生存戦略Extra Round2
今話は久しぶりに出てくるスキルの改めての説明と作者側の確認が主です。
あと触手てたくさん出てくるので何回出てきたか数えて後でこっそり教えてください。
あと、受験生のみんな、頑張れぇ!その地獄みたいな勉強が終われば天国が……大学生活が待っているぞ♪
まあ、大学生活が天国とは限らんがな……そう、基本ぼっちな作者とか!
こちら、ステラ二連射と言う荒技を繰り出し、上手くいけばレイド戦に大きくダメージ貢献したはずのユウです。現在、僕はニアさん達と合流すべくレイドボスの元まで全力疾走しているのですが……。
「ああ!もう!なんで急いでるときに限って邪魔ばっかり入るの!?」
先ほどから地面を割って飛び出してきた無数の触手に集られてます。
ちょっとおかしいよねぇ!?ニアさん達と一緒に居た時にはこんな触手襲ってこなかったよ!?なのになんで急に出て来たのかな!ひたすらに面倒なんだけど……。
出てきた触手は、地上に出てきた分だけでも長さ十数メートル、直径3メートルはありそうな巨大触手だった。そんなのが無数に生えてきている。
今は『姿無き者』を行使して、なんとか触手の隙間を縫って進んでいるけど、それもどこまで進めるのか分からない。と言うか『姿無き者』の効果で僕を見失った触手が、無差別に、あたり一帯を薙ぎ払い始めているからね。一撃でも当たったら即死である以上現在の触手事情ではいつか限界が来るのは目に見えている。
「……しょうがない、地道に削っていくかぁ」
曼荼羅展開。
僕の背後に8つの砲門が展開される。
「『十華』、斉射」
先ずは1本だけに狙いを集中させて、どれくらいの強度があるのか試してみる。
各砲門十発づつ、計八十発の銀弾。それが打ち込まれた触手は意外なことにあっさりと砕け散った。
「んー?案外一本だと強くないのかな?」
まあ、1本1本が弱くとも数が多くなればそれだけ事故率も上がり、相対的な脅威は増していくんだけどね。
さっきの触手を見る限り1本破壊するのに大体二十発前後、一度の斉射で4本を破壊できる……。
うん!殲滅は無理だ!だって触手は今も徐々に増え続けているんだし!これは進行方向にある物だけを的確に撃ち抜いていくのが吉だね。
再度曼荼羅を展開して触手の群れに突入する。
目指す先は異形の巨魁、うん、目印が大きいって良いね!進むべき先が直ぐにわかるよ。
レイドボスに向かって直走っていると、いつのまにか触手の密度が低くなっていることに気がついた。さっきまでは僕一人抜けられるかどうかギリギリと言った密集具合だったのが、今ではかなり余裕を持って、多少の操作ミスをしても即激突とはならない程度のゆとりがある。
うーん?どうしたんだろう?僕としては進みやすくなるから全然良いんだけど……。
目印代わりのレイドボスはもうかなり大きく見えるようになっている。って言うかコレ僕が近づいただけじゃなくてボスもこっちに近付いてるよね?じゃなきゃ僕が早すぎることになるし、若干ボスの位置がズレている事も説明が付かない。もしかしたら第二形態に移行したとか?
……急がなきゃ!こんなお祭り騒ぎなのにステラを撃っただけで終わりなんて嫌すぎる!!
現場に急行する必要性が出てきたため、触手過密状態だった時は触手との事故を恐れて使っていなかった各スキルを次々と発動させていく。
『八艘飛び』、『大跳躍』、『震脚』、『立体機動』。どれも個々の力が強すぎて僕の死因にランクインするじゃじゃ馬達の起動を確認する。過剰なまでの強化によりたった一歩で数十メートルを移動する。
さて……。
「『人外観測眼』並びに『臨界観測眼』起動」
そんなじゃじゃ馬達を飼い慣らすためのスキルを起動させた。
『人外観測眼』により僕の時間が引き延ばされる。
もっとも加速するのは僕の意識のみなので体はゆっくりとしか動かないんだけどね。
その引き延ばされた時間で触手を視る。
『臨界観測眼』僕の体力がゼロになる攻撃のみ攻撃予測線が表示されるスキル。
同時にほぼ全ての攻撃が即死圏内に僕にとっては全ての攻撃を見切る為のスキルでもある。このスキルを使い灰色の攻撃予想線が出ない触手を見つける。
見つけた。
発見と同時に大跳躍、数瞬の間をおかず着触手。
そう、攻撃予測線が出ていないと言うこと、逆説的に考えれば少なくとも数秒間はその触手はなんらかのアクションを起こさないと言うことだ!ならば使い捨ての足場程度にはなるだろう。
着触手と同時に再度跳躍、遥か眼下に触手を置き去りにして『八艘飛び』で空を駆け抜ける。
『八艘飛び』、空中を8回まで足場にすることができるスキル。一歩空中を飛ぶたびに自身の跳躍に強化が付くとてもお得な自殺スキル。
そして八艘飛びの効果が無くなったら曼荼羅を広げ、僕を叩き落とそうとする地上の触手を殲滅。残した攻撃意思のない触手に向かって超高速落下ドロップキックを喰らわせる。
最近、というかこのイベント中に知ったことだけど、どうやらこのゲーム、落下ダメージと落下攻撃には明確な違いがあるようです。僕がこの事に気づいたのは『稲穂の雷鳥』戦の後に襲いかかってきたプレイヤー集団との戦いだった。その時に何回か八艘飛びの歩数管理をミスしてうっかり落ちてしまうことがあったのだけれど『落下死するぐらいなら玉砕覚悟で道連れにしてやらぁ!』と落下中に無理やり飛び蹴りを放ってみたところ、なんと相手を葬りながら生存することが出来たのだ。詰まるところ……。
「落下しても間に敵を挟めば反動ダメージこそ喰らうものの死にはしない……!」
頭上強襲攻撃を受けて千切れ飛ぶ触手を尻目に次の触手《足場》を選定する。よし、君に決めた!
