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勇者一行シリーズ

勇者・ゴーホーム

「イヤ――――!?」


 古びた廃城。その通路に響く声がある。高い音質は少女のものだ。

 声を響かせた少女は、廃城の通路を走っている。

 歯を食い縛り、目を見開き正面を向く、必死の表情だ。

 必死に走る少女の背後から迫るものがいる。触手の群だ。

 ヌメりを持った光沢の肌を通路に擦り付けている。摩擦を得て、後方の本体を引き摺るためだ。

 通路を埋め尽くす量の触手から得た引き摺りは、全力疾走する少女の速度に追随する。


「ひいッ――!?」


 一本の触手が、少女の臀部を掠めた。恐怖で青褪めた少女は、それが自分を捉えようとしたものだと気づく。

 少女は振り返らず走り続ける。僅かでも速度を落とせば、触手に捉えられると確信したからだ。


「くっ……! ふ、はぁっ……!」


 全力疾走で消費するエネルギーは膨大なものだ。鍛えていない者なら、一分走り続ければ相当の疲労で倒れ込むだろう。

 少女が触手の群と接敵し、全力疾走を始めて二十秒が経過した。既に呼吸は激しく乱れつつあった。

 それでも速度を落とすことは出来ない。酸素不足の苦しみよりも、背後から迫る――《検閲》――な展開の方が恐ろしい。捕まれば二度と立ち直れないトラウマを植え付けられるだろう。主に貞操的な意味で。


「はぁっ! はあ――! ふっ、ふぅううううう――!」


 少女の視界が霞む。脳が酸素不足を起こしている。乳酸の溜まった脹脛が張り、振り上げる腕も重い。

 それでも少女が速度を緩めないのは、ちょくちょく触手が少女の臀部を掠めるからだ。

 触手が触れる度に、鞭で打たれたように少女が速度を上げる。霞む頭が晴れるような恐怖があるからこそ、少女は走り続けることが出来る。

「ぜえっぜひゅっぜええ――がはっ」

 全力疾走から四十秒。限界が近い。少女は、酸欠の苦痛や触手への恐怖で泣いている。鼻水や涙で、少女の顔は酷く歪んでいた。

 次踏み込めば、完全に立ち止まってしまう。少女は、己の限界を悟り、せめてもの抵抗と、最後に絞り出すように叫んだ。


「あーもう、早く助けなさいよおおおおおお――――!!」


 触手が、少女の前進を絡め取る寸前、轟音が響く。

 少女の足元、石造りの通路が破壊されたのだ。


「は――?」


 消えた足場に疑問を作ることも出来ず、少女は穴の中に消えた。


      ●


 浅間・雲雀(あさまひばり)が理不尽を悟ったのは、買い物を終えて帰宅する途中だった。

 帰宅のついでに食料品を買いにスーパーに寄った。時間の節約でもあり、値引きが開始される時間だからだ。これまで多くの値引き商品を買い込んだ浅間は、今日の品揃えを吟味した。

 品の多くは売れ残り、人気が無いものだ。味は兎も角、季節に合わないおでんの具や、漬物類、変わり所で御歳暮などだ。料理にするにはあまり向かず、そのまま食べるには物足り無い。買うとしても、精々おやつか、おかずの一品程度の感覚だ。決して好んで買い込む品物ではない。


