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生存戦略Extra Round3

過去の俺から最大級の厄介ごとが郵送されてきやがったぜ……!しかも返品不可の上に転送も不可とか……。廃棄もできないタイプだし……これどうしよう。




一歩、二歩、触手を踏んで歩数回復っと。

続いて叩きつけの……。

………………

…………

……!


「あはは……。マジかよ、第二形態移行直後でコレとか……!」


必死に時空を越えて(・・・・・・)現れる触手を避けているとニアさんの乾いた笑いが聞こえてくる。って、ヤバっ!ニアさん気付いてないな!


「地上の惨状を見るのも良いですけど!ニアさん避けて!上から触手来てる!」

「え?うわ!?危な!ありがとユウ!」


なんとか僕の警告も間に合いニアさんは追加で出現した(・・・・・・・)触手を回避できた模様。



さて!一段目、二段目と順調に【海神】のHPを削り、先ほどついに三段目のゲージを削り切った僕たちプレイヤーだったのだが、現在は優勢一転、ほんの数十秒足らずで戦線総崩れの一歩手前まで追い込まれている。

かなり優位に先頭を進めていた僕たちがなぜこうも追い込まれたかと言うと……。


「無限津波地獄はダメだろ!人が災害に勝てるわけないじゃん!」


話は数十秒前、3ゲージ目を削り終わり【海神】のHPを全体の3割ほど削った時まで遡る。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「ユウ!あと数発で【海神】の三段目が割れる!退避しとけ」

「了解です!」


海神戦に合流してから既に数回繰り返した一連のコンボ攻撃を中断して空中へ退避する。

同時に鎖を伸ばしてニアさんの足に巻き付けぶら下がる。コレも戦闘開始から繰り返してきた八艘飛び節約の手段だ。


「で、ニアさん。退避したは良いんですけどなんで退避したんですか?」

「ん?あぁ、こう言うボスには形態変化っていうのが往々にしてあってな。そのタイミングがおおよそ30%刻み、もしくは50%を割ったら、が多いんだよ。さらにそう言った形態変化時には強力な全体攻撃を繰り出して場の仕切り直しを図ることも多いからな、なるべく安全地帯にいた方が良いってわけだ」


なるほど、だから三本目がなくなる直前に退避したんだね。


「さて、気を引き締めろユウ。来るぞ」


ニアさんの言葉の直後、非常に見覚えのある剣閃が海神の触手の一本を切り飛ばし、同時に海神の三段目のHPゲージを削り切った。


[[BOOoooooOOOO!!!!]]


直後、海神は錆び朽ちたオーボエのような、ゴムとゴムを擦り合わせたような、はたまた、水の中で鳴らした汽笛のような、そんな不快な鳴き声をあげながら後退した。


「うわ、煩いですね」


何というか、耳の奥がとても痒くなるような鳴き声だ。こんなのがあと2回ほどあると思うとげんなりする。


「そう……だな」


上からニアさんの同意も聞こえるがなんだか様子がおかしい。


「どうしました?調子悪そうですけど」

「いや、大丈夫だ。たぶん、時間経過で治る」


上を見上げるとニアさんが真っ青な顔をしていた。

いや、見るからに大丈夫じゃなさそうなんですが!?


「いや!顔色めっちゃわるいですよ!?」

「ん?マジか……状態異常で顔色も変わるんだな」

「え?それ状態異常なんですか?」

「おう、状態異常:恐怖だな。効果は一定時間の行動阻害ってところだ。まぁ、何にせよ飛行状態が解除されなかっただけマシだろうよ。それより問題は下の奴らだ。盾職として各耐性をあげてる上に種族ブーストで実質倍のレベルになってる私でも状態異常になったんだ、下の奴らは確実に状態異常に、場合によっては上位の状態異常になってる可能性もある」


それにほら、とニアさんが指で示そうとして……行動阻害で腕が上がらなかったらしく視線で示した先、完全に沖に逃げ込んだ海神がその触腕達を高く振り上げていた。


「あ、なんか嫌な予感がしました」

「わかる。私も嫌な予感がビンビンしてる」


そして、振り上げられた腕は振り下ろされ、海面を強く叩き付けた。次の瞬間、海面が不自然に蠢き、津波となって地上のプレイヤーに襲い掛かる。



「「「「「「「「うわぁあ!!!」」」」」」」」





『あー、アポロ、バウアーさん、ガン爺無事か?教授も余裕があったら被害状況教えて』


ニアさんがパーティーチャットでメンバーに話しかける。


『こちらバウアー、一応無事です』

『同じくアポロも無事』

『ガンテツだが、後方兵站場は無傷じゃ』

『教授だ、各パーティーから送られてくる情報によるとダメージ的にはほとんど問題ないらしい。ただ主要盾職メインタンクのアーツによる踏ん張りも引き剥がすほどの吹き飛ばし性能と一時的な呼吸阻害が報告されている』

