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5・紅蓮の戦場

本来はこの後に続くナナシの場面まで上げる予定でした。

でもめちゃ長くなったので、仕方なく区切る事にします。

今までの話は全部で一話分と見て頂けるとありがたいです。







「今日もヒナは本気の本気ですよ!」


 空舞う少女は、まるで風に乗った燕のようなしなやかさで空を舞う。

 敵の間をすり抜けざまに一撃だけを加えると、あとは目もくれずに離脱するヒット&アウェイに徹しており、そのトリッキーかつスピーディーな戦術で見事に敵を翻弄しきっていた。

 銃を向けた時には、もうその場に影すらも残してはおらず、混乱は彼女が舞い降りる毎に拡がっていく。


「くっ、当たらんっ。おいっ、はよあいつ落とせや!」


「何言ってやがる! 黒鉄の他の連中もいるんだぞ!? あいつにばかり構ってられるか!」


 ヒット&アウェイ。

 一対一ならまだしも、周りに他にも敵がいる状況でそれをされるとどれほど厄介な事であるか。

 逃げる機会を失って、仕方なく攻め寄せてきている《黒狗》に抵抗を試みていた集団は、その事を嫌というほど痛感させられていた。

 空から舞い降りてくる少女に気を取られていては周りからの攻撃に反撃が出来なくなり、かといって周りにだけ気を向けていれば、途端に空を飛び回る敵からの攻撃が激しくなる。

 急降下して攻撃をしてくるばかりではない。

 不可思議な効果を持った特殊弾丸がその手から落とされると、それが獲物を目掛けて飛び掛かる猛禽のように軌道を変えて、次々と仲間達にぶつかっていくのだ。

 周りから粛々と包囲を縮めてくる連中も、盗賊達が空に気を取られた瞬間には攻撃を加えてくる為、そちらも油断がならない。


「くそっ、おいっ、お前達は空を見てろ! 俺達は周りを警戒するから――」


「なんでお前が仕切っとんねん! ええから撃ちまくれ! 空のヤツを先に落としてまうんやっ」


「それだったら周りの連中に対処出来ないだろうが!」


 それでも頭役がいれば、まだ纏まり抵抗のしようもあっただろう。しかしそれもいない現在では、混乱は拍車をかけて拡がる一方だ。

 周りを黒鉄に囲まれただけならまだなんとかなった。この辺りは彼らが縄張りとする地域で、どこにどんな建物があり、どこが防衛に適しているか知っていたからだ。

 逃げ遅れたと分かった瞬間に下がったのも、やがて仲間達が盛り返してくるのを待てばいいと思ったからである。

 いかな黒鉄でも、この辺りの最大勢力である《ロマンサー》を相手に、初撃で全てを潰滅など出来るはずもない。しばらく待てば仲間達が逆襲してくるだろう。

 そう考え、辺りに残ったままだった者達は集まって抵抗を試みていたというのに、まさか空を飛び回るような能力者までがやって来ているとは考えてもいなかった。

 身体能力が高い者なら飛び越えられる程度のものではあっても、多少なりともその動きを妨げられる障害がある場所を陣地にしていたというのに、それも空からこられたのでは大して役には立たない。

 元より燃料などの関係で飛行機械などは廃れる一方だったから、空からの攻撃に対する防御などは考慮にいれていなかったのだ。

 ましてや相手は、飛行機はおろかヘリですらものともしない旋回性能を見せ付けて、ビュンビュンと飛び回っている相手である。

 その小回りが利くという利点がどれほどのものであるか。それは戦闘ヘリの存在が証明している。

 戦闘ヘリが乱戦や市街地戦で飛行機よりも有用とされたのは、その小回りが効くところによるものだ。

 戦闘機の方が圧倒的に速度を出せるにも関わらず、戦闘ヘリがバンバン開発されていたのは、戦闘機では実現しない旋回性能が高く評価されたからなのである。

 だが、今彼らの上空を支配している少女は、その戦闘ヘリですらもものともしない機動力と旋回性を見せ付けて、上からはっきりとプレッシャーをかけていた。


 ――黒鉄にはこんな能力者までいるのか。


 誰もそんな事は口にはしていない。それでも誰もがそう考えて頭を抱えたくなっていた。

 《近衛殺し》や《盗賊殺し》の名前は知っている。

 かつてこの辺りを掌握していた《アヌビス》が、今は黒鉄に所属している事も知っている。

 ほんの二年ほど前まで、ロマンサーはアヌビスの連中には歯牙にもかけられない程度の集まりだった。

 盗賊殺しや近衛殺しなども、わざわざ自分達の相手をする為だけに、こんな関西の外れまで出てこないと断言出来るほどに弱小勢力だった。

 だからロマンサーの連中は、噂の黒鉄の力をほとんど知らない者ばかりだ。


 ――見張りは何をやっていたんだ。なんでこんなにもあっさり攻め込まれている?


