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a.m.7:30-8:10  作者: 春井 武修
Re;二学期
43/95

精霊さんのこと その1


 ………………………………………………………



「まったく、君にはいつも妙なときに会うな。まあ、出てきてもらっといて言うのもなんだけどさ。君の気配はよく覚えてるんだ。独特だから」


「そう?」


「ああ。強いて言うなら、隠す気もないのに、こっちからは不自然なぐらい隠されて見える感じ、か。何にしても独特だよ、君のは。誰だかすぐに分かる。……そう言えば、このシートを掛けてくれたのは、君?」


 彼女は無言で頷く。


「そうか。ありがとう。おかげで、多分、いくらかマシだよ。でも、いつからここに? 俺が起きたときから、いたみたいだけど」


「夜明け前から」


「へえ、ご苦労だな、それは。ここで一晩過ごすよりかはいいだろうが。ここにはよく来る?」


 再度、無言で頷く。


「俺は夕方と夜の間しかいないから、朝のことは知らなかったよ。一応聞いとくけど、どうして?」


 彼女は、今度は首を横に振った。


「なら、いいさ。ああ、どうも他人事には興味がなくていけねーな」


「あなたは、絵を」


「そう。まあ、見ての通りたいしたもんじゃない。途中から俺自身、何を描いてるのか分からなくなってきてね。夜に描いたのがいけなかったかもしれない。こうやって朝に見てみると、昨日描いてた時とは全然違うみたいに見える。失敗作だな、これは」


「足りない」


「ん」


「足りない」


「何が?」


「意志が」


「意志? この絵に、意志が、か。確かに、そこまで作為はないかもしれない。でも、あんまりそいつが重要なテーマではねーだろう」


 しかし、彼女は首を横に振る。


「何かを留めておくためには、それだけの意志がいるの。それを動かすのと同じくらいに」


「随分哲学的な話だな。……まあ、なんとなく言いたいことは分かった。要するに、必然性みたいなものが欠けてるってことか」


 返事はない。


「ああ、どっちにしても、そこまでは考えてなかった。うん、やっぱりこいつは失敗だ」


 彼女は、キャンバスを見つめながら、首を横に振る。


「大丈夫。もう、やっと、始まったから」


「ん、何か言ったかい」


 返事はない。


「まあ、いいさ。それより、もうそろそろ俺はここを降りないといけねーから、だから、さっき言ったとおり、ちょっとこいつを俺の体にくくりつけるのを手伝ってくれよ。けっこう手間なんだ、一人でやると」


 彼女は頷く。


「サンキュ。じゃあ、このひもをそっちに回して。そうそう。ああ、そうだ、カバーを忘れてた。傷がつかないように………」

 


 ………………………………………………………



「ところで……今更だけど、君の名前は――

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