生存戦略 Part14
今回は女子会です。
……男(仮)が書く女子会、カオスになった気がしますけど気にしないでいただけると幸いです。
イベント6日目
長かったイベントも残すところ今日と明日を残すのみとなった。
他の人は終盤の詰めとして採取や狩猟、プレイヤーハントに精を出している事だろう。かく言う僕たちのパーティーの男衆も元気に外に出て行ったからね。
では、僕たち女衆は何をしているかと言うと……。
「それでは講義を始めます」
「「よろしくお願いします」」
ネルネルさんが教師役となりスキルの熟練値について教えてもらってる。
ニアさんは特に受ける必要はなかったのだけど何故か僕の隣に座って講義を聞いている。
「先ずはメニュー画面からお知らせページを開いてください」
「はい」
言われた通りに運営からのお知らせが届くページを開く。
お知らせメールは数件あり、既読済みなのは二件。イベント情報が載っていたものしか読んでない事がわかる。
「その中の三通目、『スキルの熟練値実装について』を開いてください」
「はい」
三通目と言うことは第一回イベントのお知らせの次のお知らせだね。うん、読んでない。
「開いた?そしたら一通り目を通してくだい」
えーと、はい。長いので要約すると……。
各スキルにレベルとは別に熟練値システムを追加しました。
熟練値とは各スキルのアーツ毎に設定され、そのアーツの使用回数に応じて上昇します。
各アーツはこの熟練度を使用してさまざまなカスタムを施す事ができます。
原則としてSPと同じように振り戻しすることはできないので慎重に考えた後、強化しましょう。
熟練値を使ってあなただけのオリジナルのアーツを作り出しましょう!
こんな感じかな?うん、めっちゃ面白そうじゃん!なんで今まで知らなかったんだろ?お知らせを見なかったからだね。次からちゃんとログインしたら先ずはお知らせを確認することにしよう。
「読み終わった?」
「はい、こんなシステムあったんですね」
「うん、結構稼働初期の頃からあったんだけどね。これで熟練値の重要性が分かったかな?それじゃあ次は実際にいじってみよう。ステータス欄を開いてセットしているスキルを選択した後もう一度タッチして。そうするとそのスキルで習得しているアーツが出てくるよね?出てきたらそのアーツをダブルタップだよ」
「はい」
取り敢えず一番溜まっていそうな弾幕曼荼羅を選択する。
すると、スキルがピックアップされ付随するアーツの情報が表示された。
『弾幕曼荼羅』
┠『十香』
┠『八葉』
┗『無属性攻撃』
ここまではアーツの確認でやったことはある。けどまさかこの先があったなんて……。
取り敢えず『無属性攻撃』を二回タップする。
『無属性攻撃』
熟練値 : 831p
基礎攻撃力上昇 : 0p
射程距離拡張 : 0p
防御貫通拡張 : 0p
MP消費削減 : 0p
再使用時間短縮 : 0p
クリティカル威力上昇 : 0p
クリティカル率上昇 : 0p
なるほど、これで振り分ければ良いのか。
溜まってるポイントは831、高いのか低いのか分からないけど。
「開けた?」
「はい、ありがとうございます。なんとか出来そうです」
「良かった。それじゃあ漸く本題に入れるね」
「え?」
「ん?ここからが本題だよ?それぞれどれくらいの効果が有るか、どのアーツにはどんな割り振りが良いのか、やったらダメな割り振りとか教えなきゃいけないし。攻撃系スキルの他に防御系、機動系、支援系、特殊系のスキルの話もしなきゃね」
え、えーと…。思ってたのの数倍ぐらい覚えなきゃいけないようです……。
「それじゃあ、始めるよ?メモの準備とか大丈夫?分からないことがあったらすぐに聞いてね?わかった気持ちになっただけなのが一番危ないから」
「はい…よろしくお願いします」
………………
…………
……
ネルネルさんの熟練度講義は昼食を摂る前になんとか修了できた。
えーと、開始は午前8時で、現在12時過ぎ程だから5時間も講義を聞いていたことになるね。けど長時間学んだ甲斐あって全てのアーツの熟練値の割り振り、特性の把握などほぼ完璧に学び切れた。