『そうか、ありがとう。高台のネルネルとルーレットはどうだ?』

『ネルネル、全員無事。ただタコが沖に出ちゃったから攻撃が届かなくなった』

『俺んところも欠けは出てない。だがまあ、リーダーの所からも見えてると思うがクソターンが回ってきたようだ』


ルーレットさんからの通信を聞き、再び海神を見るとそこには再度触手を振り上げた海神の姿があった。


『来るぞ、二発目だ』


海神が再び触手を振り下ろす。

同時に、何故か僕の視界も灰色に染まった。


一瞬、困惑したけど、直後反射的に全力で真上に飛び上がった。

ニアさんに鎖を巻き付けたままだったけどそれが逆に良かったのかもしれない。


「うを!?何すんだよユ……ウ……」


飛び上がった僕に引きずられた形となったニアさんの羽先数センチのところを巨大な触手が通り過ぎていった。


「ありがとうユウ!助けられたみたいだな!」

「いえいえ、私も突然振り回して申し訳ありませんでした」

「いやいや、ユウのおかげで私は助かったんだからそんなの気にすることないさ」


また視界が灰色に染まった。どうやら先ほどの触手が切り返してきたみたいだ


「そうですか……っと、また来ます!回避は出来ますか?」

「おう!来るってのがわかってるなら自力で回避できるさ」

「了解しました。それではここからは各自回避ということで」


ニアさんに巻き付けていた鎖を解き空中に身を躍らせる。

さて、この触手一体何処から伸びてきたのだろう?少なくとも本体から直接飛んできたわけじゃないのは分かるんだけど……。


答えは触手を辿っていけばすぐにわかった。空中に何やら罅のような裂け目が出来ていて、そこから触手が飛び出していた。


「何だっけ?空間跳躍?って言うんだっけ?」


まぁ、何でも良いか。とりあえず壊せるか試して……。おっと、また視界が灰色になったね。触手の根本辺りだから攻撃は来ないと思っていたけど結構柔軟なんだね。


一先ずは鎖を用意しながら自由落下を選択。

直後、僕のいた位置を触手がなぎ払う。触手が通り過ぎたことを確認してほぼ位置の固定されている触手の根本に鎖を巻き付け空へと戻る。


さてさて、少し離れた所から二本目の触手が出てきてるのが見えるね。空中の足場が増えるのは嬉しいけど少し忙しいなぁ。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





回想終了!

現在は三本に増えた触手の猛攻をいなしながら打開策を考えている所、ちなみに触手に攻撃をしてもある程度軌道を変えることが出来た程度で破壊できるような感じではなかった。


地上部隊は津波で機能せず、高台の砲撃部隊は海神が射程外で置物状態。空にいて津波の影響を受けないのは僕たち二人だけ、だけど僕たちも触手を避けるのが精一杯で海神にまで手が回らない。


あれ?もしかしてコレが詰みってやつなのでは?


「ニアさーん!もしかしてコレ詰みました?」

「ワンチャン詰んだな!何も出来ないからな!」


あー、やっぱりか……!そう言えば彼女どうなったのかな?


「そう言えば、フレアのカウントってどうなりました?」

「結構前に0秒になったのは確認したけど……まだ着てないな」


と、その時、視界に何やら見覚えのないシステムウィンドウが表示された。なになに?『後方作戦司令部より』?


「ニアさん、なんか来たんですけど」

「あぁ、教授が指揮とってる所だな。検証班やら伝達係の人、斥候職の人達が情報の集約と大まかな指示を出してる所だ」


へぇーそんなのがあったんだ。上から見たときはわかんなかったから近くの森の中にでもあるのかな?

とりあえず開封して内容を確認する。



ー総員へ通達!ミッションページの内容が更新され救援NPCが到着したとあった。コレよりレイド戦は次のフェーズに移行し、同時に戦場も変化する可能性が発生した!地上部隊は速やかにレイドボスより距離を取ること!砲撃部隊は全力で防御、空中の二人は……気合でなんとかしたまえ。以上!幸運を祈るー



「……フレア、到着したみたいですね」

「あぁ、母様が来たみたいだけど見えないな」


……母様?あぁ、そう言えばニアさんの称号にフレアの長女って書いてあったんだっけ?


