バレンタインデー
「さて問題です、今日は何の日でしょーう!」
教室の自分の席で次の授業の準備をしていたとき、突然真横で仁王立ちしながら瞳をきらっきらさせてきた御崎に対して華麗にスルーを決め込んでやった。相手にするだけ無駄なんだ、こいつは。
「シカトされたくらいじゃめげないぜ! ささ、答えて答えて!」
「知らん」
ずい、と顔を近付けて来たもんだから、あからさまに嫌な顔をして押し返してやった。ぶーぶー文句を言っている馬鹿が視界に入って来るが相手にしない。してやるものか。
しつこく問い掛けてくる御崎に若干苛々しながらも授業の準備を進める。鞄から教科書出して、机の中にしまっていたペンケースを……あれ、なんだこれ、綺麗にラッピングされた箱が……
「……なに、これ」
「し、修、まさかそれは……!」
「箱だな」
「そうじゃなくてぇぇぇえ!」
バンッ、と机を両手で叩くもんだから教室中の視線が全部こっちに集まってるぞ。近くに居る俺まで注目浴びてんじゃねーか、勘弁してくれよほんと。
というか、凄く殺気の籠った目で見られてんのは何でだ。御崎だけじゃない、この教室内の男子の目が怖い。何だよ、俺、なんかしたか?
「修くん、今日はな、今日は……バレンタインなんだよぉぉぉお!」
「ほう」
つまり、これは俺へのチョコであって、目の前の馬鹿|(御崎)を含め教室内の男子はバレンタインにチョコの一つも貰えない可哀相な奴らだってことだな、ふん、ざまぁみろ。
その後。
「……修くん修くん、ちょっとその箱開けてみ?」
「帰ってからで良いだろ。あ、それともあれか? チョコ貰えなかったから俺が貰ったこれを食おうっていう魂胆だろ、そうはいかねーよ」
「良いから良いから」
「……あげねーぞ、絶対あげねーからな……って、うわ!」
「やーい、引っかかった引っかかった! ぷぷっ!」
修が貰ったチョコ=御崎がこっそり机の中に仕込んだびっくり箱。
御崎はきっと、修に仕返しがしたかったんです。
だって、いつも容赦無いんだもの。
お粗末様でした(´・ω・)ノ