「へえ、イカスミヨーグルトなんてあるんだ。容器もパケも黒一色って、そりゃ売れ残るわよねえ……。まあ、食えないこともないでしょ」


 何の躊躇いも無くカゴに投入する。続けて〝ウズラのゆで卵〟、〝おでんの一品 超真っ黒焦げ〟、〝ビター100%チョコ・ミント入り〟などを手に取ってぶち込む。 

 近所のスーパーはレジ袋が有料なので、節約のためマイバックに一週間分の食料を詰めた。例え五円でも、何となく躊躇いを生む勿体無さを感じるのが浅間の人間性だ。

 そうして、いつも通りに大量の値引き品を手に入れた浅間は、ホクホク顔で帰路に着く。

 庶民派の浅間が、帰宅路の坂を上っているときだった。

 突然、強く後ろから引っ張られる感覚を得た。


「え――――?」


 抵抗は出来ず、身体が傾いていく。坂は、普段から帰宅路の難関として辟易する急斜面だ。

 浅間が出来たのは、一瞬の思考である。その思考が、叫びとなって飛び出す。


「――卵が!」


 浅間は地面に倒れ込んでいく。衝撃に備え、思わず受け身を取ろうと背を丸め、


「大丈夫かね?」

「へっ?」


 衝撃は来なかった。傾く身体が、何かに支えられたからだ。夏服の上に、暖かな温度を感じる。どうやら、支えた何かは生き物だ。

 生き物が、浅間の背を押して姿勢を戻す。そこでようやく、浅間は自分が助けて貰ったのだと気づく。

 困惑しつつ振り返り、お礼を言おうと口を開き、


「あ、あの、どうもありがと――――」


 飛び込んで来た景色に、浅間は固まった。

 全裸だ。こちらの肩を抱きながら、爽やかな笑みを浮かべる男は、上半身に何も纏っていない。

 接触しているため、下半身まで確認することは出来ない。しかし、短パンから露出した己の太ももに微かな弾力と温度を感じ、


「――――っ!?」

「おっと、何をするのかね、いきなり突き飛ばすとは」

「ちょ、あん、な、何ではだっ……!」

「落ち付きたまえ、人生の決断に必要なのは冷静な判断力だ」


 間違ってはいないが、激しく何かが間違っている男が言った。

 全裸が一歩後退して振り向いたこちらの肩に手を置く。身体一つ分の空間が、相手の全容を確認出来る間合いを生んだ。

 男は金髪だ。掘りの深い顔立ちは、日本人のものではない。ハリウッド俳優に起用されそうなハンサムだった。

 しかし、一歩分引いた間合いから確認すれば、彼は全裸だ。引き締まった細身の体には、マントの一つも見当たらない。

 浅間は嫌な予感がしつつも視線を下に動かし、見た。

 予感通り、男は下半身にも服を着ていない。紛うことなく全裸である。ただし、男の股間付近にはモザイクが施されていた。

 解像度からは大まかな形しか判断できないが、浅間がこれまでの人生からは想像も出来ないサイズだ。


「私の股間を凝視してどうしたのかね? ……ああ、コレか。目の付け所がいい。これは光魔法を応用した私の最新作でね。名付けて〝魔・解像(マギノ・モザイク)〟と言う」

「き、き……」

「光が無いと使えないのが難点だが、その代わり細かい調節が可能になっている。例えば、――解像度(モザイク)ー! 品質低下クオリティダウンー!」

「きゃあああああ――――!!」


 久しぶりに悲鳴を上げた浅間は、迷うことなく男の股間を蹴り上げた。


       ●


「……いったー……」

 浅間は、自分の身に起きたことを思い出していく。

 突然異世界に連れて来られ、勇者と呼ばれ、魔術師ぜんら戦士ガチレズ僧侶キチガイと旅をさせられ、触手に追われて穴に落とされた。

 何だこれ、自分の人生ながらドン引きだ。色々と理不尽だが、自分の人生はまだ詰んでいないと信じたい。無理か、無理かなー……。

 思いつつ、身体に怪我無いかを確認する。どうやら軽い打撲程度のようだ。よし、私運が良い。

 自分を鼓舞したところで、周囲を確認しようと顔上げた。


「どうやら、私の魔法が間に合ったようだね。――助けに来たぞ」


 魔・解像(マギノ・モザイク)が目の前にあった。


「――ふん!」


 恥じらいも無く、浅間は股間に拳をぶち込んだ。

 笑みを浮かべたまま、全裸が大の字で倒れ込む。

 そして、すぐに立ち上がり、若干興奮しながら言った。


「躊躇いが無いね、流石は私のヒバリだ!」

「うるさい、服着なさいよ、風邪引くでしょうが」

「ああ! 今度は膝でなんて! ああ!」


 あーもーこの魔術師ぜんら面倒臭いなあ……、と浅間は適当に蹴りを放つ。目の前の全裸男の名はマスローグ・クウェート。輝き魔術ゴールデン・テクノ・マギの異名を持つ天才魔術師(笑)である。

 数々の魔術を生み出し、露出教なる謎の信仰を今日まで貫く紛うこと無き変態だ。勇者として私を召還した張本人であり、魔王を倒す旅の道連れだ。

 最早全裸に動揺も無く膝を入れる自分は、何も知らなかったあの頃には戻れないのだろう。


「ていうか、何で転送トラップに気づかないのよ。アンタ魔術師でしょうが。他の皆はどうなったわけ?」

「うむ、如何やら転送トラップは時限式の結界らしい。つまり、一定時間で魔王城の内装が丸ごと入れ替わる仕組みだ。これを防ぎたいなら魔王城を丸ごと破壊するか、はぐれない様に手を繋いで置くしかない」


 横目で蹲っている全裸を見る。全裸は期待の眼差しでこちらを見つめ返している。

 それを見た浅間は、満面の笑みを浮かべ言った。


「絶対()だ」

「そう言うと思ったよ! 任せてくれたまえヒバリ、君を助け出せたことから、私なら魔王城の一つや二つ吹き飛ばせる事が解った!」

「魔王どうすんのよ」

「何、城ごと爆破してしまえば問題無い。それに、君を戦わせるなんてトンでもないね!」

「改めて思うけど、解決法がまともじゃないわね」


 思えば、他の奴らもヤバかった。

 戦士ガチレズは、相手が貴族だろうとモンスターだろうと雌と認識した相手の貞操を容赦無く捕食した。御蔭で道中の権力者や魔王軍側の幹部まで、ありとあらゆる女性が彼女の味方に付いた。

