復讐者
よろしくお願いします。
手元に新しい矢を取り出す、『鎧通し』で使用した矢はどこかに飛んで行ってしまった。
探せば見つかるかもしれないけど、今はその時間すら惜しい。
「『パワーショット』」
当たれば儲けもの、当たらなくても牽制になれば良いと一撃、あっさり躱され反撃が飛んでくる。
ああ、やっぱり……。
「レベルアップって凄いね」
反撃で飛び掛かってきた彼の下顎を蹴り上げる。かつては無様に逃げ回ることが精一杯だったが、今では反撃にカウンターを合わせられるようにまでなった。
「油断せず、慢心せず、確実に殺す。『弓魔法・風』」
発動が早く、視認の難しい、仰け反り効果のある『風』で追撃する。
どうやら『残虐性質』の状態異常が発生したらしく動きが鈍っている。
丁寧に、確実に、念入りに、執拗に、をモットーに頑張りましょう。
戦闘を開始して十五分、僕達の立場はかつてとは真逆になっている。
全身をボロボロにして、地に伏せている彼。
一度の攻撃も喰らうことなく一方的に彼を叩き潰した僕。
倒れ伏した彼にとどめを刺すべく歩み寄る。
「……、強かったよ、楽しかったし。でも、もう僕の方が強かった、だから……。」
ー安らかに眠れー
彼の頭部を『鎧通し』で貫く。
彼の体力は全損し電子のカケラになった。
……薬草を採取して今日は終わろう。
その後、他のモンスターと戦闘することもなく無事に薬草を採取し、街に戻りギルドで受けていた『グラスドッグ討伐依頼』『ファングラビット討伐依頼』『薬草採取依頼』の完了報告をして報酬を受け取った。なんかランクが上がったらしく、新しい依頼を受けることができるようになったらしいけど確認は明日にしよう。
今日は燃え尽きたよ。
ログアウト
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一夜明けて完全に気力が回復しました、今日も元気にゲームをしましょう。
ダイブ開始
ちなみに朝ごはんは卵かけご飯でした、シンプルイズベストなのです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まずは追加された依頼を確認しようかな
ーーフォレストウルフ討伐依頼ーー
・報酬金 : 1800
・報酬経験値 : 2500
・備考 : 目標討伐数0/10
ーーマッドゴーレム討伐依頼ーー
・報酬金 : 2000
・報酬経験値 : 4200
・備考 : 目標討伐数0/1
ーー魔力草採取依頼ーー
・報酬金 : 3000
・報酬経験値 : 4000
・備考 : 目標採取数0/20
ーー教会の清掃依頼ーー
・報酬金 : 500
・報酬経験値 : 6000
・備考 : 清掃率0%(80%以上で達成)
ーー盗賊討伐依頼ーー
・報酬金 : 10000
・報酬経験値 : 8000
・備考 : 規模不明、奇襲の可能性あり
そうだな、どれを受けるか決める前に受付さんに聞いてみよう。
「すみません、フォレストウルフとマッドゴーレムってどこに出るんですか?」
「フォレストウルフはすぐ近くの森に、マッドゴーレムは草原を越えてすぐにある荒野の沼地で出現します。また、フォレストウルフの出現する森には上質な薬草や魔力草が自生しているので、そちらの依頼も併せて受けられる方もいらっしゃいます」
「そうですか、ではフォレストウルフ討伐依頼と魔力草採取依頼、教会の清掃依頼を受けます」
「かしこまりました、ところで教会の場所は……」
「わからないです」
「では、こちらを」
ーーマップにマークしましたーー
あ、久しぶりにシステム音声を聞いた、そういえばアイさん元気にしてるかな。
「ありがとうございます、じゃあ行ってきます」
「お気をつけて、貴女様の冒険に実り多きことを願っております」
さて、今日は教会の清掃から始めよう、って結構遠いな。まあいいやゆっくり行こう、ステータスも確認したいし。
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PN:YŪ
LV:15
種族 :混血種(森人族/獣人族・狼)
JOB :弓術士
SUB :拳闘士
HP :550
MP :600
STR :40
VIT :16 +5
AGI :41 +15
TEC :50 +5