 周りを囲む連中は、確かにそこまで大人数ではなかったが、それでも攻められるまで接近に気付かないほど数が少ないわけじゃない。

 怠慢か? それとも見張りが気づけないぐらい上手くやったのか?

 それは分からないが、この連中が恐ろしく手練れの集まりであり、統制が取れている事は攻められている今でははっきりと分かる。


 勇猛に攻めつけてくるわけじゃない。特攻なんて真似をする者は一人もいない。

 全員が全員、びっくりするほど慎重で、誰一人として出過ぎた真似はしてこない。

 つまり《穴がない》。付け入る隙がない。

 こちらが攻めれば防衛に徹し、動かなくなる。ひたすら隠れ潜み、動く時は囲んだ《網》から抜けようとする者がいた場合だけだ。

 しかし一度気を反らすと、途端に囲む輪が縮まってくる。攻撃に入ってくる。東に気を向ければ西から、北に手を集めれば南から銃声と怒号が上がる。

 まるでα(アルファ)と呼ばれる群れの長に完全に統制されている狼の群れのごとく、その動きには澱みがない。

 ならばと、一点に攻撃を集めて離脱を計ろうとしてもあっさり押し返される。向こうからも手勢が出てきて即座に叩きのめされるのだ。

 ほんの五人ほどに――しかも半数は小柄な女性だった――こちらの先駆けが叩き伏せられた様は、なんの冗談なのかと思ったぐらいだ。

 それで仕方なく、また籠る事になっているのだが、正直な話じり貧である事は明らかだ。


 ――あぁ、これは勝てないな。


 誰もがそう理解していただろう。

 それどころか、一矢を報いる事すら無理だと思っている。


 今まで彼らはただ奪う側で、反対の立場に立った事がない。

 この辺りで最大の構成員数を誇るという事実。それそのものが力の証であり、勢力の規模を示すものだ。

 だから大抵ろくな抵抗も受けずに、ただ貪る側であれた。適当に周囲を回るだけで労働力を手に入れて、それを連行して強制的に働かせても文句などどこからも出なかった。


 足りないものは奪ってくればいい。

 女が欲しい男達はそれも奪えばいい。

 飾り立てたいと願えばそれこそ奪うだけだ。

 だから自分達こそが、この辺りの支配者なのだと思っていた。

 支配者だから食糧に困る事もなく、女達に不自由する事もない。自分達をきらびやかに飾り立てる余裕もある。

 関西東部から中央は統括軍が、そこより西を黒鉄が、そして西端にあたる部分は自分達が治めているんだと思っていた者すらいる。


 でも、そんな生活の終焉が迫る足音を確かに聞いて。

 今までの権力は、関西統括軍が瓦解しただけで――あるいは現実とは真逆に、もし黒鉄がいなくなっていたとしても、あっさりと崩れ去る程度の砂上の楼閣だった事を自覚させられる。


 それでも抵抗するのは、自分達が好き勝手をやってこれたのは《ロマンサー》という屋台があればこそで、それが無くなれば今まで奪ってきた相手が牙を剥いてくると本能的に分かっていたからだ。

 だからこそ、僅かな希望を持って抵抗している。

 今までやってきた事の報いが一体どれほどのものであるか……自分達の《奪うだけの生活》は、一体どれほどの人々の犠牲の上に成り立っていたか。

 それはそれぞれが分かっていたから。










「突破しろっ、数は大した事ないぞ! 一気に踏み越えててやれ!」


「へぇ……?」


 狗達に追い立てられた者達の先頭に立ち、大声で檄を飛ばしていた男の声を聞いて、カーリアンは不敵な笑みを浮かべてみせた。

 確かに自分達は小勢だ。追い立て役の狗よりも、一班から参加している一隊よりも数は少ない。

 用意万端で待ち構えてはいても、下がってくる盗賊達の四半分もいないだろう。


「鮮烈、猛烈、苛烈に噴き上がれ、煉獄の――」


 でも、ここを簡単に踏み越えて行けるなんて思われるのは困る。

 ここには自分がいる。みんなの先頭に立って自分がいる。


「――紅っ!!」


 そんな思いが、カーリアンに先制の一撃を走らせる。

 開戦の合図はカクリに任せる予定だった。

 それでも、この場では先陣を切る事こそが自分の役割だと思ったのだ。

 自分には戦況を見据える目はない。それは他人に任せるべきだ。

 自分には指揮をする能力が欠けている。それも誰かにお願いするべきだろう。

 なら自分には何が出来るか?


