事の始まりその邂逅
よろしくお願いします
彼等に投資をして早二年、僕は初期投資額を回収し終わっていた。いや、はやくね?13歳になり一般的な金銭感覚と言うものを知った僕だが、早くない?十億円だよ、サラリーマンの生涯年収何人ぶんですか。ひょっとすると僕はヤバイ方々に投資をしてしまったのかもしれない。……いや、利益が出たらその分をさらに彼等に投げる僕が言うことじゃあないと思うけど。でもさらなる利益を出し続ける彼等に興味が湧いた、少し調べてみようと思う。
うん、ほとんどわからなかった、と言うか構成メンバーすら不明、何をしているかもわからないし、代表もわからない、でも確実に利益を出している。うーん、直感だけど多分彼等は『跳弾頭脳』として活動していないのでは無いだろうか、何人居るのかわからないけど、彼等は一つの団体に所属してはいるが活動は個々に別々に動き、最終的な一つの目的に向かって居るのだと思う……まあ、ただの直感だから外れて居ると思うけどね。
でも、やっぱり気になるし調べてもらおう。
「葛西さん、いる?」
「はい、何か御用でしょうか」
彼女は葛西さん、僕を幼い頃からずっと面倒を見てくれている人で、この家のお手伝いさんたちを束ねている家政婦長さんでもある。御年35歳殆ど外見の変わらない人だ。
「何か、お考えでは?」
おっと、年齢のことは考えないようにしよう。
「そうそう、この団体の事を調べて欲しくてね。」
「『跳弾頭脳』、若様が投資した団体でございますか。」
「そう、ちょっと気になってね。ほぼ無名にもかかわらず莫大な利益を出し続ける団体、知りたいと思うのは当然でしょう。」
「少々お時間をいただきたく。」
「どれくらい?」
「…二日ほど」
「うん、頑張ってね」
葛西さんが音もなく部屋から出る、これで彼等のことはいいや。彼女たちは必ず結果を出してくれる人達だからね。
三日後僕のもとに彼等の事の書かれた書類が届けられた。
「若様、申し訳ありません、少々手こずりました。」
「だろうね、貴女達が期限を過ぎるのは初めてのことだからね。相当な事だったんだね」
「はい、ですが先ずは資料をご覧ください」
確認する、そこには彼等の活動拠点の住所、と四人の名前と二つの空欄が並んでいた。
「この空欄はどうしたんだい?」
「申し訳ありません、名前を突き止めることができませんでした。」
「…貴女達が?」
「はい、コードネームの様な物は発見できたのですがそれ以上は…」
そうか……とりあえずそれぞれの詳細を見る、『脳科学者』『技術者』『無職』『フリーター』『自称脳科学者』『無職』……無職多いな、フリーターも実質無職でいいだろうし、脳科学者、なんでそこにいる?って言うか一人自称だし……
うん、訳がわからない、でも幸いにも活動拠点が分かっているからね、乗り込もう。
「葛西さん、付いてきて、あともう一人欲しい」
「かしこまりました。東、来なさい」
「はい、何か」
「僕に付いて来て、ちょっと出かける」
さて、久しぶりの遠征だね
僕らは葛西さんの運転する車で移動を開始した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あの日、金が降った日から二年が経った、俺らは死に物狂いで働き、かの大馬鹿が初期投資額を回収したのを確認して一息を付いていたが…
「ちょ?!リーダーカモン!」
「なんや…今ワイは達成感に浸っとるんや」
「下手な関西弁はやめろ!例の人がまた金ポンしやがった!」
「はあ?!」
どうやら休む暇はなさそうだ
「あー、っし!俺といつもの二人!少し休んだらまた下準備に動くぞ!」
「またっすか、ちょっと休んでもいいじゃないですか?」
「そうだそうだぁー」
「うっせぇ!プログラム組んで無いプログラマーなんかただのニートじゃねぇか!」
「「ぐっ」」
「宮姐ぇさん、基礎理論の構築はイケてるか?」
「まあ、なんとか」
「古田、あとどれだけだ?」
「三割ぐらい」
「アリスちゃんは学会に行ってるからいいとして…よし、始めるぞ」
俺たちの夢まであと少しなんだ…!
