『生存戦略』 Part 1
よろしくお願いします
「それじゃあ葛西、僕はこれから7時間ぶっ続けでゲームするから」
「ええ、存じております。ただ」
「うん、わかってるよ流石に最近は引きこもりすぎたからね、明日はみんなで出かけよう」
「はい、皆も喜ぶでしょう」
『生存戦略』、始めましょうか!
いざ、ログイン!
さて、早速ログインしたところですが、現在イベント開始1時間前と言ったところ。集合時間までまだまだ時間があるので『雑貨屋』でアイテムの補充、それと『新しいスキル』を探そうと思う。
うん、新しいスキル、特に近接戦闘で使えそうなスキルだと嬉しい。もっと欲張るなら矢を手に持って使った時にダメージが大きくなるようなスキルだととても良い。
そう考えるようになったのはこの前の実技交流後、ネルネルさんとアイテム周回をした時に言われたふとした一言だった。
『今度のイベントって無人島でのキャンプイベントだよね、矢とか食料の調達って大丈夫なの?』
この一言で僕のイベント計画が大きく崩れた。
そうだよ、無人島イベントだよ。矢とか節約しなくちゃいけないじゃん。普段が弾幕曼荼羅ばかりを使っていたから頭から抜け落ちていた。弾幕曼荼羅はボス相手やエリアを一掃するならとても使いやすいのだが一般的な敵、単体を相手にすると非常に使い勝手が悪い。攻撃によって得られるMP量と消費するMP量の釣り合いが取れないのだ。普段の戦闘……ディオンに来る前までの普段の戦闘でも起点となるのは普通の矢だったからね。今回のイベントでは参加者はみんな一つの島に送られる、そこで無差別に弾幕を撒き散らすわけにはいかない。だから新しいスキルだ、消費MPを抑えつつ矢も無駄にしないで出来る攻撃を増やさないと……。
「こんにちはカイネンさん、今日も補給に来ました」
「おや、ユウ様丁度ようございました。つい先ほどなのですが、先日ユウ様が探されていたスキルに似たものが内包されたスキルオーブを入荷できましたよ」
「本当ですか!?」
おお、まさに天運、跳弾が測っていたんじゃ無いかと勘ぐってしまいそうだ。
実はこのイベントに間に合わなくても今後の戦闘を有利にできるかもしれないという事で、カイネンさんに調達をお願いしておいたんだ。まさかこんなに早く見つかるとは思ってなかったけど。
「ええ、少し値が張りましたが入手出来ました」
それがこちら
『スキルオーブ : IQC(Item Quarters Combat)』
消費アイテム(投げナイフ、矢など)を用いた近接格闘威力が上昇する。
な、なんてピンポイントなスキルなんだ。
勿論即決で買った。入れ替えるスキルは奇襲。正直この奇襲スキルを外すの忘れていたんだよね、このスキルの効果は奇襲攻撃のクリティカル確率が上昇すること、なんだけど装備の効果で奇襲攻撃は全部確定クリティカルになるから随分と前から失業していたんだ。早速付け替える。
ふふふ、これで……!
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後天性スキル
・征竜弓術(二枠消費)
・弾幕曼荼羅(三枠消費)
・臨界観測眼(二枠消費)
・人外観測眼(二枠消費)
・夜天骸(二枠消費)
・異端弓術・鏖ノ型(二枠消費)
・神技・八艘飛び
・矢弾回収
・魔血鎖術
・震脚
・魔力増加
・立体機動
・王威lv3
・MP超速回復
・異質物射出
・大跳躍
・IQC
・隠密
・狂気耐性
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僕が欲しかったスキルは全部集まった……もう、誰にも負ける気がしない!
ちょっと試し打ち、いや、試し殴りに行こうと思う。
「お、ユウ来たか。今回は早かったなお前が一番だぞ」
「ユウさんこんにちは、なんかご機嫌ですね」
「えへへ、分かります?さっき思わぬ収穫がありまして……」
IQC思ったよりもずっと強かった。流石に征竜弓術の鎧通しや接射ほどの火力は出なかったがそれでもちゃんと『武器』として、戦力の一つとしてカウントできるほどに成り上がった。イベント開始前に思わぬ強化が出来たんださっきからニヤニヤが止まりません。
それにしても今回は僕が1着か。
イベント開始の15分前に集合って言ってたのにみんなどうしたんだろう、もう開始8分前だよ?
そんなことを考えていると何やら外から騒ぎが聞こえてきた。それに少しずつこちらに近づいて来てるような?
騒ぎはギルドの手前ほどで停止し、なんらかの話がついたのか解散していった。
なんだったんだろう?
