神様の休日
今回は時系列的にはかなり未来の話になります。
それではよろしくお願いします。
ある日のこと、
「姐さん、ちょっと付き合ってくれないか?」
運営もある程度落ち着いたがまだ気の抜けない日々なのだがこいつは、智也はわかっているのだろうか?そう思いアイコンタクトで周りに確認を取ると、『バックアップ体制は万全の状態である』と返ってきた。
全くこいつらは……。
「はぁ、まあいいだろう」
お節介といえばお節介だが、有り難く受け取っておこう。
「で、どこに行くんだ?」
そう問いかけると智也はニコニコした顔で見覚えのあるヘッドギア状のものを差し出してきた。
「……全く、おまえは」
「いいじゃん姐さん、何だかんだ顔がにやけてるぜ」
「うるさい、余計な事に気付くな」
智也からヘッドギアを、正式名称『トラベラーズパス』を受け取り仕事場に併設されているベッドルームに行く。
「待ち合わせはどこに?」
「ファストの教会にしよう、それとくれぐれもGMアカで来ないでくれよ?ちゃんとプライベートアカウントになっているか確認してくれよな?」
「くっ、まだそのことを引っ張るか……!」
あれは、完全に事故だったじゃないか。
「じゃあ、また中で会おうか」
「ああ、また中でな」
ベッドに横になりギアを起動させる。
「「ダイブ開始」」
急速に意識が落ちて行く。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ねぇねぇ、古田さん、あの二人まだ隠せてると思っているの?」
「ああ、本人達はバレてないと思ってるみたいだな」
「あはは、人前であんな空気出せばすぐにわかっちゃうって言うのにねー。ところで私も何かしてほしいかなぁ?」
「……今度どっか連れて行ってやる」
「ありがとう!楽しみにしてるね」
「雅と一緒にな」
「えぇ、二人っきりがいいのにぃ」
「お前らの押しが強すぎるんだよ、片方にかまけるとすぐに拗ねるだろうが、少しは自重してくれ」
「ふふふ、そのまま私だけを見てくれればいいんですよ?」
「ただいまっス!って、ちょっとユッカ!抜け駆けは禁止っス!あーコラ!押し付けるな!しなだれ掛かるな!足絡ませるな!離れろー!」
「ちょっとくらいいいじゃない、雅だって昨日半日古田さんと一緒だったじゃない」
「それはそれ、これはこれっス!」
「三人ともうるさい、さっさと仕事にかかって」
「「「はい!すみません!」」」
「早くしないと夕くん主催のお茶会に遅れる」
(((ダメだこの自称お姉ちゃん)))
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
目を開けるとさまざまな服装の、さまざまな種族が行き交う雑多な広場の中だった。
素早く脇に捌けると自身がGMアカウントではなくakebonoであることを確認した。
「さて、教会で待ち合わせだったな」
近くにいるがこの人混みだ少し急ごう。
「全く、いつ見てもひどい外観だな」
着いた教会の周りはその外観故か人影はほとんど無かった、だからこそこういう待ち合わせの場所としては優秀なのだが。
「やっほ、ぼのぼの、待った?」
「いや、アーサー。今来たところだ」
「ごめんね、少し道が混んでたんだ」
少し遅れてアーサー、智也が来たが、なぜ謝ったのだろうか?そんなに不機嫌な顔をしていたのだろうか?