「最近どうにも俺らを嗅ぎ回っている奴がいる、とりあえず中核のアリスちゃんと古田の事は徹底して隠蔽したが、その他が漏れた可能性が高い、それとこの場所も割れた可能性がある」
「「「「まじすか」」」」
「まあ、バレたものは仕方ないと思うよ、次はどう動くか考えなくちゃ」
流石アリスちゃん、メンバー内一番の切れ者だ。
「これを機に以前から話していた拠点の移転を実行したい、なるべく壁の厚いところに」
奇声を上げた時にお隣さんからの無言の壁ドンはなかなか心にクる。
「賛成」
「賛成」
「賛成」
「私は少し待って欲しい、学会に提出する論文が書けてない」
「あーうん、私は賛成」
「アリスちゃんはどれくらいで終わる?」
「四日あればできる」
「なら、五日後を目安に行動開始」
そう結論を閉じかけた時、外部モニターを見ていた青山(無職プログラマー)が呼び止めた。
「まった、今外に車が止まった、見たことのない車だ」
「あ?それがどうした」
「降りて来たのが…メイド、メイド、ロリでもか?なんだあの天国混ざりたい」
「……アリスちゃん、古田、奥隠れろ、最悪最低限の荷物持って逃げるぞ」
くそ、何が起こってる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ここが『跳弾頭脳』の拠点」
なんというかただのぼろアパートにしか見えない
「ぼろアパートですね」
「東、思っていても声に出してはいけません」
「すみません家政婦長」
うん、でも葛西さん、思っていてもという事は貴女もそう思ったんですね。
「まあ、そこら辺はいいや、とりあえず行こう」
部屋は二階奥の角部屋、ここに6人も居るのか…とりあえず日本人の文化挨拶からだ。
「ごめんください、『跳弾頭脳』のお宅ですか?」
そう言った瞬間、内側からドアが吹き飛んだ
「な、なんでそれを、いやどうして、そもそもその名前を何処から」
「とりあえず落ち着いてください、えーと、貴方方の出資者と言えば分かりますか?」
「………」
すごい勢いで頷いて中に案内された。
「いきなり訪問して申し訳ない」
「いや、こちらこそいきなり中に連れ込んで申し訳ない、その、本当に私たちの出資者なのですか」
「ええ、二年ほど前に十億円出した者です。こんな見た目ですからね、仕方ありません」
「では、実は成人されて居ると」
「いえ、13歳です」
「見た目のままかよ!?あ、すみません」
「いえ、口調は崩してもらっても構いません」
「そうですか、いや、そうか、有り難い」
「はい、それで今日訪問させていただいた理由ですが、皆さんがどの様な人なのかを知りに来ました」
「……俺らの事を?」
「はい、調べてわからなかったのは初めてだったので」
「…そうか、で、どうだった?」
「そうですね、不思議な方々だと」
「そうかい、俺らが出せることなんかここぐらいだからな」
「そうですか……東、何人いる?」
「この部屋に一人、隣に三人、さらに奥に二人です」
「葛西、未確認はどこ」
「奥の二人かと」
「じゃあ、少しお邪魔します」
言うなり跳び上がり、引き戸を蹴り開け、反応される前に奥にいる二人の前まで走り込む。
「はじめまして、『脳科学者』さんと『技術者』さんかな?」
そこには立ち上がりかけた変な姿勢で固まっている女性と中年男性がいた
もう一度さっき話していた部屋に集まる、今度は六人全員集まってもらった状態で。
「さて、改めて自己紹介をしよう、僕は一条 夕、彼女たちは左から葛西、東、僕の家に仕えてくれている方達です」
「俺は浅井 智也だ」
「私は宮内 灯」
「古田 啓介」
「青山 雅っす」
「アリス=チャペルよ」
「霧島 優香ね」
