第3話
そして俺が異世界に来てから1ヶ月が経とうとしていた。
「いらっしゃいませー焼きたてのパン入りますー。」
「いらっしゃいませー当店のおすすめは新商品のこちらになります。」
週5日1日8時間、街のパン屋で働いていた。
この世界に来た時に考えていた俺の個人情報やら人脈やらの方針をすべて捨て、レイラとの勤労生活を送っていた。
俺達がバイトしているのには訳があって
最初はコンヨクーに向かうための資金+覗き用のカメラを買うためにバイトを始めたのだが、レイラにどこにカメラ売っているのかと聞いてみたらと「カメラ?なにそれ?」とに聞かれ、カメラの説明をする。
「あぁそれって魔法鏡の事?」とこの世界にもカメラのようなものがあるらしく、それを店に見に行った所。
「は?高くね?」
125万円という、値札と共に馬鹿でかい機械が置いてあった。
「まぁ王都で作られた特注品らしいからね〜」
「そうなんだ。これなら作った方がいいな。」
「・・・はい?」
という訳で自分達で作ることを決めたのでお金を稼ぐことが最優先になったので給料を安定させるため、1箇所で働いているのだ。
「「お疲れ様でしたー」」
俺とレイラは今日の勤務を終え、店長に挨拶をして店の外に出た。
「どう?そろそろお金貯まった??」2人で歩いているとレイラが俺の顔をのぞき込みながら聞いてきた。
「おう もう大丈夫だ。 今日さぁ新しく考えたメニューが売れてボーナスが入ったんだよ。それでお金は十分貯まったからもうバイトしなくても大丈夫だ。」と言うと
「・・・そっか最近ちょっと楽しくなってきたから少し寂しい気もするなぁ」とレイラが呟いた。
レイラの言葉を聞いて少し驚いたものの、何となく気持ちが分かる。
レイラも俺も今までバイトの経験がほぼ無かったこともあり、働いた後に感じる達成感や、お客さんの笑顔を見られるのがうれしくてバイトが楽しくなりつつあった。
「・・まぁ別にすぐに辞めなくてもいいかもな。とりあえず今日はボーナスも入ったことだしどっかで飯食ってから帰ろうぜ」
「ほんとに?やったー」とレイラは久しぶりの外食に笑顔で喜んでいた。
その笑顔を見て、無邪気に喜ぶ男に不覚にも可愛いと思ってしまった。
俺はあれから1ヶ月、まだあのキャンプ場で暮らしていた。
最初との違いは、今はレイラと一緒に暮らしているということぐらいだろう。
ご飯を交代で作って食べて、バイト代で家具を買いに行ったり、割といいキャンプ生活を送っている。
でも、年下のレイラの前では平然を装っているが、何だか友達と一緒に暮らしているみたいで楽しくてしょうがなかった。
翌日、バイトが休みなこともあり、お互い好きなことをして過ごすことになった。
俺は必要な物を街で買い、ある場所へ向かっていた。
「・・・なんでついてくるんだよ」
自由行動のはずなのにずっと俺の後ろをついてきていた。
「いいじゃん 自由行動なんでしょ?僕が好きでついていくのは別にいいじゃん?」
「別にいいけど 着いてきて楽しいものでも無いと思うぞ?」と言うと
「どこに行くつもりなの?」
「あそこにある工場だよ」と街から少し離れたところにある大きな工場を指さしながら答えた。
「あぁ魔法鏡、確かカメラ?ってやつを作るの?」
「あぁ、そのための準備も出来たしオルカに話をしに来たんだよ」
俺達は工場の中に入り、受付の人に話し掛ける。
「今日、工場長のオルカって居ますか?」
「居ますよ。あぁ多摩様お久しぶりです。奥の部屋にお入り下さい」
俺とレイラは会議室のような部屋に入ると、1番奥の席に最初に会った時とは全然違うキッチリした30代イケメンメガネ男が座っていた。
「前回来た時から2週間。だいぶ遅かったですね?あと、アポ取ってもらわないと困るんですよ。私だって暇じゃないんです。」
いきなりのきつい物言いにレイラがビクッとおびえ、後ろに隠れた。
「まぁそんな怒んないで下さいって。ようやく金が貯まって俺の考えた事が実行に移せる所まできたから工場貸してよ。」
「例の話、本当なんですね?」
「あぁ もしカメラが完成したら1番にオルカさんの要望通りの物を作ってあげますよ」
「分かりました。 交渉成立です。このために工場内に貴方の部屋を作っておきました。 そこを自由に使って貰って構いませんよ」
「おっありがとう。 それなら今日中に工場での作業は終われると思うんで、例の物は今週中に渡せると思います。」
鍵を受け取りながら答える。
「ほ、ほんとですか。」
俺の言葉にさっきまでの落ち着きを失い、エロ本を初めて拾った小学生の様に興奮していた。
「???」
その様子を見て、会話の内容がわからないレイラはひたすら困惑していた。
そんなレイラを引き連れ、言われた部屋に向かった。
「あの人といつ知り合ったの?」
