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多磨とレイラ  作者: 千歳
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第7話

機材の設計図などは、撮影中にある程度作っていたため順調に作業が進んでいく。


プロジェクター、スピーカー、マイク、その他書類等を完成させ、オルカの家に向かう。


「───ってことを頼みたいんだ。」

「だ、だいぶ大変ですね。でも、はい分かりました。」

「そ、そんな簡単に許可していいんすか?俺が言う事じゃ無いかもですけど、結構大変な事を頼んでると思うんですが・・・」

「協力するって言ったじゃ無いですか。それに僕以外にこれを出来る人は居なさそうですしね。」

うう、さすがオルカだ。大きい工場を経営しているだけあってこういう所は色々と察しがいい。

「それにね、」

「それに?」

オルカは書類を机に置いて、俺を見る。

「僕は、今まで常にこの工場を経営することばかり考えて生きてきました。でも、君と出会ってから、色々生活に変化がありました。大変な事も増えましたし、ひどいこともされてきました。」

Oh..心当たりがあり過ぎてオルカから目を背けてしまう。

「けどね、そんな君に振り回される日々も悪くないなって思えるんです。きっと君と出会わなければこんな事を思う事も無かったと思います。だからね、そんな君が困っているなら力になってあげたいと思うんです。」

そう言いながら照れを隠すように笑うオルカ。

俺と居るときは常に難しい顔をしている印象があるから、正直かなりびっくりした。

まぁ難しい顔をさせているのは100%俺が原因なのだが・・・

「本当にありがとう。よろしくお願いします。」

俺はこの世界で出来た大切な友人に深く頭を下げ、お礼を言った後一応確認の意味も込め、もう1度口頭で説明して次の目的地に向かった。


「おい!シャルはいるか?」

俺は警察署に入ると同時に大きな声を上げる。

「何だ、騒々しいって多磨お前か、どうしたんだ?」

「今夜、計画を実行しようと思う。その為にあんたら警察に協力をしてもらいたいんだ。」

俺の焦っている様子を察してかその場では詳しい話を聞こうとはせず、すぐに奥の部屋に通してくれた。

「・・・・よし、詳しく聞こう。」

俺は計画の段取りを簡単に説明する。

「す、凄いな本当にそんな事が可能なのか?」

「あぁ、可能だよ。」

「お、お前は本当に何者なのだ・・・」

「質問はこれが全部終わったら答えるよ。」

「・・・わかった。それで私達に何をさせるつもりだ?」

「午後6時までに街の人をキャンプ場に誘導してもらいたいのと、キャンプ場で露店を開いてくれる飲食店を探してもらいたい。」

俺はオルカにも見せた書類を見せる。

「露店やステージの建設はオルカと工場の人達がやってくれる。それで、2時までには店の人が露店に入れるようにするから、12時ぐらいまでに出来るだけ参加してもらえる店を探して欲しい。」

「そんなに派手にやって大丈夫なのか?」

「俺が話をするだけで人が集まってくれるならこんなことする必要は無いんだろうけどな・・・現実はそんなに甘くないし、それにこうした方がお前ら警察だって人を誘導しやすいだろ?」

「だが、そんな事を無断でやったと首長にバレでもしたら、娘に溺愛しているあの人の事だ、死刑は免れないぞ!」

「大丈夫だって、その対策もあるからさ。」

俺はシェルに2つの魔道具を渡す。

「もし、この魔道具が光ったらもう1つの魔道具を起動さしてくれ。そうすれば、この件でこの街の人に被害が及ぶことは無いと思う。」

「・・・わかった。任せておけ。でも、もしそうなったらお前は、どうなるんだ。」

「さぁ、そんなの首長次第だろ?」

「・・・・なら、私もついて行く。」

「は?」

「私も一緒に行ってに説得した方がまだお前が生きる可能性があると言っているんだ!」

「おい!想像で俺を勝手に殺すな!!あくまでそれは保険の保険だ。考えがあってのことだから大丈夫だって。それより、俺を頼んだことをしっかりやってくれたら失敗は無いって。」

「そ、そうか。本当に頼むぞ。今お前が死んでしまったら・・・レイラは本当に立ち直れなくなってしまう、そんな気がするんだよ。」

「お、おう。まかせろー」

やばい、今の俺とレイラの状況を知ったら殺されそうな勢いだ。

まだ、納得のいっていないという顔のシェルに話を続ける。

「正直さ、俺がレイラの状況を変えるにはこれしか無いと思ってるんだ。だからこれは俺にとって、どうしても成功させたい、いやさせなきゃならない事なんだ。」

「だってアンタだって知ってるだろ?」

「・・・何をだ?」

「レイラがすげーいい奴だってことをだよ。」

「!」

「それを街のみんなに知ってもらうんだ。俺はレイラと会ってまだ1ヶ月くらいしか経ってないけどさ、俺はあいつのためなら命をかけてもいいと思えるよ。」


「今回のことで俺自身がレイラに嫌われても別にいいんだ、でもその代わりきっと街の人があいつを好きになってくれる。そこまでいかなくても今の状況は絶対変えてみせる。その方がもしかしたらあいつがこれからもこの街で生きていくことを考えたら幸せかもしれないしな。」

