生存戦略 Part8
一週間ちょっと振りですかね。お待たせしました。
あとブクマ、評価ありがとうございます。
よろしくお願いします。
襲撃者に荒らされた拠点の整備や修繕はガン爺たち生産職がやってくれるようで、午後から探索の時間を取ることができた。これで心置きなく草原の石遺跡を探索できるね。
それじゃ、出発。
はい、到着。特に何事もなく遺跡までつく事ができた。
「それにしても近くで見ると結構大きいな」
上空から見下ろした時はそこまで大きくは見えなかったが近づいてみると随分と大きい。東京ドーム2、3個分くらいは軽くあるんじゃないかな?
それにこれだけの大きさの石製遺跡か……。滅んだ文明はかなり高度な技術を持っていたんだろうな……。
なんとなく感慨深くなって遺跡の外壁に触ってみる。指先から伝わる冷たさがこの遺跡の積み重ねた年月を感じさせ…………ん?ちょっと待て?
もう一度念入りに触ったり叩いたりしてみる。
やっぱりだ、触ってみて初めてわかったけどこれ石じゃない。石に見えるけど金属だ。
「でも、鉄じゃないね。何だろう?」
調べてみたいけど生憎ツルハシも採掘スキルも持ってないんだ。ここは諦めよう。
「……よし」
既に入る前からヤバさが伝わって来るけど……覚悟は決めた。
「進もう」
遺跡の中はボロボロの外見とは裏腹に意外と崩れてはいなかった。それと予想外にも敵は出現していない、てっきり鉄ゴーレム祭りになると思っていたんだけど……。
敵はいないと言っても警戒は緩めない。何がおきても良いように曼荼羅を展開しておく。
「……ん?これは……地図?」
入り口から入って直ぐの壁に地図らしきものが彫られている。当然ながら文字は読めない。まあ、期待してたわけじゃないけどそこまで親切ではないか。一応スクリーンショットで保存しておく。
文字は読めないが、それでも地図としての最低限の機能が生きていることには変わりないからね。
これによるとこの遺跡は右ブロック左ブロック中央ブロックの3ブロックから構成されていて、もう少しこの通路を進むと三叉路的に各ブロックへ分かれているみたい。
「しまったなぁ、ここ広すぎ。みんなと来れば良かった」
後悔先に立たず、でもここの構造を知る事が出来たっていうのは大きいよね?本格的な探索には明日以降みんなと来れば良いんだし。
そんなことを考えていると分岐に到着した。さて、どこから行こうか。
地図を見ながら熟考する。広さ的には中央が一番狭く右側が一番広い。構造みたいなのは左が一番複雑で迷路みたいになっていて、逆に中央が一番簡単、むしろ一部屋しかない。
普通に考えて真ん中を選ぶべきだと思うけど、あからさまにボス部屋だよなぁ。
よし、ここは天に任せよう。
ショートカットから矢を一本取り出し真っ直ぐ立てる。これが倒れた方に進もう。いざ、南無三!
手を離した矢はゆっくりと倒れ……中央を指した。
「……マジか」
んー、しょうがない行くか。天に任せたのは僕なんだし、結果はちゃんと受け止めないとね。
中央の部屋に入る。
そこはとても広い正方形の部屋だった。広さはどれくらいだろう?野球場ぐらいはあるのかな?高さもかなりある。それこそ僕が全力でジャンプしても大丈夫なぐらい。
そして懸念していたボスはいなかった。この遺跡に入ってから肩透かしが多いな。もしかしてここって本当に『死んだ』遺跡なのかな?
「んー、ん?」
部屋の反対側に光って自己主張をする石板がある。なるほどあれを調べろって事だね。
とりあえず近くまで行ってみる。
「なるほど、読めない」
当たり前だけどやっぱり読めなかった。光ってたからもしかしたら……って思ったんだけどなぁ。これもスクショして、後から教授に見せてみよう。
一通り石版を撮り終わったけどまだ発光は収まっていない。
「えーと、触ればいいのかな?」
思い立ったら即実行。えいや、と触る。
すると後ろから、ズン、という低い音が聞こえた。
あー、何か嫌な予感がするんだけど?
