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ターゲット、接触しました

予鈴が鳴ってた事もあって、質問責めの時間はそんなに長くなかった。

というか、ぎりぎりのきわどい部分を匂わせて話すの難しいから六割くらい流したし。

で、とりあえず桃香ちゃんがとても大切で守りたい女の子だって事だけ笑顔で言い続けて、彼女を困らせてる数名の男子とバトルすると思うけどよろしくねって言ったら面白がられて女の子達が協力を申し出てくれるって言うね。


「澤尻さんが困ってるのは見ればわかるしね」

「そうそう、それに、苑宮さんが頑張って引き離してくれるなら他の方々にお近付き出来るチャンスが増えますもの!!」


あー、優良物件揃い組だもんね、攻略対象達って。その計算もあるのか、なるほど……


「他の人はどうでもいいんだけどさ。妙な下心で夏樹に近づいたら怒るけど、いい?」

「鳥海君に、は、はい、大丈夫です!!」


……数人に声を揃えられたんだけど。


「いや、別に本気ならいいんだよ? ただ彼に関しては私幼馴染みだし、家族ぐるみの付き合いだからね。夏樹が幸せになれる相手じゃなきゃ嫌なんだ」

「……苑宮さんって、鳥海君の事を好きなんですの?」

「好きだよ。でも、いわゆる恋かって聞かれたら違うね。カッコいいと思う、尊敬もするし傍で支えてあげたいとも思うけど、好きになって欲しい私だけを見て欲しいと思った事はないんだ。夏樹が幸せなら傍に誰がいても嬉しいって、恋じゃないでしょ?」

「そ、れは、確かに……」


そんな会話をしてたら先生がやって来たので授業に集中しましょうね。

とは言っても、私自身ちょっと集中しきれない部分があったり。得意な現国だからちょっとくらい気を抜いても大丈夫なのがありがたい。

だって、ほら。隣の席の熊谷君がね。さっきの会話に一切参加してないし興味もなさそうに見えたからさ。

どうやって味方に引き込もうかな、そもそも挨拶以外話した事ないしな……


「あ」


しまった、消しゴム落っことしちゃった。

この足だと体倒して消しゴム取るのもしゃがんで取るのも厳しいんだよなぁ……仕方ない、休み時間まで待って誰かにお願、い?


「はい」

「あ、ありがとう」

「気にしないで。足、大変だろ?」


まさかの熊谷君から接触来たー!!

これはラッキー、こっちから変なアプローチしないですんだ、ちょっと早く休み時間来い!!

今か今かとチャイムが鳴るのを待って、やっとの休み時間。

他の誰かが話しかけて来る前に、熊谷君へ顔を向ける。


「熊谷君、さっきはありがとう。おかげで助かったよ」

「いや、別に。苑宮さんだって同じ事するだろ?」

「そうだね、でも嬉しかったんだ」


そう言ったら少し照れたように顔を背ける熊谷君。前髪で目は見えないけど、少しへの字になった口が内心の照れを表すようでちょっと笑える。


「聞いてたかもしれないけど、この怪我が治りきるまで半年くらいかかりそうなんだ。だからこれからも迷惑かけちゃうかもしれない」

「困った時はお互い様だから、気にしなくていい。あいつにとっても大事な人ならなおさら」


最後の方は聞かせるつもりなかったみたいで小声の早口だったけど、確かにあいつって聞こえた。

この場合のあいつって、一人だよね?


「あいつって、桃香ちゃんの事?」

「……いや?」


あ、明らかに誤魔化そうとしてる。でもこの機会そうそう逃す訳にもいかないって言うかね、君には是非協力して頂きたいからさ。


「なんだ、それなら君にも協力して貰おうかなって思ったのに」


周りに聞こえない程度の声量で告げれば私に視線が向けられてるのがわかる。


「協力?」

「そ。大事な大事な彼女を幸せにする為の協力。君に手伝って貰えるなら心強いんだけどな」

「なんでそんな事」

「そりゃもちろん、彼女がそれを願っているから」


にっこりと笑えば戸惑うような顔をされる。


「……え?」

「挨拶、したかったって。昔みたいに話したいって」

「あいつが?」

「そう。でも今の状況だとさ、無理でしょう」


そう言えばわかったらしく、ひとつ頷いて。


「確かに。あれだけ囲まれてたらおいそれと動けないよな」

「下手に接触しようとして、ターゲットにされる可能性もあるしね。そうなったら嫌われるかもって思ってるみたいだよ」


多分ね、多分。はっきり言われた訳じゃないけど、自分が仲良くしたら迷惑かけそうってくらい周りの奴らがうるさいのは想像つくし。それが男子なら尚更だよね。

恋は盲目。そんな言葉がピッタリな状況なんだもん、主におぼっちゃまが。あと一年生の熱血君とか、不思議先輩も纏わり付いて離れないよね、見てると。

お兄ちゃん先輩と夏樹はそこまで酷くもなかったけどね。あ、生徒会長は別格で。あれはなんか色々おかしい。

好きな子を虐めちゃうレベル遥かに通り越してるもん、不器用って片付けられる程度じゃない。

まあともかく、そんな状況で嫉妬を煽ったら何するかわかんないような人達がいる中で話しかけるほど考えなしでもなかったって事でさ。


「で、君はあの子に会いたい?」

「……それはもちろん。幼馴染みって言えるのあいつだけだし。あいつが嫌がってないなら、話したいとは思うけど」

「じゃ、昼休み一緒に来ればいい」

「は?」


あ、キョトンとした。でも別に不自然な申し出じゃないはずだよ?


「多分ゆっくり出来る場所に移動するからさ、念の為付き添ってくれるとありがたいんだけど?」

「……なるほど?」


わかったみたいで笑う熊谷君。そうそう、私怪我人だからさー、危なくないように移動の付き添いをお願いしてもおかしくないよね?

もっと言うとそれがたまたま隣の席のクラスメートだったってだけで? ついでに一緒にお昼食べようって誘って?

文句なんか言わせない『偶然』にすれば、彼らだって下手な事は言えなくなるって思うのよ。

さてと、これでとりあえず熊谷君巻き込んじゃえ作戦第一段階は成功でいいかな?



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