 僧侶キチガイは、信仰と正論を盾にとにかく相手の弱みを掴んで脅迫して強請るクソ野郎だった。彼自身も相当腕が立ち、脅迫的誘導と印象操作を使った情報戦において恨みを買っても死ななかった。

 酷いRPGがあったものだ。勇者プレイヤーが事件を解決するQ&Aが成り立たない。むしろ、勇者一行が事件だ。

 唯一まともな自分が、色々危険な連中を纏めて旅を続けた。

 始めはふざけるな、と思った勇者の役目も、〝魔王を倒す〟という目標を掲げなければ迷惑過ぎる連中を抑えるために必要と割り切れるようになった。

 勇者一行という立場が無ければ、確実に奴らは人類の敵だ。社会悪である。

 自分が呼び出された理由も、〝こいつらの中に勇者と呼べる奴いなくね? ヤバくね?〟と危機感を覚えた権力者達が、彼らの枷となる存在が必要と思ったからだった。

 一応自前で探したが、キチガイに付いて行ける者が居らず、全裸マスローグが発明した勇者召喚(笑)に縋った結果という塩梅だ。

 完全に巻き込まれた側の人間としては、自分でどうにかしろよと言いたいところだ。今更だが。


「んで? サーニャとアレクサンドロはどうするわけ?」

「ん? 多分死ぬのではないか? 奴らも一応人間だから」

「コラコラコラコラ……」

「ああ! 乳首が! 乳首への刺激が! ああ!」

「計画雑過ぎんでしょうが! せめて全員脱出してからにしなさいよ!」

「うむ、ヒバリがそう言うなら」

「全く……」


 そんなやり取りをしていると、背後から音がした。粘着質な液体が落ちた音だ。

 振り返ると、こちらを追い掛け回していた触手が、天井の穴から落ちて来たのだ。

 蠢く滑りを放つ物体は、こちらに向けて触手を伸ばした。

 浅間はただ見ていた。そこに恐怖の表情は無い。


「ローグ」

「触れさせはしないとも、ヒバリ」


 マスローグが、ヒバリを庇うように前に出ながら言った。

 自信に満ち溢れた声に、目の前の触手に対する動揺は無い。召喚されてからこっち、散々耳にした響きだ。

 マスローグもそうだが、私の仲間は全員頭がおかしいが、


「――――触手系魔族の生態は独特でね。肌の乾燥を防ぐ粘着液を常に分泌している。皮膚呼吸を行うから、乾燥した状態だと窒息してしまうのだよ」


 迫る触手が、マスローグを捉える直前で止まる。


「生息地は湿気の多い熱帯地方に限られ、そこで他種族のメスを捉えて繁殖する。奴らは細胞分裂に近い形で生殖するから、胎児が成長する環境を限る必要がないのだね」


 触手の先端。粘液で滑るそれが、完全に凍り付いていた。冷気を放つ触手の変化は止まらない。

 徐々に、先端から本体に向けて氷結が広がっていく。


「だからまあ、彼らの弱点とはつまり、常温作用を持つ液そのものだね。湿気を得るために水分を多く含む粘着液故に、彼らは冷帯気候だと凍り付いてしまう」


 マスローグが語る間に、触手の群が完全に氷結した。

 ピクリとも動くかなくなった触手の氷像を見て、マスローグは続けて言った。


「触手系魔族は筋繊維の塊だ。その内には全身に大量の毛細血管が張り巡らされている。そして、水は液体より個体の方が体積が大きくなる性質がある」


 つまり、とマスローグが言うと同時、触手の氷像が砕ける。全身を巡っていた血液が凝固し、内側から触手が裂けたのだ。


「裂け目が出来てしまえば、少し衝撃を与えることで粉々に弾け飛ぶ」


 マスローグの前蹴りが、目の前にあった触手を捉える。伝わる衝撃が、触手全体に致命的な亀裂を入れた。

 数瞬後、触手の氷像は崩れ落ちた。細かい氷の粒が周囲の空気を冷やしたことで、こちらに涼しい風が吹き付ける。


「どうかね? お気に召しただろうか、ヒバリ」


 ――それを補って余るほど優秀なのよねえ……。

 ドヤ顔を向けるマスローグを見つつ、浅間は性質の悪い現実に少し気分が滅入った。

 まあ、それもこれも、魔王城を爆破するまでの我慢だ。それでこいつとの縁も切れる。切りたい。切実に。


「いいんじゃない? つか、全裸で寒くないの?」

「心配してくれるのかいヒバリ! 君の愛に包まれて私は身体が燃え上がるようだ!」

「あっそう」


 腰を抱いてくねくねし始めた全裸を無視して、浅間は身体に着いた埃を払う。

 一難去ったものの、まだ最大の困難は解決していない。大陸横断リレーしながら辿り着いた魔王城の主、魔王を倒さなくてはならない。

