表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/72

生存戦略 Part11

長らくお待たせいたしました。

蚊帳復活です!

正直死んだか?と思った方もいるでしょう

なんとか復活しました。と言うかただの難産です。どこを書いてどこを切るか、むしろ全部書くかで悩みまくってました。


それでは今後ともよろしくお願いします。





右区画の攻略がとある斬り狂い勇者の活躍でサクサク終わったので、『これなら左区画こっちも楽勝だろ』と攻略に乗り出した。



……乗り出したのは良いんだけど……。






「前衛離脱してください!弾幕張ります!その間に回復を!」

「すまん!助かる!」



僕たちは予想外の苦戦を強いられていた。


弱い敵が散発的に襲いかって来た右区画とは異なり、左区画は五つの大部屋が連結した区画で連続して強い敵と戦う。所謂ボスラッシュと呼ばれるステージがこの左区画だった。



「っ!また顔が変わった!教授、弱点属性の特定急いで!」

「わかっておる!『解析アナライズ』!…………っ!炎じゃ!燃やしてやれ!」

「『火炎爆炎獄炎フレイムバーンインフェルノ』!」



現在、僕たちが戦っているのは『マルティプルヘッドスタチュー』と言うゴーレム種のボス。見た目は多腕多脚、十数個の顔を周囲に浮かべている。不気味な見た目だ。

そして、最大の特徴は自身の顔を周囲に浮かべている顔と入れ替える事で弱点属性を変化させると言う事だ。

これがひたすらにめんどくさい。最初の方は属性無視でひたすら殴れば良いと思っていたけど、どうやらこのボス、対応した属性で殴らないと殆どダメージが入らないようなのだ。

物理攻撃もゴーレム種特有の防御力で碌に入らない。僕の弾幕は一応効果はあるようだけど、それもわずかな足止め程度にしかならない。

まあ、僕の弾幕は無属性。言ってしまえば魔法ダメージが入る物理攻撃と対して変わらないからね。

ダメージソースが実質的にネルネルさん一人しかいない状況での戦闘。遅々として減らない体力、頻繁に入れ替わる顔。


とにかくストレスの溜まるボスだった。


それでも確実に体力を削り、漸く討伐した。

体力を削り切り、敵が消滅するまでの僅かな時間にみんなで死体を足蹴にしたことはきっと許されるだろう。


しかし、これで漸く二部屋目(・・・・)。先が思いやられる。




ちなみに一部屋目のボスはジャイアントゴーレムというただただ大きいだけの普通のゴーレムだった。





左区画三部屋目


出てきたのは見るからに『物理耐久型です』と言わんばかりの要塞のような巨大ゴーレム。

HPは何と二段階に表示されている。


また耐久戦かよ。


誰も何も言わないが雰囲気だけで辟易しているのがわかる。


とりあえず弾幕張りまーす。


いつも通りの初手弾幕。

予想通り遅々として減らない体力。


ここで予想外の、それも良い意味での想定外が起きた。このゴーレム、反撃手段が要塞の壁面から棘を突き出すしか無かったのだ。

もちろんこの後体力減少に伴い攻撃手段が変化する事もあり得るだろうが、今は関係ない。


イライラ解消も兼ねて全力で弾幕を張る。ゴーレムが巨体ゆえに前方であればどこを狙ってもヒットする。僕は攻撃が当たればドレイン効果でMPを回復できる。故に弾幕は止まる事なくよりその密度を増していく。


戦闘時間約30分。僕の弾幕で削り殺しただけの時間だった。

え?他の仲間は何をしていたのか?それぞれ休憩していましたよ?僕の弾幕で安全に処理できているうちは無駄なリスクを犯す必要もありませんし。






四部屋目のボスは空を飛ぶゴーレムだった。

非常に珍しい空を飛ぶ敵であり、対策をしていないと一方的に嬲られてしまうタイプの敵だ。


しかし、対策が出来ているならばこれ程戦い易い敵もいないだろう。こんな風にね。


「あー、はい。動き止まりました」

「『サンダーボルト』」

「「「「タコ殴りじゃあー!」」」」

「あー、ゴーレム種ってデバフ入りづらいんだよなぁ」



空を飛ぶゴーレム、最初は面食らったけど、僕の対空弾幕で動きを制限してネルネルさんが雷撃の一撃を入れる事に成功すればショートしたような状態になり簡単に地面に落ちてしまう。そうなれば近接組が総出でボコボコにする。これの繰り返しだ。

体力を半分ほど削ったら少し速くなったり、地面に落ちづらくなったりしたけどそれも弾幕で動きを制限してしまえる以上大した問題にもならない。


ボスとは思えないほど何もさせて貰えずに空飛ぶゴーレム、『エアリアルゴーレム』は砕け散った。




左区画の最奥部。五部屋目。

『今までの部屋とは格が違う』そう示すかのように巨大で荘厳な雰囲気の扉の前に立つ。


「みんな、用意はいいな?」


「「「「「「おう(はい)!」」」」」」


「よし……ラストバトル……いくぞ!」


ニアさんが号令とともに扉に触れる。

ゴリゴリと言う低い地響きと共にゆっくりゆっくりと扉が開く。





ラストバトルの舞台となる部屋。そこはとんでもなく広かった。気のせいでも何でもなく今まで戦ってきた部屋、それこそ試練を受けた部屋よりも広い。


……いや!おかしいでしょう!?外から見たときこんな大きなスペース確認できなかったよ!?異次元空間でも広がってるの!?


