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Q.本物より精巧な偽札とは?

 和E-100号事件

 マスコミが命名した『本物の日本銀行券より精巧な偽札事件』という事件名で知られ、世間を騒がせた事件であった。

 この偽札は都内某所の家電量販店で他の日本銀行券と混ぜて使用されていたことが、閉店後に売り上げを調べていた店長が即座に気付いて通報したことで発覚した。

 警察ではあまりに精巧に作られていたことで店長、または、店員による自作自演を疑っていたが、捜査を進めていくうちに業界では有名な偽札職人、煮瀬冊津駆瑠ニセサツツクルによる犯行であることが分かった。

 店長や店員に偽札を作れるだけの技能が無かったため自作自演説は消え、煮瀬冊容疑者が警察の捜査で第一容疑者として浮上し、自宅に併設された工房で偽札作りをしているところをインターネット上にアップロードしていたため、すぐに逮捕された。

 煮瀬冊容疑者の偽札作りに掛ける熱意や妥協を許さない姿勢から、本物の日本銀行券よりこっちを法定通貨にすべきという意見も出されたほどであった。

 警察での取調べには協力的で、動機や詳しい手口を残らず語った。

 以下、取調べの様子である。


『偽札を作って、使用したことを認めるんだな?』

「はい、私がやりました」

『どうして偽札作りなんかしたんだ?』

「生活が苦しくて、つい出来心でやってしまったんですが、生活苦は厳しくなるばかりで」

『調書を作るから、偽札作りの手口を詳しく説明しなさい?』

「まず、本物の日本銀行券について調べたんです。材料は何か?製法はどうやっているか?なんかです。そしたら和紙を使っていると分かって」

『業者から似ている和紙を取り寄せたのか?』

「いいえ、業者の和紙も見たのですが紙幣と似た和紙はなくて」

『ならどこから和紙を取り寄せたんだ?知りあいに頼んだのか?』

「自分で作りました。みつまた、アバカから作っていると知ったので、、土地を買って土壌改善から始めたんで大体20年くらい試行錯誤の連続でした」

『っえ?原料から手作りで単独犯だったのか?』

「納得できるくらい育っても、和紙に加工するのが大変でして日本銀行券とそっくりの和紙を作っても、本物の日本銀行券の耐久性やさわり心地自体に満足できなかったので、さらに工夫して高耐久でさわり心地の良い和紙をすきました」

『和紙を作るまで大体どのくらいかかった?』

「20年くらいで、土地やら何やらで1億以上はかかりました」

『馬鹿だろ、お前?』

「つづけても良いですか」

「一万円札を印刷する段階になってからは福沢諭吉について徹底して調べて、肖像画のデザインもより映えるように手直ししつつも福沢諭吉らしさを失わないものにしてみました」

『だから、本物の一万円の福沢諭吉と違っていたのか?』

「そうです。超細密画線やマイクロ文字についても手作業で密度を10倍以上にしながら、マイクロ文字ではニホンなのに英語はNIPPONという部分も直してみました」

『顕微鏡じゃないと見えないマイクロ文字が大量にあって、ニッポンとなっていたのはそれが理由か。馬鹿だろ?』

「馬鹿かもしれません。すかしも手直しした福沢諭吉と合うようにデザインしてみました。深凹版印刷や潜像模様もより分かりやすく、耐久性を高めてみました」

『すかしのデザインも本物と微妙に違っていたな。潜像模様でNIPPONのIが本物は|になっているのに、Iとなっていたな。深凹版印刷は印刷局が褒めていたぞ?』

「一番苦労したのはホログラムや特殊インクです。加工機械を購入したんですが、気に入る出来ではなかったので何度も調整や改造を加えました」

『お前の工房で見つけた原型の残っていない自作した機械のことか。メーカーがあれの権利を言い値で買いたい、と言っていたぞ。それで日にどのくらい作ったんだ?』

「一日だと1枚が限界でした。その一枚も最終チェックで納得出来るもの以外は焼却炉で焼きました。ですから一年で1枚くらいですね」

『その一枚を作るのにどれくらいかかったんだ?』

「最終チェックに残るものだけでも初期投資や減価償却を除いても一枚当り2万から3万ってところですから、完成品は年に一枚で大体1,000万ですね」

『単位は円?』

「日本円です」

『馬鹿だな、お前』


 裁判では弁護側は被告人は偽札ではなく芸術品を作ったという弁護であった。

 現在では煮瀬冊氏の偽札はコレクターアイテムとして高値で取引されている。

A.出来の悪い偽札


本物と違っているなら、本物より精巧な部分は偽物としての証拠だよ。

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