 ここに到達するまで、その存在について色々考察してきた。しかし、それは私には関係の無い話だろう。

 この世の全てから恨まれる魔の総統。マスローグとアレクサンドロは、その正体について気づいたようだ。それについて、私も一応聞いている。

 私の役割は、魔法系専用の盾である。原理は知らないが、この全裸から貞操を守ることが出来たのも、魔力無効化の能力があったからだ。

 つまり、頭使ったり誰かの事情を考慮したりするのは、私の役割じゃない。

 そういうのは魔術師と僧侶の役割だ。しかし、狂人なので私が面倒を見なくてはならない。戦士は知らん。


「んじゃ、残りの奴らを見つけて、とっとと脱出しましょうか」

「うむ、ついでに無差別転移結界も解除してしまおう。何処かに制御する大元があるはず、またヒバリと逸れててしまっては大変だ!」


 ため息を吐きつつ、ヒバリは安全確保のために頷く。また触手に襲われては大変だ。こいつは全裸だが、自分を傷つけることは無い。

 信頼関係とは言い難いが、信用くらいはしている。そして、信用しているからこそ、他の連中を放ってはいけない。

 全裸は魔王城爆破作戦を提案したが、アレクサンドロ辺りが同じことやらかしそうだ。早く確保しないと突然魔王城が崩壊し始めるかもしれない。


「はあ……、憂鬱……」

「それはいけないね、君には笑顔が似合うよ、ヒバリ」


 再びため息を吐き、浅間は他の仲間のことを思うのだった。

 また、余計なことやらかしてなきゃいいけど……。


   ●


「見つけましたよ、魔王」

「よく来たな、人間。……貴様一人か?」


 石造りの広間、玉座に座る異形の前に、一人の男が立っていた。

 男は法衣を纏い、金髪のオールバックでサングラスを掛けていた。櫛を取り出し金髪を撫で付けつつ、男は言った。


「ええ、どうやら辿り着いたのは私だけのようですね。――全く、お互い使えない仲間には苦労しますね」


 嫌味ったらしくそう言った男は、両手を広げて続ける。


「アレクサンドロ・ホークアイと申します。短い間ですが、お見知りおきを」

「ああ、貴様を殺して、他の者を待つとしよう」

「まあ、あの馬鹿共が辿り着けるかどうかさて置き、一つ話を聞いていただけますか?」

「面倒だ」


 気だるげに呟く異形の言葉を無視して、アレクサンドロは告げた。


「そうですね、題名は〝勇者と魔王の相互関係を生むシステム〟、なんて如何でしょう?」

「――ほう」


 異形の目が、興味の色を示した。

 アレクサンドロは、それを見て頷き、


「魔王と勇者、その存在は、歴史上記録されているだけで一三回。そもそもの疑問が、何故そのような対立関係が生まれるのかに行き付きます」


 一息。


「此度魔術師殿が召喚なされた勇者様は、別世界の人間でした。記録された十三回、それを元にした召喚術をあの変態が見つけ出したということは……」


 区切り、若干の為を作って言った。


「過去に召喚された勇者は皆、別世界の人間なのではないか、そう結論が出るわけです」

「何故そう思う。勇者が召喚されたとするなら、元々この世界にいる我や、過去の魔王達はどう説明するのだ?」


 自分の言葉に返した魔王に、アレクサンドロは少し眉を上げる。

 驚きを得ながらも、アレクサンドロは言葉を続けた。


「それをお答えする前に、此度の勇者殿から聞いた話を致しましょう」


 魔王がこちらを見ているのを確認して、言った。


「彼女の世界の歴史を概ね聞いたところによれば、大体百年周期で戦争を繰り返しているようです。そして、その度に人間は技術力を向上させて行ったのだとも。

 それを聞いたとき、私は心底肝が冷えましたよ。なんせ、それはこの世界における人間と魔族、――勇者と魔王の歴史に他ならないのですから」


 アレクサンドロは、自分の懐からあるものを取り出した。

 液晶画面と黒縁で構築された薄い板状の物体だ。黒の物体を顔付近に掲げつつ、アレクサンドロが言った。


「すまーとふぉん、と呼ばれるものだそうです。彼女の世界の品物で、長距離通信を可能にするものだとか。異端を建前に取り上げて研究しました。

 見ただけでも、精巧な技術力で作られたものだと解ります。結果、私どもは〝どう作られているのかが解らいない〟ことが解りまして、これが存在する世界の住人である彼女すら、その技術力を理解出来ないと言います」

