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Nephilim  作者: 莉央奈
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破壊の天使

アリスは一人、目的地上空に着いた。

地上には相変わらず遺留品らしきものが点在している、まるで何かを誘き寄せる罠にも見える。

そして不自然に窪んだ砂地を見つけた。

「これは、完全に罠か...」

アリスはクスッと笑った。

『Eshande Beruak』

アリスはそこに向けて魔法を放つ、風のない砂漠に砂塵が舞い上がった。

地上には鋼鉄の巨大な扉が現れた。



アテア王国第一地下要塞


薄暗い指令室に爆発音が鈍く響いた。

「何だ今の爆発音は」

そして一分もしないうちに伝令が入ってきた。息を切らしていた。

「閣下!報告します!外郭外扉外にて爆発有り、損害は有りません!」

「当然、ユースティアのそれより強力な障壁だ、そう簡単に破れまい、それからもう少し伝令を早く伝えられんかね?」

「無理ですよ、これでも可能な限り無駄を省いているんですから」

「やはり他に伝令手段が必要か、それで状況は?」

「何者かが扉の外で何かを爆発させたとしか...」

「調査させろ、もしその何者かがいたら捕らえよ、逆らう場合は殺しても構わん」

「はい!」



アリスは扉の上に立つと障壁を調べ始めた。

この手の魔防障壁には必ず術が施され、それがどこかしらに刻まれている、それを壊せば消えるはずだ。

ふと背後に気配を感じた。

「有翼人のお嬢さん、何してるの?」

「ええ...ちょっと」

立ち上がった時、背後で剣を抜く音が聞こえた。

振り返ると私に声をかけた兵士の更に後ろに十人程の兵士らしき人達が見えた。

「この下に何があるの?」

「お前が知る必要はない、用がなければ帰れ!」

「あら、用がなきゃこんな場所に来ないわよ」

アリスが剣に手をかけると兵士達は身構えた。

「お前に勝ち目はない、その剣を抜けば命の保証はないぞ!」

「剣士ならば剣で死にたいでしょう?」

剣を抜くと銀色の剣身がギラッと光った。

「た、たた、隊長!ティルヴィングです!」

魔剣ティルヴィング、所有者に勝利をもたらし、引き換えに命を奪う不吉な名を持つ魔剣の名だった。

「ティルヴィング?」

「国王を殺した剣です!」

その兵士は得物に詳しく聖剣や魔剣というものにも興味が有り、部隊内でも相当なマニアだ、その彼が言うのだからそうなのだろうが、隊長にはいまいちわからなかった。

イミテーションも作られている為、それが本物かどうかなど分からない、分かるのはそれが確かに鋭利な刃物であるということだ。

もしそれが本物だとすれば、その所有者はアストレアの女王だ。

「アリス・ブラッドか?」

アリスは不敵に笑う。

ならばこいつは有翼人ではなく天使と呼ばれる者か...

気づいた時には敵の剣が部隊長の腹を貫いていた。

アリスは兵士達の方を見る、その目は冷酷な悪魔のように冷たかった。

「国王の顔を忘れるなんて、非国民もいいところね。もう一度聞きます、この下にはネフィリムがいますか?」

「この下には...ア、アテナ様が...!」

「貴様ら人間は...神を真似て神を創ったというのですか...?」

「我々は...国を取り戻し...」

「喋るな!命令だ!さもなくばこの場で斬る!」

「帝国の圧政から解放を...」

怯えて情報を吐き出す兵士にもう一人の兵士が剣を振り上げた。

その剣が振り下ろされた時、斬られると思った兵士は目を塞いだが、何も起きなかったので目を開いた。

ドサッと何かが崩れ落ちた。自分を切ろうとしていた兵士が血を吐いて倒れたのだ、その向こうにアリスが立っていた。

気がつくと口を割った兵士以外は皆倒れていた。

先程まで銀色に妖しく光っていた剣は、まるで血を吸ったかのように赤みを帯びて光っていた。

「国家反逆罪は重大な犯罪行為である。しかし貴殿は情報を提供したので条件付きで無罪とする。兵士にとって敵に情報を漏らし、協力するなど謀反もいいところだが、アステリア帝国及びアストレア王国は協力する者には寛大である、貴殿の身の安全は私が保障しよう。言え、巡礼者や我が軍の者を殺したのは貴様らか」

