2
…---… …---… …---… …---… …---… …---… …---…
ありがとう。
ずっと、話したいと思ってたんだ。修学旅行の時だってそうさ。待ってたんだ。何かがきっかけになって、自分の口が動き出すのを。一度そうなったら、きっとあのとき、いや、いつだって、言いたいことを全部言うことができたはずなんだ。
でも、きっかけはやって来なかった。別に、カズのせいじゃない。もちろん、カズが聞いてくれれば、それがきっかけになってたかもしれない。でも、どっちにしたってそれは俺の問題なんだし、あのときはまだ、そんなに切羽詰まってもいなかったんだ。
うん、今は、そう。もう俺には後がない。これ以上、自分の中にものを溜め込んでいられる余裕もない。正直、かなりキツいんだ。もう形振り構ってられないんだよ。
俺は話したい。そうしないと、俺はどうなるか分からない。今まで、ずっと、自分の言葉で話すことを忘れてたんだ。このままいったら、俺は本当に、自分の言葉を、いや、自分をなくしてしまう気がする。
でも、俺が、それを話してこなかったのにも、理由がない訳じゃないんだ。それは、すごく、暗澹としていて、つまらない話なんだ。きっと、聞く人を不快にさせないではいられないんじゃないかと思う。俺自身も考えただけで気が滅入りそうなんだ。俺は怖かったんだよ。それを話すことで、何かを失うのが。今だってそれは怖い。
でも、最近こう考えるようになったんだ。俺は、失うほどのものを、なくして絶望するほどのものを、まだこれっぽっちも持ってない、って。俺が今まで他の誰かに見せていたのは、ただの幻影でしかなかったんだ。そうじゃなくても、俺のほんの一部分だけで、本当の俺、全部の俺は、誰とも繋がってない。ほとんど誰も、俺の片側しか知らないし、そもそも俺が、何も見せようとしてこなかった。誰かに求められてからでいいだろうと思ってた。
それに、俺は誰のことも知らない。俺は誰にも、何も聞いてこなかった。上っ面で分かることだけ頭に入れておいて、それで人のことを知った気になっていた。俺が誰かについて知っていることも、結局、そいつのイメージでしかないんだ。本当のことを、何も知らない。それも、そのうち、待っていれば向こうから話してくれるものだと思ってた。いや、もしかしたら、他人のことなんてなんとも思ってなかったのかもしれない。もしかしたら、俺がそういうふうに考えてることを知ってて、誰も何も、俺に言ったり聞いたりしなかったのかもしれない。
俺は、話さないといけない。何もかも。俺が、なくしたくないって思ってる人たちだけにでも。それで、できるのなら、知りたい。今まで俺が目をつむってきた、全部のことを。そうしないと、俺はきっと、何か大切なものを得る緒さえつかめないまま同じことを繰り返し続けることになる。
ありがとう、聞いてくれて。でも、ここからは本当に長くなるし、きっと、面白い話じゃない。聞きたくなければ、聞かなくてもいいんだ。それこそ、俺が決める事じゃない。それでも俺は話さないと気が済まないから話す。俺の中に溜まってるものを、全部はき出したいんだ。そいつらが、俺の中で腐りきる前に。
覚悟してくれよ。夜は長いんだから。




