あんこ
「やっぱつぶあんだよな!」
「唐突だなお前」
テスト勉強中突然顔を上げたもんだから何事かと思えば。随分静かだなと思ってはいたがこんなことを考えていたのか……というか、赤点必至な御崎の為にわざわざ時間を割いて学校に居残り時間が勿体無いと嘆くこの俺に教えて頂いているということを分かっているのだろうかこいつは。
「つぶあんだよな!」
「……こしあん派だけど」
心底嫌そうな顔をされた。
放課後という貴重な時間をふいにしてまで答えてやったというのに、心外だ。
「つーか御崎、明日数学だろ。んなくだらねー話ばっかしてないで勉」
「強よりこの課題、〝つぶあんとこしあんではどちらが良いか〟について徹底的に話し合おうぜ!」
「お前は徹底的に赤点を取れ」
こいつの思考回路が理解出来ん。朝はあんなに必死になって勉強教えてくれと頼んできたというのに、何だ今の有り様は。つぶあんこしあん云々なんてどうでも良いだろ赤点取りたいのかこいつ馬鹿なのか馬鹿なんだなきっと。
「んもう、修くんってばつれないのね! 心の声は口に出しちゃいけないんだぜ!」
屈託の無い笑顔で立てたその親指を逆に折り曲げてやりたい衝動に駆られたが我慢。落ち着け、俺。
深呼吸して自分を落ち着かせていたら嬉々としてつぶあんの良さについて語り出しやがった。ほんと、一度死んだ方が良いと思う。
「つぶあんはあのつぶつぶ感が良いんだよ。あんこ食べてます! って感じするだろ? それに比べてこしあんはぬたっとしてんだよなぬたっと! つまり、だ。つぶあんが一番なんだよこしあんなんてあんこの風上にも置けな」
「ちょっと黙ってくんない?」
頭痛くなってきた。俺はいつまでこんなくっだらねー話なんか聞かなくちゃならないんだ。
つか、何。ぬたって。
「恥ずかしがんなよ、修! お前だって本当はオレとあんこ話に花を咲かせたいんだろ? オレはちゃんと分かってるからな! さぁ、かもんべいべー!」
ああもう駄目だこいつ。
次の日。
「終わったな数学のテスト。で? 勉強を教えてやってた俺を放ったらかしであんこ話に花を咲かせてたお前はどうだった? 俺は楽勝だったぞ? つぶあんについて熱く語ってた間も一人でずっと勉強してたんだからな。や、それにしても簡単だったな今日のテスト。こんな簡単なテストで赤点なんか、まさか赤点なんか取るはずないよなぁ、御崎?」
解答欄全て「つぶあん」
勿論赤点。
お粗末様でした(´・ω・)ノ