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金曜日のバックアップ  作者: 希恵和
第一章 始まりのイマージング
4/31

タイアップ

 

ここでクラス内カーストが浮き彫りになる。

 彼女が殴った女子は名を『市原美香子』。一言で言うなら、美しい女性だ。


 光を浴びてきらめく長い黒髪。いつもはストレートヘアだが、月に一回髪を後ろでまとめてポニーテールにしてくることがある。

 この時、見えるうなじに惚れない男はいないというほどの美人である。

 この男子を篭絡するスキル。一度の発生するとその破壊力、男子15人分なり。

 

 ちなみに今日はノーマルモード。でも、髪がいつもより逆立っているような……それは空気か。あはは。

  

 そして、市原さんはクラスの先陣を切るリーダーという役割をも持っている。

 成績優秀。

 姫のような愛らしさと火縄銃のような爆撃力あり。ようするに『女は怒らせると怖い』ってことのシンボル的存在なのだ。

 

 しかし、今日はいつにも増してキレイだ……釣り目がいつもよりぴんと張り詰めて……って私のせいか。


 怒りが女を美人に見せるのか。

 怒り自体が美を生むのかは分からないが。

 今日の市原さんはキュートなかわいこちゃんや美人みたいな、いつものイメージより『鬼』の方が先行した。

 

 うわああ私のせいだ。

 ごめんなさい許して下さい。

 

 入室してから席から立つ事も許されないような気がするまま数分。

 授業担当の先生が入ってきて、何かを合図する。

 すると女生徒の一人がすくっと立ち上がり教壇へ向かった。


 女生徒はこちらを振り返ると、こういった。


「――環境研究。各自研究対象を決めてください。ちなみに今日中に決められなかった班は居残り」

 その女生徒ことクラス委員でもある市原さんが怒り顔で言った。


 うわ、その顔で一日中いる気か怖えぇ私……じゃなく彼女のせいだけど。


 一限目、社会科のレポート作成。建造物または歴史についての報告書。

 それに何の意味があるかといえば、調べるという行動だけが目的だ。無意味のようで意味があるはずの学校教育。社会勉強になっていいんじゃないでしょうか。社会だけに。


 机移動。いわゆる学校給食を食べる時の体制にする。小学校以来だ、向かい合うのは。

 

 人の目と目が会う感覚は幼ければ幼いほど拒絶感は無い。


 ただ私ったらどうやら成長していたらしく……こわい。向かいあったらこわい市原さん。


 静まり返る。


 実はこれ、本来班活動。しかし、班員に私がいるだけで、活性化してたであろう皆様の脳細胞は沈静化しっぱなし。

 

 班員は全員で6人。

 市原さんと取り巻き女子3人と私と交流のないサブ男。というかサブ男まで黙り込んでいる。お前は殆ど関係ないんだからなんか言ってよ。空気読むなよ。お前男だろう? ああ――協力しましょう。何て言いだせん。


 全く、なんてことをしてくれたんだ。彼女め。

 軽く苦虫をかんでいる時、


「何か意見無いの」

 市原さんが何故か私に聞いていた。


 え、人にもの聞く態度かそれ? 


 睨みつけている。ヤンキーよりも恐ろしい。

 チームのてっぺんやってるんでしょと思うくらいにはリアルなガン飛ばし。怖い市原さん。私は内心怯える。建造物といえば……何で賃貸住宅が出てくるんだろう。もう不動産に任せればいいんじゃないかなって思いつつ。真面目にしようと模索してみる。


「世界遺産とか……参考資料が得られそうなのがいいと思う」

 少ない語彙をなんとか混ぜ合わせる。一応考えました感もあわせて。

 

 しかし、それは駄目な選択だったらしい。市原さんはずっといらいらしている。現状は何も変わらない。

 そしてこの打撃である。


「――その資料誰が持ってくるわけ」

 市原アタック。

 私のみぞおちにクリーンヒット。

 でもってその衝撃で倒れこんで、頭上にタライでも落ちてきたかのような徹底的打撃。

 起き上がれるわけが無い。気力もない。


 私、もう黙り込むしかないってくらい。ダメージすごいな。ははは。乾いた笑いしか出なかった。もしかして市原さん、この期にかこつけて積年の恨みでも晴らそうとしているのか。とにかくいらいらしてるんだね。でも、それ私のせいだけじゃないよね。別の人へのいらいらも兼ねてない?

 

 にしても……出たあああああ。究極にして最強の奥義。

 ――伝家の宝刀、『言いだしっぺはどうにかしろ』。


 いや、この発言にはさすがに反抗してもいいと思う。というか、これは班活動だからね資材は本来皆で持ってくるものなんだよ……協力が人を強くするんだよ! そもそもこの社会研究は社会的な人間の協力もだい……。

 

 でも、まあ、仕方ない。


「私が持ってくる」

 わたくしが全責任を背負いますので――許してください。

 

 とほほ。



 

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