チュートリアルを受けます」
ーー了解しました。では先ずはメニューを開いて見ましょう。左右どちらの手でも良いので『good』の形にしてくださいーー
言われたとおりに右の親指を立てた形にするが、『good』の発音が異様に良かったのが少しムカつく。
ーーその親指を少し押し込みながら横に引っ張ってください、どちらに引っ張っても開きますがオススメは右手なら右に、左手なら左に引っ張ると良いですーー
…右手で左に引っ張る奴がいるのか不思議だが、それでも開けるようになっているということは想定している事なんだろう。とりあえず僕もメニューをひらく
ーーメニューを開いていただいたら、あとはどの指を使って頂いても構いません。次はメニュー画面の説明です。右のアイコンから順に『ステータス確認』『装備確認』『所持アイテム確認』『簡易マップ』『オプション』『GMコール』です、それぞれ見ていきましょう!先ずは『ステータス確認』ですーー
『ステータス確認』のアイコンを押す、うわ!ちゃんと『押した感覚』がある!それにさっきから風を感じるし、大地に立っている感覚もある、息もしていることから止めると苦しくなるんだろうな。流石だよ、『現実で体験できることは基本的にできる』と言う謳い文句は伊達や酔狂でもなく事実なんだな。
ーー『ステータス確認』画面ではレベルアップ時に取得できるSPを振り分けたり、スキルのレベルが上がり切った時に上位スキルに進化させたりできます。またメインとして使用できるスキルは10個、プレイヤーレベルが5つ上がるたびに一つ増えます。取得したは良いけど使わないスキルなどもこの画面から『控え』項目に収納できます。スキルを付け替えたい時などにはスキル欄を二回タップするとスキル選択画面に移動します。なお、スキルの習得は町にあるスキルショップや特定のクエストの報酬、特定行動をしアクティベートポイントが貯まった場合などに取得できます。また、アクティベートポイントはプレイヤーが確認することはできません。次は『装備確認』画面に移りますーー
へぇ、スキルってそうやって取るのか、てっきり最初に選択したスキルやその上位スキルだけでゲームを進めるのかと思ってたけど…まあ、それもそうか、ゲーム中にやりたいことが変わったり新しくスキルが追加されるかもしれないしね。
ーー『装備確認』画面では現在装着している装備の確認と変更ができ、変更前後のステータスの差異を見ることができます。また、ショートカットに装備を登録する事で即座に装備を変更することもできます。しかし、同時にショートカットに登録している装備はショートカット変更をするまで売却することができないため、小まめに確認することが大切です。次は『所持アイテム確認』ですーー
ふーん?つまり早着替えって事だね、それに自分で脱ぎ着しなくてもいいって言うのは嬉しいな。少し凝ったデザインのドレスとか着にくい場合が多いんだよね、現実でも実装してほしいなぁ……無理か。
ーー『所持アイテム確認』画面では現在の所持アイテムが確認できます、プレイヤーのアイテムストレージの空きは一スタック《99個》×二百種類です、意外にすぐに溜まってしまうのでこまめな整理が必要です。また、ストレージ容量を増やす方法はゲーム内に存在しますので探してみると良いでしょう。
アイテムにもショートカットがあり八種類のアイテムを設定できますが、それぞれ15個の個数制限がかかります。しかし例外として、矢や、投げナイフなどの消耗投擲品は一つの枠に3スタックまで設定することが可能です。また、ショートカットでアイテムを使用したい場合はアイテム名を呼ぶと使用されます。なお、アイテムごとに設定されている再使用時間は短縮されません。次は『簡易マップ』ですーー
うーむ、どうしたものか。矢は消耗投擲品で、ショートカットに登録することができる。が、どういう仕様になっているのか…一本打つたびに呼び出すのか、矢筒ごと出てくるのか、そしてスタック計算ではなく100本にして二締めで計算して欲しかった。一本お得だったのに…
ーー『簡易マップ』ではプレイヤーの視界の端に表示されるマップの変更ができます。このマップはプレイヤーの移動に伴い解放され、マップ率を100%にする事でマップが完成します。また、後述するフレンド間でマップの共有もでき、効率的にマップを完成させることもできます。次は『オプション』ですーー
へー、マップって最初から見えるわけじゃないんだ。まあ、そうだよね最初からわかってたなら冒険する楽しみもないだろうし、自分はどこまでのマップを持っていると言うことも一種のステータスになるんじゃないかな?