「いや、大丈夫だが、それより今日はどこに行くんだ?」
「ああ、言ってなかった?『六の街』に行こうと思って」
「言ってないぞ、それだったら転移門で『五の街』まで跳べば良かったじゃないか」
「いや、今回は『騎乗』で行こうと思ってね」
そう言って手元にアイテム『騎獣の呼び笛』を取り出した。
「いや、私が騎馬を持っていないという事なんだが」
「大丈夫大丈夫、任せて」
そういうなり街の外に出てしまう。
「全く……」
アーサーは私が着いてきているのを確認し、騎獣を呼び出す、そして出てきたのは……。
どこぞの世紀末覇者が乗っていそうな巨大な黒馬だった。
「こんなのどこで手に入れたのよ」
「『四の街』近くの草原。群れのボスをしていたのに飛び乗って見たら強制ロデオになってさ、振り落とされないようにしがみついていたら根負けしたらしく騎獣になってくれた」
雅だな、絶対雅がそんなプチイベントを作ったんだ、そう確信した。
「そんなわけで二人でも大丈夫なんだよ」
いつのまにか鞍をつけ終え、馬に跨ったアーサーが自慢気に言ってくる。
「はぁ、じゃあ後ろに乗ればいいのね?」
「いや、まえだが?」
「はぁ?」
「いや、前だぞ?」
「はぁ!?そ、そんなの、こ、恋人みたいじゃない!」
「いや、恋人で合ってるじゃん」
「あ、そうだったわ。いいえ、でも映画とかでお姫様とか後ろに座ってるじゃない、あれはどうなの?」
「いや、後ろの方が揺れるからお客様とかは基本前に座らせるものらしい」
「……ぁぅ、じゃ、じゃあその、よ、よろしくお願いします……」
アーサーに手を差し出すと上まで引っ張りあげてくれた。嬉しいけど少し恥ずかしいくて、それでもとても幸せで、やはり彼の腕に包まれている今はとても気持ちのいいものだ。
「あー、トリップしてるところ悪いが動くぞー」
「ふへへへぇ、え?わ、きゃ!?」
少し反応が遅れてしまい彼の体にもたれかかる形になってしまった、あ、でもこれもこれでありかも。
アーサーの馬に揺られて今までプレイヤー達が切り開いてきた道のりを辿る。草原を駆け抜け、沼地をよけ、森を通り抜ける。もちろん、私たちが創り出した世界だ、どこに何があるのかも知っているし、どんな生き物がいるかも分かっている。だけど彼と巡ればどれも輝かしいもののように思えた。
「なあ、ぼのぼの、いや、灯」
「……どうしたの智也」
「いや、少し道外れるけどいいか?」
「いいけど、どこに行くの?」
今は『五の街』と『六の街』の間に横たわる山の中腹あたり、そこにプレイヤー達が頑張って切り開き、整地した細い道が走っているから道を外れるとなると森に入ってしまうのだけど…。
「こっちだ…」
なんの迷いもなく森に入って行った。
しばらく馬に揺られると急に視界が開けた。
「うわぁ……」
地には何処までも続く壮大な大地。
空には『四枚の翼』を持つ鳥や、巨大なドラゴンたち、雲の間には浮遊大陸が見える。
そして遥か彼方にうっすらと見えるこの大陸の終点にして、新たな旅立ちとなる巨大すぎる『城』
「ここは…?」
「ここは、俺が作った我儘だな、いつか灯と来たいと思ってな、凄いだろ俺たちの世界は」
そうか、だからこのタイミングで私を連れ出したのか。『六の街』が解放されたのはつい先日、私たちはプレイヤー達が攻略できてない場所、発見できてない物、を行ってはいけないし、使ってはいけない。そういう決めごとがある。だから智也はようやくここにこれるようになったんだ。だから私を連れてきたんだ、大好きな私に大好きな世界を見せようと。
「創造神の特権ってヤツだ」
「智也…」
「どうした?」
「…大好き」
「ああ、俺もだ、愛してるよ」
「今度は向こうでもお願いね」
「はは、もっと時間が取れるようになったらな」
「約束だよ」
「ああ、約束する」
願わくばこの幸せがいつまでも続きますように。
『頭脳』の略式関係ぃ〜
浅井・宮内 : 恋人、本編開始直後あたりから付き合っている
古田・青山・霧島 : ハーレム、とりあえず古田は爆死しろ
浅井・古田 : 友人、お互いに惚気たり、愚痴ったりとても仲がいい、たまに夕が乱入することもある
アリス : お姉ちゃん、以上
灯さんは、普段はクールな姉御なんだけどふとした瞬間に智也を思い出して甘い空気を発する。
智也と二人っきりになると人格ごと変わったんじゃないかと言うくらいデレデレになる、それこそ部屋の中で棒を振り回せばピンクの綿飴が出来上がるんじゃないかと言うぐらいの糖度。
突発的な出来事に弱い、押されると弱いとも言う。
智也くんは話す人によって話し方が変わる、どれも素だといえば素だし、そうじゃないといえばそうじゃない、だけど灯に対しては完全なる自分、装飾も何もない自分を出している。
夕に対してはどちらかと言うと悪友に見せる自分を出している。