 戦場に足がすくむ仲間達の先陣を切る事が出来る。

 一番前に立つ事は出来る。

 なけなしの勇気を奮い起たせる事なら出来る。

 敵に侮らせない事だけなら出来る。

 それぐらいしか出来なくても、その為の力なら持っている。それこそが自分みたいな未熟者でもなんとか出来る事なんだと思う。

 その考えに従って、彼女は溢れ出る感情を炎に変えたのだ。


 轟――。

 空から三筋の紅き線が大地に突き刺さり、それが猛火を上げる様を見ながら腕を突き上げてみせる。

 夢中でただ高く、仲間達にみえるように拳を掲げてみせる。


「……撃ち方始めっ!」


 いつになくはっきりとしたカクリの言葉が聞こえてくる。

 銃声に負けないように声を張り上げる男達の低い声が聞こえる。

 そんな中、自分の先制の一撃をかわしざま飛び上がり、そのままこちらに向かって飛んでくる敵を見て、カーリアンはそちらへと指を掲げた。

 その手には、腰のホルダーから新たに取り出した針金が握られており、それは煌々と紅い光を放ち始める。


「あたしを守る四番目の剣士……フィーアっ。今はみんなの為にその紅き剣を振るえ!」


 それは音もなく輝きを増し、次いで炎を噴き上げる。その炎の槍と化したものを見て、飛び上がっていた男の表情には驚愕の色が浮かんだ。


 単なる発火能力者にこんな真似は出来ない。

 一点に留め、力を溜めてから炎を放つ事なら出来る者もいるかもしれない。

 だが、槍か――あるいは剣のような明確な形をとった炎を作り上げる事など、炎の本質から考えて出来るはずがない。

 炎は不定形のものであり、揺らぐものだ。ほんのちょっとの風にも靡き、空気や燃料の質で色を変えてその形を変えるものだからだ。

 だが、今自分に狙いが付けられたものは、小揺るぎもしていない。明確な攻撃の意思を刃の形に変えてはっきりと自分に向けられている。


 ――あり得ない。



 そんな男の思いは言葉にならないまま、その胸は宙を貫く一閃に焼き抉られ、あっさりと炭化させられて、苦悶の声すらもなく鈍い音だけを残して地面に落ちる。


「正面にだけ集中しなさいっ。身体能力任せに突っ込んでくる連中はあたしがなんとかするからっ!」


 ヒュンヒュン舞い飛ぶ三筋の光は、時おり業火を落として敵の進行を留めていた。

 そんな中、カンカンと激しく合金の盾を打ち鳴らす銃弾の音に負けないように、カーリアンは声を張り上げて指示を飛ばす。

 隣にいるカクリはというと、もはや自分の声量では心許ないと思ったからか、あるいはカーリアンの指示が間違っていない間は何も言うべきじゃないと考えたからか、戦況を見やりながらも懐から取り出した小型の通信機を弄っていた。

 それの周波数を慎重に微調整してから、そっとその電源をオンにする。


「……ボンッ」


 そんなカクリの声が合図となったかのように上がる派手な爆音と、吹き上がる粉塵。

 それはいよいよ盗賊達に混乱をもたらし、逃げ出そうとするものと、いまなお前進しようというものがぶつかり合う喧騒を産み出した。


 カクリの得意とし、武器とするものは、決して治療の知識と技術だけではない。彼女が得意とするものは医療に関わる全てだ。

 その中には、薬学や化学の知識ももちろん含まれている。

 それらを頭の中に納める上で、当然毒薬や『混ぜるな、危険!』とされる爆発物の知識もあった。

 なにしろカクリには《先生となる人物がいない》のだ。師となるのは書籍のみで、そこで得た知識を実地の積み重ねて学んできた以上、関連のありそうなものは手当たり次第に頭に修める事になる。

 その結果として、医療用の薬品――消毒用のアルコールやら薬剤にもなりえる化学薬品などがあれば、それに手を加えて爆発物を作る事ぐらいはお手のものとなったのだ。

 それらの知識を使えば、通信機からの発信を受け取って発火する装置を取り付け、遠隔操作が利く爆弾を作り上げる事など造作もない。

 爆発物と分類される燃焼速度を持った燃料を容器に留め、小さな火花を上げるだけの発火装置でそれに火をつける。

 それだけでも轟音と猛火を上げさせる事が出来る。

 彼女は自分には腕力も体力もない事は理解している。だが、それがなければ戦えないわけではない事もカクリは知っていた。

 特に今のような防衛戦の維持という戦闘において言えば、自分は決して無力な存在ではない。準備をしっかりと施せる戦場であれば、例えそれなりに強い戦闘能力を持った相手でも戦える自信がある。


 策を施し、罠を作ってそこに誰かを陥れる事などは、彼女がもっとも得意とするところであり、好みにも合致しているからだ。


 ――カーリアン!


 今攻めこめば、それなりの戦果が上がる。

 敵はカーリアンの魔弾とカクリが施した爆発によって混乱している。右往左往し、ぐちゃぐちゃに入り乱れてにっちもさっちもいかない状態だ。

 今もう一撃を与えれば、こちらの優位は確かなものになり、今後がずっと楽になる。

 銃撃や能力による遠隔攻撃ではなく、白兵戦を仕掛けて《こちらには白兵戦をする用意もある》というポーズを見せておけば、ヤケクソなった敵に突っ込まれたり、遮二無二攻めつけられて、《実は白兵戦が出来る人材がそんなにいない》というウィークポイントが露呈せずに済むだろう。