兵士は怯え切って震えていた。

「そうだ、良い事を思いついた。」

アリスはニコッと笑った。

「あなたは戻ってこう言いなさい“アストレア王国の女王が来たので救援を求める、部隊は壊滅した

”と、そうすればアレが出てくるでしょ?」

「そ、そんな...うまくいくはずが...」

「人間なんて単純よ、アレを使わなきゃ私に勝てるはずがないもの、それとも生身の人間が私に勝てるとでも...?」

「お、俺はどうなるんだ」

「生きてたら助けてやるわよ」

「約束だからな!」

兵士は慌てて走って行った。

どうみても混乱していて正常な判断などできているとは思えない、アリスが不敵な笑みを見せている事など知る由も無かった。



地下要塞に入るなり兵士は伝令を頼んだ、アリスが来た事、自分を除く全員が死亡した事、それはすぐに伝令に頼んだ。

「おい...」

ザッと背後の砂が踏みしめられるような音...

恐る恐る振り返ると、そこにいたのはアリスだった。

「本当に人間って単純ね、案内ご苦労様」

バタンと入り口の扉が閉められた。

『ダルク シュヴェルト』

アリスの手に漆黒の剣が召喚された。

『ヴェルカ エレスオーエルヴ』

アリスは剣を扉に突き刺す、スーッと溶けるように扉に吸い込まれていく、そして一気に切断した。

重い扉がバタッと倒れた。

「ひ、ひぃぃぃ」

魔物にでも襲われたかのような悲鳴をあげて兵士が走り去っていった。

「案内なさい」

後ろの兵士に命令するが、何をそんなに怯えているのか理解できない。まるで戦いなどとは無縁だったかのように...

すると兵士は突然近くの扉を開けて中へと入った。何をしてるかと思えば壁に貼られた紙を剥がして渡してきた。

それはここの地図のようだった。

「お、おれはここにいるから、行くならお前一人で行け!」

「命令が聞こえませんでしたか?まぁ良いでしょう。ここで貴方が見つかれば反逆者として殺されるだけですしね。」

アリスは地図をサッと見るとそれを返して奥へと進んだ。

アリスは既に破壊対象を決めていた。


第一目標...生成プラント

第二目標...中央制御室

第三目標...生体維持装置

第四目標...生体兵器


概ねこんなところだろう、他に重要な施設はなさそうだ。アリスにとって順番はどうでもいい、この事件の元凶を破壊できればいいのだ。


生体生成室には地図上には広い空間として載っていた。たしかに広い空間と高い天井、そして中央には円筒形のガラスに液体が満たされ、その中に何かが固定されて浮いていた。

『人工子宮』そんな言葉が脳裏をよぎる。

あれはここで生まれたのだろうか。

しかしあの巨体をどうやって支えているというのか、天使と呼ばれる者でさえ限界があるというのに...

アリスが思考を巡らしている間、周囲の兵士や研究者、科学者らは何やら揉めていた。

アリスを排除する為に武器を構えるが、貴重な機械が壊れては二度と復旧できないとそれを止める、生け捕りにしろとまで言う。

アリスは構わずそのガラスに手を触れた。

「触れるな!」

科学者と思しき人が止めようとアリスに飛びかかるが、アリスは素早く剣を抜いて突きつけた。

危うく喉元に突き刺さる、その直前で止まっていた。

『ヴェルカ エネシェルト』

パリンとガラスが割れ、堰を切ったように中の液体が流れ出した。

しかしアリスは濡れる事なくそこに立っていた。

天使と呼ばれる者は海の中でさえ高速で飛ぶと言われる、俄かには信じ難いが、そこにいた人達はそれを信じざるを得なかった。

神話のように彼らは火から創られたものなのだろうか...

支えを失った人工子宮がどろっと流れ出た。

中には人間ほどの大きさの胎児が蠢いている。

「これは何匹いる?」

アリスは剣先で子宮を裂き胎児を出した。それは胎児と言うにはあまりにも成人の人間そのものだった。

「こいつも失敗か...」

誰かが呟いた。

察するに捜索隊などが遭遇したと思われるネフィリムだけが唯一の成功という事だろう。

そうだ、捜索隊や巡礼者達の行方はどうなったのだろう、あの地図にはそれらしい収容施設は描かれていなかった。

「うう...」

胎児は羊水を吐き出して呼吸を始めた。

「...est...charist...」

「東方教会の人間か...」

ゆっくり頷く、その目は助けを求めていた。だがすぐに動かなくなった。

アリスは白いスカートの一部を切り裂き亡骸に被せた。

剣を抜き、何の前触れもなくアリスは周囲の兵士や研究者を斬り刻む、その目は同胞を殺された憎しみか悲しみか、神の僕たる巡礼者を殺された悲しみか、理性を失った獣のようだった。

アリスの服は血に染まり、すっかり赤くなっていた。

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