さて、これで今日メインでやりたい事は終わったけどまだまだ日は高い。
午前中の先生はネルネルさんだったけど午後からの先生役は僕に代わって料理教室の開催だ。
……女3人寄れば姦しい。その通りだったね。
いや、僕の現実も女性が3人どころではなく沢山いるけど基本的に仕事中は『女性』ではなく『メイド』として働いているので煩くなることは無いんだけどね?だから失念していたと言い訳させてもらうよ。
「うー、えい!あれ?なら……『付与鋭利」
「あ!?ちょっと!ネルネルさん待って!切りにくいからってエンチャ使わないで!あと切るときはちゃんと食材を手で押さえて……!って指を丸めて!?その押さえ方だと指が飛ぶ!?」
「ははは、ネル!随分と苦戦しているな!私は昨日ユウに教えて貰ったから完璧だぞ!……アレ……ナンカチガウ……」
「え?……あー、それ短冊切りですね。予定ではいちょう切りにする予定でしたけどそっちでも問題ないですよ」
「……そうか!まあ問題ないなら大丈夫か!」
「ふっ、ニアも私の事言えないじゃん」
「私は基本は出来てるけどな」
「「…………。(絶対負けない)」」
「あー、はいはい!喧嘩しない!人それぞれペースがあるから!競争しても意味ないですよ」
あれ?料理ってこんなに大変だったっけ?僕が葛西たちから教わったときはもっとこう……あれ?やっぱりこんな感じだったかも?
「さあさあ、どんどん続けますよぉ!ネルネルさんは基礎基本を徹底的に仕込みます!大丈夫!スキルが無くても手動で全部できるようになれば良いだけですから!ニアさんは昨日教えたことは完璧ですからその応用とより上位のテクニックを頑張りましょう!」
「「はーい」」
それにしてもネルネルさんまで料理教室に参加するとは予想外だった。
どうやら昨日のアポロさんとニアさんの睦合いを見て少々危機感を覚えたらしい。「あれ?私、一切料理出来ないな?」と。
それになんとネルネルさんは本当の意味で初心者だった。生まれてこの方フライパンを持ったことも包丁を握ったこともないらしい。
うん、通りであんなに危ない使い方をするわけだ。昼間の時間のある時にやって良かった……。これが夕食時の忙しい時だったら絶対に面倒見きれなかったもん。
さてさて、二人の面倒を見つつ僕も新しいことを始めようかね。
というのも先ほどの熟練度講義の中で発見した事だったんだけど、なんと生産系スキルである料理スキルにもアーツが存在したのだ。
……まあ、そのアーツもわざわざMPを消費してやるまでも無く僕が自力でできるようなことばっかりだったんだけどね?それでも僕じゃ出来ない事を補ってくれるスキルもあったからそれを使ってみようと思う。上手くできるかな?
ストレージからとあるアイテムを取り出す。
「さて、『薬草茶』」
アーツが使用されると手に持っていたアイテム『ヒルルク草』が消費され事前に用意していたポットの中のお湯が『薬草茶』になった。……なったはずだ。
ちなみに『ヒルルク草』は一般的に上級のポーションを製作する際に使用する効能が高いとされれている薬草だ。
「少し飲んでみようか」
近くにあったカップに少しだけ注いでみる。
すると新緑色の液体が出てきた。うん、確実にアーツは効果を発揮しているね。
味はどうだろう?一口だけ口に含んでみる。
「んぅぅ!?」
なにこれ!?香りきっつい!
なんていうんだろ?青臭いとかそういうわけじゃないし、香り自体は僕の好みなんだけど、ただただ強い。というか濃い!もはや煮出したレベルだよ!?これは失敗だね。飲めたもんじゃないや。
アーツの説明に『紅茶の代用として』と書かれていたから使ってみたけどダメっぽい。もったいないけどこれは廃棄させてもらおう。
「はぁ、普通に茶葉が有ればなぁ」
「ん?茶葉ならあるぞ?」
「え?」
思わぬところから茶葉が出てきた。
ていうかなんであなたが茶葉持ってるんですかニアさん。あなた料理出来なかったでしょ?