 数に任せて攻めこまれれば乱戦になり、そうなればカーリアンの紅は強力過ぎる余り味方を巻き込む可能性から力を半減させる事になる。

 彼女の炎は指向性のあるものだが、乱戦ともなれば絶対に周りを巻き添えにしてしまうだろう。それが分かる以上、カーリアンは本気を出せなくなる。

 カクリの一手も、味方が布陣している辺りには仕込んでいない。そこまで攻めこまれたら作戦失敗は明らかであり、狗や一班の連中に救助を求めるしかないからだ。

 そう考えたカクリは、カーリアンにゴーサインを出そうとして。


「あたしと前に出る勇気があるヤツ、付いて来なさい!」


 それよりも早く、カーリアンはそう叫びざま盾を飛び越えて敵の群れへと駆け出していた。

 そんな彼女の前には、先程まで空を飛び交っていた三つの魔弾があり、それぞれが敵を威嚇するかのように炎を吹き上げている。


「今よ、三陣の白兵部隊、カーリアンに遅れないで!」


 呆気に取られる暇もない。

 先頭を駆けていくカーリアンに付いて即座に走り出したのは、カクリが頭を下げて廃都に居残る小隊から借り受けた数人だけしかいない。

 カクリが鍛えた部隊の者――つまり戦闘向きな能力はあれど経験が足りない連中は、カーリアンが感じたらしい戦場の機微が分かっていないのか泡を食っているだけだ。

 そんな連中に駆け寄りざまカクリは尻を蹴りあげ、声をかけて指示を出す。


 ――バラバラと走り出す連中がいた為に、練度が足りない者がいた事はバレたかもしれない。


 そうは思うものの、先に駆け出した三班の生え抜き達を見てその心配は霧散する。

 彼らはあっさりとカーリアンを追い越すと、魔弾がぶつかり広げた集団の綻びに矢尻のごとく食い込んでいき、混乱をきたしている者達の間をスルスルとすり抜けていっていたのだ。

 ろくに攻撃もしていないが、そのスピードは群衆の中を駆けているとは思えないものだ。

 そして、それによる効果は目に見えて分かる。


「黒鉄だっ、黒鉄が攻めこんできたぞ!」


「て、敵だっ、敵がきたっ」


「迎え撃て! 逃げるな!」


「く、来るな! 来るなーー!」


 ただ駆け抜けていきざまに時おり攻撃を加え、《黒鉄が攻めてきた》と示してみせる。

 たったそれだけで、混乱している連中はさらにパニックを起こす。恐怖に駆られて手にした武器を振り回す者や、腕を振り回して周りを殴り付ける者までいる。

 当然、駆け抜けていく連中はすでにそこにはおらず、あちこちで同士討ちが始まっていた。

 そこにかなり遅れて、カクリに尻を蹴りあげられた連中が突っ込んでいったのだから、彼らの特攻による効果はかなり大きなものとなっただろう。


 そんな中、自分を追い越していった連中に目をやり、途中で――自分の得意とする中距離で踏みとどまっていたカーリアンは、ホルダーの中に入れていた針金九本全部を取り出してその全てに紅蓮を宿す。


「大判振る舞いよ。紅のカーリアンの本気……見せてあげる!」


 カーリアンの言葉に、全ての針金が炎の剣と化した。

 紅の光を宿した魔弾ではなく、全てが紅蓮の炎がはっきりと形を持った燃え盛る魔剣へと変貌した。


「剣陣……紅蓮!」


 九本の魔剣は指から飛び立ち、その切っ先を敵の集団の直中に向ける。噴き上げる炎はあれど、確かに剣の形をしたそれは、九本きりではあれ剣が作る陣だ。


 カーン、カーン。

 そんな甲高い鎚の音にも似た響きと共に、今もカーリアンの脳裏に浮かんでくる剣陣にはまだ程遠い。

 でも、つい最近になってまた一本造り上げる事が出来たそれは、確かに《錬血の剣陣》に一歩近づいている。

 一歩、ほんの一歩。

 でも確かな一歩分、また近づいている。


「……カーリアン」


 甲高い気合いの声を上げ、九本の刃を使役する少女を見やりながら、カクリはほぅっと小さな嘆息を漏らす。

 また強くなっている彼女を見て。

 また一歩先へといった姉を見て。

 自分よりも先に、戦場の動きを把握して駆け出した姿を思い出して。


「副長!」


 カーリアンの気合いの声に触発されたのか、はたまた《コードフェンサー》という存在の凄まじいまでの力に勇気を得たのか。

 逸った色が見える言葉をかけられて、カクリは我に返る。


 ――あぁ、気を取られてばかりもいられない。カーリアンが前に出た以上、彼女に代われるのは自分しかいないのだから。


 そう考えを引き締め、勝ち戦が見えてきて、デビュー戦の大勝に逸る表情の仲間達に、ことさら冷たい表情を向けた。


「……忘れてはダメ。……私達の仕事はこの場所の維持。……この場所からは先へと行かせない事。……私達まで戦線に出れば、カーリアンが少数を連れて前に出た意味がない。……各自、持ち場に待機。……今のうちに弾薬の補充を済ませて」


