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インチキなストリートチルドレン

作者: のり

ある街でケンは自分の悲しみを100円で売っている。格安の100円といえ無料よりは良いだろう。売ることで何かしらの生き甲斐が得られる。もし無料が売り手の良心なら世界は狂っているといえる。100円で買い手に信頼を与えられるなら、見せかけの良心は不要だと言える。買い手はただを大いに喜ぶ。だが僕は生きるために悲しみを売っているのだ。


僕は市場原理の隙間をかいくぐり悲しみを売っている。亡き友は勇気を売っていたが、大人たちはストリートチルドレンから勇気を買えないという。「君たちには何一つ人間らしさがない」とのこと。ごく普通の家庭の子どもが愛らしく「勇気を買って」と言われれば大人たちは喜んで買うらしい。別にごく普通の子どもは物乞いをしなくても生きていけるのに。


僕のような子どもは、何に需要があるのか徹底的にリサーチして、アイデアを練って商品として売らなくてはならない。起業家ではないが何かしらの販売戦略をしなくてはならないのだ。とても弱い頭を使い思い付いたのが「同情」である。僕の仲間の一人、ポールに相談してもグッドアイデアだと言うから適当に鵜呑みをした。


早速、僕は商売するために看板の材料を探すのである。近場には沢山のゴミ山があり、余裕に見つけられるがゴミ山は危険すぎる。金のためなら危険を冒すのが僕たちの生き方。今その瞬間に生きるのに精一杯なんだ。


ゴミ山を呆然と眺めていたらポールが段ボールとマジックを差し出してきた。「ありがとうな」と言いつつ受け取り、その場で段ボールへ「僕は悲しみに100円で買います」とマジックを用いて書いたのである。


横からポールがキャッチコピーに対して何か言っている。聞こえない振りをしては申し訳ないので、念入りに耳をかっぽじって聞いてみた。「ケンが買うのかい、売らないと意味がないんだから書き直しなよ」と言われた。僕の識字能力のインチキさに、ただただ自分で100円差し出したいよ。「同情するなら100円をって言っている場合ではない」と溜め息をついた。

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