ーー『オプション』ではプレイヤーの痛覚設定・フレンド申請、許諾・ブラックリスト設定・スキルアシスト設定ができます。痛覚設定は初期値が80%、最大が100%、最低が50%となり、数値が高いほど痛みを感じなくなり、100%では切りつけられても何かを押し当てられているような感覚になります。フレンド申請・許諾は他プレイヤーへのフレンド申請、また、送られてきた申請の許諾を行います。ブラックリスト設定は選択したプレイヤーへの、または、からの干渉の一切をシャットアウトする機能です。(この機能で、選択されたプレイヤー同士では、お互いが使用したバフの対象になりません、お互いが発動した魔法の対象になりません、お互いを目視することができません、お互いのマップに映ることはありません)スキルアシスト設定はスキルごとに設定されたシステムアシストの切り替えができます。ON、OFFではアシストの有無、強弱ではアシストの強さを設定できます。(アシスト強では一時的にプレイヤー操作権をシステムが掌握し、プログラムされた動きをトレースします。アシスト弱ではプレイヤーに軽い意識誘導を行うことによってそうであれと言う動きを認識させます)次は『GMコール』ですーー
あーうん、ブラックリスト設定は使わなさそうかな?よほどのことがない限り。でもシステムアシストか、アシスト弱に設定しておこう、ゲームしているのにプログラム任せとか気持ち悪いし。
ーー『GMコール』では、違反の疑いのある者や、迷惑行為をしている者がいたら使用してください。また、ゲーム中の不具合や調整が必要な箇所を発見した場合にもお使いください。余りにも使用回数が多い場合には運営が行動ログを確認する場合がございますーー
うん、何事もなければ特にお世話にならないものだね。しかも僕の場合、普通なら管理AIが対応するところいきなり運営のトップが飛んでくるからね。安易な気持ちで押したらまずいのはわかってる。
ーーメニューの確認が終わりましたら、チュートリアル第二段階に移ります。先ずは冒険者ギルドに登録しましょう。マップにマークしましたーー
へえ、こんな風になるんだ。視界の端に表示されているとはいえ普段は気にならないようになってるみたいだし、見たいと意識すると見えやすくなるのかな?まあそこら辺の難しい話はわかんないや。とりあえず冒険者ギルドに向かおう、と言ってももう見えてるんだけどね、門に入って大通りを真っ直ぐに進んだ一番奥にある建物が冒険者ギルドのようだ。
はい、到着しました。って言うか誰ともすれ違わないしお店に人がいる気配もない。まさかスタート地点がゴーストタウンとかやめてよね。
「はあ、どうなっているんだろう?」
ーー何かご質問ですか?ーー
「うわ!?ってもしかして応答できたの?」
ーーはい、私はチュートリアルサポートAIです、質問に答えるために管理AIと同程度の知能と検索機能を持っていますーー
「そっかあ、あ、アイさんって呼ぶね『AI』だから『アイ』。それじゃアイさんこの街に誰もいないのはなぜ?」
ーー回答、このエリアがチュートリアルのために特別に作られた専用のエリアだからです。プレイヤーの皆様が最初に降り立つ街『ワンファスト』をコピーしています、なのでこの後チュートリアルが終わっても道が変わっていると言うことはありませんーー
「へえ、便利だね、アイさんショートカットで登録した矢って一本づつ出てくるの?それともスタックごとにまとめられて一つの矢筒になるの?」
ーー本数によります、登録された数が10以下ならば一本づつ、10以上ならば矢筒になります、また矢の入っていない筒は消滅するようになっていますーー
「へえーありがとう、取り敢えず今は無いかな、また聞くかもしれないからよろしく」
ーーはい、それが私の仕事ですからーー
「じゃあ登録をすませようか」
「良かった、ここには人がいる。受付さんだけだけども、流石にここまで無人だったらヤバかったなぁ」
「いえ、そうでもありませんよ」
「え?あ!?アイさん!?」
「はい、アイです、チュートリアルサポートAIですのでここも私の担当なのです」
ええ、まさかの初住人の方と思ったらアイさんだった、身体があるけど実際二人のままじゃん…
因みにこのゲーム、NPCにも個別のAIが搭載されちゃんと会話をすることが出来るようである。それに伴いNPCと見下して話しかけるとNPCからの好感度ががくっと下がり重要なアイテムやスキル、果てには店売りの薬も買えなくなるようだ。この事を発見してくれたβテスターの自称プロゲーマーには感謝だね。この事からNPCの事はこの世界に住む人と敬意を込めて『住人』と呼ぶことが決まったようだ。その事を話していたスレッドは『跳弾頭脳』の公式ページにリンクが貼ってあるほど有名だ。
閑話休題
「えーと、冒険者登録お願いします」
「はい、こちらが登録カードになります、再発行には1000ギル必要ですのでお気を付けて」
「ありがとうございます」
「次は街を案内します」
そう言ってアイさんはカウンターから出てくる。って!
「そのまま出てこれるんですか!?」
「はい、本来この身体がサポートAIとしての身体です。先ほどまではギルド受付嬢の役割があったので…実はチュートリアルを受けても話も聞かずに動き回る方もいらっしゃいまして、現在は先に身体をギルドに置いておく事で対処しています」
「…アイさんは複数いるのですか?」
「いえ、YŪ様にアイと名付けて貰った個体は私だけですが、私の所属するサポートAIのクラスタにそう言う情報が入ってきたと言う事です」
「大変そうですね、お疲れ様です」
「ありがとうございます、それが私の仕事ですがそう言ってもらえると嬉しいです」
大変そうなAI事情を聞いていると、マークされていた店に着いた。
「ここは武器屋になります、オーソドックスな長剣や小剣、変わり物ですとブラックジャックなどもあります」
「ここに矢もある?」
「はい、木矢、石矢、鉄矢などがあります、ここにはありませんが攻略を進めていくと希少な素材を使用した矢もあります」
「へー、今ここで使用するとかはできる?」
「できます、何か買いますか?」
「うん、鉄の矢と、石の矢、木の矢を買うよ」
実はさっき持ち物を確認した時、弓はあったのだけど肝心の矢がなかったんだよね。普通の弓じゃないからかな
「…所持金額は大丈夫でしょうか」
「あ」
「メニューのステータス確認からみることができます」
慌ててメニューを開き所持金額を確認する、そこには…
所持金額 100,000,000ギル
は?