 淡々としたその言葉に、逸ったところの見えた仲間達は少しだけ不満げな顔を見せるが、カクリは普段よりもずっと冷たい視線で、意気揚々と声をかけてきた近くにいる少女を睨みやった。


「……ここまで来て作戦失敗となったら、私達は本当に役立たずよ。……カーリアンと他の隊の連中におんぶに抱っこされて……その上で失敗しました、なんて間抜けな報告を私にさせたいの?」


「ひぅ、ごめんなさい、ごめんなさい。折檻は勘弁っすっ、副長!」


「……分かったらさっさとする。……全員に通達。……私達の役目はこの方面のメインストリートにあたる場所の死守。……それを忘れたヤツは私のところに来なさい。……もう二度と勝手な考えは起こしません、と千回誓うまでイジめてあげるから」


「りょ、りょーかいですっ、りょーかいしましたぁ」


『あぁ、災難だったな、あいつ』

 カクリの近くにいたが為に、ついつい興奮して皆を代表する形で声をかけてしまった少女に、そんな哀れみを籠めた視線が集まった。

『多分……というか、間違いなく副長に目をつけられただろうな。くわばらくわばら』

 とばかりに、他の人間はとばっちりを喰わないように慌てて防衛網の修復にかかる。

 犠牲はない。少なくとも死者いない。

 銃撃の際に盾から出ていた腕を撃ち抜かれた者、激しい音にびっくりして腰を抜かした者、足を挫いた者、肉が焼ける臭いと鉄臭い血の臭いにげぇげぇ吐いている者はいたものの、戦果としては最上だ。


 ――さて、この場所だけを私達に任せて、他の場所には手を付けない事には何か意味がある……のかしらね、やっぱり。


 しかし、そんな戦果の中でもカクリに浮かれる気持ちはない。戦果は戦果として、その先へと思考を向けていたからだ。



 奇襲を仕掛けた後、逃げ遅れた連中を各個撃破する役割を持つ狗。

 メインストリートに当たる部分だけに敷かれた待ち伏せ。

 頭を狩る為だけの一班。


 では、それ以外の道筋から逃れようとする連中は《一体誰が相手にする》のか?

 そこまで疑問に思っている人間が、果たしてこの三班という集団にどれほどいるのかは分からない。

 単に、『大多数を狩れたらそれでいい』そう判断している者も多いだろう。

 それだけでも、《黒鉄の力を示す》という意味では十分だからだ。


 ――でも、それではわざわざ外征をしてきた意味がちょっとばかり物足りなくはないだろうか?


 それがカクリには引っ掛かっていた。

 確かにかなりのダメージを与えられて、黒鉄の力を見せつける事は出来る。多少のリスクはあれど、それほど無理をしなければ出来ない作戦でもない。

 しかし、この布陣――はっきりいうなら外征に出た部隊の少なさからすると、半数以上は逃れてしまうだろう。

 地方とはいえ一市街を包囲し、そこに拠点をおく敵を討つには余りにも数が足りなさ過ぎる。メインストリートを押さえてもあちこちから逃れる連中が出るはずだ。

 そういった連中は黒鉄に対する敵対心を持つだろうし、やがて厄介な存在になるかもしれない。

 それでもこの外征に大きな意味があるとしたら――。


「……敵を《逃す事》にも何かしら意味がある、のかしらね」


「はっ? 何か言いました?」


 ぼそっと漏らしたカクリの言葉に、先程の少女は首を傾げながらそう問いかけてくるが、それは明らかに墓穴を掘っている。

 上官や上司の独り言には不用意に首を突っ込まない……それが目下にある者としては正しい在り方というものであり、賢い世渡りというものだ。その辺りがまだ若い彼女には分かっていなかったのだろう。

 そんなまだまだ青さの残る少女をチロッと見やるカクリの瞳には、嗜虐的な感情にも似た色が浮かんでいた。


「……あなたには、いちいち私の独り言に突っ込む余裕があるのね。……覚えておくわ」


「あぁ、いや、そんなわけでは……ないんすけど……えっと……」


 即座に余計な事を言ったと悟るもすでに遅い。

 カクリはしっかりと彼女を上から下まで見やり、意地悪げにその薄い唇を歪めてみせる。


「……廃都に帰ったら楽しみにしていなさい。……あなたが余裕をなくすぐらいの仕事を回してあげるから」


「あのぉ、今でも結構キツいんすけど」


「……大丈夫よ」


「な、何が大丈夫なんでしょう?」


「……キツいのをずっと越えて一周したら、意味もなく楽しくなってくるから」


「全然大丈夫じゃないっすっ。むしろ嫌すぎます!」


 周りに助けを求めるように視線を這わすも、その先にいた人物に揃って目を反らされるという嫌すぎるシンクロ現象を目の当たりにして、少女はがっくりと肩を落とした。

 隊長の少女は、大人っぽく見える容姿とは裏腹に気安くて、おっちょこちょいで、どこか憎めないところもあり、噂に聞いたほど怖い人間じゃなくて安心したというのに、副長が《こんな人》だとは聞いていなかった。