俺はハハッと軽く笑いながら言うと、シェルも決意を固めたのか、部屋を出てすぐに警官を集め、指示を出している。

俺はシェルにとある書類を渡し、外に出た。


時刻は午後1時。

計画開始まであと5時間

俺は、急いで次の目的地である首長の家に向かった。


「いやぁ、初めまして。ウルバ首長」

俺は警備員である屈強な男に首長に、重要な用事があると伝え首長室に入れてもらっていた。


「貴様は確か最近この田舎街に来て、住み着いているとかいう変わり者の旅人だったか?・・・・何のようだ?」


「実は訳あってお願いしたいことがあるんですよ。」

「会っていきなり懇願とは失礼なやつだな、まぁいい、要件は聞いてやろうじゃないか。」

「今日、街のキャンプ場でちょっとした催し物を開きたいと思ってましてね・・・それに関与しないで頂きたいのですよ。」

「ほぅ、つまりそれは俺にとって都合の悪いことをしたいから関わらないで欲しいと、そう受け取っても構わんよな?」

「まぁ簡単に言えば。」

「旅人が偉そうに首長に命令するとは、いい度胸じゃないか。そんな事この俺が聞くと思うか?」

「いえ、ですのでこちらをお持ちしたんですよ。」

「・・・何だこれは?」

「これはですね最近、王都の方で開発された魔道具でして、空間を切り取ることが可能なのですよ。」

「何故貴様がそのような物を持っているのか問い詰めたい所だが、本当ならその空間を切り取る魔道具とやらを見せてもらいたいものだなぁ」

「もちろん。今すぐ、お見せ致しますよ。」


「あっそう言えばウルバ首長?て娘さんに溺愛してらっしゃるんですよね?」


「いきなりなん──」

俺は映像を流し始める。


「!!!」

「いやね、毎晩この家から夜遅くにこっそり抜け出す影が見えたんですよ。それで後を追ってみたらね・・・」

「き、貴様ぁ!!!」

「動くな!」

俺は片方をシェルに渡した魔道具をウルバに見せながら叫ぶ。

「俺に少しでも危害を加えようものならこの魔道具を起動して、さっきの映像を街中にばらまいてやる。そうしたら流石にお前の妻や娘の目にも入るだろう。そうなったら離婚もありえるかもなぁ!」

聞いた話だと、この国では浮気されたら離婚する、という女性が多いらしい。

一応貴族の嫁なのだ、さぞかしプライドも高いだろう。そんな女が浮気されたと知ったら許すとは思えない。それは娘と別居を意味する。

「くっ・・・調子に乗りおって!」

「さぁどうするんだ、選べよ!!」

「俺の提案を飲んで関与しないか、ここで俺を処分してこの恥ずかしい映像ををばらまかれるか!」

「・・・くっ、わ、分かった。お前の提案を・・・飲もう。」

「よし、交渉成立だ。」

俺は契約書を出し、それにサインをさせ警察署に戻り、書類を渡す。


シェルは若干引きながらもその書類を受け取り、そこから計画は一気に加速した。

オルカ達は俺が会場に行った11時頃にはすでに露店、ステージ設置をほぼ終わらせており、それから続々と店の人も到着し、2時頃にはお客さんを入れても大丈夫なくらいになっていた。


そして沢山の人の協力もあり、暗くなり始める頃には会場が人で溢れていた。

街の詳しい人口は知らないのだが、恐らく全員と言ってもいいぐらい人が集まっている。


会場にいる人は、露店で買った物を食べながら雑談したり、ステージに登ってみたりとそれぞれ楽しんでる様子だった。


「なぁ、お前って本当に何者なんだ。」

俺も着ているルリアさんがこのイベントのために急ぎで作ってくれたイベントスタッフTシャツ姿のシェルがいつの間にかステージ裏に来ていた。

「何者って何がだよ?」

俺は確認作業の手を止めないまま話を続ける。

「もらった資料をそのまま渡したら、最初は渋っていた店主達が飛びつくように参加したいと言ってきたんだ。」

「あーそれは、簡単に言うと今回の件で、もし参加したら利益がこの位出ると思うぞっていう金額を目安で計算して、それを教えてやったんだよ。多分そのおかげだと思うぞ。」


「そんなもの出せるのか?」

「まぁ計算自体簡単だし、それにこれだけ人が集まったんだ予想金額は余裕で超えてそうだけどね・・・っと」

確認も終わり、大きく伸びをする。

「そ、そう言えばレイラはここに来てるのか?」

「あーいや、それは店長に頼んで来ないようにしてもらった。」

「どうして?」

「今日俺がこの話を聞いてほしい相手はあいつじゃ無いから。」

俺はハッキリと言い切る。

まぁ実際の所、あいつの姿を見てしまったら嫌われてもいいという決意が揺らいでしまうかもという情けない部分もあるけど、それは黙っておく。


「・・・そろそろか。」

シェルの声で、時計を見る。

5時55分 完全に太陽が沈み、暗くなってきた。

「あぁそうだな。じゃあ行ってきますわ」


「・・・あぁ、本当にありがとう。多磨君。」

後ろからの優しい声に少し口元が緩まっているのを感じながら、階段を登る。


さぁ、よからぬ事を始めようじゃないかァ!


俺は眩しいぐらいライトの当たるステージの中心に立ち、話を始めたのだ。


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