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金曜日のバックアップ  作者: 希恵和
第一章 始まりのイマージング
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偶像の発見

――探し物はすぐには見つからない。出典、僕。


 北川様による北側様のための……って何言ってるんだろう僕は。僕の重大個人情報がばれた今、僕には時間が無い。一刻も早く木島奈々のドッペルを探さないといけないが、そもそもそれが本当にあるのか。


 今朝のは木島の演技っていうのが濃厚になってきた。面倒だし、本人確保でいいじゃないか。

 一限目の社会科はなんだ、グループレポートの報告会だ。

 テーマは……それさえも忘れたんだが。他の班員は図書館に行って調べ物などしていたらしいが、僕は上の空だったため何もしてない。

 というか今日が締め切りだったのかよ。

 とりあえず僕の分までしてくれてありがとうというべきか。

 あ、提出用紙に僕の名前だけ書かないとかそういうのなしな。


 そんな脳内会議の最中、終了のチャイムがなり、10分休憩に入った。いつもの僕なら机と仲良し状態でおやすみするが、今日は違うことをしようと思う。僕は木島の席に向かった。


 木島奈々は今朝のことがあってか、僕の方を不審そうに見た。


「何」

「お前の好みを教えて欲しい」

 かなりドン引かれた。しかし、うろたえながら彼女は答えた。


「イケメン」

 それは大体の女がそうだと思う。もう少し何か無いのかと目で訴える。

 木島はようやく何かを察したらしい。が、放った言葉から僕は彼女がベクトルを読み間違えていることに気付く。


「私のこと好きなの?」

 違--う、でもそうとも取れるようなことを言ってるのは自分でも承知の上だばかやろー。僕はお前のことを知りたいだけだよ。いや、ラブ的な意味ではなく検索的な意味でだ。検索的な意味って普通は使わないけれど。要約、お前を狙ってるぜ。しかし、異性として、いちゃこらしたいとかではない。

 いちゃこらを文章で説明するのは今の僕には力及ばなかった。来世では官能小説家にでもなろうか。いや、意味わからないよ僕。

 

 ん、待てよ。ここで予想外なことを言えば、この女子はなんていうんだろうか。

 

 僕は馬鹿なことを考えた。実行するべきかといわれれば、そうではないと言える問いをだ。


 けれども、それに一縷の望みを託せそうな気がした。

 そして僕の冒険心は誘惑には勝てなかった。


「うん、スキだ」

 これ、肯定するとどうなるんだろうか。反応が気になって僕はそういった。

 

 若干教室の温度が下がった。

 五月なのにな。梅雨かって思うくらいの湿った感もあった。季節感が台無しだ。外は晴れているのになあ、不快だよほんと。


 木島は口をパクパクさせて、酸欠っぽい。今にも倒れそうだ。僕が保健室行くかと声をかけようとした。

 無理をして、大きな声で叫んだ。


「ば、かばかのッパラッパーーーッ」

 馬鹿とパッパラパーを掛け合わせた造語かそれ。

 顔を真っ赤にした。頭に血が上って、てっぺんから炎が出てるぞ。


 噴火女子高生、木島奈々。


 って落ち着いてる場合じゃねえだろ僕。もしかして死ぬのか。今のでたくさんのフラグがたったのか。


「意味わかんない!なんでこんなところで、ここで! というか私達今日話したばっかりじゃん、え、何、前からスキだったとかでも困るし、あんたタイプじゃないし! もっと体格いいヤツとか二の腕がふっとかぐっとかしてるのがいいっていうか、でも、これから付き合っていけば好きに、いや多分ならない……きっと水面君にも素敵な人が現れると思う……すぐには出てこないだろうけどでてくるよ、多分」


 将来に不安と絶望しか残さないぞ。というかあっさりふったな僕を! しかも一言で体格全否定しやがった。そんなに筋肉がいいのかおい!


「ごめんね」

 ふられた。僕はすきでもない人に適当に告って振られた。


二、三限目。過ぎていく授業。悲しい。僕は泣きそうになった。でも泣かない、男涙は回りに不快感しか生まないことを僕は十分知っていたから。だからなかない。


 三限目終了のチャイムでようやく僕は我にかえった。しかし、教室はそうにもいかなかった。異常者を見る目は怖かったし、木島は顔真っ赤にしたままでした。ちゃんちゃんで終わらないそれが人生。

 正直いたたまれねえ。それが感想だった。


 とりあえずトイレでも行くかと席を立った僕は流れ作業のごとく教室をさり、廊下にでて、とことこ歩いていた。


「告白は大事にとっておくね」

「うるせー、木島って……え」

 なんでか、木島奈々は僕の隣にいた。

 廊下に歩く僕の横にぴったりと寄り添っていた。


 だが、そんなはずはない。

 僕はさっき教室から出るとき、木島を見てドアを閉めたから。

 そのあとドアが開く音を聞いていない。

 こっそりとあけて僕の背後に隠れていたのか何のために? 

 

 いや、そんな事不可能だ。

 立て付けの悪い高校のドアはがらがらという音を響かせる以外に開く方法を知らない。

 それに木島自体が物音を立てずに行動するタイプではない.


 木島は普通だ。そこにいなくても反応しないがいたらいるって分かるくらい一定の存在感。

 僕にとって、存在を得られないのは彼女だけだから。木島は違う。


 それに、木島はこんなに『病的な目』をしていないし。


「分かった? 私は木島奈々のドッペルゲンガーって」

 木島は問いかけるように僕に言った。


 分かったよ。お前は木島じゃない、木島とは違う異常だ。

 僕みたいに曲がってる。何かが。


「ねえ、私のこと探してるんでしょ。だから、あんなことを言ったって、知ってるよ。それでも出てきてあげました。素直にね。ねえ、褒めて」

「えらーい、っていってどうなるんだよ」

「どうもしない、けれど私は水面君に求めるものがある。そうね、水面君ならくれそうなの」

 僕は人の欲しいものが分かるたちではないんだが。なんて思っていたら木島は僕に笑いかけた。


「私を愛して」

 唐突過ぎてふきだしそうになった。

 木島奈々は妖艶な笑みを浮かべた。大人の女性? 


 いや、君女子高校生だろうが。

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