クリスマス
ぴーんぽーん
がちゃ
「メリークリスマス修くん! プレゼントをくれ!」
ばたn
「いやいやいやちょっと待て頼むから話だけでも良いから聞いて下さいよ!」
「……何だよお前、朝っぱらから騒々しいな。今何時だか分かってんのか? あ? 質の悪いセールスマンみたく足を挟むの止めろ、閉められねーだろ」
「閉めないで! お願いオレを一人にしないで!」
ただいまの時刻、午前八時。こんな時間にアポも無しに訪ねてくるこいつの思考が理解出来ん……いや、確か御崎の両親、こいつを置いてクリスマス旅行に出掛けるとか言ってたな、そうか理解した。
「だからと言ってそれはそれ、これはこれ、だ。帰れ御崎、ハウス」
「わん! ……って、ちっがぁぁぁう! 家帰っても一人なんだよ! 俺を残して旅行なんぞに行きやがった親のせいでぼっちなんだよ! お前はそんなオレを見て何とも思わないのか!? クリスマスだぞ!?」
「あーはいはい、可哀相デスネー」
「うぐぐ……修のその冷ややかで同情に溢れた目はもう慣れたぜ! さぁ俺を迎え入れてくれ!」
「だが断る!」
何だ、いつにも増してしつこいな。……まぁそうか。親、ましてや彼女すら居ないこいつにとっては死活問題だもんな。クリスマスにぼっちなんて悲しいもんな。入れてやんないけど。
「なぁ修、お前ん家あれだろ? 両親に囲まれて美味い料理に舌鼓しながらきゃっきゃうふふするんだろ?」
「きゃっきゃうふふはしないがな」
「その中にたった一人、オレという親友が入ったって良いじゃないか!」
「他を当たれ」
「世のカップルは肩を並べ腕を絡ませたりなんかして綺麗なイルミネーションを見た後に夜景の見えるレストランで『君の瞳に、乾杯……』とか言っちゃって……あーなんか痒くなってきた、リア充爆発しろ……ッ!」
必死だな、うん。何だろう、何か俺が悪者みたいな感じがするぞ、ふざけんな。
寒いからいい加減中に入れてくれーなんて言いながら実力行使で中に入って来ようとする御崎を全力で止めていたら家の中から母親が出て来た。御崎くんも一緒にどう? なんて。え、なに、なんて言った? え、ちょ、日本語が分からない。
「え……! ほほほほんとに良いんですかお母様! 嗚呼、なんて眉目麗しい方なんだ……大好きです!」
「お前なに人の母親口説いてんだよふざけんな! つーか母さんもなに満更でも無い顔してんだよ!」
頬を染める母親の後に続いて御崎が家の中に入って行く。
……なんだこれ、俺の朝の時間を返せよ……!
「うーん、もう食えにゃい……」
「俺のベッドに潜り込むな帰れ」
「もう動けない……寝る」
「だから家に入れたくなかったんだ……!」
お粗末様でした(´・ω・)ノ