「葛西」
「上から順に『フリーター』『自称脳科学者』推定『技術者』『無職』推定『脳科学者』『無職』だと」
「おい、ちょっと待てなんだその呼びかたは」
「葛西たちに調べてもらった時にわかった役割みたいなものです、何か訂正があれば」
「まあ、あってるんだけどさ、っていうか最近探って来てたのあんただったのかよ」
「ええ、調べてもらってわからない事があったので直接来ました。所で妙に部屋がスッキリしていますがどうしたのですか」
「ああ、実は、場所が割れただろ?それでこれを機に以前から予定していた拠点の移転をしようと思ってな。その準備だ」
「…移転先はもう決めて?」
「いやまだだが…」
「葛西、ある?」
「ここなどはいかがでしょう」
「うん、いいね」
「ちょっと待て、何を話している」
「新しい移転先の候補です、とりあえずここはどうでしょう、最上階から下3階自由にしてもらって構いません」
「いや、有り難いがそんなに簡単に決めてもいいのか」
「僕の持ち物ですしどうしようと僕の勝手では?」
「いや、親御さんとか「いません」へ?」
「いえ、両親はかなり前に亡くなっています、少し前に航空事故があったでしょう、アレで亡くなっています」
「そうか、悪い」
「いえ、気にしていませんから。それでどうでしょうか」
「有り難いが、そんなによくしてもらって良いのか?」
「トモ、私はいいと思う」
「アリス、良いのか?」
「私は良いと思う、夕は信用できそう、私たちの目的も公表して協力して貰った方がいい」
「そうか、よし。夕、聞いてくれ。俺らの目的はVRゲームの開発だ。それもただのVRゲームじゃあない、フルダイブ型のVRゲームだ」
「……まあ、正直貴方々の目的が何であれ、面白そうならば一向に構わないのですが」
「あっれー、意外と反応が薄いな」
「申し訳ありません浅井様、夕様は生まれて此の方ゲームを一切した事がないのです」
「あ、そうっすか、えっと簡単に言うと全身で感じられるスッゲェヤツだ」
「ふむ、それは面白いんですね?」
「ああ、スゲェ面白いし世界で初めての試みだ」
「なら支援しましょう、楽しくなるのですから」
「ああ、俺らもそこに移転先を決めさせてもらう」
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼む」
こうして僕らの悪巧みが始まった
ざっくり説明
こいつら何調べてー
わかりませんでした
よし乗り込もう
逃げる準備しよう
まてコラ顔見せい
僕ら悪い天才じゃないよ
なんか面白そう協力するね
こんな感じ
一条家メイド衆
超有能な方々、葛西婦長を筆頭に八人の計9人で家事、炊事、掃除、洗濯、庭の手入れ、害虫駆除(意味深)を行う。基本なんでもできるがそれぞれ得意分野がある模様、中でも芋虫退治(意味深)に長けた者もいるとかいないとか…
家長たる夕のことは可愛い妹と認識しているが公や人前ではちゃんと立場を分けるしっかり者、ただ動機は分別のつかないお姉ちゃんだと夕に思われたくないからだと言う残念さ、でもそこが良い。
婦長 葛西
御年35歳、若干婚期を逃した感のある才女、夕の両親から直々に夕の教育や世話を任された傑物。夕が甘えてくる回数の最も多い人、もう夕が子供みたいな者だから結婚とかしなくても良いとか考えている。
東
害虫駆除(意味深)の達人、優れた感覚で隠れた虫の居場所も暴き出すぞ。得意技は………この先は掠れて読めないようだ。
その他
長くなる為割愛、でもみんな優秀、一条家にメイドとして使えている時点でほぼ将来安泰、職場は衣食住完備、高給取り、な為全員が住み込みで働いている、唯一の欠点が出会いがない事