顔合わせ 前
長くなりそうだったので二つに分けました
よろしくお願いします
予定より時間がかかっちゃったけど無事にお仕置き兎を蜂の巣にしたのでクレセートに向かいます。
っと、その前にギルドにアイテム預けてこよう。お仕置き兎が出てくるまでに倒した他の兎の素材でストレージの空きが埋まってるや。
商都ディオンに戻りギルドへ急ぐ。このゲーム、主要都市などに素早く移動するためのファストトラベル機能が無いからね、地味に移動が一番時間が掛かるんだよ。
ちなみに跳弾たちはこの「不便だからファストトラベルを」と言う声に対して「ワールドクエストがステージ2になったら情報を開示する」と言ったきりファストトラベルについては一切の回答をしていない。
よし、物品整理完了!それにしても素材がすごい量になってきたなぁ。依頼の素材も超過しているのもあるし、依頼対象外のアイテムもかなりの数が溜まっている。この調子だと残りのアイテムを集め終わる前に預けて置ける容量がなくなってしまうな、いくつか処分しようかな?まあ、今は出来ないから後日って事になるけど。
そういえばここで預けたアイテムってクレセートでも取り出せるんだよね。どうなってるんだろう?まさかカイネンさんが超高速で各地のギルドに回ってたり……。
無いな、自分で言った事だけど無いな、詳しいことは別にいいや、重要なのはそうである事であって、その内容や原理じゃ無い。僕は今まで通り使えればそれで良いや…………。
………………あぁ!いけない!時間無いって言ってるのに!?くっ!跳弾め、なんて悪辣な罠を仕掛けてくれたんだ。思わず考え込んじゃったじゃ無いか!
待ち合わせの時間まで1時間を切り、残り50分弱。間に……合うね。
「じゃ、今回も障害物競走だね」
ディオンの東門から出て先を見つめる。実は最初に入った南門からよりも東門からの方がクレセートまでの距離が短いんだ。まあ、短いって言っても数十メートル程度だけどね?
門の外に、フィールドに出た瞬間から主要なスキルは発動してある。
「おんゆあまーくせっと…………ごー!」
第2回『ディオン-クレセート』間障害物競走開幕です。
クレセート到着。記録は……えーと。43分と17秒。くっ、関所で兵士さん達と談笑しなければあと5分ぐらいはタイムを縮めれたのに……。まあ、私から話を振ったんですけどねー。
さてさて、ニアさんどこにいるかな?とりあえずメールしておこう。
ーYŪー
クレセート到着しました。どこに行けば良いですか?
これでよし、あとはニアさんが気づいて返信が来るまで街をブラブラしていよう。
………って返信早っ!?もう返って来た!
ーNIANAー
ギルドの二階に来てくれ、あとパーティーに参加してくれ。パーティー検索で暗証番号を入力すると入れるから。
暗証番号 : 573898
成る程、了解っと。先ずはパーティー加入からだね。
えーと、番号入力って何処だろ?いつもソロだからパーティーの項目とか弄らないからわかんないよ。あ、これかな?よし、パーティー加入っと。久し振りにパーティー通信でもしてみようかな?