恐る恐る振り返ると、全高十数メートルはある黒光りするゴーレムが出現していた。
なるほど、タダではここから帰さないという事かな。この様子だと入ってきた扉も閉まっているんだろうな。
僕はまんまと罠に嵌ってしまったわけだね。
「とりあえず識別してみようかな」
___________
洗礼用ゴーレムMK.Ⅲ
『侵入者よ、試練を越えよ』
___________
おーけー、わかった。君が物凄く強い事がわかった。
なるほど、君ロロみたいなパターンだね?
「勝てる気はあまりしないけど、負けるつもりはさらさらないよ」
複合猛毒矢は最初から使わない。むしろどうやったらゴーレムが毒になるのか知りたいよ。
取り出した矢は『槍矢』、僕が持つ矢の中でも最も物理ダメージに特化した矢だ。
「先駆け一発!『ペネトレイト』!」
距離というアドバンテージがあるのに活かさない手はない。
僕の先制攻撃が入った事で本格的に戦闘態勢に入ったのかゴーレムが動き出す。
「って、結構早い!?」
ゴーレムは巨体に見合わずかなり俊敏だった。
地響きを立てて僕に近づいてくる。正直巨大な人形のような敵が音を立てて迫ってくるとか恐怖しか感じないけど。
「まあ、よく考えれば僕よりは遅いよね?」
ゴーレムが攻撃をした時には既に僕は別の場所に逃げている。あとは曼荼羅も使いながらちまちま削れば倒せるかな?そんな期待とともに二度目の『ペレトレイト』を放った。
ここで少し、このゲームにおいて僕が苦手な敵を紹介しよう。一つ目は不死族。既に死した存在であるにもかかわらず動き出す不気味な存在。もともと死んでいるからあらゆる攻撃にめっぽう強く。倒しきるには原型が残らないほど『損壊』させなければならない。二つ目は……。
「くっ、少しくらいは怯んでよ!ダメージの通りがわかんないじゃん!」
そう、二つ目はゴーレム種。人によって作り出された存在であったり、死霊がナニカに取り憑いたり、自然エネルギーが形を持ったりと様々なバリエーションがあるのだが、場合によっては不死族よりもこっちの方が苦手かもしれない。形が無くなるまで壊せばいいアンデットとは違い、ゴーレムは物質に取り憑いたエネルギーを消滅させるまでどれだけ壊しても動きが変わらないのだ。
例えるなら終わりの見えない持久走を延々と走らされている気分。こいつを倒さないと帰れないっぽいから相手しているけどそうじゃなかったら正直スルーするレベルの面倒くささ。
あー、切実に相手の体力とかが見えるようになりたい。無理にでも教授連れてくるんだった……。
戦闘がほぼワンパターンになり若干マンネリ化してきて思考に余計なものが混じり始める。
いけないと思いつつも止める事が出来ない。
【試練第一段階を終了、続いて第二段階へ移行します】
「……んぇ?」
えっと、ごめん聞いてなかった。今なんて?