 そう思うものの、それを口に出して言うほど彼女は怖いもの知らずでもなければ、我が身が可愛くないわけでもない。

 自分よりも背が低く、目線も下にあり、実際の年齢も同じぐらいのカクリが、実は隊の中では隊長よりも怖がられているという事実は、隊の中では公然の秘密として知られていた。

 こちらの許容量限界ギリギリまで仕事を押し付けてくるだけではなく、失敗があればガリガリと部下の精神をリミット一杯まで削り取るかのようないびりまであるのだ。


(せっかくあの三班に入れたのに)


 黒鉄一の精鋭部隊であり、実質的には黒鉄という組織の顔役であるシャクナゲが率いる部隊に入りたい……そう思う人間は決して少なくない。

 少し前の彼女もそうだった。

 三班に所属するという事は、黒鉄において言えば一種のブランドのようなものだからだ。はっきり言えば、黒鉄という組織の中でも花形部隊なのである。

 班長のシャクナゲだけではなく、中性的な面持ちと軟らかな笑みを絶やさない副官のアオイ、儚げな風貌とその雰囲気にぴったりあった和服が似合うスイレンなど、遠目から見て憧れている人間は少なくない。

 また、三班に入るという事そのものが、仲間達にとって自分が必要な人間であるという自信にもなる。

 しかしこの三班という部隊は、黒鉄一入隊が難しい所でもあった。

 何故か新規入隊は、ほとんどが希望者ではなく三班に所属するメンバーからの推薦であり、希望を出したからといっておいそれと入隊出来るものではなかったからだ。

 一応形ばかりは一般入隊も受け入れていたが、ほとんどが試験官である幹部によってふるい落とされ、実質的には受け付けていないようなものだったのである。


 それだけに、新部隊設立に際して広く募集をかけられた時はなかなかに凄まじい光景だった。

 今までふるい落とされて、その結果他の班に所属していた者や、黒鉄には所属せず、廃都で農作業をしていた者まで集まった人数は、軽く百人を越えてさらにその三倍近く集まったのである。


 それら希望者を全て受け入れる、と言われた時には戸惑いながらも喜んだ。厳しい審査があるものとばかり考えていたからだ。

 その余りにも意外な展開に嫌な予感が多少はしたものの、だからといって『やっぱり止めます』なんて事を言えるはずがない。

 こんな機会はもう二度とないかもしれないのだ。

 だから不確かな嫌な予感は無視する事にしたのである。


 少し後になって、その嫌な予感を無視した事を死ぬほど後悔する事になった。そのあとに課された地獄の訓練がそれである。

 それは彼女はおろかほとんどの入隊希望者達にとって、新鮮なトラウマを記憶に刻みつけてくれいる。

 全員を一旦受け入れた後のふるい落とし……それはまさに『一人たりとも無能ややる気のない者はいらん』と言わんばかりのものだったのだ。

 その過酷なふるい落としで九割方が落とされた中、ガタガタになりながらも乗り越えた者が晴れて入隊を正式に認められたのである。

 その先でやる気と実務の能力を買われて、なんとか新部隊の中でも後方要員として残れたというのに、その結果がこれではちょっとあんまりだと思う。


(でも、お母さん達も三班の寮に入れて喜んでくれてたし、今さら辞めるなんて言えないっす)


 あんなに《地獄》を見たのだから……という思いももちろんある。脱落していく者達を見ながら、自分はギリギリ乗り越えたという自負もある。

 しかしそんなものよりも、三班のメンバーになったメリットの方が彼女には捨てがたいものだった。

 三班に入れば、当然本部を囲むように建っている建物に一室が与えられる事になるのである。それはいざ何かあった時にも、すぐさま家族が本部に逃げ込める立地に住居が与えられるという事だ。

 しかもその家族にまで三班の上層部から作業が割り当てられ、本人に何かあった際も食べる事に困らないよう配慮されているというのも大きい。

 それを捨てるのは、今のご時世ではちょっと……というより、かなり勿体ない。

 特に幼い妹がいる彼女からすれば、そういった補償こそが欲しくて頑張ったようなものだ。


『わたしもお姉ちゃんとおなじとこにはいるっ』


 そう言って笑ってくれた妹や、三班加入を我が事のように喜んでくれた母の為にも、三班メンバーの名前は捨てられない。

 家族の安全と食い扶持。それだけでも破格の補償だ。農作業に従事して、食い扶持だけをなんとか稼いでいた時とは、支給される労働の対価が全く違う。


「……みんなに声を張り上げるように言いなさい」


「はっ?」


 そんな事をうだうだ考えていると、問題となっている副長少女がそう声をかけてきて、考え込んでいた彼女は思わず間抜けな声を返してしまう。

 もちろん、そんな返答がアウトである事に即座に気づくもすでに後の祭りだった。


「……私の話を聞いていなかったのね。……そう、私もまだまだ知らない事が多いという事かしら」


 そう言ったカクリは不敵な笑みを浮かべていて。

 それは何故か楽しげに見えるもので、笑みを向けられた彼女の体中の体毛は一気に逆立った。


「……まさかウチのメンバーに、戦場で副長からの指示を聞き返すようなお間抜けさんがいたとは知らなかった。……ふふっ、それを教えてくれたあなたにはぜひお礼をしなくてはね」