「ユウ!気を抜くな、来るぞ!」


ニアさんの叱責にハッとする。


視線を前に戻すと最後のボスが顕現している。


鋭い眼光、流線型の大きな頭部、硬い装甲に守られた胴体、大地を踏みしめた四肢、太く長い尾。


ゴーレム種ゆえに機械で形作られていたがそれは紛れもなくドラゴンだった。



とりあえず識別。


______

シールドドラゴン


______


名前だけでレベル表示すら無し。

つまり格上の敵!


同時に識別していたらしい教授からも情報が共有される。


「敵の名前は『シールドドラゴン』、レベルは79、弱点属性は無し、物理耐性持ちでHPバーは一本だ!」


やっぱり本職は違うね。より詳しい情報が得られる。


「っ!全員私の後ろに下がれ!『フォートレススタンス』『タワーガード』『バイタリティアップ』『ガードポイント』!」


突然、ニアさんが叫び、盾を構える。

よく分からなかったが本能的に従い、ニアさんの後ろに隠れる。


次の瞬間、目の前が炎で埋め尽くされた。いや、正確にはニアさんが構えた盾に極太のレーザーブレスが衝突し、飛び散った残滓で僕のHPの9割が消し飛んだ。


あっぶな!もう少しニアさんの影からはみ出てたら即死してた!?


レーザーブレスは数秒間続き、ようやく治まった。


「全員無事か!?」

「はい!瀕死です!」

「よし!元気そうだ……いや、マジで瀕死じゃねぇか!?早く回復しろ!」


そんな茶番を演じつつHPポーションを使用して体力を回復させる。

ちなみにニアさんのHPはレーザーブレスを抑え続けたにも関わらず半分以上残っている。


「よし!初撃は耐えた、今度はこっちの番だ!ぶちかませネルネル!」

「……言われなくてもそのつもり!『いと古き原初の光よ、闇を焼きて現れよ《千却万雷》』!」


ネルネルさんが放った極大の雷撃がドラゴンに直撃する。


「いくぞお前ら!『我に続け』ぇ!」


ニアさんが前衛組を引き連れて突貫する。その際、なんらかのスキルを使ったのかドラゴンの視線がニアさんに固定された。


「うん、好都合だね。私も前に出るから支援砲撃は任せました」


ステータスを素早く入れ替え、隠密状態に補正のある『消音技術』と隠密状態で行った攻撃がクリティカルヒットした時に威力を極大上昇させる『暗殺』をセットする。そして『隠密』を起動。

途端に僕にかかっていたドラゴンからの敵視が外れる。そのまま数秒ほど待ち完全に隠密状態に入ったことを確認し移動を開始する。

前方にはニアさん率いる前衛組がドラゴンと激戦を繰り広げているのが見える。その調子でどんどん敵愾心を集めていてほしい。

さて、これからやりたいことをやるためにはまず敵に近づかないといけない。しかしドラゴンの足元では激しい戦いが展開している。ではどうするか……。


上から奇襲するしか無いな!


そうと決まれば即行動。二つの観測眼を起動して八艘跳び。いくら広い空間で天井も高いとはいえ空間に限りがあるのは事実、天井に頭をぶつけないように気をつけながら空中を跳んで慎重にドラゴンの上に移動。腕装備に仕込んである矢の中から最も威力のある矢を召喚し。そのまま落下する。

眼下に見えるドラゴンが急速に大きくなっていく。

チャンスは一度、遠すぎるとアーツが発動しないし近すぎてもアーツを放ち終わる前にドラゴンに衝突してしまう難しい距離。弓に矢をつがえ、限界まで引き絞り距離を見極める……。


今!


「『十華』『鎧通し』!」


僕の弓から放たれた矢は空中で増幅し十本に増える。

同時に装備の効果が発動し、隠密状態で放たれた攻撃は全て漏れ無く確定クリティカル判定となる。

そして『暗殺』により威力の極大上昇を受けた矢は過たずドラゴンの頭部を強襲する。


これが今の僕にできる最高火力。正直スキルの効果を確認して『もしかしたらこういう組み合わせもできるかも……』と考えていただけで実戦投入は初めてだったけど上手くいって良かった。


成功を確認しても気を抜くのはまだ早い。何せ僕はまだ『落下中』なのだから。このままだと矢の後を追って僕もドラゴンに強襲を仕掛けてしまうので八艘跳びにて真横に飛び一気に離脱を図る。


…………残りの歩数って何歩だったっけ?