触手に飛び乗り、空へと上がり、八艘飛びで距離を稼ぐ。この繰り返しでボスの元まで行こうかな?多少集中し無ければいけないとは言え地上を進むよりも圧倒的に速く進めるだろうからね。さて、後2、3回繰り返せばボスまで届くかな?
残念、三回では届きませんでした。現在4回目の跳躍でようやくボスと戦っているプレイヤー達をはっきりと視認することができる距離までやって来れた。
地上では大勢のプレイヤーがボスの巨体に群がり各々殴りかかっている様子や、非常に見覚えのある明らかに刀身の長さを無視した距離の触手やたまに本体まで斬っている勇者、素手で殴っているはずなのに明らかに人体が奏でる音以外音、具体的にはなぜか金属音が聞こえる仙人が見える。少し離れたところではちょっとした物見櫓が建設され、バリトンボイスのショタが司令官を務めている。
少し視点を上げて高台を見ると攻撃魔法職たちが色とりどりの魔法で弾幕を張っている。ただそこに弓術士達の物理攻撃が混じっていないのが少し悲しい。まあ、そんなことは置いといて。雑多な魔法職の中でもネルネルさんは非常に目立っていた。何せ一人だけ展開している魔法陣の数が多いし、一つ一つも他の人に比べて倍近く大きいのだ、一眼見て直ぐにわかった。
あと、ここからでは確認できないがガン爺やルーレットさんもたぶんどこかで活躍しているのだろう。
最後にさらに視点を上げて、僕と同じ高度まで持ってくる。そこには左手に持つ大楯で触手をはじき返し、右手に持つ大剣で届く範囲のもの、届かないはずの範囲のものもまとめて切り裂く、美しき竜人が居た。言わずもがな我らがリーダー、ニアさんである。さて、約束通り合流はしたんだけどこのままじゃ話せないね。八艘飛びは移動手段としては強力なんだけど唯一の欠点としては止まることが出来ないことかな?あと細かい調整が効かない。ん?二つだったかも?
とりあえず一回地面に降りてから後のことは考えよう。そろそろ歩数が無くなる。
「……次のクッションは君に決めたぁ!」
ふう、無事に着地成功。
さてさて、どうお話ししようかな?
ん、決めた。取り憑こう!
とりあえず適当な触手を足場にして大空にFly away!今回は八艘飛びは使わない普通の大跳躍。跳躍の慣性が消え、一瞬静止する瞬間にアーツを使う。
「『巻き付き』『引き寄せ』!」
僕が飛ばした鎖は見事にニアさんの胴体に巻き付き、そのまま僕を引きずり始めた。そしてそのままニアさんに激突した。
「んお!?なんだ!ってユウか……。ってユウか!?お前こんなとこで何してんだよ、普通に加入申請送れよな」
「あはは、ちょっとお話ししたいなぁって思いまして」
「それだったら加入後にパーティーチャットで話せば良いじゃん」
「あ……」
「あ……ってお前…忘れてたな?」
うん、完全に忘れてました。そうだよ、何もこんなことしなくても会話手段あったじゃん!
「ま、まあとりあえず申請送りますね」
「ほいほい、許可っと。で、話って?」
「今からアレに向かって突撃するので一緒に行きませんか?って誘おうと思ったんです」
「よし行く、あ、そうだ。あいつに近寄る際の注意なんだがあんまり近くにいすぎると恐ろしい勢いで発狂のスタック値が溜まってくからな。あと外套膜が光り始めたら全力で退避しろよ?防御貫通の全周囲範囲攻撃の合図だからな」
「わかりました、でも発狂の方は大丈夫かな?スキルに発狂耐性があるので」
「うわ、いいなぁズルい」
「たぶんこの戦いが終わったら生えてるんじゃないですかね?」
「それだと遅いじゃん……。ま、征くか♪」
「はい!あ、ニアさん!ちょっと遊びましょう!」
「いいぞー!何するんだ?」
「それはですねー…………。」
ごにょごにょごにょ……。
「面白いなそれ!早速行くぞ!」
「はい!」
今からやること!