「あわわわっ、ぜ、全員、大至急声を張り上げるっす! 喉が破けるぐらいに!」


 スゥーっと細まるカクリの視線は、どこか白蛇の視線を思わせた。

 さながら自分は、獲物と目を付けられた鼠だろうか? そんな事を考えながらも、慌てて出せる限りの声で指示を伝達する。

 もちろん手遅れである事は明らかだったが、ひょっとしたら情状酌量の余地を見出だしてくれるかもしれない。ほらっ、今日は初の実戦だし。

 なんて事を考えてカクリを恐る恐る見やると、白髪の少女はなおも愉しげに笑っていた。


「……ふふっ、帰ってからの楽しみが出来た。……帰ったら休む事なく隊長室に来なさい。……あなたの教育は、私が直々にしてあげる」


 彼女の期待など見透かした副長の下した宣告は、やっぱり無期懲役だった。



 黒鼬小隊。犠牲者0。

 初の実戦で、例え防戦に徹するだけであり、それも他から手を借りて成した結果だとしても、この戦果はかなりのものだと廃都の各方面に評価される事になる。

 いかに狗やナナシ率いる一班の精鋭がいたとしても、その評価が覆る事はないだろう。

 でも、鼬の面々は知っていた。全員が知っていた。

 犠牲者は確かにいたのだと。

 後々までずっとカクリのお付きを――主に身体的に疲れる事や、大声をあげる事などのように、カクリが苦手とする事を押し付けられる係である――命じられた少女。

 彼女こそがこの戦において、鼬から出た最大の被害者だと皆が理解していたのだ。






 あくまでも抵抗する輩を薙ぎ払い、飛びくる銃弾や能力すらも焼き払って戦っていたカーリアンが辺りを見渡した時、すでにその場での戦闘はほとんど幕を引いていた。

 先頭で細い指を振るって魔剣を飛ばしていた彼女は、その力を改めて仲間達に認められ、他の隊から参加していた面子からも称賛の言葉を投げ掛けられる。

 多くの盗賊達――中でも下っ端にあたる者達は、その力の矛先を向けられただけで次々と諸手を挙げて降参の言葉を叫び、いまだ抵抗の意思を捨てていなかった人間も、背後から突っ込んできたメメが率いてきた部隊に蹴散らされていたのだ。


「……勝った? 勝った、勝ったわよ! あたし達の勝ちっ。あたし達はやっぱ強いっ、あたし達もやれるんだ!」


 短く、でも激しい戦闘が終わったあと、誰よりも高々と勝鬨をあげる紅の少女。初の戦の緊張に疲れきっていた者達も、彼女の声に疲れを押し退けて拳を掲げ、徐々に声を張り上げていく。

 カクリがいる後方からは、なにやら切羽詰まったような――追い立てられたような声が上がっていたが、そんな事を気にする暇もなく周りを仲間達に囲まれる。


 退いてきた敵を足留めし、向かってくる者の多くを討ち払った彼女は、間違いなくこの場所を任された部隊のエースだった。そんな彼女の声に応えて、仲間達は勝鬨をあげる。


 しかし、カーリアンは仲間達を見渡しながらも、鋭く胸が突かれたような痛みを感じていた。

 彼女は知っている。彼女だからこそ知っているからだ。

 本当に辛くなるのは、戦闘の高揚感と緊張感が抜けた時である事を。

 血で染まった手と、体から取れない肉が焼ける臭い。それらは錯覚であったとしても、本人にとって重い十字架になる。

 彼女もそうだったから。

 暴走して、ところ構わず力を振るって、死にたがりと呼ばれていた頃の彼女でさえも、それは逃れられなかった。

 それを知っているからこそ、ことさら元気に振る舞ってみせる。


 初戦。初めての戦闘。

 それを終えてしばらく経ったあとになって心が折れる仲間もいるだろう。今まで他の班にいた者ならいざ知らず、戦闘の経験が0の者は後になって悩まされ、うなされる事になる。