飛び上がって、二段目で一歩使用。移動で二歩使用。微調整で四歩使用。そして今、離脱に一歩使用……。



着地用がない……!


くっ、せっかくカッコよく奇襲を決めたのにこんなダサい死に方なんてしたくない!

なにか、なにか打開策は……。


「ちょ!ユウ!ストップ!ストーップ!ぶつかブヘ!?」

「え、きゃ!?」


必死に考えを巡らせていたら何かにぶつかって止まった。HPはギリギリ耐えきったみたい。


「いった!なに!?」


僕にぶつかった不届き者を確認する……。

おや、なんで最後尾にいたルーレットさんが僕の下にいるの?


「あ、そっか。『大跳躍』と『八艘跳び』の最終強化倍率でここまで吹き飛んだのか」

「あのー、何か納得したみたいだけど早く降りてくれない?重ぃグゥ!?」


乙女に向かって重いなど許しません。少々制裁を加えつつルーレットさんの上から降りる。


「あら、ごめんなさいね?」


あとは母さま仕込みのアルカイックスマイルで謝罪して誤魔化そう。

って言うかルーレットさんが居なかったら僕ふつうに死んでたんじゃ……。今日の夕ご飯はいつもより気合を入れて作ろうっと。



って今は戦闘中!慌ててドラゴンの方を振り向くと、倒れ伏したドラゴンに前衛組が群がり一切の途切れなく攻撃を叩き込んでいた。

よく状況が理解出来ないけどチャンスだってことはわかった。

なら弾幕だ。


「曼荼羅展開」


ニアさんから聞いた話だけどパーティー内フレンドリーファイア防止を設定しているとの事だったので味方への誤射の心配なく弾幕をバラまける。


「一斉掃射」


秒間八十発の白銀の暴力がドラゴンに襲いかかる。

それに合わせてネルネルさんの魔法爆撃も次々と炸裂する。


大勢は決した。

これ以上はどうやってもドラゴンに逆転の目は無いだろう。

程なくしてその予感は事実として確定した。


「これで!トドメぇ!」


ニアさんの振り下ろした大剣を受け、ドラゴンはついに力尽きた。


「……私達の勝利だ!!!」


勝鬨をあげながら後衛組の所まで戻ってくる前衛組。


「いやー、ユウ上空からの奇襲凄かったな!本当に助かった!」

「そうだな、あの奇襲でシールドドラゴンがダウンした事が俺たち前衛組のリズムを作ったよな」

「うむ!」

「斬りごたえ最高でした……」

「あはは、ありがとうございます」


どうやら僕の落下奇襲はドラゴンを一時的に行動不能に陥らせていたみたいだ。やった本人は歩数管理を間違えて死にかかっていたけど……。


ニアさんたち前衛組の背後を見ると巨大なドラゴン。『シールドドラゴン』の亡骸が見える。これを僕たちが倒したんだなぁ。少し感動。


…………なんでだろう、どこか違和感がある。


いや、そうだよ。『亡骸』。なんでHP全損してるのにまだそこにあるの?これはおかしい、HPがゼロになればモンスターもプレイヤーも分け隔てなく全て電子のカケラに変わるはずなのに。


「ニアさん、このドラゴン何かおかしい」

「んん?何かってなにさ?」


僕がもう少し詳しく説明しようとした時。


ピキッ


と、小さく。しかし確かに何かに亀裂が入る音がした。


「全員警戒!」


祝勝ムードだった他のメンバーもリーダーの警戒指示に即座に従う。この即時反応のようなものもトッププレイヤーたる所以なのかもしれない。


全員が武器(メガネやダイスも居る)を構え、体勢を整えたとき再び。ピキッと先程よりも大きな音が響いた。


「おいおいおいおい、冗談じゃねぇぞ!?」


アポロさんの焦った声が聞こえる。

それもそうだろう。


「倒したのになんでまだ動いてるんだよ!」


つい数分前に倒したばかりのドラゴンが再び動き出しているのだから。

そして、先程から聞こえた亀裂音もドラゴンの亡骸から響いている。


装甲を剥離させながら立ち上がるドラゴン。

重厚な装甲をまるで拘束具であるかのように振り払う。

完全に立ち上がったその体には機械的な装甲は一切なく、力強く美しい生物の体があった。


「はは、マジか」


普段澄ました雰囲気を崩さないバウアーさんの口調が崩れ、素が出ている。


「『識別』」


_________

???


_________



あっは、遂に名前まで不明とか……。


「ねぇ、教授。識別出来ました?」


この中で、いや、全プレイヤー中唯一識別に成功する可能性がある教授に問いかける。


「うむ、名前とレベルだけだがな」


そっか、教授でもそれぐらいしかわからないんだ。


「かの龍の名は『【海神焼却機関】フレア・ラムダ』レベルは85。正真正銘の化け物だ」



現状のレベルキャップすら超えているドラゴン。

絶望が形を持って僕たちに襲いかかってきた。










後半に続くんじゃよ?

今週中には上げたいです……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