「それがどうかしたのか? 長距離通信の概念ならば、魔法技術で既に実用化されているではないか」

「ええ、その通りです。うちの魔術師ぜんらが魔導端末を見せたら驚いてしましたよ、彼女。

 ――ですが、問題は、その長距離通信の概念が現れたのが、前回の勇者が現れた時期と完全に一致するということです」


 魔王は笑みを浮かべた。アレクサンドロは、魔王の反応に確信を得た。

 おそらく、と前置きして、


「勇者と魔王のシステムとは、この世界を停滞させないための、発展と進化を管理するためのものです。

 そして、この世界に初めから存在する魔王とは、――前回の勇者その人ですね?」

「――――」


 堪らない、と言うように、魔王は笑みを歪めた。その目は愉快でなく、怒りに彩られている。

 アレクサンドロも笑みを浮かべた。皮肉の嘲笑を浮かべたまま、身振りを加えて言葉を吐く。


「誰がこんなシステムを作り上げたかは知りませんが、何とも合理的な話ですね。衰退と発展を管理されているとなれば、我々の生存は既に確定したようなものですから」


 そう、と魔王を見たアレクサンドロが言う。


「貴方がどのような手を尽くしても、――貴方が、この世界にもたらした長距離通信の概念を強化しても、私達は生存します。

 余裕を持って玉座に座っておられるのは、既に自身の運命を悟ったからですかな?」

「――舐めるな」


 低い重低音が響く。アレクサンドロは、魔王の声が、部屋全体を抑えつけたように思えた。

 アレクサンドロは、改めて魔王の姿を見た。自分の持論が正しく、奴が元勇者だとすれば、かつては人間だった筈だ。

 ならば、目の前の魔王は人間なのか? 