何かの見間違いかと思って一度閉じもう一度開くもそこには
所持金額 100,000,000ギル
何も変わらずに一億ギルがあった、頭を抑えているとフレンド欄が点滅しているのが見える。
ーーフレンド申請がありますーー
・Arthur Friendly
・akebono
・Elder
・Miya Miya
・A.L.I.C.E
・Kongou
許諾しますか?
『YES』『NO』
誰だ?いや、アーサー・フレンドリー……浅…友
…智…浅井さんか、となるとこれ『跳弾頭脳』のメンバーだな、曙で、光繋がりで灯さん。elderは古いから、フールダー、ふーるたー、古田さん。Miyaはそのまま雅さん。Aliceなんてなんのひねりもなくそのままアリスさん。コンゴウは、霧島さんなんだろうけど何繋がりだ?………ああ、戦艦か。金剛型戦艦霧島、そこからコンゴウか、とりあえず全員承認。
ーーメッセージがありますーー
ーArthur Friendlyー
・先ずはログインしてくれてありがとう、この世界の現実度に驚いてくれたな?驚いてくれたら嬉しい。さて、このメールが届いたという事は所持金額を確認したね?一億ギルあったと思うがバグでもなんでもない、仕様だ。夕には散々お世話になったからね、こちらの世界くらい俺たちがサポートできたらなと思った次第だ。装備を揃えて狩りに向かい、その後なんだか違うと思った時、ジョブの変更にはお金が必要なんだ。上位ジョブへの転職はそれほどお金はかからないのだが、全く違うジョブに就こうと思うと莫大なゲーム通貨がかかってしまう。この一億はジョブ変更がギリギリ三回出来る程度の金額だ、そこまで気負わず受け取ってくれ。
ps.この世界の宗教には、それぞれ『跳弾頭脳』が神となっている。隠し神殿もあるから探してみるのも一興だぞ。
うん、バグじゃない事はわかった、なら使おう、盛大に使ってしまおう。
「アイさん、お金は大丈夫そうです、鉄矢1スタック、石矢1スタック、木矢2スタック下さい」
「いいの!?あ、いえ、お待ちください…こちらになります。しまい方は分かりますか?」
「わかんないです」
「それでは、まずこの矢の山に触れて下さい、すると『収納しますか』と聞かれますので『はい』を選択してください」
言われたとおりに収納し、それを4回繰り返し、それぞれショートカットに登録する。
「次は防具屋です、場所はここの向かい側です」
防具屋でも同じように資金にもの言わせて買い漁った、その結果がこちら。
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PN:YŪ
LV:1
種族 :混血種(森人族/獣人族・狼)
JOB :弓術士
SUB :拳闘士
HP :400
MP :400
STR :30
VIT :15 +5
AGI :40 +15
TEC :40 +5
INT :40
MND :20
LUC :15
残SP:0
種族固有スキル
・大器晩成:取得経験値減少・獲得SP増加
・魔眼・魔力視:魔力の流れを見ることができる
・孤狼の誇り:単独行動時ステータス増大
・(隠し特性・神製の筐体:GMコールをした時『跳弾頭脳』が対応する)
後天性スキル
・弓術lv1
・矢弾回収
・視力強化lv1
・脚力強化lv1
・風魔法lv1
・火魔法lv1
・水魔法lv1
・土魔法lv1
・魔力増加
・弓魔法lv1
装備
・武器:初心者の魔導弓
・頭:狐のお面
・胴:弓兵の軽鎧
・腕:弓兵の弓かけ
・脚:弓兵の袴
・靴:弓兵の臑当
・その他1:隠密のタリスマン
・その他2:なし
・その他3:なし
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うん、西洋風の街並みに突如現れた和風テイスト。シュールな気もするけど特に違和感などはない。ゲームだからかな?
「YŪ様、先程からお聞きしたかったのですがその金額はどうされたのですか、他のサポートAIに問い合わせても初期の所持金額は5000ギルだそうです」
「これね、あーArthur Friendlyって言ってわかる?もしくはこの世界の最高神、そいつに貰った」
「はい?」
「連絡して貰ってもいいよ」
「…それでは失礼して……はい…YŪ様について……はい、はい!?さ、最高神様!?はい!……はい!わかりました!」
「どうでした?」
「も、申し訳ございませんでしたー!」
ひたすらに頭を下げ、謝り続けるアイさんを宥め、次の目的地、雑貨屋につけたのは30分後だった。
チクショウ、こんだけ書いたのにまだチュートリアルが終わらない……