INT :55
MND :21
LUC :16
残SP:6
種族固有スキル
・大器晩成
・魔眼・魔力視
・孤狼の誇り
・(隠し特性・神製の筐体)
後天性スキル
・弓術lv15
・矢弾回収
・視力強化lv20
・脚力強化lv20
・風魔法lv12
・火魔法lv12
・水魔法lv12
・土魔法lv12
・弓魔法lv12
・蹴撃
・魔力増加
・鑑定
・空き
控えスキル
・恐怖耐性
・狂気耐性
・勇猛果敢
・鼓舞
・一念岩穿ち
装備
・武器:初心者の魔導弓
・頭:狐のお面
・胴:弓兵の軽鎧
・腕:弓兵の弓かけ
・脚:弓兵の袴
・靴:弓兵の臑当
・その他1:隠密のタリスマン
・その他2:なし
・その他3:なし
ーー称号『加虐体質』『残虐性質』『嗜虐嗜好』が統合されますーー
称号
・一流の弓兵
・非情なる審判者
其ノ者ニ慈悲ハ無ク、タダ己ノ信ズルモノニオイテ審判ヲ下スノミ(攻撃に吸収効果付与、状態異常付与、連続ダメージボーナス付与)
・職業に反抗する者
・復讐者
己を殺した者をただ1人で討滅した者(同個体との戦闘に限りステータス補正大、取得経験値上昇)
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おっと、少し立ち眩みが……、大丈夫、僕は何も見ていない、空いているスキル枠に恐怖耐性をいれてステータス画面を閉じる。
って言うか、彼、僕を噛み殺した彼だったんだ。
さあ、気を取り直して教会に行こう、掃除楽しみだなぁ!
ごめんなさい、掃除楽しみじゃないです。
何かの間違いじゃないかとマップを確認する、位置、合ってる。
周りの住人さんに聞いてみる、ここが教会だと教えてもらえた。
最後の悪あがきでログインし直してみる、結果変わらず。
うん、これは掃除じゃなくて『修繕』が必要なんじゃないかな?
そう思えるほどのオンボロ加減の教会です。
いつまでもここに居ても仕方ないので中に入る。
「って、あれ?中は綺麗?」
もう一度外観を見る、ボロボロ。
中を見る、綺麗、というか埃一つない荘厳な雰囲気の礼拝堂です。
「あれ〜?」
「どうかなさいましたか?」
「うわ!?」
入り口あたりでウロウロしていたら声をかけられた。
ってシスターさんか、びっくりした。
「すみません、外観と中が噛み合ってなくて驚いていました」
「ああ、なるほど、実は幻惑魔法がかけてあって一見するとボロボロに見えるようになっているのです。それで本日はどのような御用ですか?」
「あ、はい、ギルドで教会の清掃依頼を受けてきたのですが……掃除するところあるんですか?」
「そうですか、ありがとうございます。ではこちらへ」
そう言ってシスターさんは礼拝堂の奥にある神像の前に移動し始めた。
「えーと、ここですか?壊してしまいそうで怖いんですが」
「いえ、ですがここから先のことは誰にも話さないでくださいね」
そう言ってシスターさんは神像の裏に回った……!?
「えぇ!?」
「こちらになります」
神像の足元には地下へと続く階段があった。
「ここは?」
「この教会の本当の礼拝堂への入り口です」
「あの、世界征服を企む邪神とかじゃないですよね?」
「ええ、この世界を創造なされた六柱と彼らを支えた一柱を祀っております」
え゛……。
僕の反応に構わずシスターさんはどんどん降りていくので、慌てて追いかける。
「この国では『七栄神教』を禁じておりますのでこうやって隠れて信仰しております。さて、着きましたよ。ここが目的の場所です」
少しして広い場所に出たそこには……。
足の踏み場のないほど増殖したネズミがいた。
「ヒィ!?」
「これが今回掃除していただきたいモノです」
「シ、シスターさん?!まさか全部ですか?!」
「はい、お願いします」
まさかだった。うぅ、いやだぁ、やりたくない……。
けど、受けた仕事だしちゃんとやろう……
「うぅ、頑張ります」
とりあえず弓でちまちま削ろう。
『七栄神』どんな神様なんだろうなぁー(棒
地下にいたネズミはミッ○ーやジェ○ーみたいな可愛いネズミではなくどぶネズミ系のデカイ奴を想像してください。
ちなみに『初心者の○○』に出現するのは鼠、犬、兎、粘体の四種類だけです、狼は出ません。
つまり主人公はいきなり高レベル帯に突入したおバカさんです。