 造形は辛うじて人の形をしているが、全長2メートルの身体はほとんどコードでつながれている。肌を探すのが困難なほどだ。

 コードは玉座に接続されており、魔王の移動を制限しているのが解る。元人間だとしたら、何故そんな姿に成り果てたのか……、


「貴様には解るまい。勇者として召喚され、魔王を倒したとき、我は世界にこう言われたのだよ。――〝次はお前の番だ〟、とな」


 異形となった姿から響く声は、鮮烈な感情を漏らしていた。


「ふざけるなよ、世界を滅ぼすのは貴様等のためではない。人が死に、生まれる中で残す何かは誰のものでもないだと、このシステムを作った神とやらに教えてやるためだ」


 言って、魔王は玉座から立ち上がった。コードが張り、魔王を留めようとするが、それを無視して立つ。

 コードを引き千切りながら、魔王は言う。


「人が興るのも、滅ぶのも、神の意思次第だと? ――私の世界では、神は死んだぞ」


 コードの中から現れた魔王は、壮年を迎えた老人だ。コードにつながれていた痕が、夥しい数肌に刻まれ、変色していた。

 しかし、その体躯は若々しい。背筋が伸び、絞り上げられた筋肉の質感は、身体を鍛えているアレクサンドロからも賛辞を思わせた。

 老いた魔王は、意志を滾らせて言った。


「最悪の世界だった。人間同士の戦争で、終焉が来ると言われていた。いつ世界が滅びても可笑しくない時代だった」


 それでも、と魔王はつなげ、


「人が作った世界だ。愚かさと欲望と力の渦巻く世界だ。誰かの幸せを願いながら、誰かの不幸を望む世界だ。――人の世界だ!」


 魔王が放った叫びを、アレクサンドロは黙って聞いていた。

 そして、仕方がないとでも言うように苦笑して、


「人の世界、ですか、そうですね。私は神の信徒ですから、人の賢さを信用しませんし、期待もしません。

 ――何度も何度も争いと哀しみを繰り返す人の愚かさを、神の教えより素晴らしいものだと思えない」


 ですが、とアレクサンドロは苦笑を深めながら言った。


「信じられないほど愚かな人間ですが、――ときには神の教えを超えてきます」


 言った瞬間、部屋が揺れた。揺れは止まらず、時を追うごとに大きくなっていく。地面から感じていたそれが、今では空間そのものを震動させているかに思えた。

 魔王城が、揺れているのだ。

 その事実に思い当たり、アレクサンドロは嫌そうな顔をして、


「あの馬鹿共、一体何をやらかしたんですか?」

「き、貴様の仲間か! これをやったのは! な、何てことをしてくれたのだ!?」


 それまで、強い意志を放ち、凄然とした態度の魔王が焦りながら言った。


「時限式空間転移結界に無理矢理干渉したせいで、魔王城そのものが異界化しとるぞ! き、貴様等魔王城ごと次元の狭間に墜ちる気か!?」

「あー、それは嫌ですねー。次元を超えたら流石に神の奇跡も届かないでしょうし」

「ふ、ふざけとる場合か! このままだと世界から隔絶されて二度と戻れなくなるぞ!」

「いや、何かすいませんね。態々説明までしてもらいまして」

「貴様――!!」


 魔王が叫ぶのを面倒くさそうに聞いていると、


「あ」


 アレクサンドロは、視界に現れたものを見て声を上げた。

 一瞬遅れて、気配を感じ取った魔王は、同じように背後へと振り返る。


「ちょっ、馬鹿、人いる人っ!」


 そんな叫びと共に、触手の群が魔王とアレクサンドロを飲み込んだ。


     ●

 結界を制御する術式を破壊した結果、浅間は術式を守護していた触手と共に転移した。

 全裸は〝面倒くさいからこうしてしまおう!〟と術式を破壊したとき、先に辿り着いていたサーニャと一緒に何処かに消えた。

 雑な計画もここまで来ると何も言えない。明らかにヤバい震動が魔王城を揺らしている。どうやら、早急に脱出しなければならないようだ。

 不良僧侶アレクサンドロが触手飲まれたような気がしたが、私は何も見ていない、セーフだ。つまり、私に出来る救助活動は無い。

 ここは既に危険地帯だ。二次災害を避けるためにも、残念だが、ひじょーに残念だが、本来は許されないことだが、浅間は仲間を見捨てる決断を下した。


「御免なさい、だけど、あんた達がキチガイだからいけないのよ……!」

「それ、私も含まれているんですかね?」


 陸に上がった魚のように跳ねる触手の中から、アレクサンドロが現れた。

 サングラスが消え、オールバックの金髪は乱れに乱れている。にこやかに青筋を立てながら、アレクサンドロは櫛で髪を撫で付けつつ言った。


「本来ならば神に懺悔してもらうところですが、状況が切迫しているようなので後にしましょう。――それで? 一体何をやらかしたんですか?」

「わ、私じゃないわよ!? 全部全裸が悪いのよ! 適当にぶっ壊せば機能停止するだろう、ってドカンするから!」

「アホか――――!」


 低い重低音が響く。触手を吹き飛ばして現れた老人の声だ。

 老人はテカテカにヌメリつつ、慌てに慌てて言った。


「空間転移というデリケートな術式にんなことしたら空間ごと吹き飛ぶわ! だから態々時限式にして各部屋を個別信号を設定してパターン組んでやったのに! 貴様等にはRPGのダンジョン攻略における常識は無いのか!?」