「あぁ オルカとの出会い? あいつと会ったのは・・・・いや知らなくてもいいと思うよ」
俺はオルカの名誉のためにも出会った時の情けない姿は黙っておいてあげた。
今からさかのぼること2週間前
「おーいオルカさーん」
俺はバイトも順調に進んでいたこともあり例の協力の件について詳しい話をしにオルカの家に行った。
「ああ、多摩君ですか。どうしたんです?」
「前に話してた協力の件なんだけど・・・」
そこで写真の話をし、それを作るために場所を作って欲しいと言うことをオルカに相談していたのだ。これからこの世界で色々な物を作っていくつもりの俺にとっては物を作れる環境が必要なのだ。
ここにある機材とかを見せてもらい、作れそうだと判断したところで部屋を貸してくれと頼んだのだ。
詳しい話を聞き終わったオルカが最初は写真のことを信じられなくて俺が嘘を言っていると思っていたが、携帯のカメラを使いながら説明していくと納得したようで場所は用意しておくと言ってくれたのだった。
店長曰く
この世界には、魔法ポイントというものがある。
そのポイントは生まれつき、決まっておりそのポイントと交換して魔法を覚えられるらしい。
常人は大体15前後ぐらいで、高い人でも大体80~100ぐらいらしい。
このポイントが高い人は強い魔法を覚えられるため、冒険者、盗賊、騎士、警官などの魔法を使う職種になるらしいけど、それは全人口の5%未満、つまりほとんどの人は魔法を使わず、普通の人として暮らしているらしい。
この街に至っては魔法を覚えてる人すらほとんど居ないらしい。
部屋に入ってから5時間後
「よしっ」
試作品が完成し、伸びをしていると視界の隅に作業机に頭を突っ伏して眠っているレイラの姿が見えた。
「僕もここで見てたい」と言っていたが、いつの間にか眠ってしまったらしい。
俺は完成したデジカメを構えて、目の前にいる被写体に焦点を合わす。
パシャッという音がして、眠っている姿の写真が画面に映った。
成功だ。部品代も馬鹿にならないため、最初で成功してくれてよかった。
シャッター音で目が覚めたのか、レイラの頭が上がってきた。
パシャパシャパシャパシャと起き上がってくるレイラの気の抜けてる顔を連写。
レイラは体を伸ばして
「カメラ?ってやつが完成したの?」と聞いてきたので
「あぁ完成したよ。ほら」
と俺は気の抜けた顔をしたレイラが写っている画面を見せた。
レイラはその写真を見て、
「も、もしかしてこれって僕?」
「あぁそうだよ」
その後は、顔を赤くしながらカメラを壊そうとするレイラを止めるのが本当に大変だった。
オルカに完成を報告して、工場を出た。
「で、それでそのカメラを何に使うの?」
写真を削除してようやく口をきいてくれるようになったレイラが街に戻っている途中、カメラを見ながら聞いてきた。
「そうだな。・・・まあとりあえず、最初はオルカの依頼を終わらせるか!」
俺とレイラは依頼の実行のため、花屋の店先で色んな花には目もくれずカメラを構え、待機していた。
時刻は午後4時。当初の予定よりだいぶ遅くなってしまった。
今回のターゲットである女が出てきた。
外に出てきた花屋の美人店主クリアをひたすら連写する。
こういう時普通の人ならどこかに隠れて、こっそり撮影するだろう。
俺は違う。
店の目の前に立ち、カメラをのぞき込むのでは無く胸の前で構え、相手と顔を合わせながら真顔で連写するのだ。
「・・・・」
「・・・・えっ な、なにこれ?」
相手はカメラのことを知らない。
このチャンスにつけ込まない俺では無い!
今の俺は表情を変えてはならない。少しでもニヤケようものなら相手が何かを感じ取ってしまう可能性がある。
横で1ヶ月前まで女湯に玉を投げ込もうとしていたレイラがひたすら頭を下げ、謝っていようが関係は無い!とひたすら連写を続ける。
店主がこの状況を見て何かを察したのか、どこかへ逃げて行ってしまった。
正直、腐るぐらい店主の写真を撮ったので、編集のため再び工場に戻り、カメラと一緒に作ったプリンターにカメラを接続した所で、
俺は覚えたての魔法を発動する。
電気系の最上級魔法、これをオルカの工場で作られている魔道具を使い、電気をためる。
その魔道具をプリンターにはめ込み、起動させる。
この魔道具がこの世界での俺の作る色々なものの充電器と思ってもらえれば大丈夫だ。
撮った写真の中からとくに変な顔に写っていた784枚を選択してプリントアウトした。
広辞苑の様な厚さの写真の束を抱え、その束をオルカに渡す。中身を確認される前にまともな写真先に1枚を見せ、これからもあの部屋を俺の部屋として使う許可証を貰った。
写真集は簡単には開けられるとまずいのでパズルが解けないと開かないという仕組みにしておいた。