そんなことを考えていると肌に覚えのあるチリっとした熱気が肌を舐めた。


「ニアさん、盾の後ろに匿ってください。ちょっと焦げそうです」


そう言うなりニアさんの反応を待たずに盾の後ろに潜り込む。僕を怪訝そうに見るニアさんも少しして周囲の気温が上昇するにつれ事情を察したらしく急いで各種防御アーツを起動させていった。


そして、ニアさんが最後のアーツを発動させると同時に凄まじい発光と爆音、衝撃波が襲いかかってきた。あとから聞いた話によると僕のステラの数倍の規模の大火球が隕石の如く海神にぶつかったらしい。


熱気が通り過ぎたのを確認して盾の後ろから出る。


僕たちが戦っていた入江が広くなっていた。いや、正確には海神の周囲の海が蒸発し、海神の周り一帯が海底を晒していたんだ。


遥か彼方に微かに海岸線が見える。高低差的にここも直ぐに海に戻りそうだけど何故か海水は流入してこない。状況的にフレアが何かしたのだと思うのだが……。気にしても無駄かな?プレイヤーがどうこうできる範囲のことじゃなさそうだし。


「ふむ、号が外れ特攻が無くなったが純粋火力が上昇したため総合ダメージは上がったか。む?おお!我が娘に我が友ではないか!巻き込まれてはおらぬか?」


僕らのいる位置より少し上辺りで独り言が聞こえる。見上げれば予想通りフレアが飛んでいた。


「一昨日ぶりですねフレア、私は危うく炭になる所でした」

「私は母様譲りの耐火性でほぼ無傷でした」

「うむ、死んでないなら大丈夫だな!それより少々到着が遅れたことを詫びようか。空を飛ぶのが楽しすぎて遠くまで行きすぎたのだ、だが遅れた分はコレからの行動で取り返そう!『略式全体祝福(オールブレス):竜母の加護』!」


フレアが何かのスキル?を発動させると同時に視界の端に表示されている簡易ステータスに大量のバフが追加された。


攻撃力上昇、防御力上昇、敏捷値上昇、知力上昇、HP継続回復、MP継続回復、各種状態異常耐性、火炎属性耐性などなど、このほかにも大量のバフが付与されている。


「いや、バフ盛りぃ!」

「……?」

「あ、ごめんわからなかったらそれで良いんだ」


突如ニアさんが叫んだけど気にしなくて良いらしい。


「さて!ではコレより我も参戦する!焼却の号は外れたとは言え今なおあらゆるものを焼き尽くす竜の業火見せてくれようぞ!」

「よっしゃ!私もいくぜ母様!突撃ダァ!」

「え?ちょっと、これ私もぉぉぉお!?」


フレア登場の際に盾の裏側に張り付くために鎖で体を固定していたのが仇となった。テンションが天元突破したニアさんに引きずられる形で突撃する羽目になってしまった。

ま、それらなそれでなんとかするけどね。

とりあえずは曼荼羅展開。


「斉射!」


射程内に入るや否や全力射撃を開始。近接弓術に比べれば一発一発は豆鉄砲みたいなものだけどそれが数十も集まればそこそこのダメージは出せるみたいだね。


地上の方も結構騒がしくなってきてる。僕らが海神に向かって突撃するのを見て慌てて追いかけてきたみたいだ。彼らには是非とも頑張って海神のヘイトを集めてもらいたい。それも早急に!正直大人数討伐が前提のボスにたった3人で張り合おうとか無茶だと思うよ!


「って言うか引きずられ始めたところで解除すれば良かったんじゃん!」

「ははは!楽しいなぁ!ユウ!」

「いくぞ我が友よ!ほれ!あの極光を放ってみせい!」

「楽しいですけど!なんかこうじゃないと思います!あとステラは最初に使ったのでもう使えません!使えたとしても使ったら確定で死んじゃうので使いませんけど!」



ああ!もう!とりあえず生存第一で行きます!


「第二射用意!斉射!ついでに『ペネトレイト』!」


だけど日和った行動なんかしませんけどね!
























