飛び降り
「寒いな」
「冬だしな」
「上着てくれば良かったのに」
「大丈夫大丈夫」
今にも雪が降り出しそうな空。
学校の屋上。
男子高校生二人。
いつもと変わらない日常。
「今日の歌番組、お前の好きな歌手出るぞ」
「それは残念だ。昨日なら良かったのになー」
「だな」
「あー、ほんと残念」
残念そうに肩を竦めた一人。
慰めるように肩に手を置くもう一人。
先程よりもほんの少し濃くなった雲。
いつもと変わらない日常。
「雪、降りそうだな」
「そうだな、じゃ、そろそろ行くわ」
「おう」
「風邪、引くなよ」
フェンスの向こう側に居る一人。
それを見つめるもう一人。
降り出した雪。
いつもと違う、日常。
「じゃあな」
「……いや、早くしろよ」
「無理無理無理無理だって高いもん怖いもん落ちるとか無理怖いから無理ぃ!」
「御崎、お前なぁ……台本通りにやれよ馬鹿野郎! カメラ回ってんだぞ! つーか下にちゃんとネット張ってんだろうが!」
「だって高いんだもん! ネット破れたりしたらどうすんだ、死ぬぞオレ! 修くんは責任取れるんですかッ!」
「知らねーよ! 死ぬ役だろうが! 落ちろ! 華麗に落ちてしまえ! 破れねーから多分!」
「なんだよ多分って! もっとオレが安心するような言葉を掛けてくれよ頼むからぁ!」
「だが断る!」
フェンスにしがみつく一人。
引きはがし落とそうとするもう一人。
周りから聞こえる楽しそうな笑い声。
学校祭で流す短い映画の撮影に抜擢された二人の、いつもよりほんの少しだけ騒がしい、そんな日常。
お粗末様でした(´・ω・)ノ