 そんな時に、心が折れる前で踏みとどまれる為の力になれるように、不安を圧し殺して無理矢理にでも笑ってみせなければならない。


 一緒になって苦しむ事はもう出来ない。

 彼女はそんな時を遥か昔に置いてきた。

 一緒になって悲しむ事ももう無理だ。

 それがなんの力にもならない事をカーリアンはもう知っている。


 彼女をボコボコにして、ひん曲がっていたその心を無理矢理矯正してみせた少女は、辛い時ほど笑顔を見せていた。泣き言は人前では言わなかった。

 今はまだ彼女みたいにはなれないけれど……結局は彼女と違う形にしかなれないんだろうけれど、それでもカーリアンはこの隊の長だ。

 ならば一緒に苦しめない以上は、一緒に笑える時は精一杯笑ってあげるしかない。喜んであげるしか出来ない。

 だからことさら明るく声を張り上げて、周りの仲間達の肩を叩いて、調子に乗ったフリをして、空に紅蓮の炎を噴き上げさせてみたりもする。


 ――ミヤビ、あたしはあんたを越えてくつもりなんだけどさ、今はちょっとだけ真似をさせてね。まだまだ新米隊長なんだから、それぐらいはいいでしょ? 一応お師匠さまって事になってんだからさ。


 夕方の空をより赤く染めながらそんな事を考えて。

 メメ達の頭……《不死身》のナナシが、脇に逃げていった盗賊の長と思われる男とその取り巻きを追っていった方を見やる。

 別に心配をしているわけではない。メメ達も特にそんな素振りを見せていない。

 お頭の戦いぶりを見に行くかどうかの相談はしていても、手を貸そうと口にする者は一人としていない。

 なにしろ不死身のナナシは、何度死にそうになっても簡単には死なないからこそ《不死身》なのだ。

 かつて関西統括軍所属の盗賊狩り部隊を撃退し、関西近衛軍を相手に回しても生き残った。それだけではなく、あの《シャクナゲ》を敵に回して生き残ってすらいる。

 そんな人間は、関西広しと言えど数えるほどしかいない。

 だから心配なんてする必要は欠片もない。相手がいかに多くても、彼はまた平然と生き残ってみせるだろう。


 ――逃がしたなんて言ったらヒドいかんね。大口叩いたからには結果出しなさい、結果。


 ただ彼女が思うのは、完勝の証でもって仲間達がこれから迎える痛みを和らげてやりたいという事だけだ。自分達が背負った痛みの結末が、ほんの少しでもよくなればそれはきっといい事だろう。

 完勝したという事は、自分達の価値が認められるようになるという事だからだ。

 だから彼女はそう願う。

 特に激励もなく、応援をするわけでもないそんな考えが当のナナシに知れたら、ガックリと肩を落とすだろう事にはカーリアン本人だけが気付いていない。


 紅のカーリアン。

 彼女は基本的には聡い少女だ。仲間思いで色々と気が回るところもある。カンの鋭さは人間の領域を越えて、野生の動物ですらも顔負けのものを持っている。


 しかしそんな彼女は、いつまで経っても致命的なまでに色恋沙汰には鈍感だったのだ。



第二部のおさらい後編。


関西に動乱が起これば、周囲の諸勢力が動く……それは明白だった。

関西地方に勢力を築いた将軍を名乗る男の軍勢が防壁となっていたからこそ、紛争が落ち着いていた面があったからだ。

それを事前に理解していたスズカは、東海地方との境界に赴き、東からの波に対する抑えを受け持つ。

マスターシヴァを名乗った好戦的な男が一番に動く事、そしてその男との因縁がある兄と友人の少女の為に。

またマスターシヴァと呼ばれ、東海地方最強を冠した純正型を相手に出来る者は、同じく純正型であり、かつては皇の種と呼ばれた事もある彼女しかいない。

そうして、かつては白銀を冠したスズカと、同じく過去には朱色を冠したシヴァは、その身と世界を削りあう。


それと同じ頃、暁の遺産を破壊すべく廃都の地下に赴いていたシャクナゲは、《災厄》の名前を戴いたノーフェイトの領域に取り込まれ、そこでかつての自分――新皇と呼ばれていた頃の自分と向き合っていた。

人に夢を見させ、現実を忘却させ、現実を否定させる偽物であり、器物。

作り上げられた幻は、今のシャクナゲを圧倒し、偽物の灰色世界はシャクナゲの灰色世界を飲み込んでいく。


エリカを伴って廃都への道をゆくカーリアンは、エリカが望むものを聞き、エリカがなんの為に廃都へと向かうのかを聞いて、彼女と向かい合う事になる。

かつて《閃光》と呼ばれたエリカ。

シャクナゲに師事して、その後を付いて歩いた彼女が望むもの。

それは大多数の者から見ればそれほど大したものではなくても、カーリアンやエリカからすれば何物にも代えがたい《後継者》の証そのものだった。





……難しいですね、ダイジェスト。

セリフが結構考えたもので、それを大事にしたいのに、それを書けないのが困ります。

ダイジェストより本編を読んで頂きたいですね。

とりあえず第二部のモットーは

『過去を乗り越える事』

スズカは過去に同じような経歴を持つシヴァと向き合って、シャクナゲは自分自身と対峙して、カーリアンは今なお過去に囚われている自分とよく似たエリカと出会う。

全部が全部、過去に関わる話になっています。

第三部は現実。

第四部は過去から繋がる今。

第五部は未来に関わる話になっていますが、その辺りもちょっと頭に留めて読んで頂けたら、もう少し楽しめるかもしれません。

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