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ある女軍医のお話  作者: ハル
2/12

「何故話さないの?」「話したくないから」

「でも痛いでしょ?」「痛いさ」

「本当に死んじゃうよ」「別に構わない」


女は矢継ぎ早に質問を投げかける。それでも男は傷に呻きながら答えてくれた。


応急セットからガーゼを取り出し大きい傷を優先に血と泥を拭いていく。


消毒液は傷口の奥深くまで染み渡る。


「……()!!」

「ごめんなさい、もう少しだけ辛抱して」


苦痛な顔で男は頷く。

全て拭き終わる頃には女の額は汗で濡れていた。


「ふぅ…終わった…。これで傷が乾けばもう痛むことはないわ。…まぁ、乾く前に明日の拷問(ぶん)が始まってしまうでしょうけど…」

「いや、それまで眠れるなら十分だ。助かったよ」


男の優しい笑顔に心が痛い。

少しの間目を瞑り意を決して口を開く。


「お願いだからっ…白状して下さい」

「………」


男は女の次の言葉を待つようにじっと見ていた。

鎖で繋がれた男を前に女は膝をつき頭を地面に擦りつけた。


「私はあなたの敵です。あなたの仲間2人を殺した兵士達を助ける軍医です。こんな事しても聞いてもらえるとは思わない。だけど…私の気持ちを聞いてもらえるなら…聞いてくれるだけなら…出来るわよね」

「…………」


「私……もう誰にも死んで欲しくないの。あなたに死んで欲しくない……だから素直に答えて欲しい。兵士達の言う事を…「そう言う事だったのか」


話を遮った男の声は何かを理解した様なそんな様子だった。訳が分からず「え?」と問う。


男の顔が少しずつ固くなっていく。


「お前…兵士達(あいつら)に言われて来たんだろ。俺を唆して情報を吐かせようと…「違うっ!!」


思わず声が大きくなる。


「私はそんな目的で来たんじゃないっ!そんなこと頼まれてもやるもんかっ!情報を手に入れる為に人を傷付けるような奴等と一緒にしないで!」



唖然とする男を残し女は勢いのままテントを出、そのまま振り返る事はなかった。


テントへ戻りビール瓶を開ける。プシュッという炭酸音が余計に喉の渇きを急き立てる。それを一気に飲み干した。久しぶりの酒だった。




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