Step1 ニアさんに巻き付かせていた鎖を解きます。
Step2 ニアさんが大剣を大きく振りかぶり、その大剣の腹に僕が装填されます
Step3 ニアさんがアーツのタメを最大まで蓄積します。その間に僕はある矢を準備します。
Step4 ニアさん全力の射出と共に僕も飛び出します!
「行くぞユウ!『フェイタルスマッシュ』!」
本来なら僕如きの防御力なら風圧でも倒せてしまいそうなアーツなんだけどパーティー内ff防止によりノーダメージで、且つこのアーツの持つ全アーツ中最高位のノックバックを利用して……僕は、砲弾になる!名付けて『空対地狙撃人間砲弾: YŪ』。
ボスに向かって突き進む中、僕は姿勢を整える。爪先から指先まで一直線になるように……。突撃の威力が全てボスに、【海神】に伝わり切るように。刹那の時も置かずに着弾の衝撃が僕を襲った。視界の端で急速に減少を始める僕のHP。4割、3割、2割と減っていき1割を切って八分程を残してなんとか生き残った。
けどもたもたしている暇はない。なんと言ってもここはボスの上なんだから!
素早く用意していた矢を番え、撃ち出す。
「貫け!『鎧通し』!『アンコールショット』!」
僕の持つ近接射撃アーツ最強を二連続で叩き込む。
放った矢は海神にしっかりと突き刺さり、直後魔力を噴射し回転しながら加速を始めた。
僕が今回使用したのは『魔力噴射式加速矢』、効果は文字通り魔力を噴射して加速する矢だ。それ以下でもそれ以上でもなく単純な威力だけならフレアに使った槍矢の方が強いし、なんなら1本あたりのコスパも断然槍矢の方が良い。なら何故今この矢を選択したのか、それはこの矢の特性にある。
この矢は使用した時に回転しながら加速するのだが実はまだ隠された力がある。それが『貫通』と『多段ヒット』、なんとなくもうわかったかと思うけどこの矢はチャージした魔力が切れるまで進み続け、ヒットし続けるのだ。もちろん欠点もある。と言うか割と欠点だらけだったりする。
先ず、使う時にチャージが必要、最低でも1秒、最大チャージまですると10秒以上かかるため高速戦闘では使い物にならない。次に弾速、この矢は敵に触れ続ける限り多段ヒットするのだがいかんせん『加速矢』だけあって弾速が非常に速い。小型の敵だと大体着弾した時の1ヒットだけ、運が良くて2ヒットすることが稀にある。これじゃ普通の矢を使った方が速い。最後にコストが高いことだ、お値段なんと僕が普段使いしている毒矢の二十五倍、わぁすごい。さらに回収、再利用ができれば良いけれど大体が回収不能なほど遠くに飛んでいく。運良く回収できたとしても最重要な加速装置みたいなのが壊れていて使い物にならない。そんな感じで普段使いなんて絶対に出来ない代物なんです。
それでも使う相手、使う環境が整えば凄まじい火力を叩き出すのがこの矢の特徴でもあるんだけどね。
特に今回みたいにそこらの山よりも大きな相手で、初めから矢を使い潰す前提なら尚更……!
そして、さらに嬉しい誤算が二つ。先ず加速矢は僕の手を離れ、加速多段ヒットになっても僕の攻撃という判定は外れることが無かったようで一ヒットごとに僕のHP、MPが急速に回復していること。二つ目は僕の攻撃と言う判定があることと多段ヒットという二つが合わさって称号『狂気に染まる審判者』と凄まじいシナジーを発揮してしまったことだ。称号『狂気に染まる審判者』には自身の攻撃に低確率で状態異常効果を付与すると言う効果があるんだけど、どうやらそれが多段ヒットの一発一発に適応されてしまったようで……。普通、状態異常を通しにくいはずのボスを強引に状態異常にさせてしまったようだ。僕の識別じゃあなんの状態異常になったのかわからないけど頭上に浮かぶボスの簡易ステータスにさっきまでついていなかったアイコンが追加されているので間違いないはず……。
っと、色々考えてたら時間切れみたい。海神の外套膜が光り始めてるね。チラッと背後を見てニアさんの位置を確認して、跳躍。海神の表面から急速離脱してニアさんの背中に貼り付く。
「よう、ユウ。なんか色々やってたみたいだな?」
「ええ、予想以上に上手くいって私も驚いています」
「はは、そうか!じゃあ次のターンも張り切って行くぞ!」
10本ある海神の体力ゲージ、その三本目ももうじき削り終わる。さあ、残りも頑張ろう!
【灼熱竜母】フレア・ラムダ 到着まで残り60秒
なんかめっちゃ読みにくくなったね、今回の話。
次回はちゃんと戦闘頑張るから、頑張れ未来の俺、面倒なことは全部任せたぞ。