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遅刻

『大変! 遅刻しちゃう!』

どんっ

『きゃっ!』

『すみません、大丈夫ですか?』

『素敵……! 私の運命の人……!』





「……遅刻ギリギリで急ぐ女の子は勿論食パンをくわえてて曲がり角を曲がった途端男とぶつかるんだ。そして転んだ女の子に差し出された男の手をそっと取り彼女は思う。この人こそ、私が待ち望んでいた王子様だと……!」


午前八時十五分、遅刻まで残り十五分。

早く学校へ行かないと完璧遅刻なわけだが、頭のネジが一本どころか百本くらい取れているこの馬鹿がさっきからこの調子で全く先に進めないんだ、この馬鹿のせいで。

置いて行ければ問題無いのだが、如何せん俺の腕をがっちり掴んで逃げられないようにしてやがる。ふざけんな何でこんなに力強いんだよ御崎みさきのくせに!


「そんで、女の子は無事学校に着いたんだが……あぁ、遅刻はしたぞ。先生に怒られるわ同級生に笑われるわで赤っ恥だ。でな、何気なく廊下を歩いていたら朝ぶつかった王子様と出会うわけだ!」

「ぶつかったとき、普通制服見た時点で同じ学校か気付くだろ」

「相当テンパってたんだよ彼女は! だから気付かなかったの! お分かり?」

「分かりたくもねーよ」


まだ家出てすぐだぞ。振り返ったら見えんぞ家。お隣り同士だからって毎朝一緒に学校行ってるけどもう止めようか。そうすれば幸せになれる気がする。少なくとも巻き添え喰らって遅刻ってな目には合わない気がする。


「逆だ逆! オレと一緒に居れば幸せになれるぞ、しゅう! 福を呼ぶ招きオレ!」

「邪気を呼ぶ、の間違いだろ」


心の声が口に出ていたようだがまぁいい。

呆れたように溜息を吐いてやったはずなのだが、何故か瞳を輝かせている御崎は口を開いた。


「そうか! あまりにもベタな展開でつまらないんだな! じゃあこうしようそうだこうしよう!」

「ちょ、俺は何も」





『大変! 遅刻しちゃう!』

どんっ

『きゃっ!』

『すみません、大丈夫ですか?』

『素敵……! 私の運命の人……!』





「……いや、最初と何が違うんだよ」

「まぁ聞けって。遅刻ギリギリで急ぐ女の子は勿論食パンをくわえたおっさんをくわえてて曲がり角を曲がった途端男とぶつか」

「何が勿論!? おっさんくわえた女とか有り得ねーだろ!」

「じゃあおっさんをくわえた食パンを女の子がくわえ」

「黙れぇぇえ!」


俺ともあろう者がこいつの言葉に動揺させられるとは……! 想像しただけで気持ち悪い……うぷ。

そんな俺の心情を知ってか知らずか、話を再開していたこいつを俺は一発殴って良いだろうか。


「……曲がり角を曲がった途端男とぶつかるんだ。そして転んだ女の子の傍らに居たおっさんに差し出された手をそっと取りおっさんは思う。この人こそ、私が今まで待ち望んでいた王子様だと……!」

「気持ち悪いこと言うなよ、想像しちまうじゃねーか!」

「そして女の子とおっさんと王子様のどろどろした三角関係が始まるんだ。『なによおっさん! 王子様は私のものよ!』『違うわ! 王子様はこのおっさんのものなの! 邪魔しないでよこの《ピー》女!』『邪魔なのはあんたの方よ! あんたなんかただのおっさんじゃない!』」


この茶番は一体いつまで続くのだろう。

声変えて一人二役なんて……あああ、もうやだこいつ。一度死んでもっかい生き返ってもう一度死ねば良いと思う。切に思う。








生徒指導室にて。


「お前が長々と熱く語らなければ俺はお前と二人こうして反省文なんて書かなくて済んだんだ。どうしてくれようこの始末……!」

「先行けば良かったんじゃね?」

「……、……お前が俺の腕掴んで離さなかったんじゃねぇかぁぁあ!」


学校到着時間九時。完璧遅刻。




お粗末様でした(´・ω・)ノ

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