「え、誰、この御爺さん」

「ああ、その人魔王ですよ、魔王」

「え? マジで? ねえ、御爺さん魔王なの? 触手に飲まれたみたいだけど大丈夫? 介護いる? 私は触りたくないから嫌だけど」

「貴様等――!!」


 ガチギレした魔王らしい老人に引きつつ、浅間はようやく現状を理解した。


「つまり、――いつも通りよね、コレ」

「ええ、いつも通り貴女達がやらかしたのを、私が尻拭いする展開ですね」

「一応ツッコむけど、よく解らないマフィアな人達が襲ってくるのに付き合わせるアンタも大概だからね?」

「いえいえ、アレは神に懺悔しに来る敬虔な信徒です。私は神の代弁としてこう伝えているのですよ、〝右頬を殴るので左も出しなさい〟と」

「最悪だよこの不良神父!」

「コントをしとる場合か――!」


 さきほどから元気なら老人を煩そうに見つつ、浅間は言った。


「んで? アンタ魔王なの」

「う、うむ、その通りだ。私が、貴様等を殺す魔王だ」

「ふーん、でも、私は勇者だけど、殺されるのも死ぬのも嫌だから、別にアンタが魔王でもどうでもいいのよねえ」

「な、何?」

「だってさ、勇者と魔王なんて括りで戦ってるけど、この世界もこの世界で結構国同士元気に戦争おっぱじめてるのよ」


 言って、浅間は思い返すように続けて、


「何度か周期が来る度に、国力に余裕を持たせてられるようになったみたいでさ。勇者と魔王の戦いが終わったら、今度は国同士のパワーゲームが始まるらしいのよね」

「……それは」

「うん、まあ、人間は人間で、もう私達がいなくても、勝手に戦争してる世界だってこと。神様か誰かが作った勇者と魔王システムも、その大部分が意味無くなってるわけ」


 だからさ、と浅間は言って、


「こうして理不尽やられた側からしてみれば、許せなくなるのも解るけど、――もう、いいんじゃない?」


        ●


 魔王は絶句した。目の前の少女が何と言ったのか、数秒掛けて理解した。

 そして、


「――ならん!!」

「うん、そうだろうけど、じゃなきゃ魔王なんてならないんだろうけど、別にいいんじゃない?」


 拒絶の言葉に、少女は大した考慮を見せずに返した。

 そのことに愕然とし、言葉に詰まっていると、


「世界を呪う願いも、世界を動かす想いの一つよね。だから、勇者と魔王が終わっても、アンタの願いはこの世界に必要だわ」


 それにね、と少女が続けるのを聞く。


「アンタって元勇者でしょ? ってことは、私も元の世界に帰れるかは微妙よね。

 だから、そういう事態になったときのことを考えて、ちょっと計画練ってたのよ」


 だから、と少女が言った。


「アンタも来なさいよ。どうせ勇者と魔王なんて役割でしかないんだから、それが済んだら好きに世界を呪いましょう。私が、アンタの呪いを使ってあげる」


 そう言って、差し出された手を、魔王は困惑の目で見つめた。

 そして、アレクサンドロと名乗った男と目が合い、苦笑された。


「言ったでしょう? 人間は、ときに神の教えを超えてくると」


 その言葉に、魔王はかつての想いを得た。

 かつて、自分が必要だと言って、手を差し伸べてくれた仲間がいた。自分が魔王となったとき、敵対者となった彼らとは別れた。その後の消息は解らない。

 もし、自分が魔王を終えて、この少女が魔王となれば、彼女の仲間は、彼女の敵対者になるのだろう。

 だが、彼女は言った。最早、勇者と魔王がおらずとも、世界は勝手に回っていくのだと。勇者と魔王の役割とは別の意味を、自分に与えることを。


『好きにすればいい。好き勝手しながら、――世界を救おうぜ』

「――――」


 記憶の奥底に、かつての言葉を思う。

 この少女が、世界とどう相対するのかは解らない。恐らく、魔王城を吹き飛ばすように好き勝手なことをやらかしていくのだろう。

 それを思い、理解して、魔王は言った。


「良かろう。かつて、世界を救い呪った者として、貴様の行く末を見届けてやる」

「契約成立! まあ、適当に世界を騒がしくしましょう?」

「ふん、抜かせ、世界を滅ぼし掛けた我に比べれば、貴様の行いなど些末なことよ」

「へえー、それならそうねー」


 少女は、悪戯を思いついたように言った。


「じゃあ、私達は、神様に挑みましょうか?」


 軽く告げられた言葉に、一瞬呆然としたのを自覚した。

 魔王は、自分が不意を突かれたことを認め、破顔する。

 は、と息を絞り出すように笑い、止まらない震えで身を折り曲げた。


「それは、剛毅だな! 名乗れ、小娘!」

「女の子に向かって剛毅は無いでしょうに、――浅間、浅間・雲雀よ」

「アサマ・ヒバリよ! かつて世界を呪った魔王が、これから世界を変える魔王に告げる!」


 言って、自らが辿ってきた道のりを、叫びに込めた。


「――世界を廻せ! 己が望むままに!」

「とーぜんでしょ、これまでの分、ここからは私達のターンよ」


 即答した浅間に、呆れた顔のアレクサンドロが言った。


「神への背信……、私の前で宣言しておきながら、手伝わせる気満々ですね。何なんですか、私()って」

「あ、ごめん、自然と数に入れてたわ。手伝ってくれるでしょ?」

「……まあ、放って置くより、近くで監視した方が被害は少なくて済むでしょうしね」

「不良ツンデレってまたベタな……」


 ぎゃあぎゃあ、とこちらを無視して騒ぎ出したヒバリ達を見て、元・魔王は思った。

 魔王を始めたときと同じように、我は勇者でも魔王でも無い何かを始めていくのだ。かつての仲間達とは違う、目の前の馬鹿共と同じように。

 思っていると、足下から音がした。


「あ」


 ヒバリとアレクサンドロが、こちらを見て呟いた。

 疑問に思う前に、足下から発生した衝撃で、魔王は吹き飛ばされた。


     ●


 浅間は、天井高く舞い上がり、天井でバウンドし、床に帰ってきた魔王を見た。

 そして、その原因となったものが、床に開いた穴から上がって来た。

 一人は見慣れた全裸だ。金髪と、魔・解像(マギノ・モザイク)を輝かせた派手な全裸だった。

 もう一人は、分厚い真紅の重甲冑を纏った女性だ。露出した顔は、赤毛の短髪をした意志の強い瞳をした美人だ。ハルバートを持った姿は、男性と見まがうほどの精悍さを誇っていた。