『もーしもーし、聞こえてますかー?』
『おお!?ユウか!久し振りだな!』
『ニアさんも久し振りですねー』
『ユウさんこんにちは』
『アポロさんこんにちは』
『ああ、君が……『お前らはまだ喋るなよー自己紹介は顔を合わせて、だ』……うむ』
『もうすこしなので待っててくださいね』
一度通信を切り屋根伝いにギルドへ向かう。一陣プレイヤーの大部分が王都へ拠点を移したとは言えまだ残ってる人は残ってるし、そこそこ進行の早い二陣プレイヤーもクレセートに来ている。何より住人の人たちも生活しているわけだから大通りには結構人がいるのだ。だから屋根を道代わりにする。
なお、屋根を道代わりにする事に関して衛兵さん達に『問題があるのか』聞いたところ、本当は危ないのでダメですが貴女なら実力も確かですし人に迷惑を掛けることも無いでしょう。でも見つけたら注意しなければならないので見つからないようにこっそりしてくださいね。っと苦笑まじりに公認を貰っている。常日頃から好印象を持って貰えるように振る舞うって重要だよね。
思い出に浸っている間にギルドが見えてきた。さて、どうしようかな……。一回地面に降りて普通にギルドに入っていっても良いけど、どうやら二陣プレイヤーで中が混雑してるみたい。出入り口から若干はみ出てるし……。あ、二階テラスの窓が空いてる。よしあそこに飛び込もう。
そう考えた時には既に足は屋根を蹴り飛ばしている。
一拍おいて着人。
……うん、着人。僕が飛び込んだ先には人が居たみたいだ。影になっていて見えなかったんだ。うん?あれ?これって……。
「あー、お久しぶりとはじめましてかな?とりあえず初めましての人、私がユウです。よろしくお願いします」
「あのー、ユウさんそういうのは降りてからお願いします。セーフティーエリアの中なんでダメージはないとは言えおも……」
おっと、足が滑って僕の下敷きになっているアポロさんをグリグリしてしまったぞー?全く、乙女に対して体重のことを言うなんて。うん?あぁ、体が女性だから乙女でいいんです。便利だよね性別の融通が利くって。
でもいつまでもアポロさんの上に乗っているわけにはいかないので降りる事にする。その際にアポロさんの足の間、股間の数センチ下に飛び降りてヒヤリとさせることも忘れない。アポロさんはシクシク泣いている。
「えー、それじゃあ予定していたメンバーが全員揃ったので顔合わせをしたいと思う。私から右回りで自己紹介をしていってくれ。ユウは……席が無いから私の上でいいな」
すすり泣くアポロさんをあっさり無視したニアさんが顔合わせの司会を務めた。
と、同時にニアさんの言葉に違和感を感じる前に捕獲されて彼女の膝の上に座らされた。く、屈辱……!背後に感じる圧倒的な存在が更なる敗北感を煽る。
い、いいもん!私まだせいちょうきだし!……いやまて、落ち着け。僕の一人称は僕だ。それに男だ、例え成長期が続いていたとしても『その部分』が育つことは今後一切有り得ない……筈だ。
「ニアさんまじ聖母……いや、なんでもないデスヨ?ん゛ん。えーと、ユウさんははじめまして、他の人は久し振り。PN : GANTETUって言います。普段は頑固な無口鍛治師のロールをしているのでこの外見も合わさってガン爺って呼ばれることもあります。種族は魔人族、頂いた二つ名は『錬鉄乱舞』です。よろしくお願いします」
ニアさんの直ぐ右に座っていた男の人が自己紹介をする。
成る程、ガンテツさんね、見た目はほとんど僕と変わらない身長に大量の白い髭、筋肉の鎧で覆われた全身、特に腕辺りの筋肉が凄い。一言で言ってしまえばドワーフだった。そうか、このゲームドワーフって選べなかったんだ……うーん、僕の持ってる称号の内容から想像するに、そのうち種族の変更が効くようになるとは思うけど。あとで教えてあげよ。
「お久しぶりです、イベント以来ですねユウさん」
「ええ、まさかバウアーさんが呼ばれていたとは思いませんでした」
「はは、実はイベントボスのジェネラル討伐パーティーに私も参加していましてその縁で今回呼んでもらいました」
「成る程……。よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ宜しくお願いします。あ、私の二つ名は『一つの太刀』、ですが主な使用武器は片手長剣と片手盾です」
二人目はバウアーさんだった、相変わらず顔も性格もイケメンなようで何よりです。
って言うかバウアーさんも二つ名持ちだったのか……ガン爺とバウアーさん、それにアポロさんとニアさんも二つ名持ちだったよな?……まさかここにいる人たち僕を除いてみんな二つ名持ちじゃないよね?
