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ある女軍医のお話  作者: ハル
9/12

男の異常な回復速度に女は驚いた。


普通ならば半年はかかるであろう完治を男の体はたった1週間で半完治していた。どう考えても異常だ。


「なんだか治りが早すぎて気味が悪い」


背中に包帯を巻きながらいつもそう言うと……


「早く治れと急かしたのはお前だろ」


と笑って返された。


「そうだけど……」


『誰もそこまで急かしちゃいないわよ』




近頃は前線の状態が非常に悪く兵士の殆どが駆り出されていた。基地に残っているのは情報伝達を行う通信兵数人と隊長が念の為男が逃げ出さない様に見張りにつけた兵士2人だけだった。


男に本当の事を話したのはこの機会だった。誰にも聞かれる事無く落ち着いた環境で伝えたかったのだ。話を切り出す時は緊張の余り手が震えた。そんな女に男は落ち着いた口調で言った。


「心配しなくても逆上したりしない。ゆっくりでいいから話せ」


それを聞くと早まる鼓動が少しおとなしくなった。

大きく深呼吸すると目の前に座る男に躊躇いがちに話し始めた。


「実は……」




気付けば幕の隙間から夕陽が射し込んでいる。結局最後まで男の目を見て話すことはなかった。とても恐かった。そして全てを語った今になっては増して顔を合わせることなど出来ない。カップに残った珈琲を意味もなく廻し続けた。


「お前は…」


遂に男が口を開いた。

そこでやっと男と目を合わせた。


「え?」

「お前はどう思った?それを隊長から聞かされた時…どう感じた?」

「……貴方からしてみれば勝手な決断だと思う。でも私は嬉しかった。貴方が仲間になる事じゃなくてあなたを救える事が私にはとても嬉しく感じた…思った事はそれだけ」


正直で偽りのない気持ちだった。


「そうか……。…これは何度も尋ねてきたことだが分からないなら答えなくていい」

「ん?」


男は正面から女を見据えながら聞いてみる。


「どうして俺を助けたいと思った。俺は敵だぞ」


自分でも気付けなかったその答え…今なら分かる。



「好きだから。貴方の事が好きだから」


そう言うと少し動揺している男に向かって微笑んだ。














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