戦闘中に集中を欠いた、その代償を払わされる事になった。
洗礼用ゴーレムの全身がヒビ割れ、弾け飛ぶ。
「エィアァァア!?」
慌てて飛び散る装甲の破片を避けるが、一部避けきれずHPの9割を持っていかれた。
「ちょ、ヤバっ……」
急いで体勢を立て直して正面を向く。
そこには一回り以上、いや、さっきの第一形態の三分の一ほどの大きさになったゴーレムが『銃』を構えていた。ちょ、マジすか……。避け、切れないね。
この攻撃は甘んじて受け入れよう。戦闘中に他の事を考えてた僕が悪かった。
弾丸が僕を貫く。HPがゼロになる。そして……。
「さっきは悪かったね。今度はこっちの番だ」
復讐者の執念発動、同時に復讐の撃鉄起動。
「『我、世界に宣誓す、必ずかの怨敵を討ち果たさんと』!」
復讐の呼び声の起動も完了。これらの効果は全て30秒限定だ、故に。
「30秒でカタをつける!」
【第二段階、最終試練『上位互換』開始】
まずは距離を詰める。試練名が『上位互換』と言うことはあのゴーレムは僕のステータスを参考にしているはず。その上での上位互換ならば距離を取られるのが一番マズイ。
自分で自分の技に文句を言うつもりは無いがそれでも言わせてもらう。秒間80発の弾幕とか頭おかしいんじゃ無い?少なくとも僕はあの弾幕を切り抜ける自信は全く無い。
僕の戦術を把握しているらしいゴーレムは距離を取ろうと後ろに飛び退る。
これでもしもあのゴーレムが僕より速かったらそれで詰むけど。
果たして……。
僕はゴーレムの懐に飛び込む事が出来た。
ありがとう『復讐』!全ステータス30%強化に宣誓による強化、その他諸々の強化により僕はかのゴーレムの素早さを上回った!
「『鎧通し』!」
今までの攻撃とは違う『通った』感覚。
『復讐の撃鉄』の防御貫通、耐性貫通の効果だ。これが切れるまでが勝負。切れた後は成すすべなく磨り潰されるしかない。
僕に張り付かれるのを嫌ったゴーレムが暴れて引き剥がそうとする。
「『バーストショット』!」
着弾時に矢本体が爆発するアーツを放つ。確かに君は堅い、表面が爆破されたとしても対して効果は無いだろう。だけど足元は、踏み締めた地面はそうではあるまい。怯まなくても脚を払えば関係無い!……はずだ。
目論見通り、暴れようとしていたゴーレムの足元が崩れ、バランスを崩した。
「『巻き付き』『引き寄せ』!」
バランスを失い動きが停滞したゴーレムに僕自身を固定する。
「悪いけど、もう君に攻撃させるつもりは無いんだ!」
その瞬間から使えるアーツを全て放つ。順番も残りMPも全てを無視して再使用時間が終わったものから叩き込んでいく。
「これで……終わって!」
終撃、『最期の抵抗』をゴーレムの胸の中心に叩きつける!これで終わり、MPも空っぽ。復讐の効果も切れた。僕はもう何も出来ない。
【……見事である。英傑よ。其方は試練に打ち勝った】
……っはぁ!やった!倒せた!これだけ息の詰まる戦いは久し振りにだった!いや、ロロの時はもっとこう、アレだったから純粋な闘争だと初めてだ!
【其方に我らが作った武具を与える、愚かしくも■■■に挑んだ■だ■■の武■は必ずや■方の助けになるだろう。願わくば■■らがかの■■■を■当する事を……】
ゴーレムは謎に満ちた言葉を最後に無数の黒い破片になってしまった。
その中から白銀に輝くオーブが現れる。
「これが……装備?」
とにかく拾って今日は帰ろう。神経をすり減らす戦いでとても疲れた。早く家で寝たい。
回収するためにオーブに触れる。その瞬間、オーブが一際大きく光り思わず目を背けてしまった。幸い光は一瞬で収まった。手に持つオーブに違和感がある。目を開けオーブを見ると、そこには材質の分からない真っ白な弓が握られていた。
なるほど、あのオーブは待機状態みたいなものだったのかな?
試しに弦を弾いてみる。……ん?右手がおかしい。いつも見ている鎖が無い。それどころかグローブも無い。慌ててメニューで装備画面を見てみると全身の装備が解除され、さらに再び防具を装備することが不可能になっていた。
まって、呪いの装備とかやめて。いや、もともとの装備も割りかし呪いじみてるけど……!
どうでも良いけどゴーレムって言うと『E』を消したくなるよね。このゴーレムには文字彫ってないけどさ。