「いや、参りましたね。まさかあそこまで付きまとわれるとは」
「うむ」
「いやはや、流石に面倒だったよ」
「あ゛ぁぁぁ」
「あ、皆さんこんにちは、ちょっと遅かったですね」
教授さん、バウアーさん、ガン爺、ルーレットさんがまとめてやってきた。
「ああ、どうやって嗅ぎつけたのか自称トップギルド達が勧誘に来ていたんだよ。先約があるからと断っていたのだけれどしつこくてね」
「まあ、あそこまで騒ぎが大きくなったのは我々がまとまって歩いていたからだな。そこを注意していればもっと早くに到着できていただろう」
「うむ」
「…………」
なるほど、外の騒ぎは皆んなが原因で、その騒ぎで遅れたと……有名人って凄いんだなぁ。
「これであとはネルネルさんだけですね」
「?何いってるんだユウ、もう来てるじゃないか」
「へ?」
「ほら後ろ」
そんなバカな、そう思って後ろを振り返ると……ネルネルさんがいた。
なんで?特に気配とか感じなかったんだけど。
「ん、これが新しい魔法の力、『短距離跳躍』」
「なるほど!転移みたいなのですね。だから来たのが分からなかったんですか」
「うん、転移はもっと上位の魔法。私だとまだまだ未熟で使えないけど」
「よし!何はともあれ全員揃ったからパーティーに参加してくれ」
ニアさんから送られてきたパーティー招待状にYesを押してパーティーに参加する。
「……全員の参加を確認っと。あとは時間が来れば全員ひと塊りになって無人島に転送される筈だ」
なるほど、そういうシステムなんだ。
と言うかさ、このパーティー名だけど…………。
ーー時間になりました、これより 『第二次ユウと遊び隊!』 パーティーを無人島『ロゴ・トゥム・ヘレ』へ転送しますーー
もう少し何とかならなかったのかな?私欲全開だよね。
意識が遠くなって行く…………。
気がつくとうつ伏せで倒れていた……何だろう?ゲームの中でもう一回ログインした感じ?何とも言えない独特の感じだった。
とりあえず周りを見渡す。
僕の近くにはみんなが僕と同じようにうつ伏せで倒れている。場所は……どうやら砂浜っぽい。それといくつかの漂着物。僕たちは船が壊れたか何かでこの島に着いたという設定なのか木片や木の板が多いように感じる、それから謎の木箱……。とりあえずはみんなを起こそう。ああいったアイテムの確認は教授に任せた方が確実だろう。
「ほらー、起きて下さーい」
幸いにも少し声をかけて軽く叩いただけで起きてくれた。うーん、僕が一番最初に起きた理由はなんだったんだろう?
「う、んむ。んん。ああ、ここが今回の会場か」
「うむ、漂着物はアイテム扱いのようだ」
うん、生産職組、と言うか教授とガン爺は起きてすぐに周りのアイテムを確認に行ってしまった。
ニアさんアポロさんバウアーさんは持ってきたアイテムの再確認をしている。
そして、ルーレットさんはとてもだれている。
「ルーレットさんどうしたんですか?」
「いや、ユウ。俺は気づいてしまったんだ。この無人島には賭博場が無いことに」
……? 何を当たり前のことを言っているんだろう?
「いや、そんなに呆れた目をしないでくれよ、本当にさっきまで気づかなかったんだ……」
ダメだこの人、手遅れだ。
ルーレットさんは好きなだけイジケさせておこう。
さて、僕はさっき見つけた木箱の回収でもしておきましょうかね。教授たちは木箱と反対の方向のアイテムを拾いにいっちゃったからね。
木箱の近くまで行きストレージに入るか試してみる。
あ、入った。アイテム名は木箱、何か有用な物が入っているかも?だって。大きさは大体30センチ四方の立方体。
できればあといくつか欲しいな、出来れば全員分あるととても嬉しい。
この近くにないか臨界観測眼の遠見効果で近くを探してみる。
やっぱりないか、そう上手くはいかないよなぁ。
そう諦めてふと視線を海に向ける。
海面をプカプカと漂う箱状のもの。
動いていて正確な大きさは分からないが大体30センチぐらいの大きさ。
おや、よく見れば他にあと三つもあるじゃないか、全部取れれば僕が今持っているのも合わせて5つだね。
……取るか。でも多分普通に泳いで取ろうとしたら死ぬと思う。うまい話には裏がある。序盤に有用な物が手に入るかもしれないランダム要素、救済措置をばら撒いているんだ、絶対に罠がある。さらに海の上というのが怪しい。わざわざプレイヤーが不利なフィールドにおびき寄せる。確定で即死罠が仕掛けられている筈だ。
でも取らないと言う選択肢は無い。
「さて、届くかな?」
右手に巻きついている鎖を撃ち出して木箱に当てる。ん、意外と難しいな。
鎖を手元に戻してもう一度撃つ、よし成功。
「『巻き付き』『引き寄せ』」
これで海上にあるものが一つ手に入った。あとはこれを三回繰り返せばいいね。
開封作業はみんなを集めてからやろうとおもう。
あ、そういえばこのゲーム、パーティーの上限人数ありません。いや、一応ある事には有るんですがそんな大規模なことはやらない無い予定……なので今回のような8人だとそのまま8人パーティーとして活動します。流石に100人レイドとかは出来ないよ?悔しいけど私にそこまでの力量はないから。