「……………………」
「……教授、教授!」
「……お、おう!?あぁ、すまない私の番だったか、まとめサイトの編集に夢中になっていたよ。どうも私が教授だ。元々はprofessorと言う名前だったのだが前々回アップデートで追加された名前変更権で漢字入力も可になっていると聞いてね、正式に『教授』と名乗らせてもらっている。種族は人族、職業は解析官と探求者を選択している。二つ名は『教授』だ。よろしくお願いする」
なんか濃い人が来たなぁ。二つ名とプレイヤーネームが一緒なんだね、て言うかこの人僕でも知ってる有名人だ。いつだったか装備の耐久値全損の検証や薬草の群生地の分布とかでお世話になりました。
渋いバリトンボイスでまさに『教授』!って声なんだけど、その、見た目が……丸っきりショタなんだよね。外見と雰囲気がこれ程乖離している人は初めて見た。後でどうなってるのか教えてもらおう。
「ふっ、ようやく俺の出番か……」
「あ、お前はいいや、飛ばして次の……「いや待ってください!お願いします!ごめんなさい!ちゃんとやりますから!」
いきなり芝居染みた仕草で髪をかきあげながらふっ、てしたシルクハットの人がニアさんに自己紹介を遮られてる。なんかメッチャ濃そうな人だなぁ。
「んん、えっとはじめましてユウさん。自分PN : rouletteって言います、えーと、その戦闘自体はあまり得意じゃ無くて主に補助とか敵の弱体化を専門にしています。種族は人族、職業は吉凶占星師と言うのについてます。二つ名は『賭博師』あと称号で『大富豪』と『大貧民』ももってます。えーと、あとはその、あ!よろしくお願いします!」
うん、口下手な人なんだね。多分最初の口調はキャラを作って居たんだろう。でも、純粋な戦闘職じゃない人たちか……初めて見たかも。今まで基本的に前線に篭ってばっかりだったから戦闘職の人しか見たことなかったんだよね。鍛治師に解析官に占星師。いろんな人が居るね。
「はじめまして、私は『ネルネル』。獣人族の紅一点狐族の魔法使いよ。メイン職は魔女、サブは妖術師ね。プレイスタイルは覚えられる全ての属性魔法を覚えているわ、それ以外は何もできないとも言うけど。二つ名は『九重羽織』」
そうか、この人が九重羽織さんか。すこし耳にしたことがあるんだ。最初のキャラメイクで取得できる全ての属性魔法を習得した魔法狂いが居るって、僕は弾幕を選んだけど多分この人は全部の魔法をそのまま上位進化させた正統派だ。後で情報交換してもらおう。
その後ニアさんと復活したアポロさんも自己紹介をしていたけど既に知っているので割愛。
最後は僕の番だ。
「さっきも名乗りだけはしましたが改めまして、私はプレイヤーネーム『ユウ』と言います。種族は混血種、ちょっと前までエルフベースの混血でしたがとあるミッションで狼の上位種、魔狼ベースの混血に変わって見た目も獣人族に変わりました。メイン職業は魔弓術士ですが基本戦術は弾幕曼荼羅って言うスキルを使って矢代を節約しています。よろしくお願いします」
さて、みんなの反応はどう……か、な……?
ひぃ!?みんな目が怖い!ギラギラしてるぅー!?
「え、えーと質問とかあれば、どうぞ……」
「ユウくん!スキルの構成を「いや、それよりも弾幕曼荼羅について……「種族が変わったってどう言うことだ!?「ユウ、その装備ちょっと見せて!「テメェ俺の方が先だろ!「いや私だ!「違うね私が最初だ!「ユウ!ちょっとでいいから装備見せて!「多分称号も変わったのもってるよね!?「ええい!抜け駆けするな!「ーー!ー「うるさい!ちゃんと言葉を使え!」
……………………
………………
…………
しまったなぁ、ちょっと収集がつかないぞぉ?
