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お妃さまの物語  作者: 野分
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あのお方に 初めてお会いしたのは

わたくしが 侍女見習いとして 王宮に上がって

間もない頃のことでした。


まだ 童着をお召しになっている

小さい公女さまでした。


美しい妃さまたちや

麗しい公子さま公女さまが

多い中 あのお方だけは どうしたものか

いたって 平凡な平凡な公女さまでした。


王后のお子でしたが

三番目の公女さまで 平凡で

ほどなくして 待望の嫡公子さまが

誕生となれば 自然とおかれる立場が

決まってしまうものです。

広い王后宮の片隅のお部屋で

お付きの者 数人と お過ごしのご様子でした。


公女さまに お生まれになっても

周りの者たちに 気にも止められないなんて

憐れなお方、、と 同情の感を持ったものです。

そして そんな不運な公女さまのことは

日々の慌しさに紛れ すっかり忘れておりました。



それから どれくらいの時がたちましたでしょうか。

わたくしも無事に侍女となり

蓮妃という方の宮つきと なりました。


その日は

珍しく 後宮の西外れまで 使いで行っておりました。

帰り道をいそいでおりますと

どこからともなく楽しげな笑い声が

聞こえてまいりました。

王宮で 毒のない笑い声など

聞いたことがないので 同伴の侍女と

顔を見合わせて怪訝に思ったものです。

後宮の端の こんな辺鄙なところで、、


小さな門が ありました。

笑い声は こちらから 聞こえております。

近づくにつれて 楽しげな空気すら

感じられました。

怖いもの見たさもあり 無作法ながら

門から 覗き込んでわたくしたちが

見たものは


花畑でした。

侍女たちが 花を摘みながら 歌を歌い

笑っておりました。

その花畑で

誰よりも 大輪の笑を咲かせてきたのは

あの 平凡な公女さまでした。

初めて会った時よりも ずっと 大きくなられ

御髪も公女らしく 結い上げられておりました。

萌葱色のお召し物が とても お似合いでした。

でも やはり平凡な公女さまでした。

なのに なぜか 目が離せません。


公女さまは こちらに気がつかれ

一瞬 目を見張られましたが

すぐに破顔されて お声をかけてくださいました。


「花陽舎へようこそ」


鈴を振ったような 清らかなお声でした。








十を過ぎたお子たちは 各々 お部屋を

頂く習わしになっております。

平凡な公女さま、、、 瑤公女も数年前に

ご自分のお部屋を頂いたようです。


相変わらず ひっそりと

でも とても楽しげに 過ごされているようです。


宮中の行事には

まだお出ましになっていらっしゃらなかったので

お会いする機会は それからも ございませんでしたが

わたくしにとって萌葱色の 瑤公女は

とても気になる お方になっておりました。


そんな折 年頃になりました公女さまたちの

成人のお披露目が 行われることに なりました。

今回は 六人の公女さまたちの お披露目で

この中には 瑤公女も 含まれているようです。

公女さまたちが 父王の御前で歌楽を

ご披露される それはそれは 華やかな

宴だそうです。


お付きの侍女たちも 主の晴れ舞台とあり

大張り切りで 華やいでおります。

王后から それぞれの公女に お支度のお品物も

下賜され 毎日 沢山のお品物が あちらこちらの

お部屋に 運ばれて行っております。

宮中の お針子は 新しいお召し物を作るのに

てんてこ舞い している様子です。


お子がすでに成人した公子のみの

わたくしの主 蓮妃は

華やかで 楽しそうね と

羨ましげに

おっしゃって おります。


瑤公女は どうなさっているでしょうか。























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