「いや、アポロが紅茶淹れるの上手いからさ。ストレージに入れっぱなしにしてたやつなんだよ」
「じゃあ、いただいても?」
「うん、昼食終わったら渡すよ。そしたら女子会しような!」
その後つつが無く騒がし……賑やかな料理教室は閉会した。出来上がった料理もニアさんのは料理2日目とは思えないほどの出来だったし、ネルネルさんの料理もやり始めのとんでも行動があったものの及第点ではあった。
「じゃあ女子会だ!」
「そうだね」
「……ところで女子会って何やるんですか?」
「えー、恋バナ?」
食事もおわり、僕が割と本気で淹れた紅茶を用意して女子会だ。
にしても、恋バナねぇ。生まれてこの方浮いた話なんて一回もなかったけど……。
……あ、さらっと流してたけど僕、男だったね。『こっち』の身体に長くなり過ぎていたせいで自分の性別を忘れてたよ。
「じゃあ、わたしから行くぞ!わたしはアポロが好きだ!一緒に居るだけで幸せだしあいつが甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのが大好きだ!」
「「うん、知ってる」」
「だよなぁ」
「もともとファジー界公認夫婦プレイヤーとして掲示板でも有名だった」
「それに昨日のアレですよね。アポロさんの背中が心配だなぁ」
恋バナ第一弾はニアさんが先陣を切った。とはいえ昨日のことが有るしネルネルさんの発言からするに随分と昔から掲示板を賑わせていたらしい。
「逆にニアさんってアポロさん以外の男性を好きになったことあるんですか?」
「ないぞ?はじめての友人もアポロだし初恋もアポロだ。所謂幼馴染みで腐れ縁、恋人兼婚約者ってやつだな!だからアポロ以外に異性を感じたこともないし意識したこともない。そうやって聞くユウはどうなんだ?」
「私?私ですかぁ……。無いですね」
「ん?ユウ、隠し事はよく無いよ?私達しかいないし言っちゃいなよ」
いや、無い事を言えと言われましても……正直に言おう。
「本当に無いんですよ、多分初恋もまだだと思います。異性、同性共に恋愛という目線で見たことがない気がします」
「あー、そう言えばユウって弱冠10歳で海外の大学卒業してたっけ?んで、その後に……あー、そのアレがあったから、うん、恋愛とかやってる暇なんか無いわ」
「えー、こんなに可愛いのに勿体ない。あれ?ユウって何歳だったっけ?」
「一応十八歳です」
まあ、恋愛は出来なくても結婚は簡単にできると思うけどね?僕の資産が欲しい人はたくさん居るし。でもそういう人とは関わりたくないからやっぱり結婚できないかな?
「うー、勿体ない。花の命は短いんだよ?」
「うーん、そう言われても興味の持てないことに打ち込む気も湧かないですし……。ネルネルさんは良い人とか居るんですか?」
僕にこれだけ聞いてきたんだ。当然何かしらの話が聞けるんでしょう?
「あー、私ね。うん、今失恋中なんだ……」
「「あ」」
あ、もしかして僕やっちゃった?
「昔からそうなんだけどね……私と付き合った人って急激にカッコよくなるんだ……。恋は人を変えるって言うけどまさにそんな感じでね?それでしばらくすると「別れてくれ、本当に好きな人が出来たんだ」って。みんなみんなそうやって私から離れていっちゃうんだ…………。ぐす……」
「わぁぁあ!ごめん!ネルネルさんごめんなさい!落ち着いて!」
「そうだぞ!ネル落ち着けよ!?むしろそんなクズ男だったって分かっただけ良かったじゃないか!そんなやつネルに相応しくない、もっと良い人がきっと居るさ!」
「……そう思ってこの人ならって思っても結局私から離れていったもん…………」
この後はお茶会なんて雰囲気ではなく僕とニアさん二人がかりで必死にネルネルさんを慰める会になってしまった。
その中で何故か『オフ会』なるものをやろうと言う話になってしまったけど……。オフ会ってなに?
現実で会うことなのかな?だとするとちょっと困るなぁ僕って一人での外出って認められてないんだよね。伊達に誘拐されてるわけじゃないんだぜ?
とりあえずこのイベントが終わったら少し投稿が空くかもしれません。新しく挑戦したいことがあるのでそちらに注力するためです。その挑戦が成功するにしろ失敗するにしろひと段落ついたらまたこちらに戻ってくるのでご理解のほどよろしくお願いします。