本格的に困ったので一人、我関せずを貫いている人、バウアーさんに視線で助けを求める。
あ、頷き返してくれた。
ーパン!パン!ー
と大きく手を叩きバウアーさんがみんなの意識を集める。
「はい、そこまで。ユウさんが困ってますよ、ユウさん全員の質問に答えられますか?」
「あ、はい大丈夫です」
「有難うございます、ではさっき自己紹介した順番で一人ずつ質問をしましょう」
「「「「「「はーい」」」」」」
「先ずは俺からだ、ユウは種族が変わったって言ったがどう言う事だ?またそれは自分で変更先を選択することはできるのか?」
「えーと、確かに僕の種族は『混血種:森人族/獣人族・狼』から『混血種:獣人族・魔狼/森人族』に変化しましたがえーと、これは私が発生させたユニーククエスト『夜天の王は仇敵と踊る』のクリア報酬でユニークモンスターの力を受け取るって言うのがあって、それの受け入れ先を僕自身にしたら種族変更が起こったものです、多分余程の条件が揃わない限り再現は難しいと思います。なので任意の種族に転換するのは別の手段が必要だと思います。次の質問どうぞ」
「む、バウアーは良いのか?そうかならば失礼して……。私が聞きたいのはいろいろあるのだが今はユウくんのスキル構成を聞きたい。勿論秘密にしたい部分は言わなくて良いし事細かに説明をしろと言うわけでも無い。そこら辺は今後地道に交渉していくからな。なので今は大体の方向性を知りたい」
「そうですね、最初スキルを決めた時は近接戦が怖かったので遠距離から物理でも魔法でも攻撃できるような形にしたかったですね。そこからスキルの統合やいろんな称号も合わさって現在は『三次元超高速弾幕魔弓術士』になっています。多分この後に連携の確認とかでフィールドに出ると思うのでその時に実演します。あと今までのスキル遍歴は、私もそう言った情報の専門家の意見を聞きたいので今やってるクエストが終わったら時間を取ってもらっても良いですか?次の人どうぞー」
「ふっ、そうだなこの我が汝に聞きしは其方が宿せし世界からの忌み名を聞きたい」
「あ、日本語でお願いします」
「……か、獲得してる称号が知りたいです、あとそれの効果も」
「えーと、ごめんなさい。私のバトルスタイルの根底にあるのは称号なのであまり教えたくありません。正直スキルの方は一部を除いて誰でも手に入れることが出来るものですが私の持っている称号はそうじゃないのです。なのでアドバンテージを保つためにも黙秘させて貰います。…あ、でもこれとこれは良いかな?やろうと思えば誰でも手に入るし。
一つ目は『一騎討千』で効果はソロの時に敵の数が多いほど自分のステータス上昇
二つ目は『ラビットスレイヤー』効果は兎系のモンスターに対する補正です。次の人どうぞー」
「私が知りたいのは弾幕曼荼羅、この一つだけよ」
「あ、了解です。多分ネルネルさんの選ばなかった方の魔法の上位互換みたいなモノですね。弾幕曼荼羅自体は前回のイベント報酬でもらった『弾幕曼荼羅』って言うスキルアイテムで元々もっていた弾幕魔法が変化したものです。で、弾幕魔法の出し方は各初期属性魔法が進化するときにそのまま上位進化するか合成するかの選択の時に合成を選択すると手に入りました。多分ネルネルさんはそのまま上位進化にしたんですよね?そこが最初で最後の分岐点なんだと思います。次の人どうぞー」
「私とアポロからはユウの装備を見せてもらえればそれでいい」
「あ、はいわかりました。後で性能のss送っておきますねー。とりあえず以上で良いですか?」
「「「「「「はい(おう)」」」」」」
ふー、どっと疲れたぁ……。
とりあえずニアさんたちにはイザベラさんからこの装備を受け取った時のスクショを送っておこう。
一見自分のスキルを包み隠さずにしゃべっているかのようなユウくん。しかしとんでもない地雷が隠されてます。
ヒント、ユウが弾幕に取り憑かれた大元のスキルは何だった?
これがあるとないとだと全く違うスキルが出てきます。