 女性の名はサーニャ、勇者一行の戦士、物理担当である。

 サーニャはこちらを見つけると、微笑みながら言った。


「無事だったか! ヒバリ!」

「まあ、結果的に? 一歩間違えたら魔王の御爺さんみたいに天井バウンドしてたけど」

「よく解らんが、とにかく無事なようで良かった!」


 床に着地したサーニャは、重装甲に関わらず滑らかな動きで近づいてきた。

 浅間の手を取り、口づけすると、ナチュラルにキスを迫って来たので肘でガードする。

 無理矢理顔を近づけてくるが、こちらも全力で抵抗しつつ問う。


「アンタらなんで床から出てきたわけ? 大体想像はつくけど」

「うむ、全裸がヒバリの気配を察知したので、暴走状態の結界に再び巻き込まれぬよう直接壁を抜いた」

「ちなみに何処から?」

「暗かったから地下じゃないか? まあ、魔王城が思ってたより階層が少なくて良かった。流石の私も山ほどデカいと切れないからなあ」

「オーケー、色々とおかしいは解ったわ」


 つまりはいつも通りだった。魔王の御爺さんにはああ言ったが、今からでも元の世界に戻る方法を本気で探したくなった。

 まあ、それはさておき、と現実に向き直る。本気の抵抗を感じ取ったのか、サーニャがこちらから離れた。


「ああ、全裸が結界でやらかしたせいで急いで脱出しないとヤバいっぽいから、アンタが踏んでる魔王の御爺さんも連れてくわよ」

「うん? ああ、何やらヌメッとしたものを踏んでいると思ったが、魔王だったのか、――待て、連れていく?」

「どういう事だね、ヒバリ? 私は何も聞いていないぞ!」

全裸マスローグは黙ってて」

「放置プレイだねヒバリ! 任せたまえ、死ぬほど構ってほしいのを我慢するとも!」


 全裸が正座し始めたのを無視して、浅間は適当に事情を告げる。


「まあ、魔王が元勇者で、私もこのままだと魔王になるから、どうせなら世界騒がしくしに行かない? って誘ったとこ」

「なるほど、よく解った」

「……本当に?」

「つまり、君はこの世界で生きることを決めたんだろう? 君と一緒に居られるのなら、私から言うことは何も無いさ」


 発言の意味を考えようとして微妙に恐ろしくなったのでやめた。

 まあ、全裸は絶対付いてくるとして、私の仲間達は今後も私に付き合ってくれるらしい。

 そのことに、不覚にも笑みを浮かべた。

 若干照れくささを覚えながら言う。


「そっか、あんがと、それじゃ脱出しましょう。全裸!」

「照れ隠しで早口になるヒバリも可愛いよ! ――ああ! つま先が! つま先が股間に!」

「うっさい馬鹿早くしろ」

「そうだぞ、貴様が結界を暴走させたせいで私とヒバリまで一緒にドカンするじゃないか、早くしろ」

「というか貴女も大概魔王城にダメージ入れてますけど自覚してます? ああ、早くしてくださいね、全裸」

「貴様等全員我の上で話すな――!!」


      ●


 世界には、繰り返される歴史がありました。

 いつ現れたか解らない魔王と、何処から来たのか解らない勇者との戦いです。

 魔王は世界を滅ぼせます。勇者は世界を救えます。その関係は、歴史が進み、文明が発展しても変わりませんでした。

 勇者が持つ知恵は、人々の文明に転換期を与えました。

 魔王が起こす戦乱は、人々が技術を磨く試練を与えました。

 そうして、人が力を備え、文明が安定すると、勇者と魔王の戦いは、彼らにとって自らの発展を促すイベントになりました。

 誰かが作った勇者と魔王の破壊と再生は、単なる世界を動かす一要素になりました。

 今度は、勇者と魔王をどれだけ利用出来るか、それが国家間のパワーゲームを助長させたのです。

 人はもう、勇者と魔王がいなくても、破壊と再生を繰り返していくでしょう。自らを滅ぼしかねない戦争を起こすでしょう。

 世界を動かすのに、勇者と魔王は必要ないのでした。


 しかし、一人の勇者が現れました。


 その勇者は、世界を動かしてきた勇者と魔王のシステムを知りました。

 自分がシステムに組み込まれていることを知りました。そして、そのシステムが、最早意味を失くしつつあることも。

 だから、勇者は思いました。魔王を倒す必要があるのだろうか、と。魔王を倒せば、自分は次の魔王として、世界に恨まれて死ぬだろうと。

 勇者は考えました。自分はこの世界に好きで来たわけじゃないけど、自分の仲間達はこの世界で生きる人だ。

 ならば、自分は、仲間達と共に世界を騒がしくして行こう。魔王ではなくなった魔王と、魔王になった自分で、この世界を動かしてみよう。

 いつまでも勇者と魔王に頼る世界に、本気で面白いことをやってみよう。

 魔王となった勇者は、世界に対してあることを告げました。


 ――私の国を作るから、アンタ達の国ちょうだい?


 魔王には四人の部下がいました。彼らは一人一人が一騎当千の猛者です。

 さらに、過去の魔王達の遺産を掘り起こして、都市破壊級個人武装を量産しました。その威力を見せ付けた上で、魔王は各国にそれを配りました。

 各国は、もはや魔王だけに注目するわけにはいきません。なんせ、自分の隣にも魔王級の戦士が複数生まれたからです。

 そうして火種をばら撒いた魔王は、さらに提案します。


 ――国って言っても国民ね、募集掛けるからそれ止めないでってことよ。


 何だ、そんなことか、と各国の王は、魔王の提案を受け入れました。

 自分達も一為政者です。自分の国民が、国を愛することは当然だと思っていました。そして、自分達は十分やれているとも。

 その日から、一つの国に匹敵する人数の国民が、各国から魔王城に集まりました。

 各国の王は愕然とします。それは正に、自分達の統治が完璧ではないと言われたようなものだからです。

 そうして、自分の国を作った魔王は、最後に笑ってこう言いました。


 ――これからも仲良くやりましょうね?


 そうして、魔王達を中心とした、新しい世界が始まりましたとさ。

 ちゃんちゃん。

特に山なしオチなし。書きたいこと書けたかなー、とかそんな感じで一つ。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  お話に勢いがあって面白いです。 [気になる点]  ただちょっと誤字や表記乱れが多いので人によっては読みにくいかもしれません。
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