フレアの参戦により戦局は再びこちらに傾いた。片や自身の得意フィールドたる海を失い数多くあった触手も切り飛ばされる始末。片や最大の障害であった津波や行動を制限する海が無くなり、超強力なバフもかかり更にはレイドボスの助っ人も現れた。戦の趨勢(すうせい)はもはや明らかだった。






地面に足を着けて八艘飛びをリセットしつつ海神を見やる。

かの神は十段もあった大量の体力も9割方失い、無数に存在した触手も今は特に太い主要な触腕を残すのみとなっている。外套膜にも大きな裂傷や凍傷、火傷などが見受けられまさに満身創痍を体現したようだった。


そして今、ニアさんとフレアの攻撃で九本目の体力ゲージが0になった。残る体力ゲージは一本、最後の最後まで気を抜かないように気を付けなくちゃ。




[[BoooOOOOOOOO!!!]]



海神の咆哮が響き渡りダメージの発生しない強制ノックバックで最後の仕切り直しが行われる。



ノックバックをやり過ごし、海神に目を向けると彼は禍々しく変貌を遂げていた。


彼に残された八本の触腕はより長く、より太く強化され無数に並ぶ吸盤一つ一つが捕食口へと変わり触れるもの全てを抉り取っていた。

幾条もの裂傷を負い穴を開けていた外套膜は今や自ら穴を開き外套膜に守られていたモノを露出させていた。

彼の中には脳みそが詰められていた。

それも何千、何万の生物の死骸を練り合わせて作られた死骸の脳みそだ。



僕が『脳みそ』を視認したと同時にシステムアナウンスが流れる。


 ──『海神』の根幹に迫る者が現れました。海神の情報を更新します──


 ──真名開帳『邪神』ロゴ・トゥム・ヘレ──


 ──それでは皆様、ご武運を──



「「うぉおおお!!」」


アナウンスが終わると同時に二人の真っ赤な竜人が空を駆ける。言わずもがな我らがリーダーのニアさんと(ゲームテキスト的に)彼女の母であるフレアだ。

誰よりも機動力のある彼女らが最終フェーズの先陣を切った。少し遅れて他のプレイヤー達から怒号が上がる。


「「「速すぎんだろうがこん畜生!お前らだけに貢献度独占させねぇ!俺らも混ぜろぉ!!」」」


じゃぁ、僕も行こうかな。


「『八艘飛び』」









数分後、海神……改め『邪神』の最後のHPが削り取られ長い長いイベントがついに終結した。







ようやく終わったイベント編。あとはリザルトやって休暇に入ります。でもこのイベントでようやく今章の前半が終了しただけって言うね。




設定ゲロゲロタイム

活動報告にあげる気力が無いのでこっちにゲロします。



今イベント最終戦の海神こと邪神ちゃん戦ですがおおよそ3パターンほど戦闘バリエーションが存在しました。


先ずは本編でユウくん達が行ったドラゴン共闘ルート

前提条件のドラゴンとの協力関係の成立が激ムズなだけあって海神戦自体は一番楽になります。ただ、このルートは設定されてはいたものの運営側からしてもまさかこのルートに入るとは微塵も考えていませんでした。一部の上位者達以外は。


次に怪獣大決戦ルート

例の古代遺跡をクリアしたもののドラゴンとの協力関係が結ばれなかった場合のルートです。この場合プレイヤーは海神戦開始から一定時間後に現れるドラゴンからの攻撃を避けつつ海神を攻撃につつと言った制限戦を強いられます。なお怪獣は双方プレイヤーのことなどお構いなしに攻撃します。


最後に邪神ちゃん大覚醒ルート

これは例の古代遺跡がクリアされなかった場合のルートです。このルートでは海神の出現を察知したドラゴンが封印を破り登場するも本来の力を発揮できず邪神ちゃんにムシャムシャされ、邪神ちゃんが超強化される難易度ルナティックなルートになります。ただ、もしこのルートを攻略できた場合の報酬は他の2ルートよりもかなり豪華なものになっています。


作者は個人的には邪神ちゃん大覚醒ルートを書きたかったですけどニアさん強化のためにはフレアを生き残らせないといけないので泣く泣く共闘ルートになりました。



あ、ちなみにユウくん達が攻略した例の古代遺跡はあのあと教授が情報を流し結構な数のプレイヤーが白武器の入手に成功しています。

……え?ハック……?(誰だったっけ?)

あぁ、彼ね。彼なら洗礼ゴーレムの一段階目も突破出来ずに殴り殺されたよ。



リザルトは明日中に出せるといいなと明日の俺に期待します

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