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金曜日のバックアップ  作者: 希恵和
第一章 始まりのイマージング
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メイキング


 ここで木曜日の彼女。つまり昨日の彼女が何をしたのかを説明する。

 昨日の彼女は普通に授業を受けていた。

 しかし、放課後おそろしい現場を目の当たりにした。

 

 ――市原さんが男といちゃついていた。

 

 しかも二人きりで。いやらしーー。

まあ、それを見ただけで彼女は怒り狂い、電波的なことを言い放ったんだけどね。そっちの方が頭イ●れてるけどね。

 

 彼女は純粋乙女ちゃんだから。これでディープキスでもしていたら、机投げてたかも。よかった。そこまではいかなくてよかった!


 しかし、彼女は爆弾発言をしている。

 主に、お前のせいで世界は滅亡にむかってるだなんたら。痛々しい。正直止めれるものなら止めたかった。


 けれども、運命ってものは厳しい。彼女は歯止めが聞かず、市原さんを殴った。力いっぱい。

 

 そこへクラスメイトがちょうど遭遇。すぐさま駆け寄るクラスメイト。

 そして、彼女は言い訳の一つも出来ずにその場から逃走した。その後完璧に犯人扱いである。


 というか彼女はなんかフォローぐらいしてから私に引き継いでくれる気は無かったんだろうか。私に多大な被害がもたらされてるんだが、主に精神面。

 

 要約すると、彼女の行動は失恋ぶち切れだったのである。

 

 ――失恋? ああ、いうの忘れてた。

 市原さんのお相手は一条照明(いちじょうてるあき)


 彼女のクラスメイトで……彼女が好きな男である。


 異性として好き好んでいるらしい。私個人としては趣味悪いと思う。

 なぜなら、彼女は知らないからだ。彼の真実を。

 彼が本心はどんなものを抱えているかを知らないでスキだとほざいているのだ。うちの子は。


 全くの考え無し。騙されやすいにもほどがある。オレオレ詐欺し放題。そしてその尻拭いは私がするのだろう。私老後まで働き詰めらしいね。とほほ。

 

 まあ、そのおかげで毎日が明るく楽しく過ごしているんだろうけど。彼女のみは。

 ほんと頭の中お花畑ちゃんめ。楽しいか。ちくしょー。


 その後も惰性的に続く授業。

 二限目、数学。三限目、英語。

 だんだん疲れてきたのだろうか。市原さんの取り巻きも視線でちょっかいをかけてこなくなった。そして、昼飯までもう少し。


 四限目、化学。でも、今日は先生がいなくてまさかの自習。喋りだすクラスメイト。

 ざわめく教室。喧騒の中、私はただ悩むだけだ。未だに突破口が掴めない。市原さんは席から立ち上がらず、何もしてこない。


 しかし、目が会えばきっと市原さんは私を睨むだろう。怒りは収まっていないようだから。顔色で分かる。

 私はどうすれば市原さんに忘れてもらえるのかを考える。もうだめかと諦めたくもなってきた。いや待て。ここまできたら受け入れてもらうしかない。いっそ正当防衛だとおもってもらえるようなオチがつけてしまえばいい。それが夢のようなことであっても、私はそれを実現しなければならない。


 でも、何を使う。

 何をどう解釈してもらえばいい? いっそ言うべきか。

 

『昨日の私はアホの子だったのーー。本当は一条くんが好きなだけで……てへ』


 で、終わればどんなにいいか。ついでに二重人格なんですってカミングアウトしてまえ。


 

 ――チャイムが鳴る。昼休みになり、物語は刻一刻と終わりに近づいていた。


 しかし、私は何も出来ていない。

 ヒント。誰かヒントをくれ。


「――うちの弟サッカー部なのよ。だからかな。家族全員で旅行とかもいけないわけ」

 市原さんの話声が聞こえた。あ、皆と仲良しご飯。楽しくおしゃべり。

 

 あ、私は? ぼっちご飯です。悲しいかって? いや、こればかりはいつものことだ。別に今日に限ったことではない。残念ながら。


 では、本題に戻そう。サッカー部は休みが夏休みでも冬休みでも殆どない。しかも休みが不定期らしい。

 スケジュールはぎりぎりまで知らされない。さらに一人一人に特別指導が組まれており、全員休みの日がバラバラ。一体、サッカー部の顧問の先生はいつ休んでるんだろう。

 部員全員で打ち上げも出来ない! なんということ! 


 ってちがう! なんで私は部活関係に思考を向けているんだ。

 そうじゃないだろ。問題は市原さんと彼だ。彼って一条くんの……ってあれ?

 

  

 ――今、思ったんだが、市原さんと一条があまり仲良さそうじゃないのだ。

 さっきどころか今日一日も言葉を交わしていないように見えた。なぜか? 昨日のいちゃつきはなんだったんだ。そこで私は気付く。


 ――もしかしてあれ、イチャつきじゃない?


 私は記憶をたどった。昨日の放課後のことを……。



「――ねえ、一条くん。もう私無理なの」

 

 そんなことをいっていたような気がする。

 今思えばなんということを言ってるんだ市原さん。それはエロチックな小説の冒頭にしか聞こえん。無理って何が? 理性の糸か。いけない放課後の授業かよおい。


「何言ってるんだよ」


 やめてーー。一条くん、それはヤバイフラグだよ。立てないで。ってわああああ、もうやだ。立てないでって私の言葉さええろいー。もう、エロイのはいけませーーん。


「私は」

 そういって市原さんの手が。

 市原さんのオトナっぽい細くて長い指先が一条くんの肩に触れる。


「止めろよ。誰かが見てたらどうするんだよ」


 市原さんの手を払いのける一条くん。ツンデレかあんた。


「――ホント、もうだめなの」

 市原さんがうるうるおめめで言う。まるで誘ってるような……。


 そこで彼女の血管はぷっちんした。以下説明済み。ここで回想終了。


 よし、そこから何が分かる。一条くんが手を払いのけてる? 

 

 そこは愛するもの同士ならなおいっそう抱きしめあうのでは? もしそんな展開があって、さらに私が男なら、手を払いのけるんじゃなくて、カメラを回していたんだが。あ、それは犯罪だ。だめ、絶対。


 

 私がそのような邪な考えにふけっていたその時、クラスの戸が開かれた。


「ねーちゃん」と呼ぶ声がした。

 声の主は快活そうな少年だった。


「あれ、トシくん」

 そういったのは『ねーちゃん』ではなさそうな一条くんだった。

 ん、知り合い?

 

「――トシ! なんでここに!」

 つづいてそういったのはねーちゃんっぽい市原さん。


 弟さんか。ということは一条くんと家族ぐるみの付き合いなのか。


 ひゅーひゅーうらやましい。

 でも、これを彼女が聞いたら今度こそ市原さんを半殺しにでもしそうだ。


 黙っとこうっと。



 

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